前々回に続いて、干拓田のシギをご紹介します。 まず、常連のアオアシシギ。名前は「青脚鴫」ですが、動画でも分かるように脚は青くないです。強いて言えば緑がかった灰色で、昔は緑も青と表現したのでこの名前になったのでしょう。 この仲間には黄脚鴫や赤脚鴫もいます。鳥の名前と色の関係がどうなっているのか、図鑑をしらみつぶしにして色の名前のついた鳥を調べてみたところ、なかなか面白い結果でした。 ここでクイズです。第1問、鳥の名前に出てくる色では何色が最も多いでしょう? 第2問。名前に色がつく鳥は全体の何割くらいいるでしょう? ヒント。鳥の名前に登場する色は、白、黒、灰、青(瑠璃を含む)、赤(紅や緋を含む)、黄、茶、紫、金、銀の10色あります。亜種や日本で1回だけ記録された珍鳥も含みます(籠脱けは除外)。 第1問の正解は、白。日本野鳥の会発行の『フィールドガイド日本の野鳥』で調べると、「白」と名づけられた鳥が68種います。シロハラのような単純なものからオジロ○○、マミジロ○○、コシジロ○○などマニアックなものまでいろいろあります。 以下、黒45種、赤38種、青21種、黄13種、灰7種、金4種、銀2種、茶2種、紫1種という結果でした。中には「シラガホオジロ」や「ハシグロクロハラアジサシ」のように、1種で同じ色が2度登場するものもあります。また、「マミジロキビタキ」や「ズアカアオバト」のように1種で2色登場するものもあり、「キンクロハジロ(金黒羽白)」にいたっては3色です。 次の動画はムナグロ。この鳥は胸が黒いのでこの名前ですが、今は夏羽から冬羽に換わる時期なので黒味が薄いです。 第2問の答は、3割。色の名を持つ鳥は、上記10色に別格のヤイロチョウ(八色鳥)を加えて全部で191種ありました。この図鑑には555種の鳥が掲載されているので、3分の1が色の名前を持つ鳥ということになります。 調べる前は「せいぜい1割だろう」とタカをくくっていましたが、意外でした。みなさんの答どうでしたか?
先週の日曜、野鳥の会の催しとして京都の奥座敷・貴船で自然観察会を行いました。真夏は鳥が少ないので、鳥以外の生物を観察しようという会です。私は樹木担当として参加。7月末には草花やシダに詳しい担当者とともに下見をしました。
お盆真っ最中の日曜日にもかかわらず、約20名が参加。涼しそうな川床で鮎料理や流しそうめんを楽しむ観光客を横目にしながら、貴船川沿いを歩きました。今が書き入れ時のようで、お昼には「流しそうめん 待ち時間2時間半~3時間」の札が出るほどの賑わいでした。
川の上に床を並べて料理をいただく川床料理
このあたりは、私のフィールドの栃の森や宇治周辺の野山と植生が異なり、植物観察には面白い場所。シダに詳しい担当者も、「観葉植物として売られている珍しいシダが生えている」と言っていました。
植物園で見たことがあるコクサギを初めて自生で見ました。葉が2枚ずつ互生する珍しい木です。木の周囲に独特の臭気があるので「小臭木」と命名されたようですが、この時は臭いは感じませんでした。葉をちぎって匂うと、ミカン科特有の柑橘系の香りです。
葉が2枚ずつ互い違いに出るコクサギ
斜面にハリエンジュらしい若木が生えているので双眼鏡で確認していると、「サイカチが生えている」と参加者の声。幹を見るとトゲが生えていて、確かにサイカチです。
お盆の最中に参加するだけあってみなさん植物に詳しく、案内係の私が逆に教えられることが何度かありました。サイカチも自生を見るのは初めて。
葉の形状はハリエンジュにそっくり
幹や枝はトゲだらけ
貴船神社も観光客でいっぱいでした。境内にはカツラがご神木として祀られていますが、カツラのご神木は珍しい。水の神様なので、川筋によく生える樹種をご神木にしたのでしょう。
ご神木のカツラはたくさんの株立ち
この貴船神社は宇治と縁があります。宇治の橋姫が嫉妬に狂って貴船神社に「丑の刻参り」に通い、相手の男と女を呪い殺したという伝説があるからです。宇治には橋姫神社という小さい神社があり、縁切りの願いを叶えてくれるそうです。
