樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

川端康成はバードウォッチャーだった

2023年07月27日 | 野鳥
しばらく前、戦前の日本野鳥の会の名簿をパラパラ眺めていると、川端康成の名前があってびっくりしました。日本人初のノーベル文学賞受賞者はバードウォッチャーだったようです。
その後、野鳥の会の機関誌『野鳥』の戦前版を読んでいた際、1937(昭和12)年8月号に「山中湖畔へ」という川端の一文を発見。6月に開催された1泊2日のバスツアーに川端が参加し、そのレポートを執筆しているのです。当時38歳。すでに『伊豆の踊子』や『雪国』を発表し、売れっ子作家だったはずです。


ノーベル賞を受賞した頃の川端康成(Public Domain)

その寄稿文の冒頭で、「日本の昔の行脚や風流が、今の世では、動植物の生態を見るということへ、移って来ているにちがいない」と書いています。昔のような単なる物見遊山の旅行が、バードウォッチングなど自然観察の旅行に変わりつつあるというのです。そして、次のように書いています。

鳴き囀るということ、空を飛ぶということ、卵と雛ということ、鳥それぞれの形や色ということ、それが遠近に隠現して、微妙な変化も音楽に似て、ほかの見学のように、心が淀んだり、泥(なず)んだりしない。人間の耳目に感じる限りでは、野鳥ほど自然を楽しげに親しんでいるものはないが、そのゆえにか、人は生きものの命のいとしさを何よりも野鳥に見るのである。野鳥趣味の幸いな所以(ゆえん)である。

現地でアカハラやクロツグミ、ホトトギスなどの声を聞き、さらにオオジシギのディスプレイも観察。「ゴルフ場のオオジシギは、そのみごとな飛翔を、存分に味わうことが出来た。雷シギとも呼ばれる所以の羽音も聞けた」と書いています。
当ブログでは8年前に川端康成を取り上げました。その中で、野外での野鳥観察の喜びを「分かりませんねぇ」と言っていたことを紹介しました。その数年後に日本野鳥の会に入会し、1泊2日の探鳥旅行に参加して、「野鳥ほど自然を楽しげに親しんでいるものはない」とか「野鳥趣味の幸いな所以である」と書いているのです。
巨匠にどのような心境の変化があったのか、聞いてみたいところです。
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アオバズク

2023年07月20日 | 野鳥
野鳥の会に車イスを利用される会員がおられて、以前、京都御苑の探鳥会にご案内しました。その際に「7月中旬にアオバズクを見に行きましょう」と約束していたので、確認のために昨日京都御苑へ行ってきました。
以前はアオバズク観察会を開催していましたが、大勢で行くと親鳥や雛にプレッシャーを与えるので現在は実施していません。初めての方は個別に案内するしかなく、ハンディのある方なので今回はそうしました。
今年は2カ所で繁殖しているようですが、私は1カ所しか確認できませんでした。しかも、まだ雛が巣から出ておらず、親鳥が1羽だけ。



例年、祇園祭が終わった頃には数羽の雛が巣立ちしていて、その可愛い姿が見られるのですが、今年は遅れているようです。下は、2014年7月21日に同じ場所で撮ったアオバズクの親子。雛2羽が大きくなって、もうすぐ飛び立ちそうです。



このとき以来なので、私にとっては9年ぶりのアオバズク観察。初めてアオバズクを見られるその会員もきっと感動されるでしょう。
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ChatGPTを使ってみた

2023年07月13日 | 野鳥
最近、メディアで「生成AI」や「ChatGPT」が話題になっています。このツールは今後、私たちの情報環境や生活習慣を大きく変えるでしょう。
ChatGPTがバードウォッチングにどの程度役に立つものかを知りたくて、実際に使ってみました。「京都府でアカショウビンを見たいのですが、いつ、どこに行けば見られますか?」と質問すると、20秒くらいで以下の回答が表示されました。


アカショウビン(pixabay)

