樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

樹の珍百景

2009年10月29日 | 樹木
「ナニコレ珍百景」というテレビ番組があって、いろんな不思議な光景を紹介しています。その中で、以前このブログで取り上げた「鉄柵を飲み込む街路樹」が紹介されたようです。


(2008年4月にご紹介した鉄柵を飲み込むプラタナス)

あちこちでツリーウォッチングしていると、時々こういう不思議な樹の姿に出くわします。今日はそんな「樹の珍百景」をご紹介します。



これは15年ほど通っている栃の森で見つけたもの。枝があっちへ伸びたり、こっちへ伸びたりしながら、結局360度回転して元の方向へ戻っています。樹種はミズナラ。どういう経過でこんな複雑な形に伸びたのか不思議です。



これは雷に打たれたスギ。落雷で枝や幹が折れた樹は時々見かけますが、こんな割り箸を割ったように真っ二つに割けたのは珍しいです。これも栃の森で発見。



栃の森でいつも歩くコースにあるL字型のサワグルミ。地面に接しているのは幹でしょうか、それとも根でしょうか。サワグルミは真っ直ぐ上に伸びる樹なので、こんな形は珍しいです。



2本の樹がいったん合着した後、再び別れて伸びています。枝が合着したままの樹はたまにあって、「連理の枝」と呼んで夫婦愛のシンボルにされますが、この場合は離婚のシンボル? 鳥見ツアーで訪れた妙高高原で発見しました。樹種は確かハルニレ。



一見珍しくも何ともない光景ですが、問題は場所と樹種。宇治川を市街地から3kmほど遡った山中にプラタナスが生えているのです。冒頭で鉄柵を飲み込んでいるように、プラタナスは街路樹に使うために外国から移入した樹ですから、こんな上流にあるはずないです。
人が降りられる場所じゃないので植樹ではなく、カラスがいたずら半分に市街地の実をくわえてこの場所に落としたのではないでしょうか。
こういう光景に出くわすたびに、「自然はワンダーランド」という言葉を思い出します。
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木と漆の館

2009年10月26日 | 木のミュージアム
先日帰省した際、福知山市にある「木と漆の館」を見学してきました。
私の故郷の京都府北部は「丹後」、このあたり京都府中部は兵庫県中部とともに「丹波」と呼ばれ、小豆の丹波大納言をはじめ栗や松茸など京都の食文化を支える農産物や林産物の一大供給地です。丹波漆の歴史も古く、奈良時代初期の古書に記録されているそうです。


(地元の木工品も陳列販売されています)

江戸時代には福知山藩が殖産政策として育成し、明治初期には約500人の漆掻き職人がいたとか。現在は他の伝統産業と同様、安価な中国製品のために衰退。もはや産業としては廃れていて、依頼があれば数人の伝統継承者が生産するという状態だそうです。


(ウルシの幹に溝をつけて樹液を採取)

漆器はご存知のように英語でJAPANというくらいですし、縄文前期の遺跡から漆塗りの櫛が出土していますから日本独自のものかも知れませんが、樹液を採取するウルシは中国原産です。大昔はヤマウルシやヌルデなど日本に自生するウルシ科の樹木から採取していたのかも知れません。


(幹に溝を刻むカンナは漆掻きで最も重要な道具)

採取できる量はウルシの樹1本当たり1シーズンに200g。牛乳ビン1本分しか取れないわけですから、貴重品ですね。暗いことを「漆黒の闇」と表現しますが、樹液そのものは乳白色で、外気に触れて変色するものの真っ黒ではなく茶褐色だそうです。


(拭き漆や絵付け体験ができる工房)

ウルシに触ればかぶれます。その危険をあえて冒しながら、幹に傷をつけて樹液を採取し、それを精製して木工品に塗れば強度や防水性が高まることを誰が発見したのでしょう。その情熱と知恵を考えると、ノーベル賞を5つくらいあげたくなります。


