樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

サギのコロニー

2019年06月27日 | 野鳥
「宇治」という地名は、第15代応神天皇の皇子、菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)に由来するといわれています。本来は第16代天皇に即位するはずでしたが、異母兄弟である仁徳天皇との政争によってこの地に逃れてきましたが、結局非業の死を遂げました。その死について、自殺説のほかに仁徳天皇による謀殺説もあります。
その陵墓が家のすぐ近くにあります。現在は宮内庁が管理していますが、この森がサギのコロニー(集団繁殖地)になっていて、今の時期、多数のサギで賑わいます。



宇治川に面しているので、巣材となる木の枝もあるし、ヒナに与える魚も豊富。サギたちにとっては理想的な繁殖地なのでしょう。
昨年の調査では、アオサギ79羽、ダイサギ69羽、チュウサギ13羽、コサギ10羽、アマサギ6羽、ゴイサギ26羽、合計203羽が確認されています。それでも、2005年には498羽がカウントされているので、13年間で半分以下に減少したことになります。
堺市にある「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に登録されるようです。その中には、仁徳天皇の陵墓もあります。世界遺産になりそうな日本最大の墓に眠る仁徳天皇、その政敵に謀殺されて周囲わずか200mの小さな墓に眠る菟道稚郎子。その運命の分かれ道はどこにあったのでしょう。
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相変わらず元気な鳥たち

2019年06月20日 | 野鳥
前回ご紹介した栃の森は、野鳥の調査が本来の目的なので、樹や花だけでなく当然鳥も観察します。この20年で、姿を見かけなくなった鳥や、声が聞こえなくなった鳥がたくさんいます。
そんな中、ほとんど変化なく、いつもどおりあちこちで元気に鳴いているのはアカショウビンとオオルリ。アカショウビンはなかなか姿を見せてくれませんが、オオルリは樹のてっぺんでさえずるので見つけるのは容易です。
以下の動画の前半は朝5時頃。まだ薄暗いのと霧で、色がきれいに出ていません。後半は帰路の2時頃。多分、同じ個体です。



ミソサザイも相変わらず多いです。日本で最も小さい鳥の一つですが、声が大きいのですぐに分かります。チョロチョロ動くので動画に収めるのは難しいですが、1羽だけ目立つ場所でさえずっていたので何とか撮れました。



最後の休憩ポイントで仲間とくつろいでいると、キバシリが目の前の樹にやってきました。名前のとおり、樹に止まって下から上へ走りながら、餌となる虫を探しています。色が薄いので幼鳥でしょう。



このキバシリは京都府内では比叡山や鞍馬山でしかお目にかかれませんが、栃の森では結構頻繁に現れます。この鳥もほとんど変化なく元気にしているようです。
このほか、ヒガラの親子連れやカケスを見たり、ヤマドリのホロ打ちを何度も耳にしました。
鳥獣保護区の調査では、比較のために少し離れた場所に対照区を設定して調査します。前日に行った対照区の調査でも、アカショウビンやオオコノハズクの声を確認することができました。
この森を鳥獣保護区から外す動きもあるようですが、この状態をいつまでも保全してほしいものです。
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花盛りの森

2019年06月13日 | 樹木
週末、栃の森へ行ってきました。5月は都合で参加できなかったので2カ月ぶり。
前夜に少し降雨があり、当日も朝は霧が立ち込めて、森の中はしっとりしています。林道も森も花盛り。特に白い花のオンパレードでした。
最初に目に付いたのはサワフタギ。名前のとおり普通は谷筋に繁茂する樹ですが、林道脇に咲いていたので最初は同定できず、仲間に尋ねられて「マルバアオダモかな」などと適当な返事をしてしまいました。



森の中では、あちこちでヤブデマリが誇らしげに白い花を咲かせています。オオカメノキ(ムシカリ)とよく似ていますが、こちらは開花が1カ月以上遅いのと、装飾花が4弁(オオカメノキは5弁)。



エゴノキの落花がたくさんある場所に、同じ仲間のハクウンボクがよく似た花をぶら下げていました。「白雲」とまではいきませんが、結構見事です。



タニウツギはすでに花期が終わったようですが、満開のものが数株残っていました。白い花が多い中、赤系の花は目立ちます。



ヤマボウシもあちこちで白い十文字の花を咲かせていました。



アジサイ類では、ツルアジサイとコアジサイ(下)が満開。青い花はこの森では他にないので印象に残ります。



サルナシも咲いていました。一度この実を口にしたことがありますが、キウイとまったく同じ。今年の秋も食べられるかな。



栃の森の主トチノキも花はほとんど終わっていましたが、数本だけ残っていました。この森に来てこの花を見ないと何となく落ち着かない。



帰路、いつものように森の入口にある林業家で、栃のハチミツを買って家路につきました。

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アートウォッチング

2019年06月06日 | 野鳥
「花鳥虫魚を描く~応挙・広重・シーボルト~」という展覧会があったので、大阪府和泉市まで出かけてきました。会場の和泉市久保惣記念美術館は、地元の有力企業が土地やコレクションを寄贈して開設されたそうですが、美術館以外に市民ホールや茶室なども併設され、庭園も手入れが行き届いており、和泉市の市民がうらやましく思えるような施設でした。





私の目的は花でも虫でも魚でもなく、もちろん鳥の絵。例えば、下は円山応挙の写生図。右の2体はチゴハヤブサのようです。左2体はツミかな。



ただし、以前ご紹介したように、応挙は実物の鳥を見て描いたわけではなく、先輩である渡辺始興(しこう)の『真写鳥類図巻(しんしゃちょるいずかん)』を模写していたので、この猛きん類のオリジナルも始興だと思います。
下は、葛飾北斎の「鵙(もず)翠雀(るり)虎耳草(ゆきのした)蛇苺(へびいちご)」。モズが小鳥を追いかけている図ですが、翠雀(るり)と書かれた鳥の種類が不明です。



北斎といえば富岳三十六景など大胆な構図の風景画のイメージが強いですが、動植物も丹念に描いています。このほか、重要文化財に指定されている宮本武蔵の「枯木鳴鵙図」も展示されていました。
展示室の隣にある図書室にもおじゃまして、日本画に描かれた鳥についていろいろ調べてきました。宇治市立図書館はもちろん、京都府立図書館でも所蔵していないような貴重な画集が平然と並んでいて、大変勉強になりました。
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