樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

新緑の森歩き

2016年04月28日 | 樹木
週末に栃の森へ行ってきました。今年初めての森歩き。
この冬は雪が少なかったようで、例年なら日陰に雪が残っていますが、今回はどこにも見当たりません。その分、樹木の開花が早かったようで、いつもは咲いている花が見られなかったり、盛りを過ぎていたりしました。
この森は今が早春。枝から新芽が出て、葉が展開し始めています。やわらかな黄緑色の葉に包まれた森は、見ているだけで気持ちよく、思わず深呼吸してしまいます。


ミズキの展葉

林道の脇に立つタラノキからは頂芽が伸びています。タラノメとして重宝されますが、私は数少ない2回羽状複葉の樹として注目しています。



カツラも小さな丸い葉を規則正しく並べています。わが家のカツラはすでに展葉が終りましたが、こちらはまだ生まれたばかり。こういう葉の感じがこの樹の魅力です。



花も少し紹介します。ムシカリ(別名オオカメノキ)の装飾花と本来の花が両方ともきれいに咲いていました。周囲の大きな白い花が虫を集めるための装飾花、中央の小さい花が本当の花です。



帰路、キャンプサイト近くでウスギヨウラクを見つけました。ツツジの仲間で、漢字で書くと「薄黄瓔珞」。「瓔珞」は珠玉や貴金属に糸を通して作った釣鐘型の装身具のことで、仏像や寺院の装飾品に使われます。



一方、毎年4月下旬の訪問時に見られるキンキマメザクラ(別名ヤマヒガン)やマルバマンサク、ヤマヤナギは花が見られませんでした。アセビやヒサカキは盛りが終っていました。こんな年もあるんですね。
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マロンは栗か?栃か?

2016年04月21日 | 木と飲食
マロン・グラッセというフランス菓子があります。簡単に言えば、栗のシロップ漬け。
しかし、マロンとは「マロニエの実」という意味であり、マロニエとはトチノキ(正確にはセイヨウトチノキ)のことです。言葉から判断すると、マロン・グラッセとは栃の実のシロップ漬けということになります。
マロンは栗の実なのか? はたまた栃の実なのか? 気になって調べてみたところ、「もともとフランスで栃の実を使ってマロン・グラッセを作っていたものの、栃の実は処理が大変なので、栗で代用するようになった」というようなことが書いてあります。


こちらは栃の実

しかし、フランスにセイヨウトチノキが移入されてシャンゼリゼ通りなどの街路樹に使われ始めたのは17世紀。さらに、日本の栃の実もそうですが、時間をかけてアク抜きをしないと食べられません。
もともと国内においしいクリが自生するのに、街路樹に使うような移入種の、しかも手間のかかるトチノキの実をわざわざお菓子に使うというのは不自然です。


こちらは栗の実

さらに調べると、納得できる答えが見つかりました。クリを品種改良するうちに、普通はイガの中に3粒結実するところ、栃の実のように1粒の大きな実を結ぶ品種が生まれた。その栗を普通の栗「シャテーニュ」と区別するために、「マロン」と呼ぶようになったようです。
「栃の実のような大きな栗の実」という意味なのでしょう。手元の仏和辞典でmarronを見ると、「大栗」とある一方「栃の実」とも買いてあります。
ついでながら、モンブランというケーキはフランス語で「モン・ブラン・オ・マロン」と言うそうですが、マロン・グラッセの製造工程で壊れたものをペーストにして再利用したのが始まりだそうです。そう言えば、モンブランの上にはマロン・グラッセが乗っていますね。
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外来種の歴史

