樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の重さ

2013年01月31日 | 野鳥
今年はキクイタダキの当たり年のようで、私もこれまで長い間ご無沙汰していたのに、この冬はあちこちで遭遇します。
頭頂部に黄色い斑があるので「菊戴き」ですが、英名もGoldcrest(金の冠)。学名の「小さな王」も、頭の黄色を王冠に見立てての命名のようです。



日本で最も小さい鳥と言われていて、図鑑によると体長は10cm。最小=最軽量でしょうから、日本で最も軽い鳥とも言えます。
体重は3g、つまり1円玉3個分。にわかには信じられない軽さです。ちなみに、日本で最も重い鳥はオオハクチョウで、体重8~12kg。
さらに調べると、世界で最も軽い鳥はマメハチドリで2g。最も重い鳥はダチョウで150kg。飛べる鳥で最も重いのはアフリカオオノガンで22kgだそうです。
空気力学の理論上では、飛べる鳥の体重は22.7kgが限界とのこと。このアフリカオオノガンはギリギリなんですね。
私自身は摂生の甲斐あって(?)ようやく70kgを下回りました。主治医に「正月なのによく摂生しましたね」と褒められましたよ。

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マンダリン・ダック

2013年01月28日 | 野鳥
今年も宇治川にオシドリがやってきました。何度か観察に行きましたが、動画で撮るには遠いので、別の場所へ足を伸ばしてきました。
いつ見ても綺麗な鳥です。特に近くで見ると、うっとりするほど美しい。
カモの仲間ですが、他のカモとはあまりにも色形が違うので、私の頭の中では別格になっています。



この鳥の英名はMandarin Duck。「マンダリン」は中国清朝の高級官僚のことらしいです。
その正装が鮮やかなオレンジ色であったことから命名されたとのこと。そう言えば「マンダリン・オレンジ」という果物がありますが、由来は同じでしょう。
また、正式な中国語を「マンダリン」と呼ぶそうで、清朝の高級官僚が話した言葉が標準になっているんですね。
マンダリン・ダックは日本では「鴛鴦夫婦」で有名ですが、この4文字熟語は中国でも台湾でも朝鮮半島でも同じ意味で通じるそうです。以前、この言葉の由来をご紹介しましたが、中国の故事がルーツなので漢字文化圏で広く流布したわけですね。
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巨木受難

2013年01月24日 | 森林保護
昨年12月、続けざまに気になる情報に接しました。一つは、四国各地の神社でご神木が次々に枯れたというニュース。
しかも、根元にはドリルで穴があけられ、除草剤が注入されていたとのこと。何者かが意図的にご神木を枯れさせたわけです。その後、いくつか神社には材木業者が売買を持ちかけてきたそうです。
ある神社は、枯れたヒノキ2本を合計550万円で売却契約を結んだ後、除草剤が検出されたため売買を中止。枯れた原因に不審な点があるとして、契約の無効を求める訴訟を起こしています。
何という罰当たりなことをするんでしょう。


宇治上神社のご神木(ケヤキ)は大丈夫です

もう一つは、オーストラリア国立大学の研究者が「世界各地で巨木が減少している」とアメリカの科学誌『サイエンス』に発表したこと。
特に減少が著しいのは、オーストラリアのマウンテンアッシュ、アメリカのセコイア、タンザニアのバオバブ。例えば、セコイアが林立するヨセミテ国立公園では、1930年代から1990年代の間に巨木の密度が24%低下したそうです。
山火事による大量焼失に加え、山火事がない年でも通常の10倍のスピードで減少し続けているとのこと。その理由として、急激な気候変動による干ばつや気温上昇に加えて、木材や農業用地の確保を目的とした森林伐採が重なっていることを上げています。
理由は異なりますが、日本でも世界でも巨木が姿を消しているというニュースに接して、気持ちが暗くなりました。
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青い鳥

2013年01月21日 | 野鳥
前回の「赤い鳥」に続いて「青い鳥」。
アオゲラ、アオバトなど「アオ」で始まる鳥は日本に8種類いますが、いずれも体色はブルーではなくほとんどがグリーン系です。古語の「青」がブルーからグリーンまでの幅広い色を意味していたからのようです。
体色がブルーの鳥は、オオルリ、コルリ、ルリビタキなど「ルリ」と表現されます。そのルリビタキを求めて、府立植物園へ行ってきました。



