樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

髪の木

2007年11月30日 | 木と言葉
散歩コースの花寺にあるイチョウが金色に染まっていました。
このコースには他に宇治名木百選のイチョウが2本ありますが、1本はまだ緑色、1本はすでに落葉していました。個体によってこんなに違うんですね。

            

イチョウは英語で Maiden Hair Tree(少女の髪の木)と言います。樹木全体を指して「少女の金髪のような木だから」とも説明されますが、私は葉脈の流れがおかっぱ頭の少女の髪のように見えるからだと解釈しています。欧米の女の子におかっぱ頭があるかどうか知りませんが…。

      

イチョウの葉は日本でもヘアスタイルに例えられ、江戸時代の一般の女性は「銀杏返し」という髪型でした。また、お相撲さんの髪型は「大銀杏」と呼ばれます。チョンマゲの先端の形がイチョウの葉に似ていることに由来します。十両以上に許された髪型だそうで、関取のシンボルなんですね。
最近はヨーロッパ出身の力士もいますが、髪質が日本人と違うので大銀杏を結うのが大変らしいです。そのうち、金髪の力士がそれこそ金色の大銀杏で土俵に上るかもしれません。

      
               (オシドリの銀杏羽)

髪の毛ではないですが、イチョウに例えられる美しい羽を持つ鳥がいます。オシドリ(オス)はカラフルな鳥ですが、翼の内側に半円形のオレンジ色の羽があって「銀杏羽」と呼ばれています。
上の写真は、鳥仲間の羽コレクションからお借りして撮影しました。
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秋と冬の同居

2007年11月28日 | 樹木
10年来のフィールド「栃の森」には、鳥がいない夏と積雪で車が入れない冬~春を除いて毎月通っています。先日の25日が今年の最終回でした。
数日前の寒波で森の中は約30cmの積雪。日陰に雪が残っていることは何度もありましたが、雪の上を歩きながらの観察は10年ほど前の4月以来です。
雪国育ちの私は雪上歩行に慣れていて、いつもは最後尾なのに雪が降ると先頭を歩くことが多く、仲間から「マタギ」と呼ばれています。
今年は紅葉や落葉が遅く、逆に降雪が早かったので、樹はまだ赤や黄で彩られているのに地面は白い雪という、秋と冬が同居したような風景でした。
1ヶ月前に「落葉の紅葉」をご紹介しましたが、今日は「雪の上の落葉」です。

       

まず、クリ。葉のところだけ凹んでいるのは、色が濃いので光を吸収し、熱を帯びて溶けるからでしょう。
左の足跡はシカ。早朝で雪面がまだ固いので、浅いまま残ったのです。タヌキやキツネ、イノシシの足跡もあちこちにありました。雪が降った後は、こうしたアニマル・トラッキングの楽しみがあります。

              

次はオニグルミ。樹にくっついているときは複葉ですが、落葉する頃にはこんなふうに小葉がバラバラになります。10月にはオニグルミの実を食べるリスを発見。この森でリスを見るのは初めてでした。

       

カエデのような形ですが、全く別種のハリギリ。枝にトゲがあるためについたこの名前も、材木になると「セン」に変ります。家具やインテリアによく使われる優良材です。

       

森の中にいくつか池があって、その一つが凍っていました。氷漬けになっているのはイタヤカエデとツルアジサイの葉。夏はこの池でモリアオガエルが産卵し、それをイモリが食べるという食物連鎖が見られます。

       

虫に食べられたツルアジサイの葉。植物と動物のコラボレーション・アートですね。

             

最後は折れたコナラ。あちこちで枝や幹が折れているので、仲間と「ナラ枯れ病がコナラにも飛び火したのかな?」と話していましたが、そうではないようです。秋と冬が同居したために、落葉する前に雪が積もり、その重みで折れたのでしょう。
元々なのか今年の気候のせいなのか、コナラの落葉が遅かったのかも知れません。しかも、東北や北海道の粉雪と違って、日本海側の雪は重いんです。直径20cmくらいの幹がボッキリ折れているコナラもありました。

       
         (幹がねじれて折れたコナラ。雪の力はスゴイです)

雪国育ちと書きましたが、いまは丹後も雪が少ないです。地球温暖化の影響は夏よりも冬に現れているようで、過去100年間の気温変化は京都市の場合、夏+2.3℃、冬+3.2℃だそうです。
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お箸にこだわるコンビニ

