樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

死ぬまでに見たい木

2013年02月21日 | 伝説の樹
旅行のクチコミサイト「トリップアドバイザー」が、「死ぬまでに一度は訪れてみたい世界の観光スポット」をテーマ別にリストアップしています。その中で「死ぬまでに見たい世界の巨木・奇木16選」を発表しました。
その第1位は、ハワイのモアナルア・ガーデンズ・パークにあるモンキー・ポッド。下の画像(著作権フリー)がそれです。見覚えありませんか?



日立のテレビCM「この木なんの木 気になる木…」に登場する巨木です。
以前の記事でもご紹介しましたが、この木の別名は「アメリカネム」。ネムノキはマメ科ですが、猿がその豆のさや(pod)を好んで食べるので「モンキー・ポッド」。樹齢は約130年で、高さ25m、広げた枝の幅は40mもあります。
第2位はイエメンにある「切ると赤い血のような樹液を出す不思議な木」。第3位はマダガスカル島の「バオバブの木」。
そのほか、アメリカにある「世界最大の木」「世界一高い木」など、以前当ブログでご紹介した木もリストアップされています。
日本からも2つ選ばれていて、1つは西表島のサキシマスオウ。私も一度現地で見たことがありますが、根が板のようになって張り出している木です。
もう1つは、福島県の三春滝桜。樹齢1000年、高さ12m、根回り11mのベニシダレザクラです。
16選の中で私が「死ぬまでに見たい」と思ったのは、アメリカにある樹齢5000年の「世界最古の樹木・ブリストルコーンパイン」。実際にはスウェーデンで樹齢9550年のトウヒが発見されているので世界最古ではありませんが、この老木は風格があって、樹形も面白くて魅力的です。
「16選」はこちらで見られます。
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大銀杏の木霊

2011年01月03日 | 伝説の樹

あけましておめでとうございます。今年も樹木のウンチク話にお付き合いください。
さて、昨年の3月、鎌倉にある鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れたというニュースがありました。妻の実家があちら方面なので、年末に帰省した際に携帯カメラで写真を撮ってきてもらいました。

 
大銀杏があった場所(注連縄のある所)。すでに根元から彦生えが出ています

このイチョウは幹回り6.8m、高さ約30mで、樹齢は1000年だったそうです。日本史の授業で習いましたが、鎌倉幕府3代将軍の源実朝は、このイチョウの幹に隠れていた甥の公暁に暗殺されます。以後、「隠れ銀杏」として有名になり、鶴岡八幡宮のご神木として崇められてきました。
ところが、「樹齢1000年であれば実朝が暗殺された1219年にはまだ樹齢200年程度なので、暗殺者が隠れられるような太い樹ではなかったはず」と疑問を呈する樹木学者もいます。

 
倒木を切って立てた別の場所でも新しく芽吹いています

ご神木が倒壊した後、その枝をお守りとして販売しているというニュースも伝わったので、買ってきてもらいました。
鶴岡八幡宮のホームページには、「3月の倒伏後に見事に芽吹き始めた御神木大銀杏の生命力は、私たちを勇気付けてくれます。この「大銀杏 木霊」は大銀杏の枝から奉製した特別なものです。木霊の尊さを感じ、お守りとしてお持ち下さい。」と書いてあります。

 
大銀杏木霊(こだま)800

「倒れてもただでは起きない」と言うべきか、神社もなかなか強かですね。

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英雄ゆかりの樹

2010年08月16日 | 伝説の樹
日本史の授業で「大塩平八郎の乱」を学びました。天保8年(1837)、飢饉で苦しむ民衆をよそに米価を吊り上げる商人や腐敗した幕府を正すために反乱したのが大塩平八郎。
その乱の際に砲弾が命中したという樹が大阪市内にあります。そのまま約150年間生き残っていましたが、枯れ死したため1984年に2代目が植樹され、建設省(当時)が石碑まで建てて顕彰しています。
その2代目も枯れたので、今年になって3代目が植えられました。樹種はエンジュ。場所は大阪造幣局近くの国道1号線沿い。車がビュンビュン走り去る道の並木の1本として植えてあります。



