樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

森林環境税

2015年09月28日 | 森林保護
先日、京都府の山田知事が森林環境税を導入すると発表しました。来年度から5年間、府民税に600円上乗せして徴収するそうです。これによって得られる年間6億8000万円は、間伐など森林整備や木材消費の販売促進策に活用するとのこと。
正式名称は「豊かな森を育てる府民税」。名前はそれぞれ違いますが、これまですでに35県が同様の課税を実施しています。北海道、東京都、大阪府は導入していないので、県以外では京都府が初めて。ちなみに、最初に導入したのは2003年の高知県。
京都府は2008年頃から森林環境税の構想を打ち出していましたから、8年越しで実現することになるわけです。今回ようやく踏み切った要因の一つは、3年連続して発生した水害のようです。嵐山も水害に見舞われましたし、宇治も2年連続で被害が出ました。それを防ぐために森林整備をするという名目です。
下の動画は3年前のゲリラ豪雨で、わが家の前の道路が川になった様子。私がYouTubeに投稿した約650本の動画のうち断トツに再生回数が多く、8,170回も再生されています。



こうした自治体レベルの課税とは別に、環境省も似たような税制の導入を考えているようです。国民1人当たり1日1~2円を徴収するという「環境保全税」(仮称)。年間1000億円ほどの税収を目論んでいるようです。
その使いみちとして「トキやコウノトリが舞う国土づくり」「美しい日本の風景再生」などを挙げています。
もしこれが実施されると、京都府民にとっては合計で年間1000円以上の増税になります。お題目どおりに使われればいいのですが、「豊かな森」とか「トキやコウノトリ」とか「美しい日本の風景」など反論の余地がない美辞麗句が並ぶと、逆に「ホンマかいな?」と眉に唾を付けたくなります。
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日本全国が奈良になる

2015年07月02日 | 森林保護
私のフィールド・栃の森はシカの食害で植生が大きく変化しています。20年前に比べると、ササなどの下草がほとんどなくなりました。
そして、オオバアサガラ、テツカエデ、トリカブト、バイケイソウなどシカが食べない植物がどんどん増えています。下の写真のように、以前は湿原だったところが、今はオオバアサガラの純林になりつつあります。


樹高約3mのオオバアサガラの若木に覆われた湿原

この樹の枝葉にはサポニンが含まれているのでシカは食べません。その忌避効果を利用してシカを締め出そうという研究を、東京農業大学と森林総合研究所が共同でやっています。
そのレポートのタイトルは、「シカ食害地で広葉樹林化を目指すには~オオバアサガラを用いた応急的対処戦略~」。分かりやすくチャート化すると、以下のような作戦です。
①シカの食害で下草がなくなった人工林にオオバアサガラの種を撒く
→②成長が早く、シカが食べないので林床部の植生が早期に回復する
→③土壌流出を防ぐと同時に、シカの数が減る
→④その後、オオバアサガラ以外の有用樹種を植えて広葉樹林化する
コストをかけずに人工林を広葉樹林化しようという狙いです。


先月撮ったオオバアサガラの幼木

まだ実験の結果が出ていないようですが、最近、栃の森ではこのオオバアサガラさえシカが食べています。研究レポートにも次のように書いてあります。
「近年、シカの生息密度がさらに高まり、シカの餌が不足してきたためか、オオバアサガラまで食べられるようになりました、しかし、オオバアサガラの場合、シカに芽や若い枝を食べられても枯れることは観察されておらず、食べられた個所から芽を出し、わずかな期間で緑を回復するといった現象が見られています」。
この「オオバアサガラ作戦」が成功するかどうか、ちょっと不安もあります。
下の動画は、栃の森ではなく京都市内の自然公園で撮ったもの。山や森だけでなく、最近は都市部にも出てくるようになりました。



聞くところによると、信州の高層湿原もシカ除けのネットで囲んだエリア以外は全滅状態とのこと。早く何とかしないと、日本全国が奈良のようになります。
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クリスマスツリーのリサイクル

2015年02月26日 | 森林保護
クリスマスから2カ月が過ぎました。世界中で膨大な数のクリスマスツリーが飾られたわけですが、終わった後はすべてゴミとして処分されるのでしょうか? 気になったので調べてみました。
最も有名なクリスマスツリーは、ニューヨークのロックフェラーセンターに飾られる巨大ツリー。毎年、全米各地で69~100フィート(21~30メートル)の樹を探して、トレーラーで運ぶそうです。
欧米でクリスマスツリーに用いられるのは基本的にはモミですが、このロックフェラーセンターのツリーは代々ヨーロッパトウヒを使うそうです。