2007年11月26日 | 木と飲食
以前、ファミリーレストランの「デニーズ」が国産材の割り箸を使っていることをご紹介しました。同じように、国産材の割り箸にこだわっているコンビニがあります。
普通のコンビニで弁当を買うと無料で割り箸をつけてくれますが、ミニストップでは割り箸を5円で売っています。箸袋の表には、「5円の木づかいが地球温暖化防止につながります!」。

       

吉野のヒノキが使われていて、裏面には「このお箸は、国産材です。国産材の積極的な利用は、森によるCO2の吸収量拡大に欠かせません。お買い上げいただくだけで、国内外の森の育成につながります。」と書いてあります。
この5円の割り箸だけでなく、箸コーナーには吉野杉の割り箸(5膳入り・200円)が並んでいて、どこにでもあるような中国製の安い割り箸は置いてありません。この杉箸は、デニーズの割り箸と同じく、最初から2本に割れていて紙で閉じてあります。

       

さらに、布製の箸袋をセットにしたマイ箸も売っています。こちらの材は、尾鷲のヒノキだそうです。

       

このほかミニストップでは、広告入りの箸袋で国産材割り箸の競争力をサポートした「アドバシ」を実用化するなど、国産材のお箸にこだわっています。
みなさん、コンビニでお弁当を買うときは、ミニストップで買ってくださいね。
ミニストップのお箸へのこだわりはこちら
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ウッドカーリング

2007年11月23日 | 木とスポーツ
日本チームの活躍もあってカーリングが結構メジャーになってきました。氷の上で石の円盤を滑らせ、ブラシでこすりながら標的に近づけるというユーモラスなスポーツです。
そのカーリングの木製版を京都の玩具メーカーが考案したというので見てきました。場所は、京(みやこ)エコセンター。この施設では研修室やトイレやなどあちこちに木が使ってあります。

       
       

本当のカーリングで「ストーン」と呼ばれる円盤は、北山杉の間伐材(集成材)で作られ、裏に埋め込まれた3個のボールベアリングによってレーンの上を滑ります。カーリングのようにブラシでこするプレーはありませんが、標的に近づけたり、相手の円盤を弾いて勝敗を決めるのはカーリングと同じ。

            

レーンのフレームも北山杉の集成材。この会社は間伐材を使った玩具を専門に開発していて、ほかにも木片を立体の透明ケースに入れるパズルがありました。

       
10月22日の記事でスギの用途の幅広さをご紹介しましたが、こんな新しい玩具もあるんですね。当日はガールスカウトの小学生が楽しそうにプレーしていました。
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元寇の船

2007年11月21日 | 木と乗物
京都大学で「木」をテーマにした公開講座があったので聴講してきました。今回は宇治キャンパスではなく、京都市内の本校。伊東隆夫名誉教授による「木と文化財」という講座です。
この先生は先日ご紹介した平城京の遺跡や古寺に使われた木材を鑑定した人で、日本だけでなく中国の文化財も調査されています。私が特に興味を持ったのは船の木材。
ジンギスカンは1274年と1281年の2回、日本を攻めました。この元寇に使われた船が中国に遺っていて、先生がその木材を鑑定されたそうです。
材として多かったのは、マツ、ニレ、クスノキ。マツとニレは属名までしか鑑定できていません。クスノキは、『日本書記』でもスサノオノミコトが船に使うように指示しており、日中で共通しています。このほか、水に強いチーク材も使われていました。

       
         (丹後郷土歴史博物館に展示してある和船の模型)

びっくりしたのは船の数。最初(文永の役)は900隻(兵士4万人)でしたが、2回目(弘安の役)は4,400隻(兵士14万人)もの船が襲来。このうち、いわゆる神風によって3,000隻(兵士10万人)が海に沈んだといいます。大小さまざまな船があり、最も大きな船は長さ40m。
今年の夏に帰省した際、丹後郷土歴史博物館を訪れましたが、そこに和船の模型が展示してありました。いわゆる千石船で、実際の長さは約28m。
日本の船にもさまざまな木が使われていますが、竜骨にはカシやケヤキ、帆柱にはヒノキ、船体にはスギというのが一般的なようです。
公開講座では、船のほかいろいろな木の文化財について勉強できました。有名大学の立派なホールで、名誉教授の講義が無料で聴ける…。公開講座は「貧乏の木好き」にはありがたい制度です。
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阿呆の鳥好き、貧乏の木好き

