樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

からたちの花

2016年05月26日 | 木と歌
4月末、久しぶりに映画のはしごをするために京都市内へ出向きました。その途中、カラタチで知られる渉成園へ立ち寄りました。別名「枳殻(きこく)邸」で、枳殻はカラタチのこと。残念ながら、花はすでにほとんど散っていました。


わずかに残っていた花

カラタチといえば、北原白秋・作詞、山田耕筰・作曲の唱歌『からたちの花』があります。
からたちの花が咲いたよ。白い白い花が咲いたよ。
からたちのとげはいたいよ。いい針のとげだよ。
からたちも秋はみのるよ。まろいまろい金のたまだよ。



すでに結実していました。ミカン科なので丸く黄色くなります。

全体的にはカラタチの特徴をそのまま描いたものですが、1カ所だけ、違和感のあるフレーズが出てきます。
からたちのそばで泣いたよ。みんなみんなやさしかつたよ。
これは、作曲者である山田耕筰の過去の思い出を綴ったものだそうです。
耕筰はベルリンフィルを指揮するなど、欧米に認められた最初の日本人音楽家とのことですが、幼い頃は養子に出され、活版工場で働きながら夜学で学んだそうで、自伝に「工場でつらい目に遭うと、カラタチの垣根まで逃げ出して泣いた」と書いているそうです。
その話を聞いた白秋が詩に書いて、本人が作曲したのが『からたちの花』。短い唱歌ですが、ドラマが隠れていますね。
ちなみに、映画のはしごの1本目は満員。ミニシアターとはいえ、満員で入れなかったのは初めてでした。
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シジュウカラの巣づくり

2016年05月19日 | 野鳥
少し前の話ですが、5月7日に庭でシジュウカラがウロウロしているのを見つけました。よく見ると、クチバシに何かくわえています。
「ヒナに給餌するために、うちの庭に虫を取りにきたのかな?」と思って観察していると、カシワの木に掛けてある巣箱に入りました。中の掃除もしないまま掛けっぱなしにしていた巣箱なので、今年は使わないだろうと思っていましたが、嬉しいことに再利用してくれたようです。
2階の部屋から双眼鏡で観察すると、くわえているのは餌ではなくコケ。時期が少し遅いですが、営巣中のようです。カメラをセットして撮影し、じっと待っていられないので録りっぱなしにした後に編集したのが、以下の動画です。



30分ほどの目視と1時間20分の撮影で確認できたことは、少し離れたクロガネモチの枝か庭のフェンスに一旦止まって、周囲を警戒してから巣箱に入ること。そして、約2時間の間に7回巣材を運び込みました。
巣穴から出ると、向かいにあるお寺の方へ飛んで行きます。寺の庭のコケを失敬しているようです。
この動画を野鳥の会のフェイスブックに掲載したところ、1150ものリーチ(記事を読んだ人の数)があり、動画が400回も再生されました。これまでの記事の中でもベスト1か2の数で、ちょっと意外でした。
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海辺でシギ&チドリ

2016年05月12日 | 野鳥
5月2日、予定がキャンセルになって急に1日空いたので、近くの山で夏鳥を探すか、大阪方面の干潟でシギチを観察しようと思い立ちました。
海辺のシギチ観察は潮の満ち引きに影響されます。潮位を調べると、大潮ではないものの、到着するころにちょうど干潮になりそうなので、シギチ観察に決定! 急いで準備して出かけました。
淀川河口にある海老江に到着すると、いつもの岩礁でシギやチドリが一生懸命採餌しています。中型のシギはすべてキアシシギと思い込んでいましたが、帰宅後に動画を確認するとソリハシシギが1羽。スコープを持参しなかったので、遠くの鳥が識別できませんでした。



お昼前に淀川河口から甲子園浜へ移動。海岸に到着した頃には、すでに満ち潮になっていて、干潟はほとんど残っていません。その代わり、潮を逃れたチュウシャクシギがすぐ目の前のテトラポットに4羽も並んでいました。



キョウジョシギも4羽、岩礁でさかんに採餌しています。京女とは久しぶりの再会です。



このほかアオアシシギなど7種類のシギやチドリ、セッカ、オオヨシキリ、コアジサシが見られました。ちょっと驚いたのは、キンクロハジロとホシハジロの小群がまだ残っていたこと。越夏するのかな?
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森の中の歌

2016年05月05日 | 野鳥
4月末の栃の森では鳥のさえずりを楽しんできました。林道ではトラツグミの声が聞こえてきます。姿を見せないので声だけ録りました。
小さな滝の音をバックに「キ~ン」と一声ずつ区切って鳴いています。写っているのは、前半がイヌシデの花、後半がアカシデの花。



鳥とは思えないこの奇妙な声は、『平家物語』では妖怪ヌエの声とされていますし、現在でも幽霊やUFOに間違えられて時々騒動になります。
森の入口近くではキセキレイがさえずっています。トラツグミと同様金属的な声ですが、こちらは妖怪に間違われることはないでしょう。



森の中ではキツツキの食痕が残るミズナラの倒木を発見。虫が多かったようで、激しくつつかれています。この森にはオオアカゲラ、アカゲラ、アオゲラ、コゲラの4種類のキツツキがいるので総動員で採餌したのでしょう。



野鳥生息調査としての今回のトピックスは、ヒレンジャク。この森で20数年調査を続けていますが、林内では初記録。しかも60~70羽の群れでした。この冬、里ではヒレンジャクに出会えなかったので、思いがけない遭遇でした。
帰路、コガラがすぐ近くの木でさえずってくれました。この鳥は小さい上によく動くので動画に収めにくいですが、さえずる時はしばらくじっとしています。



調査では、目視はV、さえずりはS、地鳴きはC、飛翔はFと記録します。Visual、Song、Call、Flyの略です。
今回、森の中ではツツドリ、オオルリ、キビタキなどの夏鳥のほか、ミソサザイやシジュウカラなど留鳥のいろんなさえずりを聴くことができました。こんなに多くの種類の歌が聴けるのは、この森の大きな魅力です。
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