樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

都の鳥

2007年01月29日 | 野鳥
宇治市の木がイロハモミジで、鳥がカワセミであることは何度か書きました。京都府は木が北山杉で、鳥は日本海の冠島に生息するオオミズナギドリ。ところが、京都市はシンボルツリーとしてシダレヤナギ、タカオカエデ(=イロハモミジ)、カツラと3種も選定しておきながら、鳥はまだ選定していません。
実は10年ほど前、京都市から日本野鳥の会京都支部に「市の鳥を何にしたらいいでしょう?」という問い合わせがありました。支部の幹事会ではいろんな案が出ました。京都支部のシンボルと同じシジュウカラ、昔は「都鳥」と呼ばれていたのでユリカモメ・・・。
私は冗談半分でキョウジョシギ(京女鴫)を提案して、他の幹事のヒンシュクを買いました。シギにしては派手なので、おしゃれな京女に例えられる鳥ですが、京都市では出現しないので却下は当然です。
結局、鴨川にたくさん集まるし、昔の名前もぴったりなのでユリカモメを提案したはずですが、京都市は未だに決めていないようです。その理由は後述します。

      
 (鴨川のユリカモメは冬の京都の風物詩。写真は2枚とも友人に借りました。)

平安時代の小説『伊勢物語』の主人公が東国へ下った際、ユリカモメを見て次の歌を歌います。
  名にし負はば いざこと問わむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと
「お前が都鳥という名前なら教えて欲しい、京都に残してきた恋人は生きているのか死んでいるのか」。当時からユリカモメは京都のシンボルとされていたようです。

      
  (春になるとユリカモメの顔は黒くなって、ヒョウキンな印象になります。)

いろいろ調べるうちに、京都市がユリカモメを選定しない理由が分かりました。実は、東京都の鳥がユリカモメ。多分「都鳥」という昔の名前が選定の理由でしょう。以下は私の推測ですが、遷都1200年の京都市としては、たかだか遷都140年の後輩首都・東京が唾をつけた鳥を選定するのはプライドが許さないのでしょう。
京都支部としてはそういう微妙な事情も配慮して別の鳥を提案するべきだったな~。そうなると、やっぱりキョウジョシギしかないんじゃないか?
話はさらにややこしくなりますが、昔は「都鳥」と言えばユリカモメだったのですが、現在「ミヤコドリ」は全く別の種類を指します。ユリカモメはカモメの仲間、ミヤコドリはチドリの仲間です。こっちのミヤコドリを選定してもいいけど、残念ながらこの鳥も京都市には出現しないのです。
京都市の鳥はもうしばらく決まりそうにないですね。
コメント (6)
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