樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

湖北野鳥センター

2020年11月26日 | 野鳥
連休明けに、今いろいろ問題になっているGO TOトラベルを利用して、妻と二人で琵琶湖一周の1泊旅行に出かけました。予約したのは数カ月前。ネット予約のハードルが結構高い上に、ホテルでも少しトラブルがありましたが、予定どおり楽しめました。
1日目は湖東方面。竜王のアウトレットで妻の防寒ウェアを買った後湖北へ向かい、私は野鳥センターでバードウォッチング、妻は隣の道の駅で買物&読書。
連休明けの平日なのでセンターは休館でしたが、湖岸道路の遊歩道から水鳥を観察しました。コハクチョウは昼間は周辺の田んぼに採餌に出かけてお留守のことが多いですが、この日は20羽ほどが羽を休めていました。



ガンの仲間オオヒシクイ(亜種)もいつもどおり渡ってきています。下の動画、中央で羽づくろいしているのがオオヒシクイ。



湖北は天然記念物・オオワシ渡来の南限地で、毎年今頃にカムチャッカ半島から渡って来ることで知られています。今回の旅行とタイミングが合うかどうか微妙でしたが、ちょうど前日に飛来したというニュースが流れました。
少なくとも29歳以上の雌で、野鳥センター近くの山本山にいるので、通称「山本山のおばあちゃん」。1998年から連続23シーズン目の渡来だそうです。
予想どおり多くのフォトグラファーが詰めかけていました。私もセンターの駐車場から山本山まで歩きましたが、木の枝に隠れているので撮影をあきらめ、双眼鏡で6年ぶりの再会を楽しむだけにしました。
下は2014年12月23日に撮影した山本山のおばあちゃん。



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鳥の嗅覚

2020年11月19日 | 野鳥
前回の「鳥の味覚」に続いて今回は「鳥の嗅覚」。
「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉を残したとされる寺田寅彦(1878-1935)は、物理学者であると同時に夏目漱石の門弟でもあり、数多くの文学作品を残しています。その中に「とんびと油揚」という随筆があります。
トビが100mもの上空から地上の小さな餌を視覚で見つけるのは難しい。一方、死骸の匂いは拡散や希釈されないまま気流に乗って100m程度は上昇するので、嗅覚で餌を探すのではないか。という内容ですが、現在ではトビをはじめ猛禽類の視力は人間の数十倍であることが分かっているので、この寺田説は多分誤りです。
いくつかの実験や解剖も行われています。ある研究者はコンドルに対して腐った死肉のいくつかは隠し、いくつかは目につくように置いたところ、後者の肉を食べたとのこと。また、別の研究者はヒメコンドルについて哺乳類の死肉と魚の死肉で実験したところ、前者には群がったのに後者には集まらなかったことから、特定の匂いにだけ誘引されるとしています。
さらに別の研究者は、コンドルの脳を解剖して嗅覚を支配する組織はヒメコンドルの方がクロコンドルより3倍大きいことを発見し、種類によっては優れた嗅覚を持っているようだと結論づけています。


キーウィ(Public Domain)

優れた嗅覚を持つのはニュージーランドの固有種キーウィ。夜行性で視覚がほとんどなく、嘴の先にある鼻で匂いを嗅ぎ分け、地中のミミズを探し当てます。土の中にミミズを入れたバケツと入れないバケツで実験したところ、ミミズを入れたバケツだけ選んだそうです。
海鳥は嗅覚が優れているようで、海外の海鳥観察ツアーでは、その習性を利用して餌である魚やイカの匂いを船の周辺に拡散して海鳥を集め、参加者に間近でじっくり観察させるという方法がとられているそうです。
また、ヒメウミツバメが匂いで近親交配を避けるという実験も行われています。Y字型の道を作って、一方には近親個体の匂いのついた綿を、もう一方には関係のない個体の匂いのついた綿を置き、ヒメウミツバメがどちらの道を選ぶかを実験したところ、雄も雌も関係のない鳥の匂いがある道を選択したそうです。


上がヒメウミツバメ(Public Domain)

さらに、210羽のミズナギドリにGPSを付けて追跡・解析した研究者は、「何の目印もない広大な海原を飛び、繁殖する島にピンポイントで戻ってくる海鳥は、頭の中に匂いによる地図を持っているのではないか」と推測しています。
その一方、カラスとヒヨドリが果実の熟成時期を見分けるのは視覚か嗅覚かを調べた日本の研究者は、「脳全体に対する嗅球のしめる割合が極めて小さく、一般には左右独立して存在する嗅球が完全に左右癒合していたことから、カラスとヒヨドリの嗅覚はあまり発達していないことが示唆された」と報告しています。
ほとんどの鳥は嗅覚が発達していない一方、キーウィやヒメコンドルなど一部の鳥や海鳥は優れた嗅覚をもっているということのようです。
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鳥の味覚

