樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

爆弾からウグイスへ

2012年03月29日 | 野鳥
昔懐かしいお菓子の一つに「鶯ボール」があります。若い頃は見向きもしませんでしたが、最近は懐かしさにつられて時々買って食べます。
以前からあのお菓子がなぜウグイスなのか、疑問になっていたので調べてみました。



メーカーの植垣米菓のWebサイトには次のように書いてあります。「昭和5年の発売当時、支那事変があり、肉弾三勇士が話題となっていましたので、製造過程の油揚げ時のはじける状態により「肉弾ボール」「爆弾ボール」と呼ばれていましたが、戦後、平和の到来とともに現在の「鴬ボール」と改名いたしました」。
なぜウグイスかについては、「形が梅のつぼみに似ているところから、梅に鴬の発想で命名された登録商標名」なのだそうです。「爆弾」が終戦とともに「鶯」に変わったわけです。
しかし、当ブログで何度か指摘していますが、「梅にウグイス」は間違いで「梅にメジロ」が正解。そして、パッケージにわざわざウグイス色で鳥の絵が描いてありますが、下の写真のように、ウグイスはウグイス色ではなくグレー~薄茶色で、(ややこしいですが)メジロがウグイス色。



正確には「めじろボール」と命名すべきですね(笑)。ちなみに、鶯ボールの白い部分はお餅で、茶褐色の部分は小麦粉だそうです。

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鳥の社会貢献

2012年03月26日 | 野鳥
横断歩道の青信号の音を思い出してください。ほとんどの場合「カッコー、カッコー」または「ピヨピヨ、ピヨピヨ」です。
カッコウとヒヨコの擬音であることは自明ですが、「カッコー」は東西方向(または主道路)、「ピヨピヨ」は南北方向(または従道路)の横断歩道を示していることを私は知りませんでした。
バードウォッチャーの習性で、街の雑踏の中でも鳥の声がするとつい聞き耳を立てます。例えば、たまに乗り降りする大阪・環状線の京橋駅ではホームのスピーカーからこんな声が聞こえてきます。(音声ファイルがアップできないので動画でアップします)



日本三鳴鳥の一つコマドリです。この「ヒン、カラララ~」という声が馬のいななきに似ているので「駒鳥」と名づけられました。
また、同じく環状線の福島駅のホームではミソサザイのさえずりが聞こえてきました。下は私が栃の森で撮ったミソサザイ。これと同じ声が駅のホームに流れているのです。



カッコウやウグイスなど一般によく知られている鳥の声ならともかく、こんなマニアックな鳥の声が大都会の真ん中で聞こえてきたので、一瞬耳を疑いました。
さらに、たまたま仕事で通った阪和線の美章園という駅では、こんな声が流れていました。



サンコウチョウのさえずりです。この声が「月、日、星、ホイホイホイ」と聞こえるので「三光鳥」。
「なぜ駅で鳥の声が?」と不思議に思って調べてみると、国交省の指導でした。駅のバリアフリー化が進んで、視覚障がい者が公共交通機関を利用する機会が増えたので、いろいろな音で誘導するようにガイドラインを作成したのです。
例えば、改札口や地下鉄の地上出入口では「ピンポーン」、トイレでは「向かって右が男子トイレ、左が女子トイレです」と音響で知らせるように指導しています。
そして、ホームの下り階段では、転落事故を防ぐために「鳥の鳴き声を模した音響」を流すようにガイドラインに明記しています。
そういえば、私がいつも利用している京阪電車の中書島駅でも、京都方面のホームではカッコウ、大阪方面のホームではホオジロの声が流れています。
横断歩道の「カッコー」は視覚障がい者に東西南北や道路の大きさを知らせるため、駅のさえずりは下り階段の位置を教えるため。鳥も意外なところで社会貢献しているんですね。
みなさんがよく利用される駅でも一度チェックしてみてください。