そういう恐い話の一方、貴船神社には「相生杉」や「連理の杉」という夫婦和合のシンボルがあります。
相生杉
スギとカエデが合着した「連理の杉」
できれば、橋姫神社よりもこっちに手を合わせる人生を送りたいですよね。
最近は鳥の話が多いので、木と鳥のテンプレートに変更し、アクセス状況など新しい表示も加えました。本日も鳥です。
8月に入って頻繁に近くの干拓田でシギを観察しています。ここは関西で内陸性のシギが見られる数少ない場所。今の時期、多くのバードウォッチャーが探しに来るタマシギが撮影できたのでご紹介します。
この鳥、ちょっと変わっています。普通は派手な方がオス、地味な方がメスですが、タマシギは逆に派手な方がメス、地味な方がオスです。動画はメス。
しかも一妻多夫制で、メスはあちこちで浮気して家族をつくり、子育てはもっぱらオスの役目。派手な親鳥が子育てすると敵に見つかりやすいので、子育ては地味な方がいいのです。
野鳥の結婚形態は一夫一妻制、一夫多妻制、一妻多夫制いろいろありますが、雌雄の体色や役割まで逆転しているのは日本ではタマシギだけでしょう。次の動画はオス。
メスは派手なかっこうで外を出歩き、オスはおとなしく家(巣)で子育て…。恐妻家のおじさんバードウォッチャーは、つい感情移入して、タマシギのオスを相憐れむのです(私のことではありませんっ!)(笑)。
次の動画ではペアで行動していますが、メスの方が堂々としています。
人間の世界でも最近は夫が子育てや家事に参加するようになって、男と女の役割分担が変化してきました。私は子どもがいないので子育て経験はないですが、結婚当初から家事は平等に分担していて、料理、洗濯、掃除ぜ~んぶできます。ホントです。特に料理は得意です。
以前、自然公園に外来種を植樹すべきではないと書きましたが、在来種でも苗木を遠く離れた地域に植えるべきではないと森林総合研究所が警告しています。例えば、北海道で育てたミズナラの苗木を京都府の山地に植樹してはいけないと言うのです。
今年3月に発表した『広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン』によると、10種類の広葉樹で実態調査し、そのうちのミズナラ、ブナ、ヤマザクラ、ウダイカンバ、イロハモミジ、オオモミジの6種について境界線を定め、それを越えて移動させないように注意しています。
たとえば、ミズナラは石川県~岐阜県~長野県南部~山梨県~神奈川県を境にした東西2地域、イロハモミジは福井県~滋賀県~三重県を境にした東西2地域、ヤマザクラは山口県~九州とそれ以西の2地域というように樹種ごとにエリアを分けています。
西日本と東日本で移動制限されたミズナラ(栃の森の巨木)
同じ種類でも地域よって遺伝的な差異があり、異なる集団を人為的に混ぜると、それまでに自然が長い年月をかけて築いた遺伝構造を破壊する可能性がある。その結果、一定の地域で適応してきた集団が死滅したり、遺伝的な多様性が損なわれ、種の衰退につながる…。森林総研はそう警告しているのです。
指定した6種のうち、ブナだけは日本海側(北海道~鳥取県)、太平洋側(宮城県~和歌山県)、西日本(中国~四国~九州)の3地域に分かれています。
3地域で移動制限されたブナ(春の芽吹き)
実は、うちの庭をつくるとき、植木屋さんにカシワを注文しましたが、関西には苗木がないので栃木県から取り寄せました。森林総研はカシワの調査をしていませんが、ミズナラと近縁なので移動制限すべき樹種かも知れません。
庭のカシワ
主要な針葉樹(スギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツ)についてはすでに林業種苗法という法律で苗木の移動制限がされているそうです。それを広葉樹にまで拡大しようというのが今回の提言の狙い。