ヨーロッパトウヒ。ドイツトウヒとも呼ばれる

ニューヨーク市ではクリスマスツリーのリサイクルに取り組んでいて、このロックフェラーセンターのツリーも枝を切り払ってチップ化。幹は製材して板に加工され、低所得者向けの住宅用木材に再利用するそうです。
また、市内80カ所に粉砕機を置き、市民が持ち込んだツリーをチップ化するイベント「マルチフェスト」も行われます。日本でもお正月の松飾りやしめ縄をまとめて焼く「どんど焼き」がありますが、それに似ていますね。


マルチフェストのロゴ。粉砕機と鳥がモチーフ

チップは子どもの遊び場にケガ防止のために敷き詰めたり、街路樹のマルチ材にしたり、さらに細かく粉砕して腐葉土に再利用するとのこと。
しかし、ニューヨーク市で使われるツリー約150万本に対して、「マルチフェスト」で処理されるのは約1万2000本。残りは、各家庭から道路に出され、市の回収車が回収して同じくチップにしてリサイクルするそうです。
日本でこういう取り組みをしているところはないようですが、ペレット化して発電に利用するとか何かリサイクルを考えた方がいいですね。
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ナース・ログ

2014年05月19日 | 森林保護
コピーライターになったころ、多様なレトリックを習得するため、開高健の文章をノートに書き写しました。サントリーのコピーライターから転身したこの作家のレトリックは、「饒舌体」と呼ばれるほど華麗だったからです。著作もほとんど読みました。
私淑するその先生が森の倒木について語っています。執筆ではなく、インタビューの書き起こしなので、饒舌体は影をひそめていますが…。
風倒木が倒れて倒れっぱなしになっている。これがムダなように見えていて、実に貴重な資源なんであって、そこに苔が生える、微生物が繁殖する、バクテリアが繁殖する、土を豊かにする、小虫がやってくる、その小虫を捕まえるためにネズミやなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシやなんかの鳥もやってくる、森にお湿りを与える、乾かない、そのことが河を豊かにする、ともう全てがつながりあっている。
だから、あの風倒木のことを、森を看護しているんだ、看護婦の役割をしているんだというので「ナース・ログ」というんですけれども、自然に無駄なものは何もないという一つの例なんです。



栃の森のナース・ログ

先生のお言葉ですが、「看護婦の役割」というのがしっくりこないので、私なりに調べてみました。「Nurse log」をネットで検索すると、英語版のWikipediaに説明があり、やはりニュアンスが違います。
英和辞典を開くと、nurseには「看護」「看護婦」とは別に、「育児」「保母」という意味があり、動詞として「授乳する」「養育する」という意味もあります。
倒木が次世代の生物に授乳し、養育するという見立て…。「Nurse log」は「森を育てる木」という意味なんですね。なかなか含蓄のある言葉です。
天国にいらっしゃる開高先生! 僭越ながら弟子が修正しておきましたよ~
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訴訟する樹木

2014年05月12日 | 森林保護
普天間飛行場の移設先である辺野古で、ジュゴンを原告とした訴訟が行われています。また、以前はアマミノクロウサギを原告として「奄美自然の権利」が争われました。
こうした自然の生物にも訴訟の権利があるという概念を生み出したのは、クリストファー・ストーンというアメリカの法哲学者。この人が『樹木の当事者適格』(原題:Should Tree Have Standing?)という論文を書いたのが始まりだそうです。それを要約すると、以下のとおり。
「権利の主体は時代とともに拡張されており、今後は人間以外の存在にも向けられる。被害者が自然物である場合、その自然物に代わって人間が後見人として賠償請求し、環境修復の費用にあてたり、開発の差し止めを行うことを認めるべきである」。
少し分かりにくいですが、法人や自治体など人間でないものにも訴訟の権利があるのだから、自然物にもあるという考え方です。
この論文は、1965年にカリフォルニア州のセコイア国立公園にディズニー社が巨大なリゾート施設を建設しようとした際、環境保護団体シエラクラブが差し止めを求めて起こした訴訟の中で提出されました。
セコイア国立公園といえば、世界最大の樹木ジャイアントセコイアが林立するところ。ストーンはその巨木に訴訟当事者としての資格があると主張したわけです。


ジャイアントセコイアの輪切り@神戸市立森林植物園

こうした「自然の権利訴訟」はその後も相次ぎ、日本では上記のジュゴン、アマミノクロウサギのほか霞ケ浦のオオヒシクイ、北海道・大雪山のナキウサギなどが原告となって訴訟を起こしています。
アメリカという国はいろいろ問題の多い国ですが、こういう概念を生み出すところはスゴイですね。しかも、ジュゴンを原告とした辺野古の訴訟団が、アメリカ本土でラムズフェルド国防長官を訴えた裁判では原告勝訴の判決を出しています。その後、国防省が控訴して解決には至らなかったものの、アメリカの司法の良心が感じられます。
この『樹木の当事者適格』という論文は、「自然は人間が支配する対象である」という欧米の伝統的な自然観に、「自然にも人間と対等の人格がある」という逆の自然観を対置した点でも画期的なのだそうです。
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若木か? 老木か?