(漆を塗った木工品を乾燥させるムロ)

漆を塗った木工品はムロと呼ばれる湿気の多い部屋で乾燥するそうです。湿気で乾燥? 意味がよく分かりませんが、漆は酵素によって固まるのでそうするらしいです。
「木と漆の館」を訪れて、漆の不思議さ、ひいては樹木の不思議さに改めて感動しました。やっぱり、木はスゴイ!
木と漆のwebサイトはこちら
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映像詩 里山

2009年10月22日 | 木と作家
またまた木の映画を見てきました。
前々回の『木の来た道』は木材が、前回の『火天の城』は宮大工が主人公でしたが、今回の主人公は雑木林のクヌギ(上の写真)。自然と人間の関わりをクヌギの老木が語るという設定でつくられたドキュメンタリーです。
映画のタイトルは『映像詩 里山』、主人公の名前は「やまおやじ」、制作はNHK。たまたまテンプレートにこの映画協賛のデザインがあったのでしばらく使います。



一部はテレビでも放映されましたが、素晴らしい映像です。従来こうした自然ドキュメントはイギリスBBCの独壇場でしたが、今やNHKもひけをとりません。
最新の撮影機材とテクニックを駆使して、美しく感動的な映像で自然の驚異を次々に描いていきます。「どうやって撮影したんだろう?」と何度も首をひねりながら観ていました。
(下の写真は家の近くにある小さな里山の風景)



舞台となった雑木林は、私の記憶では写真家・今森光彦さんの私有林のはず。ご存知の方も多いでしょうが、今森さんは自然科学系のカメラマンで、海外の図鑑にも写真を提供しています。
被写体である昆虫や植物を保全するために琵琶湖の近くに山林を保有されたのです。この映画にも子どもたちの案内人として登場します。クヌギの老木を「やまおやじ」と名づけたのも今森さん。
ご自身でも里山の映像を撮影されていて、以前『今森光彦の里山物語』という作品を私が企画した野鳥の会のイベントで上映したこともあります。



雑木林のクヌギは、昔は薪や炭に、今はシイタケのほだ木にするため定期的に伐られるのでトックリ型になります。
「やまおやじ」の恩恵を受けているのは人間だけでなく、ドングリを食べるリスやカケス、湿った大きな洞を棲家にするヒキガエル、小さな洞に巣を作るミツバチ、樹液を吸いに集まるカブトムシなどさまざまな生き物たち。また、古くなったほだ木にカブトムシの幼虫が生息し、それを狙ってイノシシが集まってきます。
クヌギのほか、トチノキがハチミツを人間やクマに、実を人間やシカに、カキが実を人間やキツネやタヌキや鳥に分け与える様子も描かれています
一般的な概念としては理解していましたが、精巧なカメラワークによる映像を見て、あらためて「いろんな生き物が樹木に頼って生きているんだな~」と実感しました。
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森の値段

2009年10月19日 | 森林保護
みなさんの多くが、知らないうちに森林税を徴収されています。この税は森を守ったり、森林の水源涵養機能を保全するために、各自治体が地方税に上乗せして徴収するもの。
高知県が平成15年に制定して以来、ほとんどの県が採用しています。まだ導入していないのは、私が調べた限り宮城県、千葉県、岐阜県、三重県、京都府、大阪府の6府県。東京都も森林税はありませんが、「緑の東京基金」を創設しています。
千葉県や大阪府のように森林が少ない府県は徴収する根拠が薄いですが、宮城県や岐阜県、三重県などの林業県が導入していないのはなぜでしょう。京都府は現在検討中とか。
(写真は私のメインフィールド栃の森です)



金額は一人当たり500円(法人は均等割の5%)という県が多く、中には鳥取県の300円(法人3%)とか、岩手県や山形県のように1000円(法人10%)という例もあります。愛知県は今年度から導入し(500円・5%)、22億円の税収を見込んでいるそうです。
今後、全都道府県が導入した場合、国民が森林に支払う税金は総額いくらになるか? 愛知県の22億円をベースに計算したら389億円という数字になりました。



