樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の大量死

2022年07月28日 | 野鳥
今年2月7日、メキシコのチワワ州で、空から黒い雲のような鳥の大群が落下し、多くは再び舞い上がりましたが、地面に数百羽の死骸が散乱するという不思議な現象が発生しました(下の動画)。



この鳥は、カナダ南部からメキシコ北部の西側に生息するキガシラムクドリモドキ。専門家は「致死性の化学物質の中を飛行したのではないか」とか、「ムクドリモドキは大群で空中を旋回して捕食者から逃れる習性があり、ハヤブサに追われたのではないか」と推測していますが、確かな原因は不明です。


キガシラムクドリモドキ(pixabay)

2021年5月~6月には、米国東海岸の12州でアオカケス、コマツグミ、ホシムクドリなどの幼鳥数千羽が死亡し、西ナイルウイルスや鳥インフルエンザの感染が疑われましたが、検査結果は陰性でした。
こうした鳥の大量死は日本でも発生しています。例えば、2015年1月には埼玉県内でカラスの死骸が111羽発見され、県が調査したところ外傷や鳥インフルエンザの感染はなかったとのこと。また、2010年には北海道岩見沢市でムクドリ114羽、1999年には北海道の沿岸でウトウ約1500羽の死骸が発見されています。
ある野生動物専門医が世界で発生した鳥の大量死19例をリストアップし、その死因を報告しています。鳥コレラ、西ナイル熱、ボツリヌス症、鳥インフルエンザなどの病気や、殺鼠剤、融雪剤、農薬、鉛中毒など人間由来の原因が多いですが、上述の岩見沢市のムクドリと北海道沿岸のウトウの死因は不明とのこと。
また、日本の海岸に多数のハシボソミズナギドリの死骸が漂着することに関して、山階鳥類研究所の研究者が調査し、その原因を発表しています。死骸はほとんどが幼鳥で、体重は健常個体の約6割。「肝臓、筋肉などが極度に小さく、脂質は全身で4グラムが残るのみ、筋肉中のタンパク含量の低下はもとより、造血組織の骨髄の組成まで変化していた」そうです。


ハシボソミズナギドリ(pixabay)

この鳥はオーストラリアの島々で繁殖を終え、北太平洋で越冬するため成鳥は最短コースで渡りますが、1カ月遅れて幼鳥が渡る頃には太平洋で東寄りの強い風が吹くため西側に吹き寄せられ、飛行距離が2割長くなり、渡り日数も増加。その結果、エネルギー不足に陥って餓死し、日本の沿岸に漂着するそうです。
原因は病気や環境変化ではなく自然現象であると判明したわけですが、上にご紹介した多くの大量死は謎のままです。
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窓からバードウォッチング

2022年07月21日 | 野鳥
前回の餌箱のシジュウカラもそうですが、最近なぜか家の窓から野鳥を観察する機会が増えました。そして、新しいコンパクトデジカメのズーム機能が優れているので、窓際に置いて手軽に三脚なしで動画撮影しています。
下は、お隣の屋根のアンテナに止まったキセキレイ。セグロセキレイやハクセキレイは珍しくないですが、黄色いセキレイが近所で見られる機会は少ないです。



同じ日に、2階の窓のすぐ前の電線でシジュウカラが採餌しているところをキャッチ。餌箱にヒマワリの種を入れる前なので、何か別の餌をゲットしたようです。胸のネクタイ(黒い帯)が不鮮明で、羽毛が立っているので若鳥でしょう。



イソヒヨドリの若鳥もウロウロしています。わが家で生まれた個体かどうかは不明ですが、お隣の屋根やわが家のフェンスによく止まっています。妻によると、ブルーベリーの実を食べに来るそうで、「ヒヨドリは追い払うけど、イソヒヨドリには食べさせてあげる」とのこと。



10日ほど前からほぼ毎日、わが家やお隣の庭から大きな声で「ホーホケキョ!」が聞こえていました。「わが家でウグイスが繁殖?」と一瞬喜びましたが、時期的には遅いので「変だな」と思っていました。数日後、シジュウカラが採餌していたのと同じ電線に止まってしばらくさえずってくれました。



