樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鮎鷹

2012年05月31日 | 野鳥
宇治川沿いに住んでいた20年ほど前、コアジサシが飛ぶのをベランダから見ることができました。オスが水面にダイビングして魚を獲り、中州にいるメスにプレゼントするシーンも観察できました。
残念ながら、今では全く見られなくなり、京都府では絶滅危惧種に指定されています。宇治川の下流の淀川あたりまでは渡ってきますが、内陸部までは上ってこなくなったのです。
下のコアジサシも大阪市内の淀川河口近くへ出かけて撮影したもの。



海で魚を獲るので「鯵刺し」と命名され、その小型が「小鯵刺し」と呼ばれるようになりましたが、内陸部の川でも魚を獲るので、地方によっては「鮎刺し」と呼ばれているようです。さらに、関東地方には「鮎鷹」という名前もあります。



詩人の三好達治は小田原に住んでいた頃に『鮎鷹』というエッセイを書いています。「河口の空にこの鳥の姿を見かける時分になると、(中略)六月一日の解禁日が間近にせまったことを悟って、(中略)釣竿の検分や手入れを思いつく」。
小田原の酒匂川では現在もコアジサシが繁殖しているようで、小田原市は市の鳥にコアジサシを指定しています。
また、北原白秋も『鮎鷹』という詩を作っているほか、『多摩川音頭』という舞踊曲を作詞し、「わたしゃ鮎鷹 多摩川そだち 水の瀬の瀬を 水の瀬の瀬を見てはやる」と書いています。
あのシャープな飛び方を見ていると、確かに「鮎鷹」と呼びたくなりますね。

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鬼に訊け

2012年05月28日 | 木造建築
「法隆寺の柱を鉋で削ると、1300年後の今でもヒノキの香りがする」。ある本のこの記述は、私にはインパクトがありました。
樹木関係の本は、植物学系、森林学系、木材系などたくさん読んでいますが、その多くは学者が書いたもの。木に関する学問的知識や情報を伝える内容です。
ところが、法隆寺の宮大工の棟梁であった西岡常一さんの本は、冒頭の一文のように、木を使う職人の生の感覚が記されています。学問系の本にはない、木に対する実感が綴られていて大変魅力的です。数少ない著書やインタビュー集はもちろん、西岡さんの一番弟子である小川三夫さんの本も読みました。
その西岡棟梁のドキュメント映画が上映されたので観てきました。タイトルは『鬼に訊け』。



「木は生長の方位のまま使え、東西南北はその方位のままに」。つまり、山の北側に生えていた木は建物の北側に使え、しかも(柱に使う時は)同じ向きで立てろ。
これは、法隆寺の宮大工に代々伝わる口伝の一つ。西岡棟梁個人の実感だけでなく、こういう秘伝の技も、いちいち「なるほどな~」と納得することばかり。
「社殿堂塔の用材は木を買わず、山を買え」という口伝もあります。木は生えている環境で質や癖が決まるので、木材を見て買うのではなく、実際に山に入って判断せよという意味です。
実際、西岡さんは薬師寺の塔を建てる際、日本では入手できないヒノキの大木を確保するために台湾の山へ出向いています。
こうした口伝は著書ですでに知っていましたが、映画には西岡さんの木に対する考え方や、大工としての経験からにじみ出る含蓄のある言葉がいろいろ収録されていて、「なるほど」と納得しどおしでした。
意外だったのは、マニアックな映画館で上映されたマニアックな映画なのに、予想以上に観客が多かったこと。もう亡くなりましたが、西岡棟梁のファンは結構いるんですね。

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Caramel Egret

2012年05月24日 | 野鳥
近くの干拓田にアマサギがやってきました。他の白いサギと違って、頭がオレンジ色なのですぐに見分けられます。
今の時期、田んぼを耕すトラクターの後を追いながら、土の中から出てくる虫を捕まえて食べています。