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俳句と科学

2012年03月22日 | 木と作家
『吾輩は猫である』などの小説で知られる夏目漱石は俳人でもあり、2500首以上の俳句を残しています。その中に次の一句があります。
  落ちざまに虻を伏せたる椿かな
アブがツバキの蜜を吸っている最中に花が落ちたので、その中に閉じ込められたという句です。
ところが、漱石の門下生の一人、物理学者であり俳人、随筆家でもある寺田寅彦が、この俳句に疑問を持ちます。「たとえそれが落ち始める時にはうつ向きに落ち始めても、空中で回転して仰向きになろうとするような傾向があるらしい」。
ツバキの花は元の方が重いので、うつ向きには落ちないのではないかという疑問です。物理学者らしい発想ですね。


ツバキで有名な近くのお寺の庭。仰向きに落花しています

尊敬する先生の俳句と科学的真実の矛盾に悩んだでしょうね。寅彦は観察と実験を試みます。そして、「木が高いほどうつ向きに落ちた花よりも仰向きに落ちた花の数の比率が大きいという結果になるのである。しかし、低い木だとうつ向きに枝を離れた花は空中で回転する間がないのでそのままにうつ向きに落ちつくのが通例である」という結果を得ます。
低い枝から落ちれば回転する暇がないので、鉢を伏せた状態で落ちるというわけです。


お寺の庭にもうつ向きの落花がいくつかありました

そして、「この空中反転作用は花冠の特有な形態による空気の抵抗のはたらき方、花の重心の位置、花の慣性能率等によって決定されることはもちろんである。それでもし虻が花の芯の上にしがみついてそのままに落下すると、虫のために全体の重心がいくらか移動しその結果はいくらかでも上記の反転作用を減ずるようになるであろうと想像される。すなわち虻を伏せやすくなるのである」と続けています。
さらに、「自分はこういう瑣末な物理学的の考察をすることによってこの句の表現する自然現象の現実性が強められ、その印象が濃厚になり、従ってその詩の美しさが高まるような気がするのである」と結んでいます。
寺田寅彦は物理学者として大きな業績を残しながら、文学や西洋音楽にも造詣が深く、漱石の小説の中にもモデルとして登場するそうです。「天災は忘れた頃にやってくる」は寅彦の言葉といわれています。


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鳥もどき

2012年03月19日 | 野鳥
日本で見られる鳥で最も大きな群れをつくるのは、冬鳥のアトリでしょう。20年ほど前、岐阜県の山中に数十万羽の群れを見に行ったことがありますが、谷一面を埋め尽くすように飛ぶアトリの大群は壮観でした。
2年前にも郡上八幡市に50万羽の群れがやってきたそうです。私は信用していませんが、アトリの名の由来は「集まる鳥」という説もあります。
下の動画は昨年の11月、栃の森で撮ったアトリの群れ。数百羽の小さな群れですが、それでも迫力があります。



こういう鳥の群れの動きをコンピュータで再現するために、あるプログラマーがBoid(ボイド)というシミュレーションプログラムを開発しました。
コンピュータ上の鳥に3つのルールを与えると、群れの行動がシミュレーションできるというものです。その3つとは、①分離(他の鳥とぶつからないように離れる)、②整列(近くの鳥に速度と方向を合わせる)、③結合(鳥が多くいる方向に向かって飛ぶ)。
分かったような分からないようなルールですが、この3つで鳥の群れと同じ動きがコンピュータ上で再現できるそうです。


群れでは大迫力のアトリも単独で見ると可愛い小鳥

BoidはBird+oid(もどき)=Birdoidを略したもので「鳥もどき」という意味だそうです。
次の動画はイギリスで撮影されたムクドリの大群ですが、これも3つのルールで動いているわけです。龍が空を飛んでいるように見えます。



このシミュレーションは鳥だけでなく、イワシやアジなど魚の群れにも当てはまるそうです。そういえば、鳥の群れも魚の群れも同じ動きですね。

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ミヤコドリと都鳥

2012年03月15日 | 野鳥

日曜日、いつもの仲間3人で伊勢湾へ鳥見ツアーに行ってきました。1月の湖北に続いて2回目のミニツアーです。

主な目的は三重県津市の安濃川河口にいるミヤコドリ。私にとっては17年前の九州ツアーと4年前の沖縄ツアー以来、3度目のご対面です。

ここで越冬するミヤコドリは年々増えているようで、私たちが観察した時には48羽が群れていました。

 

