樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

シギは図太い

2014年09月29日 | 野鳥
時間があって天気が良ければ、近くの干拓田にシギ・チドリ観察に出かけます。
少し離れた休耕田にツルシギがいたのでカメラをセットして撮り始めたら、一緒にいたケリやコサギが騒ぎ出して飛び立ちました。ハヤブサです。獲物を狙って飛んできたようです。
鳥がいなくなったので片づけようとしたら、田んぼの隅にツルシギだけが残っています。そして、何事もなかったように再び採餌を始めました。



ケリは人間さえ威嚇しますがハヤブサには弱いようで、遠くに飛び去りました。コサギもどこかへ逃げました。一方、ツルシギは田んぼの隅に移動して身を隠しただけでした。
その2日後、干拓田の中を流れる小川でアオアシシギ6羽が眠っていて、構図的に美しいので写真を撮っていたら、急に騒ぎ始めて近くにいたコガモと一緒に飛び去りました。今度はチョウゲンボウです。
小さなハヤブサがアオアシシギやコガモを襲うとは思えませんが、緊急避難したのです。



しかし、1分ほど後には、アオアシシギは6羽とも元の場所にもどって、思い思いに活動し始めました。コガモの群れは飛び去ったままです。



猛禽の出現で他の鳥は逃げ去ったのに、シギだけは元の場所に留まるというシーンを連続して目撃しました。シギは図太いようです。
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樹を愛した歌人

2014年09月25日 | 木と作家
白鳥は哀しからずや海の青 空の青にも染まず漂う
中学で習ったこの歌はイメージが鮮烈で、今でも覚えています。詠んだのは若山牧水。大正時代に活躍した歌人です。
この歌にもあるように、牧水は鳥をよく採り上げました。一方、樹木にも愛情を注いだようで、『かなしき樹木』という詩集や『樹木とその葉』というエッセイ集を出版しています。
やはらけき欅(けやき)のわか葉さざなみなし 流れて窓にそよぎたるかも
軒端(のきば)なる欅の並木さやさやに 細葉そよぎて月更けにけり
見上ぐれば窓いつぱいの欅の木 椎の木の蔭の花柘榴花(はなざくろばな)

ケヤキが頻出するのは、特に好きだったからでしょうか。


ケヤキ並木

その他にも樹木を歌った作品があります。
いつとなく黒みて見ゆる楢の葉に 今朝ふく風のあはれなるかも
山に入り雪の中なる朴(ほお)の木に 落葉松(からまつ)に何とものをいふべき

樹の花を詠む歌人は多いですが、ここまで樹種を明示して樹そのもの詠む歌人は少ないでしょう。牧水が相当なツリーウォッチャーだったことがうかがえます。
以前、無残に伐木されたミズナラを見て怒りの歌を詠んだことを当ブログでご紹介しましたが、その後も伐木に怒りを爆発させています。
沼津市に移り住んだ頃、地元の景勝地・千本松原の一部伐採計画が浮上。それを知った牧水は反対運動の先頭に立ち、新聞に意見を投稿したり、苦手な演説も引き受けたりします。結果、伐採計画は中止。その功績を称えて、千本浜公園には若山牧水の歌碑が建立されています。
ただ樹を観察したり、歌に詠んだりするだけでなく、行動する人だったんですね。
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鳥のギター

2014年09月22日 | 野鳥
エレキギターには「ギブソン」と「フェンダー」の2大ブランドがあって、ほとんどのプロがどちらかを使っています。
最近その2大ブランドの地位を脅かすように、「ポール・リード・スミス」という新ブランドが台頭しています。略して「PRS」。私の大好きなカルロス・サンタナも、デビュー当時はギブソンでしたが、現在はPRSを弾いています。
バードウォッチャーにとって嬉しいことに、このギターにはたくさんの鳥が描かれています。フレットの位置を示す10個のポジションマークに、それぞれ異なる鳥の象嵌(ぞうがん)が施されているのです。
低い方から順に、ハヤブサ(3F)、ハイイロチュウヒ(5 F)、ノドアカハチドリ(7 F)、アジサシ(9 F)、クーパーハイタカ(12 F)、トビ(15 F)、降り立つスズメ(17 F)、アシナガウミツバメ(19 F)、降り立つタカ(21 F)、枝に止まるアメリカオオコノハズク(24 F)。
スペシャルモデルにはハクトウワシが描かれることもあるようです。