実行するには、地域ごとの種の確保、苗木産地の分散化、苗木の産地表示などさまざまな課題があるようですが、長いスパンで考えれば立法化するべきですね。
森林総研の資料はこちら
宇治川の支流に鳥見に出かけました。たまたま餌をめぐる鳥たちの闘いを目撃したので、いつもどおり動画でご紹介します。
まずは、ササゴイ。この鳥はいつも身を潜めて魚が近くに来るのをじっと待っています。残念ながら、私が見ている間ササゴイは餌にありつけませんでした。生きていくために鳥たちも必死なんですね。
次は、ゴイサギ。カエルをゲットしたのですが、そのカエルを横取りしようとしてスッポンが近づいてきます。それを避けてゴイサギは別の場所に移動し、カエルを飲み込もうとしますが2度失敗。3度目にようやく丸呑みして、満足そうに川の水でクチバシをすすぎます。
以前アップしたアオサギもカエルを丸呑みした後、クチバシをすすいでいました。サギ類の食事のマナーなんですかね。
次は、チュウサギとアオサギ。カエルをゲットしたチュウサギがいざ食べようとすると、それを横取りしようとするアオサギが近寄ってきます。チュウサギは別の場所に逃げてごちそうを食べたようです。
一見のどかに見える水辺の風景ですが、そこでは食うか食われるか、生き物たちの激しい闘いが繰り広げられているんですね。
人間以外の動物にも血液型があるそうですが、血液遺伝学の学者によると、植物にも血液型があるとのこと。
人間や動物の場合、血液細胞の周囲にくっついている糖類によって4つの型が決まるのですが、植物にも細胞の表面に同じような糖類がくっついていて、種類によってA・B・O・ABの4つの型が決まっているのだそうです。
すべての植物ではなく、その糖類を持っているのは約1割。そのうちの半分くらいがO型で、残りのほとんどがB型かAB型。A型は少ないようです。
O型の木としてはイチイ、ツバキ、サザンカ、ヤマモミジ、エノキ、リンゴ、ナシなど。野菜ではダイコン、カブ、ゴボウ、キャベツなどもO型。
ツバキはO型
B型は樹木ではアセビ、イヌツゲ、野菜ではセロリなど。
アセビはB型
AB型は樹木ではイタヤカエデ、バラ、スモモ、ブドウ、野菜ではソバ、コンブなど。また、O型のカエデは赤く紅葉し、AB型のカエデは黄色く紅葉するそうです。
イタヤカエデはAB型
A型はアオキ、キブシ、ヒサカキなど。関係ないですが、私もA型です。
ヒサカキはA型
以前、ある殺人事件の捜査中、被害者の枕からAB型の血液反応が出ました。被害者の血液型と異なるので犯人の血液と推測されたものの、現場にはほかに血痕がありません。枕を解体して調べたところ、ソバ殻がAB型の反応を示したので鑑識も驚いたという実話があるそうです。
宇治川には広大なヨシ原があり、今の時期たくさんのツバメが集まります。住宅地の巣で子育てを終えた親ツバメや成長した子ツバメが、南へ帰るために群れを形成したり、エネルギーを蓄えるためにここに集合するのです。
「ツバメのねぐら入り」と呼ぶ現象で、夕方になるとどこからともなくツバメが現れ、数千羽単位で空をぐるぐる回ったり、ヨシ原の上を飛び回った後、一斉にねぐらであるヨシ原の中に落ちていきます。下の動画で左から右へ流れていく黒い陰はすべてツバメです。
その数は多い日で5万羽、少ない日で2万羽くらい。午後7時前から集まり始め、7時15分頃にはすべてのツバメがヨシ原に入ります。わずか15分の間に数万の鳥が見られるわけです。
関西には他にもこういう場所がありますが、宇治川はツバメの数が多いので、大阪や神戸からも見物客がやってきます。関西で最も多くの鳥が見られる場所でもあるわけです。
その数を調査するために、宇治在住の鳥仲間が毎年早朝にカウントします。夕方は暗くて姿が見えにくいうえに、ツバメの動きが複雑でカウントできませんが、朝は一定方向に飛び出すのでカウントしやすいのです。