戦いの朝、平八郎の屋敷から放った第1発目が向いの屋敷にあったエンジュに命中したそうです。つまり、大塩家の樹ではありません。


2代目植樹の際に建設省が建てた石碑

エンジュ(漢字では「槐」)は中国原産のマメ科の樹木。日本でもたまに街路樹に使われます。中国の周代では朝廷の庭に3本のエンジュを植え、その下に最高位の3人の官職が座ったことから「出世の木」とされ、中国では今でも庭に植える家が多いそうです。江戸時代の日本でも、同様に屋敷に植えられたのでしょう。


マメ科なので葉は羽状複葉

それにしても、砲弾が命中したというだけで樹木が保存される、しかも2代目、3代目と受け継がれるというのは、大塩平八郎を英雄としてレスペクトしている大阪ならではでしょうね。
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恋する樹

2010年07月01日 | 伝説の樹
鳥見ツアーで訪れた立山には、「美女平」という気になる名前の場所があります。
その由来……美しい娘が立山開山に取り組む恋人に会うために登ってきたが、「山を拓くまでは帰らない」と追い返された。しかたなく下山する途中、1本の杉に「美しき御山の杉よ 心あらば わがひそかなる祈り ききしや」と祈ったところ、2人は後にめでたく結婚。その杉を「美女杉」と呼び、一帯を「美女平」と呼ぶようになった……


ケーブル「美女平」駅の横にある「美女杉」

「美女杉」はタテヤマスギで、この一帯にはその巨木がたくさん残っています。鳥見のために散策した美女平の森にも、「不老樹」とか「火炎杉」とか名前のついた巨木が10本ほどあり、いずれも風格のある立派な樹形。「屋久杉もかくや」と思わせます。
植物学的には立山杉も屋久杉も、あるいは秋田杉も吉野杉も同じスギ。ただ、豪雪地帯のスギは枝が弓なりに湾曲するという地域的な特性があります。


幹周り7mの「火炎樹」

立山の前に訪れた有峰にも面白い樹がありました。ミズナラにブナがからみつくように生えているのです。ミズナラは直径1m、ブナは30cm。
仲むつまじい恋人や夫婦を連想させることから、有峰の名木にするべく名前を公募したところ325通の応募があったそうです。選ばれたのは「永遠(とわ)の木」。



確かに、こんなに曲がったブナは珍しいです。ヨーロッパではナラを「森の王」、ブナを「森の女王」と呼びますから、この「永遠の木」も左のミズナラを男性、右のブナを女性に見立てるのでしょう。
以前ご紹介しましたが、2本の幹や枝が合体している樹を「連理の樹」と呼び、恋愛成就や夫婦和合の神木にします。この「永遠の木」も恋愛成就の樹として有名になるかも知れません。
自然の樹の姿に恋愛感情を投影して祈ったり願ったりする人間も大変ですが、その熱い想いを託される樹木も大変だな~(笑)。
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学問の木

2010年05月17日 | 伝説の樹
「楷(かい)の木」ってご存知ですか? 
中国山東省にある孔子の墓に弟子の子貢(しこう)が植えた木で、科挙の試験に合格した人にこの木で作った笏を贈ったことから、中国では「合格祈願の木」や「学問の木」として知られているそうです。
植物学的にはウルシ科カイノキ属の落葉高木。枝が直角に伸びて楷書の文字に似ていることから「楷の木」と呼ばれるようになったとか。その珍しい木が大阪のある公園に植樹されたと聞いて行ってきました。


(楷の木)

1915年に孔子の墓の木の種子が日本に持ち込まれ、岡山藩の藩校などに植えられました。現在、その藩校のカイノキの落ち葉は受験のお守りとして持ち帰られるとか。岡山県ではけっこう一般的で、紅葉が美しいこともあって学校や公園によく植えられているようです。


(ウルシの仲間なので羽状複葉)

この大阪のカイノキも岡山の藩校の種子から育てられたもので、孔子の墓に植えられた木の子孫にあたります。訪れたのは4月末でしたが、まだ葉っぱの展開が始まったばかりでした。公園には全部で5本のカイノキが植えられています。
数年後には、岡山県と同じように、この落ち葉が合格祈願として持ち帰られるようになるかも知れません。
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姉妹木

