樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

流木の用途

2010年02月25日 | 森林保護
海岸やダムにはたくさんの流木が漂着します。特に台風や集中豪雨の後にはその量が増えます。これらの流木は今まではせいぜい装飾やアートに使われる程度でほとんど利用されることなく、ゴミとして焼却処分されてきました。


(あるイベント会場の流木アート)

ところが最近、各地にダムを抱える電力会社が流木をバイオマスエネルギーや肥料としてリサイクルし始めています。
中でも関西電力は、黒部ダムに流れ着く流木のリサイクル事業を行うために別会社を設立。大量の流木を、大きなチップ、おが粉、落葉チップの3つに加工し、大きなチップは発電燃料に、おが粉は飛騨牛の敷き藁に、落葉チップは堆肥に再利用しています。


(うちの近くにある関西電力・天ヶ瀬ダム)

(ダムに漂着する流木)

他の電力会社でも環境活動として流木のリサイクルをやっていますが、別会社を立ち上げ、新規事業として取り組んでいるのは関西電力だけのようです。
ダムにとっては邪魔物でしかなかった流木がエネルギーや肥料として役立てば、電力会社にとってもありがたいし、木も喜ぶでしょう。
かんでんエルファーム(流木再生事業)のサイトはこちら
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バンクーバーの表彰台

2010年02月22日 | 木とスポーツ
オリンピックの熱戦が連日放送されています。今のところ日本人選手は3人しか上ったことがないので見る機会が少ないですが、この大会の表彰台は木製です。
森林に囲まれたブリティッシュコロンビア州の特徴を生かして、先住民や自治体から寄贈された木材を使って製作したとか。
幅4.8mのものから15.3mの団体競技用まで用意され、最も軽い表彰台でも200kg。たくさんの板を並べた流線型のデザインは、バンクーバー周辺の山並みを表現したそうです。


(木製の表彰台)

上と下の画像はブリティッシュコロンビア州の広報用サイトからいただきましたが、そのページでは各会場で使われる23台の表彰台について、どの地域の誰が寄贈したか、どんな木を使ったかまで紹介しています。
樹種はイエローシダーやレッドシダーなどヒノキ系、ダグラスファーやパインなどマツ系、そのほかスプルース(トウヒ)、ラーチ(カラマツ)、ヘムロック(ツガ)などの針葉樹のほかバーチ(カバノキ)もあります。その多様さはさすが森林大国。


(200個もの木材パーツを使った表彰台)

この表彰台に良く似たものが宇治市にあることを思い出しました。文化センターのロビーに飾ってあるモニュメント。バンクーバーの表彰台を縦にしたような木彫アートです。
大倉侍郎という宇治在住の彫刻家(世界的にもそこそこ有名らしいです)が制作した高さ5.2mの大作で、文化センターが竣工した25年前にロータリークラブが寄贈したもの。


(宇治市文化センターにある木彫作品「ながれ」)

作品名は「ながれ」。85cm角のシオジ材を50枚積み重ねて宇治川の流れを表現しています。
バンクーバーでは山を、宇治では川を表現した相似のフォルム。たまたまでしょうが、おもしろい一致です。
「たまたま」がもう一つあります。宇治市には姉妹都市が三つあり、その一つがカナダのカムループス市。ほとんど知られていない町ですが、バンクーバーと同じブリティッシュコロンビア州にあります。地図で見るとすぐ近くですが、州の面積が日本の2.5倍だそうですから、遠いんでしょうね~。
ブリティッシュコロンビア州の木製表彰台のサイトはこちら(英語)
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煙の味

2010年02月18日 | 木と飲食
知り合いから「燻製の漬物」をいただきました。いぶして干した大根をたまり醤油に漬けたもので、私は見るのも食べるのも初めて。ラベルには、京都を代表する木・北山杉でいぶしたと書いてあります。


(京北町は最近京都市に編入された山里)