上からアジサシ、クーパーハイタカ、トビ、スズメ、アシナガウミツバメ、タカ

「なぜ、ギターのフレットに鳥が?」と思って調べたところ、ポール・リード・スミスのお母さんがバードウォッチャーで、そのガイドブックに掲載されていた鳥をモチーフにしたのが始まりだそうです。
ポジションマークだけではありません。ボディに鳥が描かれたモデルもあります。下のギターのボディには、バードカービング界の巨匠フロイド・ショルツ氏が彫刻した鳥が飛んでいます。



値段は235万円。しかし、説明文には「15フレットと同じトビの彫刻」と書いてありますが、私にはトビには見えません。尾羽が2つに分かれたトビは、アメリカにもいないでしょう。
さらに、ボディ全面に鳥を散りばめたスペシャルモデルもあります。



こちらは151万円。これも同じくトビではないですね。翻訳か何かの間違いで「15フレットはトビ」となったのでしょうね。それでも、バードウォッチャーには嬉しいギターです。
私はエレキもアコースティックも手放しましたが、ギターバードさん、1本いかがですか?
なお、写真は大阪の三木楽器で撮らせていただきました。さすが関西一の老舗楽器店、こんなレアなモデルをストックしているんですね。
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シェイクスピアはバードウォッチャー?

2014年09月18日 | 野鳥
私は読んだことがないので知りませんが、『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』などシェイクスピアの作品には頻繁に鳥が登場するそうです。
『シェイクスピアの鳥』『シェイクスピアの鳥類学』という研究書もあって、それらを読むと、想像以上にたくさんの種類が、想像以上に頻繁に登場します。
例えば、『ヴェニスの商人』の4幕2場には以下のくだりがあります。

きっとカラスの歌だって、ヒバリのと美しさは変わらないんだわ。ナイチンゲールだって、昼間、ガチョウがガァガァわめいてるときに歌えば、ミソサザイくらいにしか思われないんじゃないかしら。

特に多いのは、ここにも登場するヒバリ。『ロミオとジュリエット』で二人が夜通しのデートを楽しんだ早朝、ヒバリがさえずり始めるシーン(3幕5場)でジュリエットが語ります。

ヒバリですわ、あんなに調子はずれな鳴き方で、騒々しく、かん高く鳴きわめくんですもの。ヒバリの声は気持ちよい節回しだといいますが、このヒバリは違いますわ、私たちの逢瀬の邪魔をするんですもの。

これらをはじめ、ヒバリは15編の戯曲に登場するそうです。



ミソサザイは『マクベス』にも登場します。

主人は私どもを愛してはいないのです。夫婦の愛情がないのです。小鳥の中でも一番小さなあのミソサザイでさえ、巣にいる雛を守るためには、フクロウを相手に死にものぐるいで戦うではありませんか。

ミソサザイが最小の鳥であることをシェイクスピアは知っていたわけです。



別の作品では、カッコウの托卵の話も出てきます。ワシやタカなど猛禽類も含めて、全部で約50種類が登場するとのこと。この大作家はバードウォッチャーだったのでしょうか? 
否、いくら本場のイギリスとはいえ、バードウォッチングという趣味が生まれるのは19世紀末。1616年に亡くなったシェイクスピアにその経験はないはずです。
もともとナチュラリストで、鳥に限らず植物の造詣も深く、博物学者でもあったようです。それに加えて、趣味が鷹狩りであったことから、獲物である鳥の知識を蓄えたのではないかと推測されています。
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街路樹の樹種は誰が決めたのか

2014年09月15日 | 街路樹・庭木
日本の街路樹の現在のベスト3はイチョウ、サクラ、ケヤキ。以前は、シダレヤナギやプラタナスもこの中に入っていました。
数ある樹木の中から、誰が、なぜ、これらの樹種を選定したのでしょうか。
明治の中頃、街路樹の樹種について、2つの専門家グループが議論を戦わせたそうです。一方は東京市(当時)の技師、長岡安平。彼は「シダレヤナギは枝が垂れて通行の邪魔になる上に、葉が細くて緑陰に乏しい」「サクラは花が1週間で散るし虫がつく」などの理由で反対し、トチノキ、モミジ、センダン、アカメガシワ、トネリコ、カシワ、ホオノキ、クヌギ、ナラなど在来種を中心に選ぶべきだと主張しました。


