樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

増える鳥

2015年03月30日 | 野鳥
一昨年の冬に宇治川でオオバンを発見して「え?」と思いました。それまで見たことなかったからです。
この冬は宇治川だけでなく、近くの池でも発見しました。バンは以前からいましたが、オオバンは初めて。宇治だけでなく、全国各地でオオバンが増えているようです。
例えば、琵琶湖の今年の一斉調査では、カモ類の合計がほぼ横ばいの約10万羽であるのに対して、オオバンは2005年の約1万4千羽から右肩上がりに増加して約6万羽。10年で4倍以上に増えています。
冬鳥としてはダントツの1位で、2番目のヒドリガモ約1万6千羽を大きく引き離しています。関西だけではなく、霞ケ浦など他の地域でもオオバンが増えているようです。



基本的には野鳥の生息数は減少傾向にあって、鳥仲間でも「昔に比べると少なくなりましたね~」があいさつ代わりになっていますが、オオバンのように例外的に増えている鳥もいます。
先輩の話では、昔はカワウが珍しく、わざわざ愛知県まで見に行ったそうですが、現在カワウはいたるところにいます。ヒヨドリも昔に比べると増えているようです。
琵琶湖でオオバンが増えた要因について、ある研究者は、餌となる水中植物が増えたことを挙げつつ、その分布域がオオバンの生息域とは一致しないので、繁殖地や渡り経路、採食生態の解明が必要と結論しています。
野鳥が増えることはバードウォッチャーとして歓迎ですが、その原因が地球温暖化にあるとすれば、「オオバンが増えたのは神様の大盤振舞い」などと単純には喜んでいられないですね。
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京都の木づかい

2015年03月26日 | 木造建築
意外かも知れませんが、京都市は林業都市です。もともと「北山杉」という伝統産業がある上に、平安時代から都に木材を供給していた北桑田郡京北町が京都市に編入されたことで一挙に林業都市の様相を帯びてきました。
そういう背景から、京都市は木材の地産地消に積極的に取り組んでいます。例えば、市内の屋外広告物に京都産の木材を使えば助成金を出してくれます。京都市は厳しい景観条例を定めていますが、景観の維持と木材の地産地消の一石二鳥を狙っているわけです。
そして、昨年12月には、京都産の木材をたっぷり使った上京区役所の新庁舎がオープンしました。ご覧のように、屋外はもちろん屋内のフロア、壁面、家具まで木、木、木…。


外観


1階のロビー


1階の受付コーナー


2階の廊下~受付

やわらかい印象があって、用が終ってもしばらく居続けたいような雰囲気。これまでの役所のイメージとは全く違う素晴らしい空間です。
木材だけではなく、間伐材でつくったチップを燃料とするペレットストーブも設置してあります。暖房として使うと同時に普及・啓発の意味があるようです。



見学しながら、何度も「上京区民がうらやまし~な~」と思いました。宇治市にもこういう施設をつくってほしいですが、宇治には林業がないから無理でしょうね。
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キジは不死鳥?

2015年03月23日 | 野鳥
以前、「キジの羽根は鉄砲の弾をはじく」という話を聞いたことがありますが、「そんな訳ないだろう」と一笑に付していました。ところが先日、羽根のコレクターから同じ話を聞いたので、気になって調べてみたら、面白い事実に突き当たりました。
イギリスの国防省がキジの羽根を使った防弾チョッキを開発しているというのです。
現地の新聞「サンデー・タイムズ」によると、ショットガンの弾が当たっても平気で飛んでいくキジの話にヒントを得て、国防省が某大学に開発を依頼。その研究者は、「キジの羽根の軸は特殊構造になっていて弾力性が高く、羽根を20層に織り込むと、ほとんどの弾丸を止めることができそうだ」と話しているとのこと。


弾丸をはね返すキジの羽根(初列風切羽・コレクターの了解を得て掲載)

確かに、写真の羽根を触ってみると、軸は強化プラスチックのように固く、他の鳥の羽根の軸に比べると太いです。
日本だけでなくヨーロッパでも、キジの羽根は弾丸をはじくと認識されているわけです。
現在の防弾チョッキにはアラミド繊維を使っているそうですが、キジの羽根ならより軽くてコストも下がるそうです。
ただし、このニュースは1998年のもの。その後、“キジ羽根防弾チョッキ”が実用化されたかどうかは不明です。
弾をはじくとすればキジは“不死身の鳥”ということになりますが、ハンターのブログを読むと「キジやカモは側面から撃っても死なないので、正面を狙う」と書いてあります。正面を撃たれたら、さすがのキジも不死身ではないということです。
悔しいけど、こういうことはバードウォッチャーよりもハンターの方が詳しいですね。
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国宝『檜図屏風』

2015年03月19日 | 木と作家
狩野永徳が描いた『檜図屏風(ひのきずびょうぶ)』(国宝)の修理について、NHKがドキュメント番組を放送しました。
表面の汚れや経年劣化を補修する技術、絵の裏に隠されていた家紋から推理される歴史も興味深かったのですが、ツリーウォッチャーとしてはやはりモチーフであるヒノキが気になりました。