アカショウビン(赤青鳥)は、美しい羽毛の色合いで知られる鳥です。京都府では、いくつかの場所でアカショウビンを見ることができます。
一つのおすすめスポットは、京都市左京区にある「京都府立鳥類保護センター」です。このセンターは、野生の鳥類の保護・繁殖・研究を行っており、アカショウビンも飼育されています。センター内の展示施設でアカショウビンを見ることができますが、事前に営業日や開館時間を確認して訪れることをおすすめします。
また、京都府内の自然公園や山岳地帯でもアカショウビンを観察することができるかもしれません。特に、京都府北部の山間部や丹後地域など、自然が豊かな地域にアカショウビンの生息地があります。山岳地帯では、ハイキングやトレッキングの途中でアカショウビンに出会うことがありますが、注意が必要です。自然公園や山岳地域への訪問時には、ルールやガイドラインに従って行動し、環境を保護するようにしましょう。
アカショウビンは季節によって生息地や行動が変化するため、見られる時期については注意が必要です。一般的に、春から夏にかけてがアカショウビンの活動が活発になる時期です。事前に地元の鳥愛好家や野鳥観察団体に連絡を取り、最新の情報やアドバイスを聞くこともおすすめです。
最後に、アカショウビンは貴重な鳥であり、野生の個体数も限られているため、観察時には鳥の生息地や繁殖地を守るためのマナーやルールを守るようにしましょう。


ChatGPTのトップ画面

内容はともかく、文章のスムーズさに驚きます。私はグーグルの自動翻訳機能を使って海外のウェブサイトを閲覧することが多いですが、こんなにスムーズな文章にお目にかかることはないです。そして、注意事項やマナーについて言及していることにも驚きました。そういう意味では完成度の高いシステムだと思います。
ただ、文中にある「京都府立鳥類保護センター」という施設は京都府にはありません。多分「京都市動物園」のことでしょう。ケガをしたアカショウビンが一時保護されていたことがあるので、それを言っているようです。
他にもいくつか質問したところ、初心者には有用かもしれませんが、ベテランには既知の情報しか表示されませんでした。また、上記のように実際にはない施設名や地名が出て来て、私的には「使い物にならないな~」という感じでした。
質問内容によってはいろいろ有用な情報が表示されると思いますので、みなさんもぜひトライしてみてください。
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映画『ムクドリ』

2023年07月06日 | 野鳥
妻が韓国ドラマを見たいというので、時々ネットフリックスのプリペイドカードを買って映画やドラマを観ています。私は、福島の原発事故を描いた『THE DAYS』(8回シリーズ)を観た後は特に目当ての作品がなく、「鳥」で検索すると『ムクドリ』という映画がヒットしたので観ました。
2021年にアメリカで製作されましたが、日本では劇場未公開。邦題は『ムクドリ』ですが、原題の『THE STARLING』はホシムクドリ。もともとヨーロッパに生息していた鳥ですが、アメリカに渡った移民が望郷の念から移入し、現在では全米に拡大しています。


ホシムクドリ(pixabay)

主人公は幼い娘を亡くした夫婦。自分の不注意が原因と自らを責める夫は自殺をはかり、妻に助けられて今は心理療法の病院で治療中。スーパーで働きながら週一回夫を見舞うという生活を続けている妻は、1年後、人生をリセットするべく娘の思い出の品を処分し、放置された庭を耕して野菜や花を植えます。
ところが、庭の木で繁殖していたホシムクドリに威嚇されて額にケガを負い、以後はヘルメットを被って庭仕事をすることに。
フクロウの置物を置いても効果がないので、餌に毒を混ぜたフィーダーを使うと鳥が死んで、「やり過ぎた。ごめんね」と遺体を庭に埋めます。そして、巣を撤去するべく木に登ったものの、雛の姿を見てハッとします。
鳥にも子供がいて、家族がいることに気づき、そのままにして降りました。その後はケガをしたホシムクドリを獣医に持ち込み、自宅で看護して放鳥します。やがて夫も回復して家に戻り、2人がヘルメットを被って庭仕事を始めるというハッピーエンド。



最初と最後にはホシムクドリの大群が龍のように空を飛ぶ映像が使われていて、この鳥の特徴がよく伝わる映画でした。
このホシムクドリは日本にもいて、京都府でも時々目撃されますが、私はまだお目にかかったことがありません。
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