正式和名は「ハリエンジュ」ですが、一般的には「アカシア」と呼ばれています。札幌などの都市で街路樹に使われていることから、歌にもよく登場します。私より上の世代が思い出すのは、西田佐知子の『アカシアの雨がやむとき』でしょう。
「♪~アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい 夜が明ける日が昇る 朝の光のその中で 冷たくなった私を見つけて あの人は涙を流してくれるでしょうか…」という歌は、60年安保闘争とセットでよく語られます。
ただ、作詞した水木かおるは日本の街路樹のシーンを描いたのではなく、芹沢光治良の小説『巴里に死す』を読んでそのイメージを表現したそうです。パリには樹齢400年以上のアカシアがあり、最も古い街路樹として保護されています。結ばれない男女のストーリーを、そのアカシアの巨木にからめて作詞したわけです。
調べてみると、この作詞家は『エリカの花散るとき』(西田佐知子)『くちなしの花』(渡哲也)のほか『あじさいの雨』『銀木犀』『夾竹桃』など樹木の作品を多く書いています。すでに亡くなっていますが、同好の士だったのかもしれません。そもそもペンネームが「水木かおる」ですから、間違いないですね。