『檜図屏風』の部分(画像はパブリックドメイン)

幹も枝もダイナミックに暴れています。でも、見た瞬間「これは実際のヒノキではないな~」と思いました。ヒノキの幹は真っ直ぐ上に伸び、枝もほぼ真横に規則正しく張るので、こんな曲がりくねった樹形にはならないはずです。
永徳はリアルに描くことよりも、動的に描くことで何かを表現したかったのでしょう。ネットで調べると、ある専門家が次のように書いていました。
「実は、本来、檜は、真っ直ぐに伸びます。その枝は綺麗に広がります。しかし永徳は、その檜を大きくデフォルメし、不気味なほど、ねじ曲げて描いていたのです。永徳は、戦国の美は決して美しいものだけではなく、もがき、荒ぶる姿にこそ、本質があると考えたのかもしれません」。
永徳が生きたのは戦国時代~安土桃山時代。信長や秀吉から依頼されることが多かったので、こういうパワフルな絵を描いたのではないかという推測です。
その一方で、葉はリアルに緻密に描いています。


葉の部分の拡大

構図の大胆さとディテールの緻密さ。そこにこの作品の魅力があるように思います。
面白いことに、惜しげもなく金箔を使った狩野派特有の豪華絢爛なヒノキとは逆に、地味な樹木の絵が同じ時代に描かれ、それも国宝に指定されています。以前ご紹介した長谷川等伯の『松林図屏風』。



地味ですね~。水墨画なので色もなく、金箔も使っていません。私は年金を受け取る年齢ですが、まだこの枯れた境地に至っていないので(笑)、永徳のヒノキの方に惹かれます。
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戦争と野鳥

2015年03月16日 | 野鳥
「戦争は最大の環境破壊」と言われます。野鳥にとっても戦争は脅威ですが、皮肉なことに、戦争によって安楽の地が確保された鳥もいます。それがクロツラヘラサギ。
この鳥は東アジアにのみ生息し、一昨年の国際一斉調査では2,725羽が確認されました。地球上にこれだけの数しかいないわけです。国際自然保護連合のレッドリストでは絶滅危惧種に登録されています。
ちなみに、その調査時に日本で確認されたのは277羽。そのうちの1羽でしょうか、2013年1月に大阪府の池に飛来した個体を撮影したのが下の動画です。



一斉調査は日本のほか韓国、台湾、中国、香港、マカオ、ベトナムなど越冬地で行われましたが、繁殖地は朝鮮半島の西側、北朝鮮と韓国の国境エリアにある離島に限られているそうです。
このあたりは非武装地帯になっていて人間が上陸せず、クロツラヘラサギにとっては繁殖に適した環境になっているのです。餌場も近くにあるようです。
戦争が生み出した局所的な環境ですが、野鳥も人間も安心して生きるためには、世界中を非武装地帯にするべきなんでしょうね。
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餌付け撮影

2015年03月12日 | 野鳥
大阪郊外の都市公園へ鳥の観察&撮影に出かけました。
目当ての一つはミヤマホオジロでしたが、そのポイントには数人のフォトグラファーがいて餌を撒いていました。餌付け撮影はしたくないので、その場を退去しました。別の場所ではミルワームを撒いてルリビタキを撮影していたので、諦めて通り過ぎました。
この公園には大きな池があって、毎冬50羽ほどのオシドリが滞在します。池の周囲のドングリを食べるようですが、それだけでは足りないので、管理事務所の方が園内のドングリを拾い集めてオシドリに与えています。これも餌付けですが、抵抗なく撮影しました。



佐渡のトキは国家的な餌付けプロジェクトですし、北海道ではタンチョウに、東北地方ではハクチョウに餌を与えていますが、それらは保護のためですから否定しません。
また、NHKやBBCの野鳥番組には餌付け撮影としか思えないシーンがありますが、教育的意義があるので否定しません。
さらに、朝の散歩でヤマガラにヒマワリの種をやるのを楽しみにしている人がいますし、庭に餌台を置いて野鳥を観察する人もいます。私自身もやっていたくらいですから、これも否定しません。
しかし、撮影するために餌付けするのはマナー違反だと思います。鳥の野性を損なうのはもちろん、ヤラセ写真は人を欺くからです。餌付けを隠してブログに掲載したり人に見せれば、「自然に撮った野鳥の写真」と思って見る人をだますことになります。そして、自分自身も裏切ることになります。
不愉快なので別の場所に移動してベンチに座っていると、目の前の葦原からヒクイナが出てきました。餌付けする人もフォトグラファーもいません。独り占めで、気分よく、じっくり眺めたり撮ったりできました。