森林の価値についてはもっと巨額な試算もあります。昭和56年に林野庁が金額換算した結果は以下の通り。
①水資源涵養機能・・・・・・・・・・・3兆6,800億円
②土砂流出防止機能・・・・・・・・・5兆4,500億円
③土砂崩壊防止機能・・・・・・・・・・・・・1,200億円
④保健休養機能・・・・・・・・・・・・・3兆8,400億円
⑤野生鳥獣保護機能・・・・・・・・・・・・・9,000億円
⑥酸素供給・大気浄化機能・・・11兆4,400億円
●合計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25兆4,300億円



どうやって計算したのか知りませんが、これを企業物価指数で現在の金額に換算すると、やや少なくなって22兆3,800億円。今年度の国の一般会計が88兆5,500億円ですから、その4分の1に相当します。
しかも、昭和56年時点では最近注目のCO2固定機能の価値がカウントされていないでしょうから、金額はもっと大きくなるはず。つまり、22兆円以上の価値がある森林に、私たちはたった389億円しか払っていないわけです。
みなさん、森林税は気持ちよく払いましょう! 余裕のある人は2倍でも3倍でも払いましょう! 京都府が導入したら、私も気持ちよく払いますから…。
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庭木の第2の人生

2009年10月15日 | 街路樹・庭木
以前、グリーンバンクという制度をご紹介しました。引越しや建て替えで不要になった庭木を市や町に預け、欲しい人が引き取って植えるというマッチングシステムです。その記事には、この制度がある姫路市や鎌倉市がうらやましいと書きましたが、宇治市にはもっと素晴らしい制度がありました。
京都府南部の3市3町はゴミ処理やリサイクル事業を共同で行うため管理組合を結成しています。その事業の一環として、家庭から出た廃棄物を山中に埋め立て、満杯になったら土で覆い、その上に樹を植えるために、不要になった庭木を募集しているのです。


(不要な庭木が植えられた埋立地)

そのホームページには、「各家庭からの廃棄物を受け入れてくれた大地に感謝しながら、ご提供頂いた樹木には、末永く見守って頂けるよう提供者の名札を付けて育てていきます。」と書いてあります。
その埋立地を見てきました。家から5kmくらい離れた山の中、焼却場やリサイクルセンターなどが位置する一帯にあります。柵で囲まれていたので間近では確認できませんが、クスノキやネズミモチ、クロガネモチなど大小さまざまな樹木が並んでいました。



人間が定年後に第2の仕事に就くように、それぞれの家で役目を終えた庭木がここで第2の人生を送るわけです。マッチングシステムでは引き取る側の好みによって第2の人生を迎えられない庭木もあるでしょうが、これならほとんどの庭木がセカンドライフを迎えられます。なかなかいい制度でしょう? 
わが家の庭木もいつかは処分しなければならない時期が来るので、そのときはこの制度を利用しようと思います。
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のんびりする場所

2009年10月12日 | 木と作家
宇治市の南、京都府と奈良県の境に木津川市があります。市と言っても2年前に3つの町が合併して生まれた田舎町。その貸農園に、クラフト作家の工房が点在する面白い場所があると聞いて行って来ました。
野菜畑や田んぼが広がる農園の中に、木工3人、草木染、フラワーアレンジメント、真ちゅう時計それぞれ1人の計6人が工房を構え、そのほかにクラフト雑貨を販売する店が1軒あります。


(雑貨販売のお店はクヌギに囲まれた小屋)

(クヌギの木漏れ日が気持ちいい。向こうに見えるのは貸農園)

工房やお店と言っても、農作業小屋に毛が生えた程度の質素な造り。しかも、いつオープンするかは主の気分次第という、何ともスローライフというかロハスというか、マイペースな面々です。私が訪れた時も、「フタコブラクダ」という木工のアトリエは主人が留守で、その名前の由来と思われる2人のお子さんが遊んでいました。


