樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

木の車

2017年04月27日 | 木と乗物
木に関する情報を集めていると、時々「木で作った自動車が登場!」というようなニュースに接します。その多くは趣味的に作った木製自動車の話ですが、ちゃんとしたメーカーが量産した「木の車」があります。
イギリスのモーリス社が1950年代に生産した「モーリス・マイナー・トラベラー」というワゴン車。下の写真のように、後部のフレームが木製です。しかも、飾りとして木を使っているのではなく、構造上も骨格としての機能を果たしているそうです。リアウィンドウのガラスも木製のフレームにはめてあります。


モーリス・マイナー・トラベラー(Public Domain)

私が読んだ本によると、この木材はセイヨウトネリコとのこと。トネリコといえば野球のバットに使われる木で、硬くてしなりのあるのが特徴。「なるほど!」と納得します。
湿気の多い日本では「フレームにキノコが生えた」という冗談もあるそうですが、木のフレームは修理用部品としても供給されているそうです。
私自身はこの車を見たことがありませんが、イギリスでは結構売れたようです。車は手放しましたが、こんな楽しい車ならもう一度乗ってみたいです。
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野鳥を食べる part-2

2017年04月20日 | 野鳥
2週間前に「野鳥を食べる」という記事をアップしたところ、なぜかアクセス数が倍増し、その後も持続しています。気を良くして、その第2弾をお届けします。
「野鳥を食べる」というテーマで京都の人間がすぐに思い浮かべるのは、伏見稲荷のスズメの丸焼き。私は長い間その様子を見ていなかったので、どうなっているのか現地へ出向いたり、いろいろ調べてみました。


スズメの丸焼き1串500円

以前は伏見稲荷の参道や周辺でスズメの丸焼きを売る店が6~7軒あったものの、現在は2軒。その減少の要因を探ると、興味深い事実が浮かんできました。
まず一つは、スズメの生息数の減少。ある研究者の推測によると、スズメの成鳥の生息数は1800万羽(2008年現在)で、18年前(1990年)の50~80%とのこと。数字がアバウトですが、減っていることは確かなようです。
次に、捕獲数の減少。登録された狩猟者による捕獲数は、1996年の約57万8千羽に対して2012年は3万5千羽。16年間で6%まで激減しています。また、捕獲法が限定されたことも要因です。以前はカスミ網で一網打尽に捕獲できましたが、野鳥の会などの反対運動もあって1991年にカスミ網が禁止され、現在は効率の悪い無双網しか使えなくなっています。
それよりも大きな捕獲数激減の要因は、中国産の輸入。ある狩猟者は「かつては、すべての稲荷の焼鳥屋が国内の猟師の雀を使っており、半年はスズメの売り上げだけで生活できた時代もあった。ただ、そこに中国産の雀が半値以下で入ってきて、ほとんどの焼鳥屋は国産を買わなくなり、そちらに切り替えた」と著書に書いています。
ところが、中国政府が1999年に食用加工品も含めた野鳥の輸出を禁止。中国産に頼っていた販売店は材料が調達できなくなって、数軒の店がスズメの丸焼きから撤退したようです。
現在の2軒は京都府や兵庫県、香川県などの猟師から仕入れているものの、量はピーク時の3分の1。店主は「稲荷名物のスズメの丸焼きがなくなるかもしれない」と語っています。


こちらはウズラの丸焼き。1串小は700円、大は880円

スズメだけに頼れないので、ウズラの丸焼きも売っています。こちらはブロイラーとおなじで安定供給されるので継続できるでしょう。スズメの丸焼きを販売している店は2軒だけでしたが、ウズラの丸焼きを売っている店は他にも2軒ありました。
以前は、スズメ、ウズラに加えてツグミも売っていたはずです。20年ほど前の記憶ですが、屋台のお店の裏側に「Spanish Thrush」と印刷された段ボールがあったので、「スペイン産のツグミを使っているのか」と納得したことがあります。
伏見稲荷は例の赤い鳥居のトンネルが外国人観光客に人気のようで、私が訪れたのは平日のお昼前でしたが、参道は人があふれていました。
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残念Nikon

