樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の名前と差別

2021年06月24日 | 野鳥
アメリカのプロフットボールリーグに「ワシントン・レッドスキンズ(赤い肌)」というチームがありましたが、以前から先住民族に対する差別であるとして名称変更の圧力があり、昨年ついに長年使い慣れたチーム名を放棄。昨シーズンは「ワシントン・フットボールチーム」として闘いました。大リーグの「クリーブランド・インディアンス」も、昨年末にチーム名の変更を決定しています。
こうした動きは鳥の名前にも及んでいます。例えば、コオリガモの米国名はOldsquawでしたが、このsquaw(スコウ)は先住民族の女性に対する蔑称で、人種差別とみなされることから、2000年にアメリカ鳥類学会がLong-tailed duckという英国名に変更しました。下の動画は私が撮影したものではなく、冬の北海道で撮影されたコオリガモ。



さらに同会は昨年、シロハラツメナガホオジロの米国名マッカウンロングスパーをシックビルドロングスパーに変更しました。理由は、この鳥を採集して命名したマッカウンが南軍の陸軍総司令官だったから。奴隷制度を維持しようとした南軍のトップの名前は使えないというわけです。
鳥に限らず生物の名前に人の名前を付けることは多いですが、種名として人名を残すことは、銅像を飾るのと同様その人を称えることになるので、それにふさわしくない人物の名前は避けるべきだという判断です。
昨年5月のBlack Lives Matterや、当ブログでもご紹介したBlack Birders Week以降、こうした動きは活発になったようで、昨年6月にBird Names For Birds(鳥の名前は鳥のために)という団体(下がそのマーク)が結成され、人名が付いた鳥150種をリストアップしてそれらを改称するようアメリカ鳥類学会に求めています。その一つが上記のマッカウンロングスパーでした。



日本にもアイヌ語に由来する鳥の名前や朝鮮半島を意味する「高麗」という名の鳥が4~5種類いますが、それらに差別の意味はないのでしょうか? 日本産鳥類に問題はなくても、世界の鳥約1万種にはすべて和名が付いていますが、それらに差別的な意味を含むものはないのでしょうか?
人種差別という観点ではないようですが、スウェーデン鳥類学会は1万種の中から不快と受け取られる10種の名前を削除しました。私の知る限り、ハゲワシなど不快と受け取られそうな海外の鳥の和名がいくつかあります。
クレヨンや色鉛筆から「肌色」という色名が消える時代、性的指向や外的特徴などによる差別が非難される時代、日本鳥学会も日本産鳥類や世界の鳥の名前をチェックする必要があるのではないでしょうか?
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『BIRDER』からの執筆依頼

2021年06月17日 | 野鳥
当ブログで鳥をテーマにした小説を何度か取り上げたように、野鳥の会の会員誌でも「BIRD NOVELS」という連載コラムで20冊以上、またノンフィクションも「晴観雨読」という書評コーナーで何冊か紹介していました。その記事が日本唯一の商業バードウォッチング雑誌『BIRDER』編集部の目に止まり、「コロナ渦の巣ごもり向け特集として鳥の本を特集するので執筆してくれないか」という依頼を受けました。
そして2カ月後、先日発売された7月号の「鳥好きが必ずツボにはまる良書50冊」という特集に記事が掲載されました。私以外に、図書館司書、書店員、小説家、絵本関係者などがそれぞれの視点から鳥の本を取り上げて紹介しておられます。





鳥や樹が好きで、しかも文章を書くのが大好きでこんなブログを15年も続けている者にとっては願ってもないオファーでした。もちろん原稿料も支払われます。会員誌用にネタをたくさんストックしていたこともあって、当初は小説部門とノンフィクション部門2ページ分の依頼でしたが、編集者とやりとりするうちに番外編としてもう1ページ書かせていただくことになりました。
結局取り上げたのは、小説5、ミステリー2、ノンフィクション5の計12作品。そのうち6作品は当ブログでも紹介しました。小説では『鳥と砂漠と湖と』『総理の夫』『海峡』『鳥たちの河口』、ノンフィクションでは『ザ・ビッグイヤー』『やぶにらみ鳥たちの博物誌』。逆に、ブログで取り上げながら『BIRDER』には書かなかった作品もいくつかあります。