この鳥の英名はCattle Egret。Cattleは「家畜の牛」ですから「牛サギ」。昔は牛が田畑を耕していたので、その後をついて歩くサギをこう命名したのでしょう。今はトラクターの後を追っていますから、Tractor Egretと改名すべきかも知れません。
ところで、アマサギの「アマ」は亜麻色の亜麻と思っていましたが、どうも違うようです。正しくは、「飴色のサギ」→「アマサギ」だそうです。「アメ」が「アマ」に変化するのは、「雨雲」「雨脚」と同じ転音。
その論拠は、「アマサギ」の名称は鎌倉時代からあるのに、亜麻が日本に移入されたのは元禄時代だから。亜麻はいわゆるリネンの材料で、繊維が黄色っぽい褐色だそうです。
「飴色のサギ」が「亜麻色のサギ」に変ったのは、「亜麻色の髪の乙女」という楽曲のせい。私の世代はグループサウンズのヴィレッジシンガーズを思い出しますが、クラシックにもドビュッシーに同名の作品があるそうです。
どちらにしても、「亜麻色」は金髪を表現する言葉で、飴よりもイメージが美しいために、誰かが「亜麻鷺」と書いて以来、図鑑などにもそう記されるようになったようです。
「飴鷺」説を知ってじっくり見ると、確かにアマサギの頭の色は金色というよりは飴色です。この元々の和名から命名すれば、Caramel Egret。新しい英名として欧米にも受け入れられるんじゃないでしょうか。

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子育て

2012年05月21日 | 野鳥
今は野鳥にとって子育ての時期。巣を作って卵を産み、抱いて温めてヒナをかえし、餌を与えて育てる…、親鳥は大忙しです。
4月中旬のある都市公園で、巣穴を掘っているコゲラを見つけました。日本最小のキツツキですが、図鑑によると巣穴の直径は3cm、深さは15cm。小さなクチバシで、そんな大きな穴を開けるわけですね。



しばらく後に再び訪れると、巣穴からヒナが顔を出していました。親鳥が餌を運んでいるのを待っているのでしょうか。



水辺でも子育てが進んでいます。近くの川では、カルガモがヒナを連れて散歩していました。
よく見ると、7羽のうち一番大きいヒナが最後尾にいます。兄弟姉妹の中で警戒役を担っているんですね。



散歩の後、ヒナたちは草むらで遊びながら餌を採る練習を始めましたが、その横で母親は猫やカラスなど天敵が来ないか厳しい表情で警戒しています。
この川をフィールドにしているバードウォッチャーによると、数日前はヒナが8羽いたそうですから、1羽は犠牲になったわけです。



カルガモ親子を見ながら、母を思い浮かべました。個人的な話ですが、今年の1月に母が亡くなりました。遺品を整理すると、モノクロの古い写真がたくさん出てきました。幼い3人の子どもの横で若い母が笑っています。
散歩するカルガモは外見上は微笑ましいですが、母鳥の辛苦は大変なものでしょう。同じように、母も私たちを育てるのに必死だったろうな…。そんなことを思いながらカルガモ親子を眺めていました。

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探鳥はスポーツか?

2012年05月17日 | 野鳥
宇治市図書館、京都府立図書館、国立国会図書館に加えて、大阪の府立図書館と市立図書館の利用カードを持っています。京都市立図書館は宇治市民に本を貸してくれませんが、大阪は府民や市民でなくても貸してくれるのです。
太っ腹というか、「関西の首都」という自負があるのでしょうか。しかも、大阪市立図書館の蔵書はスケールが大きく、私が探す本はほとんどの場合見つかります。
先日ご紹介したバードウォッチャーの映画『The Big Year』に原作があると知って蔵書を検索すると、他の図書館にはないのに大阪市立ではヒットしました。
早速借りて読んだところ、意外にも原作はドキュメンタリーでした。著者は2000年のピューリッツァー賞を受賞した新聞記者。映画(DVD)はコメディ仕立てですが、原作は文章にユーモアがあるものの、コメディではありません。


