樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

最も〇〇なシギ

2022年03月31日 | 野鳥
前回に続いて、有明海ツアーのご報告です。
東よか干潟にはたくさんのシギがいますが、最も数が多いのはハマシギ。日本野鳥の会佐賀県支部がほぼ毎日鳥の種類や数を確認してホームページで公開していますが、私たちが訪れた頃は8,000羽でした。ハマシギは有明海以外でも大群になることが多く、多分、日本でも最多のシギでしょう。



大群のシギが飛翔する様子から、日本人は織物の柄に「千鳥格子」という名前を付けました。同じ柄をイギリス人は「ガンクラブチェック」と呼びます。鳥を撃つハンターが着用するジャケットの柄に由来します。バードウォッチングのルーツはイギリスですが、愛鳥精神では仏教を背景に持つ日本の方が先進的である証左の一つでしょう。
東よか干潟では、嘴が異様に長いダイシャクシギとホウロクシギもたくさんいました。鳥を見始めた頃、図鑑でこの2種を見たとき「変な鳥!」と思いました。シギの中、あるいは日本の野鳥の中でも「最も変な鳥」と言えるでしょう。
その「変な鳥」を初めてみたのは、1994年8月、千葉県の谷津干潟でした。それ以降何度か見ましたが、いつも1羽か2羽。それくらい珍しい鳥です。ところが、東よか干潟ではその「変な鳥」が群れでいました。特に、ダイシャクシギは60~80羽ほどの大群になって、空を飛んだり、並んで干潟で休んでいるので、度肝を抜かれました。「最も変なシギ」が群れで飛ぶなんて、あり得ない光景です。





「最も数の多いシギ」「最も変なシギ」に続いて、最後は「最も美しいシギ」。私のシギ・チドリ観察のフィールドは近くの干拓地で、そこにやってくるシギの中で、最も好きなシギはオグロシギ、最も美しいシギはセイタカシギと思っていました。
ところが今回、ソリハシセイタカシギ(通称アボセット)を初めて見て、「セイタカシギ以上に気品があって美しい」と思いました。今回のツアーはこの鳥を見ることが一つの目的でしたが、ありがたいことに11羽の小群が3日間とも見られました。東よか干潟で2桁ものアボセットが滞在するのは初めてだそうです。
その美しさがどこまで伝わるか分かりませんが、動画をごらんください。



有明海ツアーでご報告したいことはまだありますので、次回もご期待ください。
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有明海で泥まみれ

2022年03月24日 | 野鳥
先週の3連休、いつもの仲間3人で佐賀県の有明海へ2泊3日の鳥見ツアーに出かけました。3年前から計画していたのですが、コロナで2年連続断念し、今回ようやく実現しました。
有明海の北端にある東よか干潟に3日間通い、潮が引いて鳥がいなくなると、別の場所に移動して探鳥するという、まさに「鳥三昧」。いろいろ観察できたので、何回かに分けてご報告します。
まず、東よか干潟について。



干潟が満潮になると遊歩道が泥だらけになるので、長靴は必須。しかも、普通の長靴では泥にからまって靴が脱げてしまうので、日本野鳥の会が干潟での観察用に開発した特製の長靴を事前に購入しました。折り曲げて携帯できる上に軽いので、今回のような旅行にはぴったりです。
現地に到着すると、干潟の反対側にある農地の水路でヘラサギ7羽が出迎えてくれました。1995年と2001年に九州で、2014年に大阪で出会っているので初見ではないですが、こんな近くに7羽の小群がいることが驚きでした。その後、干潟でもじっくり観察できました。



そして、同じくヘラのようなクチバシで顔が黒いクロツラヘラサギもいました。しかも、50羽以上の群れが上空を飛び回ったり、海の中に並んだりしています。ヘラサギと同じく九州で2回のほか、2008年に沖縄で、2013年に大阪で出会いましたが、これほどの群れや飛翔を見るのは初めて。びっくりすると同時に、この豊かな環境に感動しました。



ズグロカモメもたくさん飛んでいました。カモメ類はあまり好きではないのですが、文字通り夏羽の黒い頭のズグロカモメは愛嬌があって親近感があります。



環境省のレッドリストでは、ヘラサギは情報不足、クロツラヘラサギは絶滅危惧IB、ズグロカモメも絶滅危惧IIに指定されています。そんな貴重な鳥が、当たり前のように群れになって目の前を飛び、餌を食べています。有明海の干潟の豊かさと重要性を実感しました。
現地では、首に双眼鏡をぶら下げ、右肩に三脚付きのカメラ、左肩に三脚付きのスコープをかついで、長い干潟を歩きまわりました。長靴はもちろん泥だらけ、さらに三脚に付着した泥がズボンやジャケットにも飛び火して、なぜか3人の中で私だけ泥まみれ。子供が遊んでいるような姿になってしまいました。
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府立植物園でオンライン探鳥会

