樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

意外な鳥の死因

2020年05月29日 | 野鳥
20年ほど前、帯広畜産大学が鳥の死因を調査しました。対象は、北海道東部で拾得された死体や弱って保護された鳥60種150羽。
最も多い死因は衝突死で70羽(46.6%)。以下、交通事故死35羽(23.3%)、衰弱死あるいは餓死11羽(7.3%)、その他の事故死9羽(6.0%)、ネコによる捕殺7羽(4.7%)、天敵による捕殺5羽(3.3%)、不明13羽(8.6%)でした。種類別では、アオジ14羽、オオハクチョウ、シメ各9羽、ハクセキレイ6羽、トビ、オオタカ、ハイタカ、ハシブトガラ、シジュウカラ、スズメ各5羽とのこと。
衝突死が多いことに驚きますが、アメリカの鳥類研究で最も有名なコーネル大学も昨年、米国内で高層ビルにぶつかって死ぬ野鳥が年間6億羽に上るという調査結果を発表しています。特に春と秋の渡りの時期は、カナダと中南米の間を移動する何十億羽もの鳥が米中部を通過するので、高層ビル群の人工的な照明によって方向感覚を失い、壁面や窓ガラスに衝突してケガをしたり死んだりするようです。
コーネル大学は渡りのコースにある危険な都市のランキングとしてシカゴ、ヒューストン、ダラスを上げています。また、ニューヨークの野鳥保護団体は渡りの季節は照明を消すよう高層ビルのオーナーに呼び掛けているとのこと。
数年前、宇治平等院にあるミュージアムの全面ガラスの壁面に数十羽のヒレンジャクが衝突して死んだという出来事がありました。ガラス窓は鳥たちにとって鬼門のようです。



上の写真のように、わが家の2階のガラス窓には小鳥が忌避するタカのシールを貼っていますが、効果はあるのかな?
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バードウォッチャーの高齢化

2020年05月21日 | 野鳥
パナソニックが補聴器の販売促進のために「聴き鳥テスト」という動画を作成し、You Tubeにアップしています。まず、みなさん自身でテストしてみてください。



最後のヤブサメは日本で最も高い周波数で鳴く鳥で、私は15年以上前から聞こえません。仲間内では、「ヤブサメの声が聞こえなくなったら年寄り扱いしてもいい」という冗談ルールがあります。
また、近年の鳥類調査ではヤブサメが減少していますが、それは個体数が減ったからではなく、高齢化した調査員の聴力低下のためという、笑えない笑い話もあります。
同様のことは海外にもあって、カナダの「オンタリオ繁殖鳥類地図」の調査では、50歳以上のボランティア調査員が43種類中13種類の鳴き声を検知できなかったそうです。しかも、その13種の声は高音域とは限らず、数種類はむしろ低音域に属していました。
そして、数千の調査データと調査員の年齢情報を使ってデータの正確性を分析したところ、50歳以上の調査員が受け持つ地域では25%以上の野鳥が検知されていないという結果でした。
また、北米で最も大規模に行われる繁殖鳥類調査について同様の分析をすると、調査員の加齢の影響は聴力の衰えだけではないことが判明したそうです。
この調査は、ある特定の窓から見える鳥の数を3分間記録するという方法で行われるのですが、多くの鳥が一斉に移動する場合、情報量が多すぎて高齢者には負担になっているというのです。研究者は「年をとると、聴力だけでなく視力も衰え、反応が鈍くなるからだろう」と語っています。
私は難聴気味で、ヤブサメの高い声だけでなく他の鳥の声も聴きづらいので、鳥類調査では植生調査だけ担当しています。
うちの支部は平均年齢63歳という超高齢社会。そのうち「調査は50歳以下に限定」というルールを作らないといけないですが、そうなると調査員が確保できません。パナソニックの補聴器を支給してもらおうかな~。
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バードウォッチングの世界大会