2010年04月01日 | 伝説の樹
姉妹都市はたくさんありますが、姉妹木というのは珍しいでしょう。姉妹提携しているのは、屋久島の「縄文杉」とニュージーランドの古木「タネ・マフタ」。
縄文杉は樹齢2170年以上、タネ・マフタはカウリという針葉樹で、樹齢は1200~2500年。タネ・マフタとは、先住民族マオリの言葉で「森の神」という意味だそうです。
どちらも保護区の森にある神聖な樹で、重要な観光資源であることなど共通点が多いことから、屋久島町とニュージーランドの2市が1年前に姉妹提携し、樹木の保存技術を交換したり、観光ガイド育成に取り組んでいるそうです。


(縄文杉)

上の写真は、この記事のために私が屋久島へ行って撮影したもの…ではなくて、「屋久島の写真を自由に使ってください」という奇特な方のサイトからいただきました。
カウリという名前は初耳で、少し調べたところ、ナンヨウスギ科の樹木でニュージーランドの固有種。幹がまっすぐ伸びて巨木になるため、古くはマオリ族の大型船用に使われ、19世紀以降はヨーロッパ人が伐採して輸出したそうです。
実物を見たいのですが、日本では「つくば植物園」に1本あるのみ。木が好きとは言え、ニュージーランドや茨城県まで行けないので、同じ仲間のナンヨウスギがある大阪の長居植物園に行ってきました。


(カウリと同じ仲間のナンヨウスギ)

(ナンヨウスギの葉)

タネ・マフタの樹齢が大雑把すぎてどっちがお姉さんか分かりませんが、大きさで言えば、樹高51m、幹周13.8mのタネ・マフタが姉、樹高25.3m、幹周16.4mの縄文杉が妹でしょうか。いずれにしても、「よくぞここまで長生きされました」と声をかけてあげたいです。
ニュージーランド政府観光局の姉妹提携記事はこちら
つくば植物園のカウリはこちら
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坂本龍馬とお龍

2010年03月11日 | 伝説の樹
以前、坂本龍馬が襲われた寺田屋や彼を支援した材木商・酢屋をご紹介しましたが、京都ではいま大河ドラマ「龍馬伝」にあやかった観光スポットが盛り上がっています。先日、寺田屋の前を通りかかったら大勢の観光客が並んでいてビックリしました。
そうしたブームにもかかわらず、意外と知られていない龍馬とお龍(りょう)ゆかりの木が京都市内にあります。


(武信稲荷神社。左奥がその木)

二条城の近くに武信稲荷(たけのぶいなり)という神社があり、その境内にエノキの巨木が立っています。幕末、この神社の近くにはお龍の父親が捕らえられた牢獄があり、なかなか面会できないので、2人でこのエノキに登って様子をうかがったとか。


(龍馬とお龍が登ったというエノキ)

その後、命を狙われた龍馬が身を隠して離れ離れになった時、お龍は当時を思い出して神社を訪れると、エノキの根元に2人の名前である「龍」という文字が彫ってあったそうです。龍馬が無事で京都にいることを知ったお龍は、つてをたどってようやく再会したという話です。
どこまで本当か知りませんが、この話にちなんで神社はこの樹をご神木とし、エノキ(=縁の木)の霊力で恋愛や良縁が成就するとアピールしています。絵馬もエノキの両側に龍馬とお龍が立っているという図柄。



旬の坂本龍馬、ロマンチックなストーリー、恋愛成就や良縁祈願の神社…、若い女性が飛びつきそうなスポットですが、私が訪れた時も休日なのに静かでした。他のスポットと離れていて、観光コースに入っていないからでしょうか。
大河ドラマはほとんど観ませんが、今回の「龍馬伝」は演出や撮影が新しいので注目しています。福山クンもなかなか頑張ってますね。
武信稲荷神社のwebサイトはこちら
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唐崎の一本松

2009年11月02日 | 伝説の樹
前回のタイトルは「樹の珍百景」でしたが、この「○○百景」とか「△△八景」の元祖は「近江八景」だそうです。室町時代後期の公家が琵琶湖周辺の風景8ヶ所を歌に詠み、それを江戸時代の浮世絵師・歌川(安藤)広重が描いて有名になったとか。
その一つ「唐崎夜雨」には松の巨木が描かれています。「唐崎の一本松」として昔から琵琶湖を周航する船が目印にしたり、地域の人々が信仰の対象にした名木だったようです。