2020年11月12日 | 野鳥
メジロは甘いものが好きというのが常識になっていますが、鳥に味覚はあるのでしょうか? 
そもそも鳥の舌に味を感じる味蕾(みらい)があるのか調べてみると、ニワトリ24個、ハト27~59個、アヒル200個で、9,000個のヒト、25,000個のウシなど哺乳類に比べると極端に少ないそうです。


桜の蜜を吸うメジロ(Public Domain)

ある研究グループがニワトリとウズラを対象に、塩味、酸味、甘味、苦味、旨味それぞれ11段階の濃度の水溶液を用意し、低濃度から高濃度へ順に与えるという味覚テストを行いました。塩味をニワトリは0.64%まで、ウズラは1.28%まで識別できず、逆にニワトリは1.28%で、ウズラは2.5%で拒絶反応を示したそうです。
結論として「ニワトリとウズラは特に強い嗜好を示す味物質はなく、ニワトリはウズラより味覚が敏感であることが明らかになった」と述べています。
その後、別の研究者の遺伝子解析によって、ニワトリには甘味を感じる受容体がないことを突き止め、他の多くの鳥も同様であると考えられるようになりました。つまり、メジロも甘味を感じ取っているわけではないということです。
ところが、ハーバード大学の鳥類学者がハチドリについて調査したところ、甘味を感じる受容体はないものの、旨味を感じる受容体を変化させて甘味を感じていることが判明。そして、2種類のハチドリに砂糖水とただの水を与えたところ、砂糖水を飲む時間が有意に長かったとのこと。メジロも同じかもしれません。いずれにしても、蜜を吸う鳥以外は甘味を感知しないようです。


花の蜜を吸うハチドリ(Public Domain)

塩味・酸味・甘味・苦味・旨味とは別に、私たちはトウガラシなどの辛味を感じます。辛味は味覚ではなく痛覚らしいですが、この辛味も鳥は感じないようです。
科学系のバラエティー番組『所さんの目がテン!』によると、ライオンに激辛チキンを与えたところ、勢いよくかぶりついたものの食べずに放棄したそうです。サルやウマも同様。ところが、ニワトリは激辛の餌を食べた上、超激辛のハバネロパウダーを追加しても食べ続けたとのこと。
哺乳類には辛味を感じ取る受容体があるのに、鳥にはないわけです。これについて、歯がなく丸飲みにする鳥だけに選択的に捕食されることで種子散布するようにトウガラシが進化したと説明されています。
この辛味も含めて、基本的に鳥には味蕾が少なく、味覚音痴のようです。私たちは食べたものを歯でそしゃくしながら、舌で味や食感を楽しみますが、鳥には歯がなく、餌を丸飲みするので、味覚が発達する余地や必要がなかったということでしょう。
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ヤマガラの芸

2020年11月05日 | 野鳥
私自身は見たことはないですが、昔はヤマガラがおみくじを引くという見世物がありました。以下はYouTubeに投稿されているおみくじ引き。



ヤマガラは人懐っこい上に、ドングリなどを取って地面に隠し、後で食べる「貯食」という習性を持っているので、こういう芸が仕込みやすかったのでしょう。
調べてみると、ヤマガラは鎌倉時代にすでに飼育されていたようで、ヤマガラの芸を詠んだと思われる和歌が残っています。この頃は貴族の趣味にとどまっていたようですが、飼い鳥文化が庶民にまで普及する江戸時代には、見世物として興行されるようになります。
芸も多様化して、中には、ヤマガラ使いが百人一首の上の句を詠むと、ヤマガラが下の句の札をくわえてくるという高度な芸も披露されていたようです。
明治10年に来日したアメリカの動物学者エドワード・モースは、当時のヤマガラの芸をスケッチとともに詳しく日記に書き残しています。例えば、下のスケッチはヤマガラが乗ったおもちゃの馬を別のヤマガラが引く「馬引き」という芸。



下は、木馬の棒の刻み目に引っ掛けてある弓の弦を外して矢を射る「那須の与一」。



下は、3本の掛軸を順に木にかける「掛軸かけ」。



こうした芸を10種類書き残していますが、当時はまだおみくじ引きはなかったようです。明治20年頃、浅草の「花屋敷」という、今でいう遊園地にはヤマガラの芸のためのホールがあったそうで、昭和7年の記録によると25羽のヤマガラが出演し、それぞれが4~5種類の芸を披露していたとのこと。
おみくじ引きが登場するのは昭和20年頃。韓国にスズメ、台湾や香港にブンチョウ、中国にマヒワ、ネパールにインコを使った占いがあるので、それらをヒントにしながら、従来の芸を組み合わせて編み出されたようです。
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