上の動画の背景に写っている白い鳥はユリカモメ。以前ご紹介しましたが、平安時代に「都鳥」と呼ばれたのはこっちのユリカモメです。つまり、安濃川河口には現在の「ミヤコドリ」と昔の「都鳥」が同居しているわけです。

現在のミヤコドリは貝が大好物で、英名もOystercatcher。そういえば、「その手は桑名の焼きハマグリ」で知られる桑名も伊勢湾に面していますから、この辺りは貝が多いのでしょう。安濃川河口の後に寄った雲出川河口では、早くもたくさんの人が潮干狩りをしていました。

その横の干潟でチョコマカ走っているのはシロチドリ。リレーのように次々と走り出します。

可愛いですね~。このシロチドリは三重県の鳥に指定されています。

このほか、ウミアイサやホオジロガモなどたくさんの水鳥、イソヒヨドリやツグミなどの小鳥、チュウヒやハイタカなどの猛禽類を堪能してきました。

 

ボサボサ頭のウミアイサ

ところで、三重県は近畿地方なのでしょうか、東海地方なのでしょうか。地図の区分や「広辞苑」では近畿地方ですが、高校野球は東海ブロック、電力会社は中部電力、裁判所の管轄は名古屋高等裁判所です。三重県庁は「どっちでもある」と答えているそうで、コウモリみたいな県ですね(笑)。

 

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津波と木

2012年03月12日 | 木と防災

東日本大震災から1年が経ちました。現地の様子をテレビで見るたびに心が痛みますが、逆に元気づけられたり、ほっとさせられることもありました。

樹木では、陸前高田市の「奇跡の一本松」。写真集が発行され、特に東北地方でよく売れているそうです。

津波と樹木について最近知ったことですが、百人一首に次のような歌があります。

  ちぎりきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 浪越さじとは

意味は、「約束しましたよね、涙を流しながら。末の松山が決して浪をかぶることがないように、2人の愛も変わらないと」。作者は、清少納言の父親の清原元輔。

この歌は、貞観11年(869)の巨大地震で東北地方が津波の被害を受けた史実を背景にしているそうです。貞観地震でも津波をかぶらなかった「末の松山」が不変の象徴として歌われているのです。

「末の松山」の場所は定かではありませんが、宮城県多賀城市にある宝国寺ではないかと推測されており、境内にある推定樹齢480年のクロマツがその名残ではないかと言われています。

 

宇治川べりのクロマツ

 このお寺は海岸線から2kmの地点にあり、今回の津波でも石段までは水に浸かったものの波はかぶらず、約100人の市民が避難してきたそうです。

「奇跡の一本松」はクロマツとアカマツの交配種だったようですが、昔から「白砂青松」と言われるように海岸にはクロマツを植えることが多いので、津波をかぶることも多かったのでしょう。

 

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木造建築の火災実験

2012年03月08日 | 木造建築

先日、つくば市で3階建ての木造校舎の火災実験が行われました。

「公共建築物木材利用促進法」が制定され、校舎などに国産木材を使おうという機運があるのですが、現在の建築基準法では2階建てしか許可されません。それを緩和するために実物大の木造3階校舎を建て、その耐火性を検証しようというのです。

国交省、大学、ハウスメーカーの産官学共同の研究チームが、軸組工法(Aブロック)と枠組壁工法(Bブロック)の2つの工法で、延べ2260㎡の校舎を設計・建設。実験では、1階の職員室に点火されました。その様子が以下の動画。

  

 点火から1時間15分後にはAブロックのうち、防火壁とBブロックに挟まれた区画が丸ごと倒壊。その10分後にはBブロックの一部、さらに9分後にはBブロックのほとんどが倒壊し、1時間36分後には防火壁が崩れ落ちたそうです。