(木工作家のアトリエ「フタコブラクダ」)

フラワーアレンジメントのアトリエは普段はお花の教室を開いているようですが、私が行った日はカフェをオープンしていたので、カレーと手作りジンジャーエールをいただきました。


(お花教室が週3回アトリアカフェをOPEN)

(店内の展示物や販売物)

びっくりするような作品があるわけでもなく、何か珍しいものを見学できるわけでもありませんが、のんびりできて実に気持ちのいい場所でした。都会とは違う時間やリズムが流れていて、しばらく座っていたら眠ってしまうくらいのどか。
畑の中を何度もウロウロした後、記念に小さな木皿を買って、後ろ髪を引かれながら帰ってきました。


(雑貨のお店で買ったクスノキ製の皿)

こういうのんびり系が好きな方には心地いいところですよ、ぜひ・・・。
グループの代表「フタコブラクダ」のwebサイトはこちら
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No More Trees

2009年10月08日 | 森林保護
今日は「木の日」。十と八を組み合わせると「木」になるからです。各地で記念植樹が行われると思いますが、こういう活動はどうなんでしょう?
私も3月に森林ボランティアのメンバーとして植樹しました。その樹がどうなったか気になって、先日見てきました。


(3月の植樹風景)

植樹した苗木のうち2~3割がシカにやられるか、枯れていました。このグループには林業のプロや自治体の林業振興局OBもいます。それでも歩留まりはこの程度。
15年ほど前、野鳥の会である植樹活動をサポートしたことがあり、1年後に見に行ったら約10本の苗木は全部枯れていました。


(半年後の植樹地)


(ネット越しにシカに食べられた苗木)

いつもチェックしている樹木のポータルサイトには、毎日のように「どこそこの企業が環境活動として樹を植えた」というニュースが掲載されています。先日はルイ・ヴィトンがMore Trees運動を展開する坂本龍一と提携して長野県で樹を育てるプロジェクトを始めたというニュースがありました。


(3月に私が植えたナンテン)

植樹した企業は「我々が植えた樹が大きく成長してCO2を吸収する」と思っているでしょうが、私の推測では植えた樹の半分以上が1年以内に枯れています。植えっぱなしで後のことを考えない安易な植樹には疑問を感じます。
特に、わざわざテレビCMで「私たちは植樹をしています」と訴える企業には不信感さえ抱きます。全国にCMを流せば年間何千万円もの出費になるはずで、そんなお金があったら山一つ買い取って、間伐管理をするべきでしょう。


(半年後のナンテン。倒れているものの成長中)

CMで吹聴しないまでも、「環境に優しい企業」を偽装する植樹活動が多いように思います。植えたはずの樹は半分以上が枯れてなくなり、残るのは企業の自己満足と環境へのアリバイ・・・。
識者の中には、「木を植えるな、木を伐れ」という人もいます。育った木を伐採して利用する循環システムを構築しないと、いくら植えても意味がないという主張です。
企業の環境活動としてやるなら、安易な植樹ではなく間伐や木材の利用促進にシフトして欲しいと思います。
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宇治茶まつり

2009年10月05日 | 木と飲食
昨日、宇治茶まつりが行われました。当ブログでさんざん宇治のことやお茶のことを宣伝しているくせに、宇治に通算22年も住んでいるくせに、見るのは今回が初めて。
日本にお茶を伝えた栄西禅師と宇治に茶園を開いた明恵上人、そして千利休の3恩人に感謝するために昭和7年に始まったそうです。
朝9時、宇治川の水を汲み上げる儀式からスタート。宇治橋にはこの儀式のために、「三の間」と呼ばれる出っ張りが設けてあります。秀吉が伏見城に居た頃、そうやって水を汲み上げてお茶を点てたそうです。