青い鳥=幸せのシンボルというアイコンは、メーテルリンクの戯曲『青い鳥』が作ったわけですが、この作品には他の色の鳥も登場します。
チルチルとミチルが“幸せの青い鳥”を求めて最初に訪れた「思い出の国」では、青い色のツグミを見つけたものの、籠に入れると黒く変わったというストーリーになっています。
青いツグミが黒いツグミに変わるということは、バーダーの感覚でいうとノハラツグミがクロツグミに変わるようなことでしょうか。
「未来の国」では、青い鳥を捕まえたものの、国を出ると赤い鳥に変わります。こちらは、ヤマショウビンがアカショウビンに変わるような感じかな?
最後に、自分たちがこれまで飼っていたハトが青い色に変わったのを見て、幸福は身近なところにあることを理解するという結末。
「青い鳥」の教訓をバーダーに当てはめると、珍しい鳥を求めて遠くへ出かけるよりも、身近にいる鳥をじっくり観察しなさい、ということかも知れませんね(笑)。
余談ながら、作者のメーテルリンクはこの作品で1911年のノーベル文学賞を受賞しますが、第2次大戦の責任国であるドイツと日本にはこの戯曲の上演を許可しなかったそうです。
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赤い鳥

2013年01月17日 | 野鳥
前回、干支の名前の樹木をご紹介しましたので、「鳥の名前はどうだろう?」と調べてみたら、日本で見られる種類では虎(トラツグミ)と犬(イヌワシ)、そして猿しか見当たりませんでした。
「猿子」と書いて「マシコ」と呼び、猿の顔の色からベニマシコ、オオマシコ、ギンザンマシコなど赤い鳥の名前に使います。
ベニマシコはこの近辺でも時々見られますが、オオマシコとギンザンマシコにはまだ出会ったことがありません。下の動画は宇治川の河川敷で撮影したベニマシコ。赤いのはオスだけで、メスは地味な褐色です。



ベニマシコとまぎらわしいアカマシコという小鳥もいて、時々日本にやってくるそうですが、私はみたことありません。
顔やお尻が赤いのはニホンザルの特徴で、学名も「赤い猿」という意味だそうです。前回も書きましたが、赤い色を猿の顔に例える昔の人の言語感覚には脱帽します。日常的に猿と出会っていたから、「猿=赤」というアイコンができ上がったんでしょうね。
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干支と樹

2013年01月14日 | 木と鳥・動物
わが家は喪中のため年賀状はやりとりしなかったのですが、今年はやっぱり蛇のモチーフが多かったんでしょうね。
毎年、年賀状に干支をどう表現するか苦労しますが、ふと「樹木には干支がどれくらい反映されているんだろう?」と気になって調べてみました。
順番に、まず鼠から。今の時期に黒い実をたくさんつけるネズミモチという樹があります。身近に植栽されているのは外来種のトウネズミモチ。ネズミの糞に似た実をつけるモチノキという意味です。


「鼠の糞」は小鳥の大好物

ほかにもネズミサシ、ネズコという樹がありますが、これらは5年前の鼠年の正月に採り上げました
牛は私の干支ですが、「牛殺し」という物騒な名前の樹がいくつかあります。そのうちの一つ、ルリミノウシコロシはサワフタギの別名。カマツカもウシコロシと呼ばれますが、どちらもしなやかな強い材質で牛の鼻輪に使ったからでしょう。


「瑠璃実の牛殺し」の実

虎は、トウヒのことを園芸や木材の業界でトラノオと呼ぶようです。細かい針葉で包まれた枝先を尻尾に見立てた命名でしょう。ウサギという名前の樹はありませんが、「卯の花」はウツギの別名。辰は思いつきません。
今年の干支、蛇にはヘビノボラズという樹があります。蛇も登れないほど棘が多いから。
馬では、トチノキ(正確にはセイヨウトチノキ=マロニエ)を英語でHorse Chestnut、直訳して「馬栗」と呼びます。実を馬の餌にしたそうです。また、馬が酔う木と書けばアセビです。
羊は、牽強付会になりますが、中国名で「羊躑躅」というツツジがあります。羊が食べると死ぬほどの毒を持っているから。猿は、サルスベリ、サルナシ、サルトリイバラとけっこうあります。


「猿滑り」の花

鶏ではないですが、タラノキなど棘の多い樹のことをトリトマラズと呼びます。ヘビノボラズと同じ命名ですね。
犬はたくさんあって、イヌツゲ、イヌマキ、イヌブナ、イヌシデなど「偽物」とか「亜流」という意味でよく使われます。猪は、椿の園芸品種に「獅子頭」がありますが、自生種では思いつきません。
こうして並べてみると、「糞」「偽物」「登らず」「殺す」「滑る」など、何故かマイナスイメージの命名が多いです。それにしても、昔の人は動物と樹木の相関関係をよく観察して名前をつけていますね。
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秋沙

2013年01月10日 | 野鳥
前回の記事のとおり、クロジとビンズイに「ホモ・ルーデンス」を自覚させられたので、正月休みの元旦から6日まで、ほぼ毎日鳥と遊び呆けておりました。地元のフィールドはもちろん大阪や兵庫まで足を伸ばして、いろんな鳥を見てきました。
宇治川では上流でも中流でもカワアイサが浮かんだり潜ったりしていました。



冬鳥なので春になると北へ帰るのですが、昨年は数羽がそのまま居ついて夏を過ごしました。今年も帰らないのかな。
同じアイサの仲間、ミコアイサは近ごろ京都府南部では見られないので、兵庫県まで行ってきました。別名「パンダガモ」。