2007年11月19日 | 木と言葉
当ブログも今日で300回。始めた頃は「がんばっても200回かな?」、200回を迎えた時は「300回は無理だろう」と思っていましたが、何とか持ちこたえました。樹木に関する面白い話はもう少しありますので、400回を目指してがんばります。
300回記念は、ことわざ。樹木にまつわることわざは結構たくさんあります。
木を見て森を見ず
ツリーウォッチングで山や森を歩いている時の私はまさにこれです。いや、それ以外の時もこれかな~。

       
          (いつも木や鳥を見ながら歩いている栃の森)

寄らば大樹の陰
ヘソ曲がりというか判官びいきなので、私はどっちかと言えば小樹に寄ってしまいます。だからダメなのかな~?
柿が赤くなれば、医者が青くなる
こういうのをレトリックで対句といいますが、仕事柄こういう表現は大好きです。上の句が「ミカンが黄色くなれば」という地方もあるそうです。柿もミカンもビタミンC豊富ですからね。
センダンは双葉より芳し
日本にもセンダンという樹がありますが、ことわざのセンダンはインドや東南アジアに自生する「栴檀」で、香木のビャクダン(白檀)を意味します。日本に自生するセンダンは全然芳しくないです。

       
       (こっちのセンダンは芳しくないですが、実は薬になります)

双葉の頃はそこそこ芳しかったのに、成長するにつれて芳しくなくなるというパターンがけっこう多いんじゃないでしょうか。自慢じゃないですが、私もそのクチです。
枯れ木も山のにぎわい
学生のパーティーに参加することになった老教授に、ある学生が「枯れ木も山のにぎわいですね」と言ったとか。「枯れ木=つまらない物」という認識がなくて、単に老木と思い込んでいたのでしょう。
似たような話で、「情けは人のためならず」を「情けをかけると甘えるので、かえってその人のためにならない」と解釈している若者が多いようです。オジサンたちは、「情けは巡り巡って自分のためになる」という解釈が正しいのに…、と嘆きます。
でも、私はことわざの意味は時代によって変るもので、前者の意味で解釈する人が多くなったら、そういうことわざとして通用するものだと思います。意味は多数決で決まるものですから…。
その好例が「犬も歩けば棒に当たる」。広辞苑によると、「物事を行う者は、時に禍いに遭う。また、やってみると思わぬ幸いにあうことのたとえ。前者が本来の意味と思われるが、後の解釈が広く行われる」。昔は悪い意味で使われていたのが、現在はいい意味で解釈されているのです。皆さんはどっちの意味で理解していました?
最後に、木と鳥の両方を題材にしたことわざに面白いのがありました。これを見つけたとき、「私のこと?」と思いました。
阿呆の鳥好き、貧乏の木好き
愚かな人が鳥を愛玩して飼ったり、貧乏人が木にうつつを抜かしたりするように、趣味はその人の境遇によるものだという意味だそうです。いや~、当たってるワ。
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1300年前の大工仕事

2007年11月16日 | 木造建築
奈良に平城京が造られたのが710年。遷都1300年に当たる2010年には、さまざまな記念事業が行われるようです。それに合わせて、平城宮の大極殿が復原されつつあります。
先日、その一般公開があったので、奈良まで行ってきました。間口44m、奥行き19.5m、高さ27mの巨大な木造建築。その大きさにも驚きましたが、昔の技術を生かして造られていることに感動しました。

       
         (建築用の覆屋の階段を昇ると、屋根まで見られます)

こういう建物にも現代の法律が適用されるらしく、耐震構造にするために基礎はコンクリートになっています。また、所々にボルトが使ってありますし、建築用の足場も金属製ですが、木材の加工や組み方などには当時の技法を生かしているそうです。

       
               (柱は直径71cmのヒノキ)

例えば、現在は木材を台鉋で削って仕上げますが、1300年前はまだ台鉋がなく、槍鉋で削っていました。上の柱のように、表面に残る凹凸は槍鉋の跡です。
建築現場の横に作業所があり、そこで実際に大工さんが槍鉋を使って木を削っていました。槍鉋のことは本で読んで知っていましたが、実物や作業風景を見るのは初めて。木のいい匂いも漂っています。

       
            (槍鉋の鉋クズは螺旋状になります)