       
               (神官が釣瓶で水を汲み上げます)
       
                   (水を運ぶ行列)

汲み上げた水は、献茶式が行われる興聖寺に運ばれます。先日「血天井」でご紹介した禅寺です。その本堂で、今年の新茶を入れておいた茶壷の封印を切り、その茶葉を石臼で抹茶に挽き、汲み上げた水でお茶を点てて献茶します。

       
                    (茶壷の口切り)

茶壷と言えば、「ずいずいずっころばし 胡麻味噌ずい 茶壷に追われてトッピンシャン 抜けたらドンドコショ・・・」という意味不明のわらべ歌があります。これは江戸時代、将軍にお茶を献上するために宇治から江戸へ上ったお茶壷行列を歌ったもの。

       
                  (表千家による献茶)

行列が通るときは規制が厳重なので、子どもたちが失礼なことをしないように蔵に閉じ込め、戸をピシャンと閉めた。行列が通り抜けたらドンドコショと騒ごう、それまではネズミが米を食べても、お父さんやお母さんが呼んでも出てはいけないよ、という意味だそうです。
将軍の権威の強大さと同時に宇治茶の貴重さが伝わってきます。

       
                  (供養される茶筅)

献茶の儀式が終わると、山門前の茶筅塚で、使い古した茶筅の供養法要が営まれます。いつもは静かな境内が、全国から集まった茶道関係者や観光客でいっぱい。
私も初めてこの行事を見て、改めて宇治茶の伝統の重さを実感しました。
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浪華丸

2009年10月01日 | 木と乗物
あまり知られていないようですが、大阪に「なにわの海の時空館」というミュージアムがあります。正式名称は大阪市立海洋博物館。
展示の中心は、江戸時代の千石船を復元した「浪華丸」。天下の台所・大阪から江戸に生活物資を運んでいた菱垣廻船(ひがきかいせん)を、当時の資料をもとに実物大で復元し、実際に大阪湾で試験帆走した後、ここに展示しています。

       
         (浪華丸の船尾。菱形の装飾が菱垣廻船の名の由来)

実際に行って見て、その大きさに度肝を抜かれました。全長30m、高さ27m・・・と数字を並べても分かりにくいので、下の写真の人物から大きさを想像してください。
1階から4階までの中央の吹き抜けエリアに設置されており、どう見ても「浪華丸」を収めるために建てられたミュージアムです。

       
              (3階から見下ろして撮った写真)

この木造船を復元するために、滋賀県から樹齢200年のスギ、宮城県から樹齢250年の弁甲(べんこう)杉、茨城県からケヤキやヒノキ、ナラ、海外から中国松など270立方メートルの木材を集めたそうです。
弁甲杉は九州日南地方特産のスギで、軽くて曲げやすく割れにくいため昔から船材として需要が高かった木材。浪華丸でも曲げ加工が必要な外板に使われています。

       
      (船内も見学可能。チョンマゲ姿の船乗りが案内してくれます)

木材マニアの私に嬉しいのは、どの木をどの部分に使ったかという説明パネルや木材標本が展示してあること。

       
        (空洞のあるのはケヤキ、その右へ中国松、ナラ、ヒノキ)

さらに、帆柱の根元と中間と先端の3部分を輪切りにしたサンプルがベンチとして使われています。

       
          (帆柱を輪切りにしたベンチ。これは根元部分)

この菱垣廻船の積載能力は約150トン。酒なら1600樽、米なら2500俵(千石)積めたそうです。試験帆走での速度は7.5ノット、時速換算で約14km。今の感覚では遅いですが、帆船としては十分で、往時は大阪から江戸まで1ヵ月の航海だったそうです。
このミュージアムにはこのほかヨットシミュレーターや帆船の船首を飾るフィギュアヘッドなど船が好きな方にはたまらないコーナーもあります。
「なにわの海の時空館」のサイトはこちら
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