2017年04月13日 | 野鳥
1か月ほど前、双眼鏡で鳥を見ようとしたら左が曇っていました。「レンズが汚れているのかな?」と思って確かめると、対物レンズが外れています。
1年前、クリーニングのために大阪のニコンサービスセンターに持ち込み、その対応に感心して「さすがNikon」という記事をアップしましたが、1年後に再び大阪へ出向くことになりました。
担当者によると15,000円かかるとのこと。前回も同じ額でした。私には「クリーニング時の取り扱いが原因ではないか?」という疑問があったので納得できず、持ち帰りました。今回は「さすがNikon」ではなく、「残念Nikon」。
でも、双眼鏡がないと鳥人生が終わるので、新たに買うしかありません。いろいろ調べてコーワのSVシリーズにしました。前と同じ10×42が23,000円。貧乏なのでコストパフォーマンス優先です。



先日テストしたところ、前のがポロタイプ、今回のがダハタイプなので、手への収まりに違和感がありましたが、しばらくすれば慣れるでしょう。ありがたいのは完全防水。前は雨が降り出すとレンズカバーを付けたり、ジャケットの中にしまいましたが、これからは気にしなくていいようです。今はどのメーカーでもこのクラスは防水が標準装備なんですね。
コーワは面白い会社です。バードウオッチャーにとっては望遠鏡のトップメーカーで、そのブランド名「プロミナー」が鳥用望遠鏡の代名詞になっているほどですが、一般的には「キャベジンコーワ」「ウナコーワ」などの医薬品メーカーでしょう。さらに衣料品も手掛けていて、以前コーワのファッション事業の仕事をしたことがあります。
双眼鏡はこれで5台目。最初に買った2台はいわゆる“バッタもの”のいいかげんな代物でした。本格的に鳥を見始めて買った3台目がニコンのダハタイプ8×20。4台目がニコンのポロタイプ10×42。約15年楽しませてもらいました。
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野鳥を食べる

2017年04月06日 | 野鳥
野鳥の会に入った頃、職場の仲間と行った居酒屋で「僕は野鳥の会の会員だから焼き鳥は食べられない」と言うと、「あ~そ~、やっぱりな~」と全員が納得していました。もちろん冗談で、焼き鳥はよく食べます。彼らの反応を見て、飼育鳥と野鳥が区別されていないものの、「鳥を取って食べてはいけない」という社会的なルールが多少は浸透していることが分かりました。
しかし、そのルールが形成される以前は、他の獣や魚と同様、野鳥も食糧の対象でした。昔の人が「鳥を食べる」ことに対してどんな意識を持っていたのか知りたくて、大阪市立図書館に所蔵されている『江戸鳥類大図鑑』を閲覧してきました。この本には、江戸時代の図鑑『観文禽譜(かんぶんきんぷ)』が現代語訳で掲載されています。



「かるがも」の項には、以下の図とともに「この鳥は秋になると羽が抜けて飛ぶことができなくなる。そのため仙台では舟を数艇浮かべてこれを狩る。ヤスで突くのである。一朝にして数十を捕獲する。これを羽ヌケツキという。あぶらが多く、味は非常によい」と書いてあります。エクリプスの時期に捕獲していたわけです。


画像提供:東京国立博物館

鶴が天皇や大名のための高級料理に使われていたことを知っていたので、そのあたりも探ってみました。
「しろづる」の項目には以下のように書いてあります。「ある人が白鶴の肉は最も人によく、俗に黒鶴というものは専ら血虚を整えるといっている。(中略)白いものは益気を心肺に入れ、黒いものは血を整えて肝腎に入れる」。
「白鶴」がタンチョウを、「黒鶴」が実際のクロヅルを意味するのかどうかは不明ですが、「なべづる」の項には「今食用とされる鶴の肉はみなこの鳥である」と書いてあります。いずれにしても、当時は食材としてだけでなく薬効も考慮していたわけです。
また、今でも「がんもどき」があるように、ガンの肉は美味だったようです。この書物の「ひしくい」の項にもこんな記述があります。「味は雁に劣らない。脂もまた多く、肉にわずかに硬さが感じられる。その臭いは鶴の肉に似ており、これが菱食の賞すべきところである」。
野鳥の会の会員としては読むのをはばかるような記述もありますが、鳥に対する昔の人の意識を知るには興味深い資料です。また、絵を見ているだけでも面白いです。
しかも、これらの原画は東京国立博物館のサイトで公開されている上に、商用以外なら自由にダウンロードして使えます。下は「ピングイン」という名前で掲載された鳥。この時代すでに日本人はペンギンを知っていたわけです。


画像提供:東京国立博物館
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