樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

シギの季節

2019年08月29日 | 野鳥
今年もまた、近くの干拓地にシギやチドリが渡って来る季節になりました。先日、今シーズン初めてカメラと三脚をかついで回ってきました。
予想どおりアオアシシギはすでに定着しているようです。ただ、彼らが羽を休める休耕田が少なくなって、これまではあまり利用しなかった、つまり餌条件の良くなさそうな休耕田に合計4羽も入っていました。



この干拓地は北陸新幹線の延伸ルートになっていて、実際に建設されると環境が悪化し、野鳥が生息しにくくなります。多分、野鳥の会としては反対することになると思いますが、その根拠となるデータを蓄積するため、昨年から組織的に調査を実施しています。
いつもの双眼鏡、カメラ、三脚に加え、調査書類を束ねたボードを持参してバイクで走り回っています。
2年前と同じ場所にエリマキシギがやって来ました。しかも2羽。どちらも幼鳥で、人間の子どもと同じく警戒心が全くないので、どんどんこっちに近づいてきます。しまいに5mほど先の畔まで上がってくるので、こちらが後ずさりするほど。




こういう鳥たちが羽根を休め、餌をたくさん食べて、南の越冬地へ渡っていけるように、今のままの環境をずーっと残してやりたいです。
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鳥のオノマトペ

2019年08月22日 | 野鳥
野鳥録音の第一人者、松田道生さんの最新著作『鳥はなぜ鳴く? ホーホケキョの科学』を読んでいたら、「えっ?」と思うようなことが書いてありました。
松田さんの録音仲間が、小学4年生にコゲラの鳴き声を聴かせた後、その声をカタカナで表記させたら以下のようになったそうです。
①ギィーゥ ギィーゥ、②チー(2人)、③ルィール、④ビー ビー、⑤ビーール ビーール、⑥ビィーーッ!、⑦ギュー ギュー、⑧ギーヨ ギーヨ、⑨グウィー、⑩ギィー
実際の声を、以下で聴いてみてください。



私たちバードウオッチャーは「コゲラはギーと鳴く」と思い込んでいますが、先入観がない子供たちはいろんな聞き方をしており、擬声語(オノマトペ)の表記も十人十色です。
もう一つ、コガモの声でも同じ実験をしたそうですが、その結果を書く前に、以下の動画でコガモの声を聴いてください。



バードウオッチャーの間では、コガモは「ピッ ピッ」とか「ピリッ ピリッ」と鳴くというのが常識ですが、子供たちのオノマトペは以下のとおり。
①チィ チィッ、②コロロロロ、③ルァフロォフ、④ヒウウィ、⑤ルルルルー ルルルッ、⑥ピーチ ピーィ、⑦ピーリピリピーリピリ、⑧テッテレレテレレレ、⑨ピピピ ピロリロ、⑩ピポピロピピポピロリ、⑪リュル リュル
「ピ」音や「チ」音は理解できますが、②、③、⑧、⑪は全く想像の外です。
以前、当ブログで「鳥の声は世界共通か?」と題してPart-1Part-2Part-3の3回に渡って、同じ鳥の声でも国によって聞こえ方が違うという話をしましたが、年齢によっても違うわけです。
バードウオッチャーの声の知識は、単に先輩や図鑑から刷り込まれているだけではないか? そんな疑問が湧いてきます。「ウグイスはホーホケキョと鳴くんだよ」と教えられるからそう聞こえるだけで、その先入観がなければ違う声で聞こえるかもしれません。
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芸術と自然は別物

2019年08月15日 | 野鳥
嵯峨嵐山文化館で開催されている「いろトリどり~描かれた鳥たち~」を観てきました。嵐山を訪れるのは久しぶりで、この美術館も初めて。
入館して驚いたのは、「撮影OK」の表示。以前から展覧会にいくたびに「今はスマホやデジカメで簡単に撮影できるのだから撮影OKにすべき。SNSで拡散されて来場者増につながるのに」と思っていましたが、ようやくそんな美術館が登場しました。
展示は、伊藤若冲、円山応挙など江戸期から、川合玉堂、加山又造など近現代までいろいろな作品があって、それなりに楽しめました。
しかし、バードウオッチャーの悪い癖で、あり得ない題材が気になります。例えば、下の絵は桐の花とルリビタキが描かれていますが、桐の開花は初夏、ルリビタキは冬鳥なので季節が合いません。