この「いぶり干したくわん」のオリジナルは秋田県。同じくスギの名産地なので、林業つながりで京都に移入されたのでしょう。
もともとは囲炉裏の上で干した大根を漬けたのが始まりで、いぶすことで水分が抜けて素材の旨みが凝縮され、パリパリした歯ごたえと香ばしい香りが生まれるとのこと。
この大根とスギもそうですが、世界各国の燻製には食材と木の取り合わせがあります。例えば、アメリカでは肉にはヒッコリー(クルミ科)、魚(ニシン)にはシラカバまたはオーク(ナラ)、ドイツではウナギにトネリコまたはブナ、スコットランドではタラにシナノキまたはニレを使うそうです。
日本では肉にはサクラ、魚にはナラが常識のようで、アウトドアショップではそれぞれのチップを販売しています。


(いぶり干したくわんをいぶす北山杉)

鰹節も燻製にしますが、遠洋ものは熱帯に多いヒルギ(いわゆるマングローブの木)でいぶすとか。また、つるし柿も昔は囲炉裏の上で半燻製にしてから露天で乾燥させたそうで、その囲炉裏で燃やす木はケヤキが一番。理由は煙が多いから。信州には「ケヤキの薪を3年焚くと盲になる」という言い伝えがあるそうです。


(いぶり干したくわん)

木は実だけでなく、種(コーヒーやギンナン)や葉(お茶)や皮(シナモン)を食材として、木材や樹液(漆)を食器や調理道具の材料として、さらに炭や薪など熱源として提供してくれるうえに、煙まで食文化に役立ててくれます。人間にとっては実にありがたい存在です。
さて、「いぶり干したくわん」を実食した感想。妻は「おいしい!」と気に入ったようですが、私には煙の匂いが強過ぎて、たくわんを燻製にする意味がよく分かりませんでした。
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自然に学ぶ

2010年02月15日 | 野鳥
久しぶりに鳥の話題です。科学系のバラエティ番組で時々取り上げられるのでご存知かも知れませんが、新幹線の500系車両は鳥をヒントにして設計されています。
JR西日本が時速300kmの新幹線を開発し始めた頃、高速でトンネルに突入すると空気圧のために出口で「ドン」という音が出る「トンネルドン現象」が大きな壁になりました。ある開発者が、カワセミが水に飛び込む際ほとんど水しぶきを上げないことに着目。そのクチバシの形が最も空気抵抗が小さいことをつきとめ、カワセミにそっくりな車体にすることで「トンネルドン現象」をクリアしたのです。


(クチバシみたいに尖がった500系車両)

鳥から得たヒントはもう一つあります。時速300kmで走行するとパンタグラフも大きな騒音を出すそうですが、今度はフクロウが音も立てずに羽ばたいて獲物に近づくことに着目。その羽根の消音構造をパンタグラフに取り入れて、75ホンという騒音基準をクリアしたのです。
新幹線が時速300kmで走れるのはカワセミとフクロウのお陰なんですね。
その開発者は仲津英治という方で、趣味がバードウォッチング。日本野鳥の会京都支部の会員で、私も探鳥会やイベントで何度かご一緒したことがあります。
台湾に新幹線が敷設された時には技術指導のために現地に赴任し、支部の会報に台湾の鳥だよりを寄稿されていました。


(京都御苑でデジスコ撮影したカワセミ)

仲津さんには著書があって、そのタイトルが『自然に学ぶ』。私も1冊いただきましたが、カワセミやフクロウに学んだ体験から自然への敬意を強くされたようです。
そして現在は、「地球にやさしく」という尊大な言い方ではなく「地球に謙虚に」と表現するべきだという趣旨から、「地球に謙虚に運動」を立ち上げて代表者として活動するほか、いろんなNPOに関わりながらメッセージを発信されています。
仲津さんが提唱される「地球に謙虚に」運動のwebサイトはこちら
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CACAOとCOCOA

2010年02月11日 | 木と飲食
もうすぐバレンタインデーなので、チョコレートについて。
チョコレートの原料はカカオ豆ですが、正確には豆ではなくて、樹木の種子です。下の写真は宇治市植物公園の温室にあるカカオの実。幹から直接実がぶら下がるという面白い成り方です。
この実の中にある種子をカカオ豆と呼びます。ちなみに、コーヒーも豆ではなくて、コーヒーの木の種子。