使用された主な木材はスギ集成材とカラマツ集成材。校舎の建築費は3億円だそうです。その額に驚きましたが、調べてみると、実験のためにいろんな装置やシステムを組み込んでいるようです。

一応、火災発生後1時間もてば準耐火構造ということになるようですが、1時間15分というのは微妙な数字ですね~。確証を得るために、もう一度実験するそうです。

このニュースを見て、私は黒澤明の映画『乱』を思い出しました。城が炎上するラストシーンのために、実物大の城を建てたのです。建築期間は4カ月、建築費はなんと4億円! 今回の実験棟のさらに上をいくわけです。

その炎上シーンを背景に主役が放心状態で階段を降りてくるのですが、撮り直しがきかない1発勝負。主演の仲代達矢は、失敗すれば4億円がパーというプレッシャーの中で演技したのです。映画俳優にならなくてよかった~(笑)。

黒澤監督は『赤ひげ』の時も、薬箪笥の外側しか映らないのに、すべての引き出しに薬を入れさせたという逸話が残っています。撮影へのこだわりは尋常ではないですが、それにしても、わずか1~2分のシーンのために4億円かけて城を建てる? 映画監督にならなくてよかった~(笑)。

 

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ヘビメタの鳥

2012年03月05日 | 野鳥

冬鳥として近くの干拓田にやってくるタゲリは、「私の好きな鳥ベスト10」のひとつです。

別名「田園の貴婦人」。金属光沢の美しい翼や頭の飾り羽からそう呼ばれるのでしょうが、私は「貴婦人」というよりもコミカルなイメージの方が強いです。

次の動画のようにトコトコ走る姿は、「貴婦人」というよりも「近所のおばさん」。目の下に隈もあるし、鳴き声も「ミュウ」と猫のようだし、私にはとぼけた味わいのあるヒョウキンな鳥です。だから好きなんです。

 

 

 

タゲリの英名はLapwing。このLapは何だろうと思って調べたら、どうも「研磨」のようです。「ラップ研磨」という技術もあって、CDDVDのような鏡面仕上げの際に使うとか。タゲリは「研磨仕上げの翼」を持つ鳥ということです。

以前、「鳥の色②」で構造色をご紹介しましたが、タゲリの翼も構造色によって独特の金属光沢を発しているわけです。メタリックグリーンというのか、角度や光の強さで微妙に色が変化します。イギリス人はそれを研磨した金属に例えたのでしょう。

最も金属光沢の強い、音楽で言えばヘビメタ系の鳥。

田園の貴婦人? 近所のおばさん? ヘビメタ? イメージがバラバラです(笑)。

 

 

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雁が音

2012年03月01日 | 野鳥

前回、雁が枝をくわえて飛ぶという話をご紹介しましたが、雁と枝を結びつけたものがもう一つあります。

宇治に住んでいるからというわけではありませんが、私は緑茶が好きで、1日に10杯くらい飲みます。使っているのは「雁が音(かりがね)」という種類。

柔らかい茶の葉は玉露など高級な煎茶にしますが、葉の軸や小さな枝が混じったものは、味はさほど変わらないのに見た目が悪いので普及品として売られます。これが「雁が音」。

 

 

私が愛飲している「雁が音」。軸や枝が混じっています

 

なぜお茶の名前に鳥が登場するのか? 宇治のお茶屋さんのWebサイトを見ると、「雁が枝をくわえて飛ぶことにちなんで、枝が混じった茶葉をこう呼びます」みたいなことが書いてあります。

この「雁が音」も多分、出所は前回ご紹介した江戸時代の書物でしょう。

 

 

雁の一種、オオヒシクイ(湖北で撮影)

 

しかし、それならなぜ「雁が枝」ではなく「雁が音」なのでしょう。枝をくわえることに由来するなら、雁の「音」というネーミングにはならないはず。しかも、ややこしいことに、ガンの仲間には「カリガネ」という種類もいるのです。関西にもたまに飛来しますが、私はまだ見たことがないです。

なぜ雁の「音」なのか? お茶の「雁が音」が先か、鳥の「カリガネ」が先か? また疑問が増えました。

 

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