台鉋のように端から端まで刃を滑らせれば仕上がりも早いでしょうが、槍鉋は10cmか20cmずつしか削れません。ほとんどの木材を、こんな昔ながらのまどろっこしい方法で削っているのです。また、瓦も昔ながらの方法で作っていました。時間と手間をかけて、つまりお金がかかってでも、昔ながらの技法を大切にして1300年前の建築物を復原しようとする文化庁の姿勢には拍手を贈りたいですね。
京都の歴史も古いですが、奈良の歴史もなかなか見ごたえがありました。
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選挙と木

2007年11月14日 | 木の材
大阪市はただいま市長選挙の真っ最中。今回は現職、共産党推薦候補に加え、元大学教授や元アナウンサーも立候補して大混戦のようです。私は宇治市民なので関係ないですが、仕事で大阪の街を歩きながら高みの見物をしています。
ツリーウォッチャー、というかウッドウォッチャーとして気になるのは選挙ポスターの掲示板。わが宇治市もそうですが、普通はラワンのベニヤ板が使われています。大阪市も最近までそうでしたが、現在は耐水性の再生紙ボードに切り替っています。

       
            (大阪市の掲示板は耐水性再生紙ボード)

掲示板の材料はベニヤ板、再生紙ボード、ペットボトル再生ボード、アルミの4種類。しかし、最近は国産の木材を使う自治体もあるようで、その先駆けが熊本県水俣市。2002年の市長選挙では、スギの合板のポスター掲示板を採用したそうです。スギは日本固有の樹木なので、スギと言えば国産材です。
さらに、スギの産地として知られる秋田県では、2005年の知事選挙で県産品の利用という趣旨から、秋田スギの間伐材を使った合板でポスター掲示板を製作したそうです。
ただし、これは秋田市のみ。どんな掲示板にするかは各市町村の選挙管理委員会が決めるので、同じ秋田県でも横手市や鹿角市はアルミの掲示板だったとか。
アルミの掲示板は繰り返し使えますが、他の素材はベニヤの一部が学校などに提供される以外、ほとんど廃棄処分されるようです。何とか、国産材の掲示板を繰り返し使えるようにできないものでしょうか。大阪市の場合、選挙で使う掲示板は約2,700枚あるそうですから、廃棄される量も半端じゃないです。
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和洋折衷の木造建築

2007年11月12日 | 木造建築
京都市の中心部に「京都市学校歴史博物館」があります。明治2年に日本初の小学校(学区制)として開校され、平成4年に統合で閉鎖された校舎を博物館にしたものです。その玄関におもしろい造りの建物がありました。

        

木造なのに屋根がアーチ型になっています。また、木の柱なのに西欧の石柱のようなシルエット。「古代ギリシアの神殿の柱は真ん中が太く、上の方が細いエンタシス様式」と学校で習いましたが、この木の柱もエンタシス様式です。
しかも、柱の上に円形の台座が乗せてあります。これは明らかに、西洋の石造りの柱を木で再現したものでしょう。明治2年といえば西洋文明を取り入れていろんな和洋折衷が生まれた頃ですが、こんな所にもそれが残っています。

        

木材はおそらくヒノキ。「木で石の柱を」という着想がおもしろいですが、それを実際に造った大工さんの技術もスゴイ。
この玄関には、二宮金次郎の石像も置いてありました。私の小学校にも、確か陶器の二宮金次郎があったと記憶しています。若い人はご存知ないでしょうね~。
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紅葉する国旗

2007年11月09日 | 樹木
今年は紅葉が少し遅れているようなので、本格的な到来の前に、変化球で紅葉の話を…。
国旗に紅葉が描かれている国はどこでしょう? 「カナダ」と答えた人は地理に詳しい人です。実際には紅葉を描いているわけではないでしょうが、真っ赤なカエデが描かれています。

       

カナダの国旗の葉はサトウカエデ。日本に自生しないので、本物の樹をご覧になったことはないでしょう。下の写真は宇治市植物公園のサトウカエデ。こうやって見ると、カナダの国旗はかなりリアルに描かれています。

       

私はカナダに行ったことはありませんが、以前お土産でメイプルシロップをもらったことがあります。そのシロップはこのサトウカエデの樹液から作ります。甘いので「砂糖カエデ」。

          
  (明治屋で見つけたメイプルシロップ。Made in Canada と書いてあります)

ちなみに、英語には日本で言う「月見」に相当する言葉(Moon Watching)はないものの、「紅葉狩り」に相当するLeaf Watchingという言葉はあるそうです。
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