2020年05月14日 | 野鳥
先週末の5月9日、アメリカのニュージャージー州で「バードウォッチング世界大会(World Series of Birding)」が開催されました(英語のBirdwatchingが米語ではBirdingになります)。
日本野鳥の会は全国の支部が探鳥会を中止している一方、コロナウイルスの感染者と死亡者が最も多い国でこういうイベントを実施することに疑問を感じますし、自国と多少の周辺国だけが参加するイベントをWorld Seriesと豪語する感覚は、自国内のプロ野球の頂上決戦をWorld Seriesと呼ぶ傲慢さと同じく気に入りませんが、バードウォッチャーとしては興味深いので注目していました。
3人1組で参加し、1日24時間でどれだけの種類の鳥を見聞できるかを競う催しで、その結果に応じてさまざまな賞が贈られます。ただし、記録は自己申告なので賞金は出ません。
公式サイトによると「それはゲームであり、マラソンであり、挑戦であり、とても楽しいことです」。主催はニュージャージー州のオーデュボン協会。1984年5月19日の第1回以来、毎年5月に行われています。以下は2011年の模様。



目的は以下の3つ。
①渡り鳥にとってニュージャージー州が重要であることをアピールすること。
②バーダーのスキルを正当な目的のために使う機会を与えること。
③野鳥保護のために寄付金を集めること。
これまでの実績では、合計900万ドル(約10億円)を集めています。
参加チームは事前に下見して、朝は鳥の声に集中し、昼間は湿地や海岸で数を稼ぎ、夜は夜行性の鳥を探すようにルートを設定するようです。チームからの報告はリアルタイムでネット上に公表しています。



上は当日の途中経過ですが、この時点で303種が記録されています。たくさん記録された種類が大きい文字で表示されるようになっていて、カナダガン、ハゴロモガラス、アオカケスなどが目立ちます。
最終的には328種を記録し、約21万ドル以上が集まったようです。30年ほど前は、日本野鳥の会でも「バードソン(Bird+Marathonの造語)」という寄付集めのイベントをやっていて、私もお手伝いしていました。仕組みはほぼ同じです。



World Series of Birdingの公式サイトはこちら
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世界の鳥のことわざ

2020年05月07日 | 野鳥
「雀百まで踊り忘れず」「鶴の一声」など日本には鳥のことわざがたくさんありますが、海外にも興味深いことわざや格言があるのでご紹介します。
まず、中国編。
越鳥南枝に巣くう
「越鳥」はベトナムの鳥。「南方から渡ってきた鳥は、日当たりのよい木の南側に巣を造る」という意味で、故郷は忘れがたいことの例えだそうです。
この後、「胡馬北風に嘶く(北方の胡の国から来た馬は北風が吹くと故郷を思い出していななく)」と続きます。
啐啄同時(そったくどうじ)
「啐」は卵の中でヒナが鳴くこと、「啄」は親鳥が卵の殻をつつくこと。その両方が一致してヒナが生まれることから、「両者が相応じる得難い好機」を意味します。禅宗で、師匠と弟子の呼吸が一致するときに悟りが得られるという意味で生まれた言葉だそうです。

次に英語編。
Fine feathers make fine birds
「美しい羽は美しい鳥をつくる」、つまり「立派な服装をすれば立派に人に見える」。日本の「馬子にも衣装」に似ていますが、普段は着ないような高級な服を着ている人を皮肉って言うときに使うそうです。
One for the mouse, one for the crow, one to rot, one to grow
「一粒はネズミに、一粒はカラスに、一粒は腐って、一粒が育つ」。種まきするときにとなえる呪文で、「成長するのは四粒に一粒のつもりで多めにまけ」という教え。仏教思想に近く、人間中心のキリスト教文化圏には意外なことわざです。
Kill two birds with one stone
日本の「一石二鳥」と同じ。バードウォッチャーとしては最も使いたくないことわざです。このほか、The early bird catches the worm(早起きした鳥は虫を捕まえる)は「早起きは三文の得」、It's an ill bird that fouls its own nest(自分の巣を汚す鳥は悪い鳥)は「立つ鳥跡を汚さず」など、日本と共通のものもいくつかあります。

そして、フランス編。
Le geai paré des plumes du paon
「クジャクの羽をつけたカケス」、つまり「借り物を自分の物のように自慢する人」という意味。英語編のFine feathers make fine birdsと似ていますが、クジャクとカケスを対比するところがファッションの国らしい?
Une hirondelle ne fait pas le printemps
「一羽のツバメの飛来で春にはならない」は、「物事の一部だけを見て全てを知った気になってはいけない」という戒め。スペインにも同じことわざがありますが、季節が夏になっています。

このほかにもたくさんあって、それぞれの国の国民性が垣間見えたり、「鳥と人間の関係は万国共通だな」と思えたり、なかなか面白いです。


コメント (6)
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