南米原産のカカオをコロンブスが持ち帰って以来、ヨーロッパにチョコレートが広がったそうです。でも、当時は現在のような固形ではなく、液体で飲んでいたようです。
グルメの元祖ブリア・サヴァランはその著書『美味礼賛』の中に、「チョコレートの本式の入れ方」という項目を設けて次のように書いています。
「1杯あたり1オンス半(約46g)のチョコレートを水に溶かし、徐々に温めながら木のスプーンでかきまわす。これを15分煮立てて、溶けたものが固まりかけたら、そのまま熱いうちに飲む」。
別のところでは「ヴァニラや砂糖を入れて飲む」とも書いています。今で言うホットチョコレートでしょうか。ただ、現在のようなお菓子というよりも薬やサプリメントのような書き方をしています。


(アオギリ)

カカオはアオギリ科の樹木ですが、この仲間にはコーラの原料になるコラノキもあります。日本にも科名そのままのアオギリがあります。戦争中はこのアオギリの実を炒ってコーヒーの代用にしたそうですから、このグループの木は人間の嗜好に合う成分を含んでいるんでしょう。
ところで、以前から「カカオとココアはよく似ているから語源は同じだろう」と思っていましたが、調べてみると面白い由来でした。
CACAOは南米の先住民族の言葉から生まれた名前で、他のヨーロッパ諸国にはそのまま伝わったものの、英語では発音しにくい言葉なので、イギリスでは音が入れ代わってCOCOAと呼ばれるようになったそうです。
チョコレートは大好きで食べ出すと止まりませんが、バレンタインデーに頂く数が年々減ってきました。しょうがないので、自分で買います(笑)。
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護摩木

2010年02月08日 | 木と宗教
先週の2月3日、近くにある龍神総宮社という新興宗教の神社で節分祭が行われました。私は宗教心ほとんどゼロですが、親戚の代理で厄除けの護摩祈願をするためと、無料で振る舞われる巻寿司やイワシの塩焼きに目がくらんで(笑)参拝してきました。
信者や一般市民が供えた数万本の護摩木が井桁に組まれ、祭主が祈祷する中、勢いよく燃え上ります。


(地面に掘られた大きな炉で燃える護摩木)

木材マニアとしては以前からこの護摩木が気になっていて、いろいろ調べたことがあります。まず樹種は、国産材ではヒノキ。私の推測ですが、表面が艶やかで美しく、香りも良く、間伐材としての用途に向いているから護摩木に使われるのでしょう。
下の写真は、近所の宇治神社の護摩木。匂いを嗅ぐと、甘みのあるヒノキ特有の香りがしました。



ヒノキ製はやや高価なためか、一般的にはスプルース製が使われるようです。北米のマツ科トウヒ属の樹木で、肌が白くて文字が書きやすく、よく燃えるので護摩木に最適だとか。
下の写真は、立木観音(安養寺)に参拝したときのもの。外見だけではヒノキと区別できませんが、ほぼ無臭だったのでスプルースでしょう。



ところで、1枚目は神社の護摩木、2枚目は寺院の護摩木。「神道でも仏教でも同じことをするのはなぜだろう?」と疑問になって少し調べました。もともと密教系(真言宗・天台宗)の修法だった護摩祈願が神仏融合で神道に入り込んだ後、明治の神仏分離で強制的に改組されたために、護摩祈願の伝統を持つ神社が残ったという経緯のようです。


(有名人による豆まき)

ちなみに、参拝した節分祭では毎年有名人が豆まきをします。今年は相撲界から貴乃花親方、旭天鵬、黒海、芸能界から中条きよし、左とん平、佐藤我次郎、お笑い界から桂きん枝、太平サブローなど13人が参加。
また、市長や国会議員、府会議員、商工会議所会頭など宇治の政財界の有力者も裃姿で豆をまいていました(政治家がこういう宗教行事に参加していいのかな?)。おそらく宇治で最も多くの著名人が集まるイベントです。
貴乃花親方はちょうど2日前の相撲協会の理事選挙で注目されていたため、会場には東京のテレビ局や大手新聞社の取材クルーが詰め掛けていました。


(貴乃花親方には大きな拍手が…)