このブログや会員誌では文学作品だけでなく、鳥の映画や鳥の絵画、鳥のお菓子についてもいろいろ書いているので、次はそっち方面の執筆依頼が来ないかな~(笑)。
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わが家でイソヒヨドリが繁殖

2021年06月10日 | 野鳥
4月中旬、わが家の周辺でイソヒヨドリの雌がさえずっていました。この鳥は雌もさえずるので不思議ではなく、その後、雄の姿も見かけるようになったので、「近くで繁殖しているのかな?」と思っていました。
4月下旬、朝2階の部屋の窓を開けると、目の前の電線に雌や雄が止まっていることが何度かありました。ある時、雌がフワッと窓の上に飛び込んで来たので、事情が呑み込めました。
4~5年前、シャッターの戸袋にスズメが営巣したことがあって、そのままにしていたのですが、その古巣をイソヒヨドリが利用しているようです。そして、毎朝必ず見かけるようになり、やがて雌や雄が虫をくわえて電線に止まるようになりました。雛の声が聞こえないのが不思議でしたが、それは私の耳が高い音をキャッチできないからのようです。
そのうちに親鳥が警戒音を出すようになり、窓を開けると「ケケケケ…」、電線の下の道を掃き掃除すると「ケケケケ…」、ガレージからバイクを出しても「ケケケケ…」。窓を開けて「今朝はいないな」と思っても、監視しているらしいお向かいの屋根から飛んで来て「ケケケケ…」。
窓から顔を出した私に飛びかかってくることも何度かありました。特に激しく威嚇するのは雌親でした。しばらく部屋に三脚をセットして撮った映像を編集したのが以下。



6月5日以降は警戒も威嚇もなくなりました。その日、私は外出したので雛が巣立ったのかどうか確認していません。同じ町内の会員にも観察をお願いしていたところ、「雛の声が聞こえた」「猫がいる時に警戒音を出して飛びまわっていた」と教えていただきました。無事に巣立ったかもしれないし、巣から落ちたところを猫に捕食されたのかもしれません。
その後も雄親が近くをウロウロしています。巣立ち雛が近くの屋根にいるのか? 2回目の繁殖を試みているのか? いろいろ推測しています。
これまでわが家では、スズメ、メジロ、シジュカラ、ヒヨドリ、キジバトが繁殖しましたが、新たにイソヒヨドリが加わって6種類となりました。
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夏鳥の森

2021年06月03日 | 野鳥
週末、栃の森に行ってきました。深夜少し雨が降っていましたが、朝5時には快晴で、気持ちよく出発できました。
最初の谷に入ったところで、ミソサザイに遭遇。鳴き方が変だなと思いながら撮影していると、下の映像の左下の小川に幼鳥がチョロチョロしていました。「ヘンなオッサンがいるから注意しなさいよ」という警戒の声だったようです。



森の中では、オオルリ、キビタキ、アカショウビンなど夏鳥の声があちこちから聞こえてきます。ツツドリやジュウイチなどカッコウ類の声も…。ということは、托卵相手であるセンダイムシクイやオオルリなどがたくさん生息しているということです。
下の動画はツツドリとジュウイチの声を録音したもので、姿は映っていません。



同行の仲間はホトトギスの声も聞いたらしいので、その托卵相手であるウグイスも多いということですが、営巣場所である笹薮がシカの食害で壊滅状態なので、この森ではウグイスは珍鳥です。ウグイスと同じ仲間の外来種ソウシチョウがここにも侵入しているので、そちらに托卵しているのかもしれません。
天気に恵まれ、クマタカにも遭遇し、満足のうちに調査を終えて林道に戻ると、オオルリが目立つ場所でさえずっています。順光で姿も美しく、飛び去った後も隣の木に後ろ向きに止まってくれたので、オオルリらしい色と声が撮れました。


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