2016年04月14日 | 野鳥
鑑賞のために移入されたカナダガンが増殖したり、国内の近縁種と交雑するのを防ぐため、環境省が生体71羽と卵150個以上を駆除して根絶しました。外来種の評価や管理はなかなか難しいです。
こうした外来種に関する歴史を調べると、いろいろ面白いことが分かります。ある学者が記録に残る渡来動物のリストを発表しているので、その中から鳥をピックアップしてみました。
日本に初めて外来種が持ち込まれたのは598年4月。難波吉士磐金(なにわのきしのいわかね)という人物が新羅からカササギ2羽を持ち帰ったと『日本書紀』に記されているそうです。外来種問題は1400年以上前から始まっているわけです。
また、この年の8月には、同じく新羅からクジャクが1羽献上されています。さらに、翌年9月には、百済からラクダ1頭、ロバ1頭、ヒツジ2頭とともに白雉が献上されています。この白雉については、以前の記事で紹介しましたように、私はコウライキジではないかと推測しています。
2年間でカササギ、クジャク、コウライキジ(?)の3種が移入されたわけですから、外来種ラッシュですね。そして、647年にはオウムが、732年にはハッカチョウが移入されています。
その子孫ではないでしょうが、ハッカチョウは現在も生息域を拡大しながら野生化しているようで、私もある場所で遭遇しました。その際に撮影したのが下の動画。



渡来動物リストを見ると、その後もクジャクやオウムなどが次々に移入されています。ヒクイドリ、キュウカンチョウ、ダチョウといった種名も見られます。いずれも視覚的にインパクトの強い鳥。つまり、観賞用でしょう。
面白いのは、こうした外来動物を飼育する施設が当時すでに存在していたこと。例えば、745年4月16日付の正倉院文書には「孔雀一羽日料、米二合五勺」と記されており、天皇の庭園でクジャクが飼育されていたことを物語っています。
日本初の動物園は東京の上野ではなく、奈良にあったわけです。
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野鳥とジャズ-②

2016年04月07日 | 野鳥
私はそれほどジャズに詳しいわけではありません。一時期ピアノトリオをよく聴いていた程度で、特にボーカルには興味がなく、ヘレン・メリル以外は聴いていませんでした。
今回、鳥をテーマにしたジャズを調べていると、ボーカルナンバーが結構ありました。その中から、エラ・フィッツジェラルドの「Skylark」をお聴きください。



歌詞は、「ヒバリよ、私に何か伝えることはない? 教えてよ、私の恋人になる人はどこにいるのか。霧に包まれた草原に、私のキスを待っている人はいなかった?」というような内容です。その一節に、「Crazy as a loon(アビのように狂おしく)」とあるのが気になりますね。
今回の新しい発見は、鳥の曲ばかり集めたジャズボーカルのアルバムがあったこと。しかも歌っているのは、上のエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンとともに「ジャズボーカル御三家」と呼ばれたカーメン・マクレエ。タイトルは『Birds of a feathers』、1958年にリリースされています。その全曲が以下で聴けます。



全部で12曲収録されていて、すべて異なる鳥が12種類登場します。1曲目は上のエラ・フィッツジェラルドと同じ「Skylark」。
1.Skylark(ヒバリ、上のエラと同曲)
2.Bob White(コリンウズラ)
3.A Nightingale Sang In Berkeley Square(ナイチンゲール・小夜鳴き鳥)
4.Mister Meadowlark(マキバドリ)
5.Bye Bye Blackbird(クロウタドリ)
6.Flamingo(フラミンゴ)
7.The Eagle And Me(ハクトウワシ)
8.Baltimore Oriole(ボルチモア・オリオール)
9.When The Red, Red, Robin Comes Bob, Bobbin' Along(コマドリ)
10.Chicken Today And Feathers Tomorrow(ニワトリ)
11.When The Swallows Come Back To Capistrano(ツバメ)
12.His Eye Is On The Sparrow(スズメ)
「Skylark」と「Baltimore Oriole」を作曲したのは、「Stardust」やレイ・チャールズで有名になった「Georgia on My Mind」を作曲したホーギー・カーマイケルという人のようです。バードウォッチャーだったのかな?
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