ホオノキ(在来種のモクレン科)

もう一方の専門家は、林業試験所長の白沢保美と新宿御苑長の福羽逸人。こちらは、プラタナス、ユリノキ、ポプラ、イチョウ、トウカエデ、アオギリ、ボダイジュなど外来種を中心に勧めました。建物との調和など街の景観を重視して選定したようです。
議論の結果、外来種中心派の意見が採用され、イチョウ、プラタナス、ユリノキ、アオギリ、トウカエデ、エンジュ、トチノキ、ミズキ、トネリコ、アカメガシワの10種が選定されました。
そして、育成テストで生育が悪かったミズキ、トネリコ、アカメガシワが除外され、日本の街路樹の主な樹種が決まったそうです。


ユリノキ(北米原産のモクレン科)

私としては、在来種派の長岡さんを支持します。ホオノキやカシワ、クヌギ、コナラの街路樹があったら嬉しいですね。
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鳥屋と魚屋

2014年09月11日 | 野鳥
川や海など水辺に鳥を見に行くと、時々釣り人に遭遇します。私たち「鳥屋」は、こういう「魚屋」に警戒心を抱いています。
魚屋さんが水辺に入ると鳥が逃げるという単純な理由のほかに、放置された釣り糸や釣り針が水鳥にからんでケガをしたり命を落としたりするからです。
私自身は、生き物を見るだけの「鳥屋」と、己の楽しみのために殺生する「魚屋」とは相容れない存在だと思っています。
中には、魚屋から鳥屋に転身した人もいますし、鳥屋兼魚屋という人もいます。最も有名な鳥屋兼魚屋は、イギリスのエドワード・グレイ卿。
第1次世界大戦当時の外務大臣であると同時に釣り人で、その趣味が高じて『フライ・フィッシング』という本を著しています。その一方、鳥類学者でもあり、オックスフォード大学に「エドワード・グレイ野外鳥類研究所」を開設しています。


エドワード・グレイ卿(画像はパブリック・ドメイン)

その著書『フライ・フィッシング』の日本版の前書きで、小説屋兼魚屋の開高健が次のようなエピソードを紹介しています。

六月の某日、アメリカ大統領を引退したセオドァ・ルーズヴェルトはアフリカ旅行のあとでイギリスにやってきて、外務大臣のグレイ卿とひそかに駅で落ち合い、約二十時間、二人でぶらぶらとイッチェン川のほとりを散歩したり、休憩したりした。
二人は四十種ほどの野鳥を眺め、二十種ほどの声を聞いてたのしんだ。グレイ卿はルーズヴェルトが知らない鳥の声をたずねるといちいち教えてやったけれど、ルーズヴェルトは一度聞いたら二度と過つことがなく、鳥それぞれの声にあわせて詩を引用してみせたが、その知識の博大さと感性の鋭さに卿はすっかり感服した。
しかし、ルーズヴェルトはルーズヴェルトでグレイ卿にある自身とおなじ稟質(ひんしつ)にいたく感銘するところがあった。


以前ご紹介したように、アメリカの第26代大統領セオドア・ルーズベルトは熱心なバードウォッチャーで、アマチュア鳥類学者として本も出版しています。その影響を受けた従弟のフランクリン・ルーズベルト(第32代大統領)も熱心なバードウォッチャーでした。
それはともかく、私には矛盾する趣味としか思えませんが、エドワード・グレイ卿のような「鳥屋兼魚屋」という人はけっこう多いんでしょうね。
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雷電木

2014年09月08日 | 木と防災
「地震、雷、火事、親父」という言葉から察すると、昔の人は雷をかなり恐れていたようです。避雷針によって雷の被害が減った一方、温暖化による気象災害が増えた現在は、「地震、津波、台風、豪雨、竜巻、雷、火事、親父」くらいの順ではないでしょうか。
昔の人は、その2番目に恐い雷を樹木で避けていました。一つは、「くわばら、くわばら」というおまじない。その由来はこちらで読んでいただくとして、クワの木が雷除けになると信じていたわけです。
もう一つはおまじないではなく、実用的な効果を期待しての樹木。例えば、日光東照宮と上野東照宮には、雷除けとしてキササゲが植えられています。中国原産のこの樹は「雷電木」とも呼ばれ、昔から雷除けの役割を果たしてきました。