映画の原作本『ザ・ビッグイヤー』は400頁のハードカバー

ということは、1年間の種類数を競うコンテスト(ザ・ビッグイヤー)が北米で開催されること、その参加者が一人で700種類以上の野鳥を観察すること、そのために6万ドルも出費することなどは事実ということです。
著者はあとがきで、「3人の参加者に数百時間インタビューし、彼らの日記や領収書を元にして書いた」と述べています。
日本にも、1日に何種類の鳥が観察できるかを競う「バードソン」というコンテストがあり、私もお手伝いしたことがありますが、目的は募金です。
アメリカで実際にこういう競技会が行われていることも驚きですが、希少種の出現情報を有料で提供するサービスがあることにも驚きました。私は珍鳥派ではないので知りませんが、日本にはまだそういうサービスはないはずです。
いろいろ面白いことも書いてあります。珍鳥を追いかけるバーダーをパパラッチに例えたり、「(種類数を競う)バードリスティングはスポーツである」とも表現しています。また、賞賛なのか揶揄なのか、優勝者のことを「彼はバーディング・マシンだ」とも書いています。
私も鳥を見始めた頃はライフリスト(生涯に見た鳥の種類数)を増やすことに喜びを感じていましたが、今はその正確な数も忘れました。
鳥を追い求める点ではパパラッチかも知れませんが、スポーツやゲームにはしたくないし、機械にもなりたくないです。「バードウォッチングとバードリスティングは別物」というのが私の読後感。
そうだとしても、鳥好きなら最初から最後まで興味津々で読める本です。お近くの図書館で所蔵していなければ、アマゾンで販売していますので、ぜひご一読ください。

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5月の花

2012年05月14日 | 木と歴史
イギリスの清教徒たちが信教の自由を求め、メイフラワー号に乗ってアメリカ大陸へ渡った…という話は高校の「世界史」で習いました。
その「メイフラワー」がサンザシの花であることを最近になって知りました。メイフラワー号の船尾にはサンザシの花が描かれていたそうです。
サンザシの名は知っていますが、樹も花も見た記憶がありません。「どんな花だろう?」と気になって、久しぶりに大阪市立大学附属植物園へ足を伸ばしました。


サンザシの花

このサンザシは中国原産で、日本には薬用として1734年に移入されたそうです。
メイフラワー号に描かれていたのはセイヨウサンザシ。この植物園には東洋と西洋のサンザシがすぐ近くに植えてありましたが、西洋のは開花が少し遅いようです。


開花前のセイヨウサンザシ

「5月の花」と呼ばれるくらいですから、ヨーロッパでは初夏を代表する花なのでしょう。日本でサツキを「五月」と書くのと似ていますね。
セイヨウサンザシには棘があるためか、枝を持っていると船は嵐を避けることができ、陸では雷に遭遇しないという言い伝えがあるそうです。だから船の名前にしたのかも知れません。

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バードウォッチャーの映画

2012年05月10日 | 野鳥
バードウォッチャーを主人公にした映画があると知って、どうしても見たくなり、アマゾンでアメリカ直送のDVDを購入しました。
作品のタイトルは『The Big Year』。北米大陸で催される探鳥コンテストを舞台にした劇映画です。鳥を主人公にした映画にはヒッチコックの『鳥』がありますが、バードウォッチャーを主人公にした映画は初めてではないでしょうか。
しかも、『花嫁のパパ』のスティーブ・マーティン、『ガリヴァー旅行記』のジャック・ブラックなど人気俳優が出演し、20世紀FOXが配給するメジャー作品です。