2014年04月10日 | 森林保護
「木づかい友の会」(バックは林野庁)のメルマガ最新号は、「森林の二酸化炭素吸収」という記事でした。
「二酸化炭素をよく吸収するのは若齢の針葉樹」という見出しで、「二酸化炭素(CO2)の吸収は、ブナやクヌギ、ナラのような広葉樹でなく、スギやヒノキなどの針葉樹の方が旺盛です。しかも、若齢の成長期の樹木の方が、よく吸収します」と述べ、以下のグラフを示しています。



ところが、イギリスの科学誌『Nature』には、これと正反対の研究論文が掲載されたそうです。
アメリカ地質調査所の研究チームが、403種類の樹木67万3046本のデータを分析したところ、年老いた樹木の方が成長が速く、より多くのCO2を吸収していることが判明したというのです。
中心メンバーのスティーブンソン氏によると、「古い森林の方が若い森林よりもCO2吸収能力が高いことはすでに知られていたが、古い森林にはあらゆる大きさの樹木が含まれており、より多くのCO2を吸収する木はどれかについては明確に把握されていなかった。 しかし、今回の研究によって、大気中のCO2の削減については大きな木のほうが良いという結論が得られた」とのこと。


トチノキの老木@栃の森、500歳くらいかな?

老木の方がCO2吸収能力が高く、若い木よりも地球環境の保全に役立っているわけです。樹に例えればすでに「老木」の域に達した私には、何となく嬉しいニュースです。
しかし、世間を騒がしているSTAP細胞の論文が掲載されたのも『Nature』。しかも、上述の論文もほぼ同じ時期に掲載されています。
論文撤回の可能性もあるわけで、林野庁を信じるべきか、『Nature』を信じるべきか、微妙ですね~。
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ケニアの鎮守の森

2014年03月17日 | 森林保護
前々回ご紹介した「地球環境の殿堂」記念シンポジウムには、第1回の殿堂入り者であるワンガリ・マータイさん(故人)の娘さん、ワンジラ・マータイさんも登壇されました。お母さんが設立された「グリーンベルト・ムーブメント」の代表者として、宮脇昭氏の指導を受けながらアフリカの植樹活動を実践されています。
そのワンジラさんによるケニアの樹木の話も興味深いものでした。その一つは、ユーカリ。
以前は、燃料用にユーカリをたくさん植えたものの、現在は逆に除去しているそうです。地下水をすべて吸い上げてしまうから、というのが理由。
成長が早いので薪としては重宝する一方、貴重な水を枯らすという弊害が出たため、特に水源地周辺のユーカリは抜去しているとのこと。
油分の多いユーカリは落ち葉が燃えやすいために山火事の原因にもなり、植樹した各国で問題になっています。


日本でも公園や植物園にユーカリが植えられています

もう一つ興味深かったのは、ケニアにも鎮守の森があるという話。それは「カヤの森」と呼ばれる神の森で、中に入る際には履物を脱がなければならないとか、タバコを吸ってはいけない、写真を撮ってはいけない、トイレは禁止などの10か条のおきてがあるそうです。もちろん、動植物の採取は禁止。
また、フィグ(イチジク)の大木は神の木とされていて、絶対に伐らないそうです。
日本の鎮守の森にはそんな厳しいルールはありません。ケニアの方が樹木や森に対するコンプライアンスというか森林保護意識が高いようです。
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4千万本の木を植えた男

2014年03月10日 | 森林保護
京都には「地球環境の殿堂」があります。大げさな名前ですが、施設ではなく、顕彰制度です。1997年の「京都議定書」に由来して2010年に創設され、毎年、地球環境の保全に貢献した人を「殿堂入り者」として表彰しています。
その第5回表彰式と記念シンポジウムが2月末に国立京都国際会館で行われたので、シンポジウムだけ参加してきました。
今回の殿堂入り者は、宮脇昭さん。樹木や生態学の分野ではよく知られた人物で、「4千万本の木を植えた男」の異名があります。
ちなみに、これまでの主な殿堂入り者は、「もったいない」を世界共通語にしたワンガリ・マータイさん、ブータン王国のワンチュク殿下、アメリカの環境活動家レスター・ブラウン博士など。
「鎮守の森」を見れば分かるように、日本の本来の植生はシイ、カシ、タブノキなどの常緑広葉樹である。よって、スギ・ヒノキなど針葉樹や、里山を構成するクヌギ・コナラなどの落葉広葉樹ではなく、常緑広葉樹を植樹して本来の植生を取り戻すべきである。
これが宮脇さんの主張で、現在は東北の被災地において、海岸にガレキでマウンドを造り、その上に常緑広葉樹を植えて津波を防ごうという活動を続けています。


