樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

白い鳥たち

2022年11月24日 | 野鳥
日本の元号は295あり、その中に鳥を意味するものが2つあります。初めての元号「大化」の次に制定された「白雉(はくち)」と、その次に制定された「朱鳥(しゅちょう)」。後者は朱雀(すざく)とも言われる中国の伝説上の鳥ですが、白雉は文字どおり白いキジ。
『日本書紀』によると、大化6(650)年2月9日に白いキジが献上され、喜んだ天皇はその年の2月15日を以って白雉と改元したそうです。当時は白化個体の出現を吉祥と考えていたわけです。


クジャクの白化個体(pixabay)

体色が白くなる理由は2つあって、1つは突然変異によってメラニン色素が生成されなくなる「白化症」。これがいわゆるアルビノで、鳥では10万~100万羽に1羽くらいの確率で発症するそうですが、視覚障害を起こして採餌や飛行ができず自然界では生きていけないので、私たちがアルビノの鳥に遭遇することはほとんどないといいます。 
もう1つは「白変症」。体は白いものの眼には色素が残っていて視覚は機能するので生存できます。体のメラニンと眼のメラニンは生成過程が異なるので、こういうことが起こるとのこと。
この白変症の中には、体の一部が白くなる「部分白変」と全身が真っ白になる「完全白変」があります。京都では昨年、桂川で完全白変のカンムリカイツブリが発見されました。
しかし、鳥の体色は色素だけでなく、太陽光を反射して表現される構造色(青、緑、紫など)もあります。キジやオシドリの完全白変個体は現在でも時々出現しており、その一部の体色は構造色であるはずなのに全身真っ白になっているのはなぜなのか。いろいろ調べましたが、この疑問はまだ解けません。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バリアフリー探鳥会

2022年11月17日 | 野鳥
コロナのために2年間中止していましたが、先週の土曜日、3年ぶりに身体障害者のためのバードウォッチング「バリアフリー探鳥会」を開催しました。主催は京都支部、協力は京都市身体障害者団体連合会ですが、5年前に私が企画や準備に奔走して始めたイベントです。
車イスの方だけでなく、手足が不自由な肢体障害者、視覚障害者、聴覚障害者、さらには車イスの高齢者やベビーカー利用の家族も対象で、障害の種類を問わないバリアフリー探鳥会は全国でも京都支部だけのようです。
今年は肢体障害者5名、車イス利用者2名、視覚障害者2名が参加され、介護者や支部のスタッフを含めて総勢22名。賀茂川右岸を北大路橋から出町橋までゆっくり歩きながらカモなど水鳥を観察しました。



当日は天気に恵まれ、ユニフォームのジャンパーを着ていると汗ばむほど。鳥もたくさん出現し、カワアイサやヒドリガモなどのほかコゲラやモズも見られました。最後に待望のカワセミも登場し、「キレイ!」と歓声を上げる方もいらっしゃいました。
普通の三脚では車イスがつっかえてスコープを覗けないので、広く開脚する三脚を調達し、2名の車イス利用者にも鳥をアップで見ていただきました。視覚障害者には点字図鑑と音声ツールによる鳥の声で案内しました。



わざわざ大阪市から参加された視覚障害者は「素晴らしい催しです。来年もやってください」とメールをくださいました。また、今回初めて車イスの会員が参加されました。2年前に入会したものの、いつも家の窓から鳥を見ているとのこと。今回が探鳥会デビューとなり、「夢のような時間でした」とおっしゃっていました。障害者同士、あるいは障害者と会員の交流も生まれているようです。
準備が大変なので、一時「もう止めようかな~」と思ったこともありましたが、そういう声に接すると「また来年も!」という気持ちになります。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥の死因第1位は猫

2022年11月10日 | 野鳥
アメリカのある研究者によると、米国内の鳥の死因の第3位は車への衝突、第2位はビルへの衝突、そして第1位は猫による捕食とのこと。猫を飼っていない私でも「ホンマかいな?」と眉に唾をつけたくなりますが、別の研究チームが米国内では年間14億~37億羽の鳥が猫の犠牲になっているという論文を発表しました。
飼い猫や野良猫による捕食を統計としてまとめ、体系的に分析したそうです。鳥だけでなく、ネズミやリス、ウサギなど小型ほ乳類も推計していて、その数は鳥より多い69億~207億匹。
北米のような温暖な地域では、屋外に出る猫は1匹あたり毎年30~47羽の鳥、177~299匹の小型ほ乳類を捕食していることが過去の調査で分かっているそうで、米国にはおよそ8400万匹の飼い猫がいて、そのうち数百万匹は屋外に出ない一方、野良猫が3000万~8000万匹いると推定。これらから上記の数字を算出したのです。


小鳥を捕食する猫(pixabay)

カナダの環境省も、年間2億羽の鳥が猫に殺されており、最も多い鳥の死因が猫であると発表しています。そして、「飼い猫を家の中にとどめておくことで、カナダだけで毎年 2 億羽の鳥を救うことができる」とアピールしています。
米国にはアメリカ野鳥保護協会という団体があり、Cats Indoors、つまり飼い猫を屋内に閉じ込めるか紐でつなごうというキャンペーンを展開しています。


巣箱のヒナを狙う猫(pixabay)

猫による野生生物の被害が深刻なのは島。国際自然保護連合が毎年更新しているレッドリストによると、島に生息する猫が原因で絶滅した動物は鳥類、ほ乳類、は虫類合わせて33種に上るとか。
そういえば、日本でも北海道の天売島ではウトウを、小笠原諸島ではアカガシラカラスバト(亜種)を、沖縄ではヤンバルクイナを守るために野良猫を捕獲しています。
鳥も好き、猫も好きという方には悩ましい問題ですね。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥もSNSを使う?

2022年11月03日 | 野鳥
私はツイートを利用しませんが、鳥たちが情報をリツイートしたり、フェイクニュース対策をしているという研究報告がアメリカで発表されました。
アメリカコガラは捕食者を発見すると警告の声を発します(ツイート)。しかも、「地上の蛇」「空を飛ぶ鷹」「木にとまっている鷹」などの特定の情報と危険レベルを鳴き声を変化させて伝えています。それを聞いた仲間は次々にリツイートして危険情報を拡散し、遠くへ逃げます。
その中で、ムネアカゴジュウカラはそれらの警告のうちあやしい情報はリツイートしない、つまりフェイクニュースとして処理するというのです。


アメリカコガラ(著作権フリー画像)

森の中に4つのスピーカーを置き、①低脅威のアメリカワシミミズクの鳴き声、②高脅威のスズメフクロウの鳴き声、③アメリカコガラの低脅威(対アメリカワシミミズク)ツイート、④アメリカコガラの高脅威(対スズメフクロウ)ツイートを流すと、ムネアカゴジュウカラはそれぞれの音に応じて異なった鳴き方で反応しました。
①には低脅威ツイート(低音の鳴き声)、②には高脅威ツイート(高音の鳴き声)、そして③と④にはその中間の高さの声で鳴きました。
つまり、ムネアカゴジュウカラは自分が直接入手した情報は重視してツイートする一方、アメリカコガラによる間接的な情報は「真偽が曖昧な情報」としてリツイートしているのです。つまり、フェイクニュースの拡散を抑えているわけです。


ムネアカゴジュウカラ(著作権フリー画像)

研究者は「人々がムネアカゴジュウカラのように振舞うことを願っています」と語っています。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする