樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の記憶力

2015年11月26日 | 野鳥
今年の2月に近くの山へ出かけた際、ヤマガラが一生懸命、崖の土を掘っているシーンに出くわしました(下の動画)。
ヤマガラは秋にドングリを埋め隠し、食糧が少ない冬に掘り出して食べる「貯食行動」で知られています。
このヤマガラをずーっと観察していましたが、ついにドングリをゲットできず、あきらめて飛んでいきました。多分、ドングリを埋めた正確な場所を忘れて、見当はずれな所を掘り返していたのでしょう。



このヤマガラはオスかも知れません。というのは、(シジュウカラの場合ですが)オスはメスよりも記憶力が劣っているという研究結果があるからです。
スウェーデンのルンド大学が、シジュウカラのオスとメスの記憶力をテストしました。シジュウカラは他の鳥が食料を隠すのを観察し、その場所を覚えて、その鳥がいなくなったところで食料を盗む習性があるそうです。この話は初耳ですが、ヨーロッパのシジュウカラはそういう習性があるのかもしれません。
その習性を利用して、まずハシブトガラが餌を隠すところをシジュウカラに見せ、1時間後にハシブトガラをケージから出して、シジュウカラが餌のありかを覚えているかをチェックするという実験です。
その結果、メスは40%の確率で餌の場所を覚えていたのに対し、オスは15%しか覚えていなかったそうです。
私も最近、大切なものをどこに保管したのか忘れて、家中をウロウロすることがあります。一昨年は、免許証や健康保険証を入れたパスケースを紛失して警察に被害届を出したものの、翌日机の上の書類の間から出てきたため、宇治警察署に謝りに行ったことがありました。
オスだからでしょうか、それとも加齢による記憶力の低下でしょうか。
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地球には何本の樹木があるか?

2015年11月19日 | 樹木
アメリカのイエール大学の研究チームが、地球上にある樹木の本数を調べました。結果を先にお伝えすると、3兆4000億本。人口1人当たり422本だそうです。
同様の調査は過去にも行われていて、そのデータでは4000億本、1人当たり61本でした。衛星画像と森林面積の推定値からはじき出した数字だそうです。



ところが、イエール大学の研究チームは、衛星画像から木の密度を推定しただけでなく、地上40万カ所で実際の樹木の数をカウントしたとのこと。さらに、スーパーコンピュータを駆使して、南極大陸以外の地域の樹木の数を表した世界樹木地図を作成しました。
40万カ所もの地点を誰がどうやってモニタリング調査したのか興味がありますが、現在のところ最も正確な樹木調査のようです。
また、この研究チームによると、人間の文明が始まった頃に比べると、樹木は46%減っているとのこと。ということは、当初は25兆本もの樹木があったということになります。
さらに、この研究チームは「今のままでは150年後には樹木が半分に減る」と警告しています。
数字だけ並べられても実感が湧きませんが、樹木を大切にしないといけないということですね。
イエール大学の世界樹木地図はこちら
緑が濃いほど樹木が多く、黄色が濃いほど少ないことを示しています。
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愚鈍なタカ

2015年11月12日 | 野鳥
バードウォッチャーにとってはタカの渡りが終れば秋も終わり。今は冬鳥の到来を待つ時期です。
宇治市と大津市の境にあるタカの観察ポイント・岩間山でも9月5日から始まった渡り調査が11月6日で終了しました。この2か月間、雨天を除いて毎日、調査メンバーが出向いてカウントしました。みなさま、お疲れさまでした。
今年はサシバ4,736羽、ハチクマ1,197羽、ノスリ2,214羽、その他ハイタカやハヤブサの仲間なども含めて8,889羽が渡っていきました。
私は9月に4回、10月下旬にはノスリの渡りを見るために参加しました。ノスリはのんびりしたタカで、マイペースでポツリポツリと渡っていきます。



ウィキペディアによると、「鷹狩に使えないため、役に立たない鷹として、奈良時代には『くそとび』と呼ばれた」そうです。猛禽らしくないタカなんですね。
子どもの頃、すばしっこい鼠年の兄と比べられて、牛年の私は「鈍くさい子」と言われていたので、そんな愚鈍なノスリに親近感を覚えます(笑)。
ノスリとは逆にすばやい飛行で渡っていくのがハイタカ。ノスリはのんびりしているのでカメラでも追いやすいですが、ハイタカは速いので動画に収めるのは大変です。



「私がノスリなら、兄はハイタカだな」と思いながら、天空を渡るタカを眺めていました。
この山では小鳥たちの渡りも観察できます。下はエゾビタキ。撮影したのは9月末です。



エゾビタキはシベリア南部~カムチャッカ半島あたりで繁殖し、日本を通過して東南アジアへ渡っていきます。サシバやハチクマは日本で繁殖して数千キロ離れた東南アジアへ向いますが、こんな小さな鳥がタカ以上に長い距離を飛んでいくわけです。健気だな。
「無事に渡れよ」と声を掛けてやりたいですね。
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白いキジと黒いキジ

2015年11月05日 | 野鳥
日本の元号に一つだけ野鳥が登場します。大化の改新(646年)の後、650年~654年まで使われた「白雉(はくち)」。
ある解説によると、現在の山口県の国司から白いキジが献上されたため、これを瑞祥として改元したとのこと。その話を読んだときは、キジの白化個体が献上されたと解釈していました。
ところが、先日『魏志倭人伝』の中に「この国には黒いキジがいる」という記述があることを知って、その解釈は間違いではないかと思い始めました。
下の画像は『魏志倭人伝』の現物ですが、右ページに「その地(日本)には、牛も馬も虎も豹も羊も鵲(カササギ)もいない」と書いてあります。カササギは秀吉の朝鮮出兵までは日本にはいなかったので、こういう記述になるわけです。そして、左には「黒い雉がいる」と書いてあります。


画像はパブリック・ドメイン

日本の鳥に関する最古の記述はキジということになりますが、日本のキジを「黒い」と感じるのは、中国大陸のキジ(コウライキジ)と比べてのことでしょう。コウライキジを見慣れている中国人が日本のキジを見て「黒い」と感じるのは不思議ではありません。


図鑑『フィールドガイド日本の野鳥』のキジ(上)とコウライキジ(下)

逆に言えば、日本のキジを見慣れている日本人にはコウライキジが白く見えるはずです。つまり、「白雉」という元号は白化個体ではなくコウライキジに由来するのではないか、というのが私の推測。
朝鮮半島から対馬あたりにコウライキジが移入され、それが今の山口県の国司に渡り、さらに朝廷に献上されたのではないでしょうか。
ちなみに、「白雉」の次の元号は「朱鳥(しゅちょう)」。686年に1年だけ使われた元号ですが、「朱雀」の別名とも言われ、中国の伝説上の不死鳥を意味するようです。これ以降、鳥がらみの元号は登場しません。
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