4時半に現地に集合し、50m~100m間隔で堤防に立って、自分の受け持ち区域のツバメをカウントします。もちろん、何百、何千単位の概算です。ツバメは4時45分に飛び出し、5時には終ります。
その時の様子を見てください。画面右側にあるヨシ原から堤防を越えて左へ流れていく黒いものがツバメです。まだ5時前ですが、もう散歩やジョギングしている人がいます。
この日は合計1万4千羽でした。昨年が2万1千羽、一昨年が5万4千羽でしたが、ツバメの数は日によって違うので、一概に減少傾向にあるとも言えないようです。
実際、私も夕方に3回観察しましたが、多い日と少ない日があります。すでに南へ旅立った群れもあれば、新たに加わった群れもあるので、その出入りによって数が変動するようです。
家から近いのでこれまでに何度も見に行きましたし、探鳥会を担当したり、知り合いを案内したりしましたが、いつ見ても感動します。
仕事先から、「試食してアンケートに答えてください」とドライフルーツをいただきました。ナツメヤシの実で、「デーツ」というそうです。
ナツメヤシは中近東に自生する樹木で、現在は実を生産するためにたくさん植えられているようです。イスラム教の聖典コーランには「神が与えた食物」と書いてあるとか。
デーツのドライフルーツ。大きさは親指くらい
食べてみると、ものすごく甘い。砂糖の固まりを食べているようです。食感は干し柿に似ています。干し柿も甘いですが、その3倍くらい甘い。そう言えば、柿の学名も「神様の食べ物」でした。
ハチミツと同程度の糖度があり、食物繊維やカルシウム、カリウム、鉄分が豊富で、イスラム教徒はラマダン明けに栄養補給としてデーツのジュースを飲むそうです。
ツリーウォッチャーとしては、実を食べるとその木が見たくなります。京都府立植物園の温室にナツメヤシがあることを確認して、行ってきました。
温室の天井に届きそうなほど高いナツメヤシ
「デーツなんて食べたことない」という方がほとんどでしょうが、知らないうちに口にしているかも知れません。特にお好み焼きが好きな人は。
「お好み焼き」と言えばソースは広島のオタフクソース。その材料にデーツが使われているのです。同社のホームページによると、「お好みソースの独特のうまみ、コク深い甘味を求め、試行錯誤のすえたどり着いたのがデーツでした」。
原材料表示に「デーツ」と記載されています
20年ほど前、友人4人で共同出資してお好み焼きの店を出したことがあります。そこで使っていたのもやはりオタフクソース。
行列ができるほど人気のあるお好み焼き屋でしたが、残念ながら事情があって5年ほどで閉店しました。
オタフクソースのデーツ特集ページはこちら
最近、当ブログのアクセス数が減少傾向にあります。「樹樹日記」の看板を掲げながら、鳥の動画ばっかりアップしているので、樹木ファンが愛想を尽かしたのでしょうか。
と言いながら、本日も鳥のビデオです。京都市のど真ん中にある京都御苑には毎年フクロウの一種アオバズクがやってきて、数組が繁殖します。営巣に適した洞のある巨木が多いこと、セミなどの餌が豊富なことがその要因のようです。
まずは、クスノキの巨木に止まっているオス(多分)。ほとんど動きませんが、カラスの声がすると反応します。メスが巣の中でヒナを育てている最中なので、カラスの襲撃を警戒して見張っているのでしょう。
次は別のポイントで巣立ちしたヒナ。葉陰で写せませんが、この横にヒナがあと3羽並び、その横に親鳥がいました。この家族は、マツの巨木に設置された巣箱を利用しているようです。
片方の足だけで枝に止まっていますが、寝入ってバランスを崩すとあわてて両足で枝を捉まえるところが可愛いでしょう?
今年はもう1ヵ所、エノキの巨木でも繁殖したそうです。クスノキ、マツ、エノキと樹種にはこだわりがないようで、「ヒナが3~4羽育つ洞があればどんな樹でもいいです。贅沢は言いません」ということでしょうか。