他の著名人が豆を投げる中、親方はステージの前の人々に直接手渡ししていました。優しい人柄なんでしょうね。

PS
guitarbirdさんのリクエスト(?)にお応えして、巻寿司と鰯の写真を追加します。巻寿司はお昼としてその場で、鰯の塩焼きは持ち帰って夕飯に妻と一緒にいただきました。
鰯の写真がボケているのは、炭火焼きの煙が充満しているためです。





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葉っぱビジネス

2010年02月04日 | 木と飲食
徳島県にある過疎の山里・上勝(かみかつ)町が葉っぱビジネスで大ブレイクしています。年収1000万円のおばあちゃんがいるとか、お年寄りが家を新築して都会の子ども家族を呼び戻したという元気な話や、「葉っぱをお金に変えるのはタヌキだけじゃない」というジョークも聞こえてきます。
木の葉が商品になるのは、料理用の飾りとして。専門用語で「つまもの」とか「皆敷(かいしき)」と呼ぶらしいですが、季節感を大事にする日本料理では、例えば夏のそうめんには緑のカエデを、秋の料理には紅葉したカエデを飾ります。


(カエデは緑の葉も赤い葉も人気商品)

また、赤飯に南天の葉を添えたり、めでたい席では鯛の下に松の葉を敷いたりします。あるいは、節分には柊、桃の節句には桃の枝を飾ります。
そうした料理に関する木の葉や草花を山で採取したり、ハウスで栽培することで町興しに成功したのです。現在、320種類もの商品を出荷し、年商は2億6000万円。


(2月が稼ぎ時のヒイラギ)

従来「つまもの」は料理人自ら近くの野山で採取していたようですが、そこに新たな市場を開拓したのが上勝町の農協職員。高齢化が進む中、「お年寄りにもできる軽い仕事は何だろう?」と考えて、葉っぱの商品化を思いついたそうです。
経済的に成功しただけでなく、お年寄りが生きがいを持ち始めたので町全体が明るくなったとか。70代~80代のおばあちゃんがパソコンを操作しながら売上ランキングをチェックしたり、自分の生産計画を立てているシーンをテレビで見て驚きました。


(ナンテンの葉は年中需要があるとか)

現在は第3セクターの会社として経営され、全国から視察や講演依頼が殺到しているようです。品質管理はそれなりに厳しいようですが、野山に生えている木の葉が立派なビジネスになるんですね。
上勝町の3セク・㈱いろどりのウェブサイトはこちら
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スギやねん、関西

2010年02月01日 | 木と言葉
昨年、あるイベントで「スギやねん、関西」という名前の集団に出会いました。関西弁の「好きやねん」を語呂合わせにした杉の利用促進団体です。
普通、こうした会は堅苦しい名前が多いですが、さすが関西、こんなところでも笑いを取ろうとしているんですね。しかも、「SUGIKAN」という略称でロゴまで作り、スタッフが写真のようなハッピ姿で雰囲気を盛り上げていました。



ブースでは、杉の箸づくりやサイコロづくりのワークショップのほか、小物の販売コーナーもあったので、私もつられて小さな枡を買ってしまいました。
この団体には上部組織があって、その名前が「日本全国スギダラケ倶楽部」。秋田県や静岡県、宮崎県など杉の産地に支部を持つ全国組織です。


(昨年5月に開催された「神戸アースデー」のブース)

日本の山は植林で「杉だらけ」になっている、その杉の良さを再発見して利用を促進し、身の回りを「杉だらけ」にしようというのがこの倶楽部の設立趣旨。キャッチフレーズは「一家に一台杉の家具」。
本部も支部も名前は軽いノリですが、杉の家具「スギダラ」シリーズを開発したり、街灯や車止めに杉材を使ったり、月刊誌を発行するなど真面目に活動しています。


(ロゴ入りの枡。お酒ではなく小物入れに使っています)

例えば「日本杉材利用促進協会」というような悲壮感漂う名前よりも、「日本全国スギダラケ倶楽部」のような軽妙な名前の方が、やっている方も見ている方も楽しいし、注目率も高くなります。木材マニアとしてその活動に興味がありますが、仕事柄、こういう言葉のパワーにも関心があります。
「スギやねん、関西」のサイトはこちら
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