宮脇さんが植樹を勧めるタブノキ

また、トヨタやJR東日本など企業の植樹活動を指導するほか、世界各国で大規模な植樹運動を展開しています。中国の万里の長城でも宮脇プロジェクトによって森林が復活したそうです。
その実績は絶大ですが、生態学や樹木の専門家からは疑問や批判が出ています。私自身も、東北地方の本来の植生は常緑広葉樹だからシイやタブを植えるべきという主張には疑問を持ちます。日本人は落葉広葉樹が好きなので、心情的に抵抗があるのかも知れません。
その一方、スギ・ヒノキの人工林や里山の落葉広葉樹は、手入れをしない限り災害の原因になるという主張は一理あります。宮脇さんの本を読んでみようかな。
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巨木受難

2013年01月24日 | 森林保護
昨年12月、続けざまに気になる情報に接しました。一つは、四国各地の神社でご神木が次々に枯れたというニュース。
しかも、根元にはドリルで穴があけられ、除草剤が注入されていたとのこと。何者かが意図的にご神木を枯れさせたわけです。その後、いくつか神社には材木業者が売買を持ちかけてきたそうです。
ある神社は、枯れたヒノキ2本を合計550万円で売却契約を結んだ後、除草剤が検出されたため売買を中止。枯れた原因に不審な点があるとして、契約の無効を求める訴訟を起こしています。
何という罰当たりなことをするんでしょう。


宇治上神社のご神木(ケヤキ)は大丈夫です

もう一つは、オーストラリア国立大学の研究者が「世界各地で巨木が減少している」とアメリカの科学誌『サイエンス』に発表したこと。
特に減少が著しいのは、オーストラリアのマウンテンアッシュ、アメリカのセコイア、タンザニアのバオバブ。例えば、セコイアが林立するヨセミテ国立公園では、1930年代から1990年代の間に巨木の密度が24%低下したそうです。
山火事による大量焼失に加え、山火事がない年でも通常の10倍のスピードで減少し続けているとのこと。その理由として、急激な気候変動による干ばつや気温上昇に加えて、木材や農業用地の確保を目的とした森林伐採が重なっていることを上げています。
理由は異なりますが、日本でも世界でも巨木が姿を消しているというニュースに接して、気持ちが暗くなりました。
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お寺のグリーンウォッシュ

2012年12月06日 | 森林保護
滋賀県大津市にある三井寺が、針葉樹中心の境内の森を広葉樹林に切り替えると発表しました。
甲子園球場30個分の面積を有し、現在はその7割が人工のヒノキ林、2割がシイ林。これを「動物と共存できる多様性に富む森林に転換したい」というのがその趣旨です。
ところが、そのニュースの中に「サクラやモミジを植えて多様化したい」という関係者の声があって、「あ~、やっぱり」と幻滅しました。



「動物との共生」とか「多様性に富む森林」とか環境に配慮したふりをしながら、実際にはサクラやモミジを植えて、春と秋の観光客を増やしたいということでしょう。
こういう動きは三井寺だけでなく京都のお寺にもあります。最も観光客が多い清水寺も同様の口実で裏山にサクラやモミジを植えています。嵐山では「嵐山保勝会」という団体が中心になって積極的に植樹を進めていますが、この団体の構成メンバーの多くは料理旅館や土産物屋。



「人工林を天然林に戻す」あるいは「動物と共存できる森を作る」というなら、サクラやモミジではなく、コナラやクヌギ、タカノツメ、コシアブラなどの落葉樹、ソヨゴ、ヤブツバキなどの常緑樹といった近畿地方の天然林に自生する樹種をまんべんなく植えるべきでしょう。
以前、“環境にやさしい企業”を偽装する「グリーンウォッシュ」をご紹介しましたが、お寺でもこんなグリーンウォッシュが行われているんですね。
「観光客を増やしたいのでサクラとモミジを植えます」と正直に言えばいいのに、多様性や動物との共存を持ち出す…。仏の教えでは、こういう行為を何と言うんでしょうね~。
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