2022年03月17日 | 野鳥
1月27日に京都府にまん延防止等重点措置が適用されて以来、約2カ月間探鳥会を中止しているため、その代替の会員サービスとしてオンライン探鳥会を実施しています。昨年は9回中6回、今年は10回分すべてを私が撮影・編集し、YouTubeに投稿して会員に配信しています。先日、その最後の撮影のため、府立植物園に行ってきました。
さすがに10回連続となると負担になりますが、ご褒美もありました。一つはルリビタキの雄に出会えたこと。私が初めてこの青く美しい鳥を撮影したのも9年前の府立植物園でした。
会員にも人気の青い鳥を撮影すべくこの日も9年前と同じポイントを何度も探し回ったものの発見できず、あきらめてカメラを片付けようとした時に、運よくすぐ近くに登場してくれました。



もう一つのご褒美はハチジョウツグミ。ツグミよりも数が少なく、色もシックなので、バードウォッチャーには人気です。現在はツグミの亜種とされていますが、別種とする学者もいて、今年の秋に改訂される日本鳥類目録では別種として扱われるようです。
なぜか府立植物園では毎年ハチジョウツグミが越冬していて、ルリビタキ雄と同じく、私が初めて撮影したのもこの場所でした。今年は2個体がほぼ同じエリアにいて、下の動画の前半が薄色タイプ、後半が濃色タイプ色。ルリビタキもそうですが、毎年決まった場所にいるのが不思議です。多分、食べたい餌がそのあたりに存在するということでしょう。



ハチジョウツグミの語源は八丈島のようですが、この島に多いとか、標本が八丈島で捕獲されたわけではないので由来がはっきりしません。野鳥録音の第一人者であり江戸時代の文化にも詳しい松田道生さんは以下のように推測しています。
ハチジョウツグミという名前が登場するのは江戸中期。この頃、八丈島特産の高級絹織物で、茶色がかった黄色が特徴の「黄八丈」が珍重されるようになります。その色が、ハチジョウツグミの脇腹の色に似ているのでそう命名されたのではないか。
さて、まん延防止等重点措置が解除されるので、オンライン探鳥会の撮影からも解放されますが、再開する最初のリアル探鳥会(26日)が私の担当。その次の29日の平日探鳥会も副担当でサポートするので、しばらく探鳥会モードが続きます。
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とりのうた

2022年03月10日 | 野鳥
日本野鳥の会の創設者・中西悟堂が、32種類の鳥について子ども向けの歌詞で表現し、それが昭和32年に出版された児童雑誌『こどもクラブ』の特集「とりのうた」として掲載されました。
例えば、「さんこうちょう」は以下。

 ながいおをして ほい ほい ほい
 もりの しげみを ぬけては くぐり
 青いめがねで ほい ほい ほい

 あたまにかんむり ほい ほい ほい
 くもの すのなか ぬけては くぐり
 青いあしして ほい ほい ほい

 山のたにまで ほい ほい ほい
 村の なのはな かすめてとんで
 青いおくちで ほい ほい ほい


下は10年前に近くの山の谷筋で撮ったサンコウチョウ。悟堂はその特徴である「ホイホイホイ」という鳴き声や青いアイリングや嘴を織り込みながら、生態もしっかり表現しています。



悟堂はもともと小説家志望で、俳句もたくさん詠んでいますから、言語表現の能力は高いものがあります。他の歌詞をみても、鳥の姿や生態を子ども向けの身近な言葉で、しかも歌詞としての限られた文字数の中で巧みに表現していて、その才能にあらためて敬服しました。
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ご褒美

2022年03月03日 | 野鳥
2月3日の記事「オンライン探鳥会」でお伝えしたように、探鳥会中止の代替策として、私が探鳥地に出かけて野鳥を撮影し、その動画をYouTubeにアップして会員に見ていただいていますが、まん延防止等重点措置が延長されたので、さらにオンライン探鳥会を継続することになりました。
これまで、宇治川、京都御苑、巨椋干拓地、三川合流の4カ所は単独で実施しましたが、その他の探鳥地は土地勘がないので、定例的に担当している会員に案内してもらいながら撮影・編集しています。頼まれもしないのに、報酬が出るわけでもないのに、我ながら「物好きやな」と思いますが、それなりにご褒美もありました。
桃山御陵(明治天皇陵)では、アカハラに遭遇。この鳥は京都府では春に見られることが多いのですが、私は信州で姿を見たり、声を聞いたことがあるものの、府内では記憶がありません。珍しい鳥ではないのに、なぜか縁が薄く、じっくり観察したことがないのです。その鳥に、しかも季節外れの冬に出会えました。



もう一つ嬉しかったのは、桃山御陵で初めてアオバトをじっくり観察できたこと。別の鳥を探していたところ、全く予期せずにアオバトを発見。アラカシの下で、その実(ドングリ)を食べていました。こういう意外な出会いがバードウォッチングの醍醐味です。



先日は、嵯峨野でも撮影してきました。終了後、ヒクイナとクイナを撮影するため広沢池で1時間ほどねばっている間に、ミサゴの飛翔がきれいに撮影できました。さらに、鯉を捕獲したミサゴが奥の木に止まって食べているシーンもじっくり観察できました。



これまで、合計7カ所でオンライン探鳥会の撮影をしましたが、まん延防止等重点措置が再延長されるようなので、さらに2~3カ所で継続することになりそうです。やれ、やれ…
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