キササゲ

この樹は高木になり、しかも水分が多いので、神社など大切な建物の近くに植えておくと、雷がキササゲに誘導され、建物への落雷を避ける。つまり、現在の避雷針の機能を果たすわけです。
実際、東京の新宿御苑には落雷を受けたキササゲがあるそうです。


キササゲの葉

国宝・彦根城の城内にはキササゲが雷除けとして植えらただけでなく、楽々園という藩主の下屋敷にはキササゲの木材を柱に使った「雷の間」があります。柱にしたのは、キササゲを雷除けのシンボルと考えたからでしょう。


楽々園(3年前に行ったときは保存修理の工事中でした)

ちなみに、この楽々園には「地震の間」という離れもあって、免震構造になっているそうです。「地震の間」と「雷の間」を設けたということは、当時は真剣に「地震、雷、火事、親父」を恐れていたということですね。
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鳥のホテル

2014年09月04日 | 野鳥
近くの巨椋(おぐら)干拓田に今年も渡り鳥がやってきました。シベリア方面で子育てを終え、南の越冬地へ向う途中に立ち寄るシギやチドリたち。春と秋の2回日本を通過するので「旅鳥」と呼ばれています。
海辺の干潟や河口に集まる種類が多いですが、内陸の湖沼や農地で羽を休めるシギやチドリもいます。旅する鳥たちにとっては、こうした湿地は疲れを癒すホテルみたいなもの。その「ホテル巨椋」の常連客をご紹介します。



今年はセイタカシギの御一行が目立ちました。7月下旬に7羽のグループが逗留した後、8月下旬には2羽がご到着。これまではせいぜい2~3羽でしたが、今年は述べ10羽くらいが滞在したようです。
動画のセイタカシギは2羽組の1羽。その後、1羽はオオタカに襲われたものの、何とか逃げ切ったようです。ホテル滞在中とはいえ、弱肉強食の世界は厳しいです。
タマシギは旅鳥というよりも、このホテルで子育てします。すでにあちこちの部屋で幼鳥がウロウロしています。
先日、少し離れた場所で、珍しいお客さんを発見。何と、ソリハシシギが一生懸命食事をしているではありませんか。



海辺が好きなシギで、内陸部にはほとんど姿を現しません。私自身、干潟では何度も見ていますが、この干拓田で会うのは初めて。ちょっとビックリしました。
時々こうした常連さん以外の珍客に遭遇することも、干拓田巡りの愉しみの一つです。
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夏に出会ったヒナ

2014年09月01日 | 野鳥
もう9月ですが、この夏、あちこちで鳥のヒナに出逢いました。
まず、7月1日には近くの干拓田でケリの幼鳥に遭遇。しかし、ケリの親鳥は警戒心が強いというか気が強くて、「キ、キ、キ」と鳴きながら威嚇してきます。
かなり距離を置いて観察しましたが、それでも激しく鳴いて飛び回るので、すぐに退散しました。



この一帯は常に農家の人たちが作業をしている広大な農地。時々、トラクターで巣が壊されることもあるようです。人間が阻害要因になるのなら繁殖地としては不適なはずなのに、ケリは昔からこの場所で子育てしています。他に適地がないということでしょうか。
祇園祭が終った7月下旬、ヒナが巣立った頃を見計らって、京都御苑のアオバズクを見に行ってきました。今年は3カ所で11羽のヒナが孵ったそうです。
動画の前半、右にいるのは親鳥、左の黒っぽい2羽がヒナです。



その翌日、アカガシラサギを見に行った大覚寺では、カイツブリのヒナが泳いでいました。撮っていると、親鳥が現れてヒナを追い立てます。親離れを促しているのでしょう。



これらのヒナが無事に成鳥になる確率がどれくらいか分かりませんが、来年、また元気な姿を見せてくれることを期待します。
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