購入したDVDには字幕がないので映像を眺めただけですが、バードウォッチャーには必見の作品 です。
1年間に観察する鳥の種類数を競うコンテスト“The Big Year”に3人の男が挑み、その悲喜交々をコメディタッチで描いています。アラスカのアリューシャン列島からフロリダまで北米大陸を、車、飛行機、船、カヌー、ヘリコプター、スキーなどを使って鳥を探すさまざまなシーンは、うらやましい反面、「そこまでやるか?」と思うほど。
ヒッチコックの『鳥』をパロディにしたカットもあって、ヒッチコックファンの私は苦笑いしました。
いろいろな珍しい鳥が登場するほか、最後のタイトルバックには優勝者が観察した755種類の鳥の写真がフラッシュバックで紹介され、それを見るだけでもワクワクします。
You Tubeに予告編(英語版)がアップされていたので掲載します。



という記事をまとめた後、この映画が日本で公開されるという最新情報をキャッチしました。6月30日から東京と大阪でロードショーが始まり、全国でも順次公開されるようです。
日本版のタイトルは『ビッグ・ボーイズ~しあわせの鳥を探して~』。バードウォッチャーを“大きな子ども”に例えた皮肉っぽいタイトルです。
現在はほとんど情報がないですが、公式サイトはこちら

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鳥と落ち葉

2012年05月07日 | 野鳥
鳥が餌を獲得する方法はさまざまですが、ツグミの仲間には、落ち葉をひっくり返して、下に潜んでいるミミズや虫を食べる習性があります。
20年以上前、シロハラを初めて見た時も「変な動きをする鳥だな」と思いました。下の動画は、さんざん落ち葉をひっくり返した後、ようやくミミズをゲットしたシロハラ。



クロツグミも同じように落ち葉をひっくり返して餌を採ります。しかし、下のクロツグミは、採餌というよりも、ただ落ち葉をひっくり返すのがおもしろくて遊んでいるように見えます。あるいは、怒って、やけのやんぱちになっているようにも見えます。



マミジロも同じように、落ち葉をひっくり返します。



これとよく似た方法で餌を獲るのが、シギの仲間のキョウジョシギ。水辺で小石をひっくり返して虫や甲殻類を食べます。そこからTurnstoneという英名がつきました。


Turnrockは無理みたいです(笑)

この伝で言えば、ツグミの仲間はTurnleafと呼ぶべきですね。

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森でお花見

2012年05月03日 | 樹木
今年初めて栃の森に行ってきました。主な目的は野鳥の生息調査ですが、私にとっては樹木観察の場でもあります。
前回の記事で「夏鳥の到来が早い」と書きましたが、この森でもそれを実感しました。前夜、キャンプサイトで仲間と食事していると、すぐ近くで「ブッキッポー、ブッキッポー」の声が。コノハズクです。
ほぼ毎年聞こえますが、4月下旬は多分初めて。コノハズクの声を聴きながら、酒杯を傾けるという贅沢な時間を過ごしました。
逆に、樹木の開花や開葉は遅いようで、この森で見られるサクラ3種がそろってほぼ満開で見られました。街で見るソメイヨシノの並木も悪くないですが、深い森の中で見る自生のサクラの方が値打があります。


例年は盛りを過ぎているキンキマメザクラも今回は満開


ソメイヨシノよりも花が白いヤマザクラ


ヤマザクラよりもピンクが濃いオオヤマザクラ

カエデは一般的には紅葉する秋しか注目されませんが、今の時期は花もなかなかです。中でも、最も目立つのはハウチワカエデ。鮮やかな赤が、遠目では木の実のように見えます。


ハウチワカデの花


ウリハダカエデの花

このほか、イタヤカエデ、マルバマンサク、キブシ、タムシバ、ミツバツツジなどのお花見ができました。
コノハズクに加えて「早い夏鳥」を実感したのは、アカショウビン。毎年、5月~7月の訪問時に出会える鳥ですが、4月下旬に、しかも2回も遭遇。同行の仲間一同、驚きと興奮のひとときでした。枝が被っていますが、その録画をおまけでご紹介します。



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