この2種はカモ科ですが、「アイサ」と呼ばれます。ウミアイサ、コウライアイサという仲間もいます。
なぜ「アイサ」なのか気になったので調べてみると、漢字では「秋沙」と表記し、昔は「あきさ」と呼んでいたものが「あいさ」に転化したようです。
秋が去ってから訪れるからとか、繁殖地では秋に去るからとかいろんな説がありますが、語源探索は所詮想像の域を出ないので確証は得られません。ただ、『万葉集』に以下の歌が残っています。
山の際(は)に 渡る秋沙(あきさ)の ゆきて居む その川の瀬に 波立つなゆめ
「山を越えて渡ってきたアイサのために、川よ決して波立たないでおくれ」という意味だそうです。
男女の愛情をアイサに託して歌ったのかなと思いましたが、冒頭に「鳥を詠む」と題されているので、単純に渡り鳥を題材にした歌のようです。だとすると、鳥に対する万葉人ならでは優しい気持ちが表れていますね。
「川」とあるので多分カワアイサのことでしょうが、はるばる渡ってきた水鳥に対するこの気遣い…。「鳥を見たい」とか「動画を撮りたい」といった我欲で遊び呆けている誰かとは、鳥に対するまなざしがちがいます。反省!
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遊ぶ鳥

2013年01月07日 | 野鳥
現生人類を「ホモ・サピエンス(賢い人)」と呼ぶのに対して、オランダの歴史学者ホイジンガは「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と名づけました。人間のあらゆる活動には遊びの要素があるという説です。
まさしく卓見ですが、人間だけでなく鳥も遊びます。カラスが電線に止まったまま1回転したり、滑り台で遊ぶのはよく知られていますが、最近、私は小鳥も遊ぶことを発見しました。
その一つの事例がクロジ。毎年冬になると散歩コースの大吉山にやってきて、薄暗い林床で数羽が群れになって動き回っています。
最初は「健気に、一生懸命餌を探しているな~」と思っていましたが、じっくり観察すると、餌とおぼしき丸い実をくわえても飲み込まず、吐き出して地面に落とし、また別の実をくわえては落とすという行為を繰り返しています。
まるで子どもがボール遊びをしているようです。その姿を見ながら、幼い頃「食べる物で遊んだらアカン!」と親に叱られたことを思い出しました。
下の動画では、メスは丸い実で遊んだ後、カマキリを捕食します。クロジは雑食ですが、遊びと食事の対象を切り替えているようです。画像を拡大して確認すると、くわえているのはコジイの実。



もう一つの事例はビンズイ。今の時期、京都御苑の草地ではあちこちで数羽の群れが餌をあさっています。次の動画の前半は通常の採餌ですが、後半ではただ落ち葉をまき散らしています。



シロハラは落ち葉をひっくり返して虫を取りますが、ビンズイは草や木の種を食べるので葉っぱをまき散らす必要はないはず。私には戯れているようにしか見えません。小鳥も遊ぶんですね!
ホモ・ルーデンスとしては、奴らに負けてはいられません。オランダの学者を持ち出すまでもなく、日本の古人も「遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん」と言っていますので、私も一生懸命遊ぶことにしました。(笑)
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9億円の鳥の本

2013年01月03日 | 野鳥
明けましておめでとうございます。本年も宜しくおつきあいください。
さて、年の初めなので景気のいい話を。
昨年の12月、ロンドンのサザビーズで、アメリカの鳥類画家・オーデュボンが出版した『アメリカの鳥』が732万1,250ポンド(9億6,500万円)で落札されたそうです。印刷された書籍としては史上最高額とのこと。
輪郭を銅版画で描き、手で彩色した435点の鳥の絵が箱に収まっているそうです。驚くのは、すべての鳥が実物大で描かれていること。ということは、下のカナダガンの絵も天地70cmくらいあるわけです。



このカナダガンは日本ではほとんど出会えませんが、私は20年ほど前アメリカで見ました。ホテルの庭で頭上を「クォークォー」と鳴きながら飛ぶのを見て大感激。ところが、翌日訪れた都市公園では池の周囲に約200羽の群れがいて、子どもたちが追い掛け回しています。現地ではドバト並みの鳥であることを知って、ちょっと興ざめでした(笑)。
その後、別の街でモーテルの周辺を探鳥した際、カージナルに遭遇。赤というかピンクというか、美しい色が朝日に輝いてとても感動しました。でも、メジャーリーグにもアメフトのリーグにも「カージナルス」というチームがありますから、多分現地では普通に見られる鳥なんでしょうね。



話をオーデュボンに戻して、この『アメリカの鳥』はニューヨークの競売でも2000年に9億3,500万円、昨年1月20日に6億1,000万円で落札されていて、高値の印刷書籍ベスト3を独占しているそうです。
鳥の絵は高値で売れるんですね~。私も動画ばっかり撮ってないで、絵を描いてみようかな~。
※使用したのは著作権切れの画像です。
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