羽が1本逆立っていたり、羽毛がバラついているので若鳥のようです。親に教わったさえずりを練習しているのでしょうが、それにしては上手。成鳥のさえずりと引けを取らない鳴き方です。
居ながらにして野鳥が観察できるのはうれしいのですが、朝食や昼食がそのたびにストップするので、消化にはよくないでしょうね。
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シジュウカラへの給餌

2022年07月14日 | 野鳥
一般の方から野鳥の会に「庭に来る鳥に餌をやってもいいですか?」とか「鴨川で鳥にパンくずを与えている人がいますが、いいのでしょうか?」いう問い合わせがきます。基本的には、餌の少ない冬に限って、他の人の迷惑にならない場所で、塩分や人工添加物を含まないものならOKですと回答しています。1年中給餌すると、自力で餌を捕る野生の力が低下するからというのがその理由です。
それとは矛盾しますが、自宅周辺にスズメやシジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、ヒヨドリ、イソヒヨドリなどの幼鳥ががウロウロしているので、何を食べるのか知りたくて、冬に使っている餌箱にヒマワリの種を入れてしばらく観察することにしました。



結局、やって来たのはシジュウカラだけ。幼鳥は全部で4羽いるようです。昨年まで掛けていたシジュウカラの巣箱が壊れて今年は設置していないので、わが家で繁殖した家族ではありません。
動画を見ると、親鳥が幼鳥に種を与えたり、割りやすい種を選り好みしたりしています。気に入らない種は下に落とすので、餌箱が1日で空っぽになります。このままでは幼鳥が給餌に頼って、自力で採餌する能力が育たないと思って、ヒマワリの種は補充しないことにしました。シジュウカラには「中途半端なことするなよ! 給餌するならずーっと続けろよ!」と怒られそうですが、やはり野生動物の生態にはできるだけ人間は関わらない方がいいですね。
私の散歩コースでは、毎日ヤマガラにヒマワリの種やピーナッツを与えているお爺さんがいます。故郷の丹後の観光船では、乗客がカモメに与える「かっぱえびせん」を販売しています。できれば塩分や添加物入りのものは避けてほしいですが、愛鳥の気持ちが育つこともあるでしょうから、表立っては反対できません。給餌の是非を論じるのは難しいです。
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コシアカツバメ

2022年07月07日 | 野鳥
前回、近くの陵墓にあるサギのコロニー(集団繁殖地)をご紹介しましたが、その隣にある京阪宇治駅にはコシアカツバメのコロニーがあります。下は、宇治川サイドから見た駅舎。大きな丸い開口部から鳥が自由に出入りしています。



設計したのは、南海電鉄の空港特急ラピートをデザインしたことで知られる若林広幸さん。この駅はグッドデザイン施設に選ばれていますし、「近畿の駅百選」にも認定されています。
以前から約30個のコシアカツバメの巣があったので、個人的に調査しようと思い、昨年の繁殖が終わった後に下見をしたのですが、巣がほとんど取り払われていました。調査はあきらめましたが、今年の営巣状況を確認するために出向いたところ、ツバメたちは再び巣づくりをしていました。
普通のツバメはお椀型の巣をつくりますが、コシアカツバメは天井に泥を塗り固めて、花瓶を半分に割った形の巣をつくります。



宇治川に近いので、巣材になる泥はいくらでも入手できますし、ヒナの餌となる水生昆虫も無数に飛んでいますから、ツバメにとっては理想的な繁殖環境です。巣を取り払っても新たに営巣するので、多分イタチごっこになるでしょう。



駅舎内部は、当時流行したコンクリートの打ちっ放しですが、飛び回るツバメの糞でご覧のように汚れています。駅長は、大切な駅を糞で汚されたり、乗降客に糞を落とされたりしては困るので巣を撤去したのでしょう。愛鳥家としては巣を壊さないでほしいと思いますが、駅長の気持ちも理解できます。



日本野鳥の会は3年前からツバメの繁殖を見守ってくださるお店や団体に感謝状を贈呈しています。京都支部でも先日、カラスが巣を壊さないようにネットを張ったり、糞よけの注意喚起をしてくださっているコンビニに感謝状をお渡ししました。
個人的には京阪宇治駅もその候補に考えていたのですが、この状況では難しいですね。
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