(歌川広重の「唐崎夜雨」)

仕事で大津に行ったついでに、その唐崎の一本松を見てきました。現在のは3代目。初代が天正9年(1581)に台風で倒れた後、全国で名木を探して移植されたのが2代目。
幹周りが9mもあり、長い枝は南北に90mも伸びていたそうです。その枝を支えていた柱の礎石が今も唐崎神社の境内に残っています。広重が描いたのも2代目。



2代目が大正10年に枯れ死したため、その実生木を移植したのが現在の3代目。それでも樹齢は150~200年。真ん中にそびえる主幹から四方八方に枝を伸ばし、南北には40mも広がっています。
その前に立つと、怪獣のような異様な存在感。2代目はこれよりもはるかに巨大だったわけですから、もっと迫力のある光景だったでしょう。
ちなみに、唐崎神社で祈祷を受けると、この松の葉を焼酎に漬け込んで砂糖と蜂蜜で味付けしたリキュールがいただけるそうです。飲んでみたい気もします。
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犬塚の欅

2009年04月22日 | 伝説の樹
3月に仕事で大津に行った後、取材漏れがあったので再度出向きました。終了後、せっかくなのでブログの取材で樹木のポイントをいくつか回ってきました。その一つが、犬塚の欅。
大津の日赤病院の横にケヤキの巨木があり、次のような伝説が残っています。

             
                (撮影したのは3月末)

室町時代、京都の仏教界で紛争があったため蓮如上人が大津へ逃れてきました。しかし、人望の厚い上人を快く思わない他宗の門徒が毒殺を計画。それを飼い犬が察知して毒が盛られた食事を先に食べて死にました。上人は身代りになった忠犬を手厚く葬り、ケヤキを植えたという話です。
その伝説から逆算すると樹齢550年。訪れた時はまだ若葉も芽吹いていませんでしたが、どっしりとした幹が長い歴史を語りかけていました。

       
              (550年の時間の蓄積を感じさせる幹)

私も幼い頃、病死した飼い犬を兄と妹の3人で泣きながら実家の裏庭に埋葬したことがあります。その時の悲しい記憶があるので、以来ペットは飼っていません。今は勝手に埋葬してはいけないのでしょうが、犬塚という地名や家名があるくらいですから、昔はそれが普通だったんでしょうね。
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巳の神杉

2009年03月04日 | 伝説の樹
車を手放す前、妻のリクエストで奈良方面へラストランに出かけ、桜井市の大神(おおみわ)神社に参拝してきました。
ここは酒の神様で、ご神木はスギ。酒蔵が杉玉をぶら下げるのはこの神社に由来することを知って以来、気になっていました。
ご神木だけあって、境内には謂れのあるスギの古木がいくつもありました。謡曲『三輪』に出てくる「衣掛杉(ころもがけのすぎ)」、神が座る杉とされた「しるしの杉」、『古事記』に記載されているという「緒環杉(おだまきすぎ)」。
そして、最も有名なのは「巳の神杉(みのかみすぎ)」。幹が途中から二股になっていますが、その根元のウロに蛇が棲んでいるという伝説があり、祭壇には蛇の好物である酒や玉子がたくさん供えてあります。

             
                   (巳の神杉)

江戸時代には雨乞いの際にこの杉にお参りしたそうです。蛇は水神、つまりは農業の神であり、農業=米=水=日本酒というつながりがあるのでしょう。
毎年11月14日には全国の日本酒やビール、蒸留酒などの酒造会社、さらには味噌、醤油、酢など発酵食品の会社が参加して「酒祭り」が開催されるそうです。

       
            (二の鳥居。材はスギではなく、多分ヒノキ)

奈良と京都とはどちらも古い都ですが、奈良はこの大神神社をはじめ法隆寺、薬師寺、東大寺などの神社仏閣がのどかな田園風景のあっちこっちに点在していて、一定のエリアに歴史遺産が集中している京都とはちょっと雰囲気が違います。たまに奈良に出かけると、気持ちが大らかになりますよ。
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