また、梅の花と夏鳥のオオルリという取り合わせもありました。画家は題材として花や鳥を選ぶので、季節が合わなくても芸術的価値が劣るとは思いませんが、俳句の季語に使われる鳥と同じく、芸術と自然は別物ということでしょう。
今回、最もインパクトがあったのは、中野大輔という1974年生まれの画家の作品。下の『ひかりあまねく』という屏風図は、伊藤若冲の精緻と尾形光琳の絢爛豪華が統合されたような迫力があり、圧倒されました。



右の二曲は白藤と孔雀、左の二曲はベニバナトチノキ(多分)と雉。世界で最も派手な鳥と日本で最も派手な鳥が題材に選ばれています。キジが木の枝に止まることはあり得ないですが、そういう突っ込みを跳ね返すだけの威厳と情熱を感じます。
今回の観覧のもう一つの目的は、山階鳥類研究所所長・奥野卓司さんのギャラリートーク。



実は、奥野さんとは、私が京都の広告代理店にいた頃一緒に仕事をしたことがあります。私が企画した若者向けのラジオ番組のパーソナリティとして、当時、京都のサブカルチャーの旗手であった奥野さんを起用したのでした。もう40年以上前の話です。
その頃は仲間内で「卓ちゃん」と呼んでいた人が、今は山階鳥研の所長であり、関西学院大学の名誉教授。出世したね~、卓ちゃん。
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死ぬまでに見たい鳥

2019年08月08日 | 野鳥
バードウオッチングを始めて30年。これまでに見た鳥は、海外も含めて約350種。
それでも、見ようと思いながら遭遇できていない鳥がいくつかいます。その一つがヤイロチョウ。名前のとおり8色のカラフルな鳥で、独特の声でさえずります。



関西でも時々出現しますし、栃の森でも何度か声を聞きましたが、最も密度が濃いのは高知県の四万十川周辺の森。その姿を求めて、いつもの仲間3人でツアーに出かけたこともあります。しかも、2003年と2012年の2回。
2003年はガイドを雇って候補地を回りましたが、各地でさえずりを耳にするものの、結局姿は見られず。
2012年は、宿の近くの山に登るとすぐ近くから声が聞こえてきました。スマホでヤイロチョウの声を流せば、縄張りを侵されたと思って姿を現すはずですが、そういう人工的な働きかけは野鳥をかく乱するのでバードウオッチングの世界ではご法度。じっと我慢して待ちましたが、約10mの至近距離から声を聞くだけで終わってしましました。せめて声だけでもと思って撮った動画が以下。



高知県まで2回も出かけて、2回とも振られたわけです。数年前、滋賀県の森に出現したことがありますが、フォトグラファーが押し寄せていたらしいので行きませんでした。
あの世に行くまでにはどこかでお目にかかりたい鳥です。
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樹木の多様性

2019年08月01日 | 樹木
前回の鳥に続いて、2週間前のことですが、栃の森の樹のご報告です。
森は結実の時期を迎えていて、いろいろな実が膨らんでいました。まず、この森の名前(私の勝手なネーミング)の由来であるトチノキ。昔は人間がこの実を食用にしたわけですが、今はネズミやシカの空腹を満たしています。


トチノキの実

今回、白神山地を訪ねた後なので、林相の違いが気になりました。
白神山地の森は樹種が少なかった。高木ではブナ、ホオノキ、ミズナラ、ウダイカンバなど、中高木ではハウチワカエデ、リョウブなど、低木ではオオカメノキ、クロモジなど、大雑把に数えて30種ほど。
一方、以前、栃の森を歩きながら自分で識別できる樹種をカウントしたことがありますが、約70種でした。白神山地にあって栃の森にないのはウダイカンバくらい。


ガマズミの実

樹木の多様性という点では、圧倒的に栃の森の方が豊かです。白神山地は緯度が高いので常緑樹が少ないということもありますが、それだけでは片づけられないようです。
何というか、白神山地の森が洗練されているのに対して、栃の森はワイルド。あちこちに倒木があったり、シカの食害で笹藪がなかったり、動物の骨が転がっていたり、豪雨でせせらぎのルートが変わったり、自然が常に動いているという感じ。


エゾユズリハの実

一方、白神山地の森は、均一な太さの高木が整然と並び、笹も密生していて、倒木もなく、風景として美しい。そんな印象でした。
もちろん、白神山地では主に尾根筋を歩いたのに対して、栃の森のコースは谷筋という環境の違いもあると思いますが、結果的に栃の森の魅力を再発見することになりました。
今回、木の実が目立ちましたが、花も咲いていましたので、最後にご紹介します。


イワガラミ


ヤマアジサイ


ナツツバキ
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