野鳥写真家の真木広造さんはご自身のホームページで餌付け撮影を擁護されています。その中で、「現在の法廷での餌付けについての判定では違法性はなし、餌付けを批判中傷した側に名誉毀損の違法性があり、慰謝料支払い命令の判決が下った判例があります。これが餌付けについての公式な判定です」と書いておられます。
餌付け撮影は法律の問題ではなく倫理の問題なので論点が違うと思いますが、図鑑『日本の野鳥650』の著者である真木さんが餌付け撮影されることは否定しません。NHKやBBCと同じく教育的意義があるからです。まれにしか現れない鳥を図鑑用に撮影するために、ご自身がおっしゃる「高度な餌付け技術」を駆使されることはあるでしょう。
しかし、一般のフォトグラファーが「こんな鳥を撮った」と自慢するために餌付けするのは、鳥と人を裏切る行為だと思います。
ヒクイナを見ていたら、同じ葦原からクイナも出てきました。



頭では餌付け撮影のことを考えながら、目はクイナとヒクイナを追いかけていました。
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ダ・ヴィンチはツリーウォッチャーだった

2015年03月09日 | 木と作家
昨年の夏「ダ・ヴィンチはバードウォッチャーだった」というタイトルで、この天才が飛行機を発明するために鳥を観察していたことをご紹介しましたが、それに加えてツリーウォッチャーでもあったようです。
ダ・ヴィンチが残した『絵画の書』という書物に「樹木と植物について」という章があり、そこに科学的な知見や樹木を描くときの法則が記されています。
例えば、「二股に分かれた枝の太さは、親枝の太さに等しい」。下の図(右)を示して、「aとbの枝をたすとeの太さに、cとdの枝をたすとfの太さに、eとfの枝をたすとpの幹の太さになる」と書いています。



その理由について、「最も太い幹の樹液が、枝を通じて分配されていくからである」と記しています。樹液が運ぶ養分は一定だから、枝の太さも合計では一定になるという意味でしょう。
また、「樹木を見る角度や距離によって光の角度が違うから色が変化する」というような描画上の法則も書き遺しています。下の絵は、木の葉を見る角度によって明るさが異なることの説明。



さらに、葉の色を出すときは、その葉の上で絵具を混ぜ、見分けがつかなくなるまで調合すればいい、とも書いています。
そこまで緻密に考え、計算して描いたから、『モナリザの微笑』や『最後の晩餐』が生まれたんでしょうね。驚きました。
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薮内正幸さんの絵

2015年03月05日 | 野鳥
大阪で「薮内正幸絵本原画展」が開催されたので、仕事の帰りに寄ってきました。
サントリーの愛鳥キャンペーンや図鑑、野鳥雑誌でしか知らない私は、「薮内正幸=野鳥画家」と思い込んでいましたが、鳥以外のさまざまな動物を描いたり、絵本の原画も手掛けておられたんですね。
日本野鳥の会に入会した25年ほど前、薮内さんのシマフクロウとオオタカとクマゲラの絵が版画3点セットで販売されていました。けっこう高価でしたが、何か惹かれるものがあって購入しました。


シマフクロウは玄関に飾っています。シリアルナンバーは290/500

薮内さんが描く鳥は、何と言うか、本物の鳥よりもかっこよく見えます。リアルなことはもちろんですが、気品というか風格があるのです。特に猛禽の絵には、近寄りがたい威厳が漂っています。


オオタカはリビングに

展覧会には小学時代の動物の絵や、高校の校舎の窓に衝突して死んだスズメの絵も展示されていました。幼い頃から60歳で亡くなるまで、一筋に動物を描き続けてこられたんですね。ものすごいエネルギーです。


クマゲラは自分の部屋にピンナップ

薮内さんは大阪出身ですが、「薮内正幸美術館」は山梨県にあります。「機会があれば」と思っていましたが、関西からは遠くてなかなか行けません。今回、故郷の大阪で展示会が開催されたので、気軽に数々の原画に接することができました。
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京都御苑の冬鳥

2015年03月02日 | 野鳥
しばらく前、京都御苑へ冬鳥観察に行ってきました。
今の時期、この都市公園で大きな群れを形成しているのはイカルかアトリ。地面に降りてカエデの種を食べ、人が近づくと一斉に樹上に逃げるという行動を繰り返しています。同じ仲間なので、食性も行動もよく似ています。
下はアトリの大群。よく見ると、餌を食べるというよりも、落ち葉をかき混ぜているだけの個体もいます。表面的には集団と同じ行動をしながら、実際には別のことをしている不真面目なヤツなのでしょう。私自身も覚えがあります(笑)。



昨年はトラツグミが少なくて結局見つけられなかったのですが、今年はあちこちで遭遇。合計7羽を確認しました。
下の動画では大きなミミズを引っ張り出しています。人が近づいたので、樹上に“お持ち帰り”してゆっくり食べていました。



目当てのミヤマホオジロやアオバトには出会えなかったものの、「そろそろ帰ろうかな」と思った頃にルリビタキの成鳥オスが出現。これまで京都御苑ではメスタイプには何度も出会っていますが、青いルリビタキは初めて。



いつもの散歩コースでも初めて青いルリビタキに出会ったので、今年はハッピーになれるかな。
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