樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

小鳥派

2020年03月26日 | 野鳥
2月初旬に京都御苑での探鳥会を担当することになったので、その3日前に下見がてらカメラ持参で鳥見してきました。今年は鳥が少なく、冬の御苑の定番であるトラツグミもルリビタキも出現しませんでした。
それでも、コース半ばでジョウビタキが登場。すぐ近くで、ヒタキ独特のピコピコする挙動を見せてくれました。



ジョウビタキを撮っていると、その横の枝に別の小鳥が止まって、「私も撮って!」と言わんばかりに私を見ています。すぐに、ニシオジロビタキと気づきました。
珍しい鳥で、昨年11月に会のメンバーが発見して以来マニアの間で噂になっていましたが、多数のフォトグラファーが押し掛けて鳥にプレッシャーをかけないようオフレコにしていました。しかし、一部のフォトグラファーが気づいて、その中のマナーの悪い人が餌付けしたために人慣れして、人間が来ると餌をもらえると思って近づいて来るのです。
私は珍鳥を追いかけるつもりはありませんが、ヒタキ類は大好きなので、他に誰もいないことを確認して撮影しました。



ジョウビタキもそうですが、ヒタキと名が付く小鳥は目がクリっとして、腰や尾羽を上下に動かす仕草が可愛い。猛禽派が多いおじさんバーダーの中で、私は数少ない小鳥派。野生の小鳥の姿や動きを眺めていると飽きません。
実はこのニシオジロビタキ、日本鳥学会は正式な種類としては認定していないそうで、鳥類目録では「検討中の種」とされているようです。
探鳥会当日、私が案内した最後尾グループの初心者が、カメラのモニター画面を示して「これ何ですか?」と質問されるので、見るとニシオジロビタキ。初心者でも簡単に撮れるくらい接近してくるのです。
このときはまだオフレコ中だったのでご本人にも「内緒に」とお願いしましたが、3月末には公開することになったので、私も1か月半遅れで当ブログに掲載したわけです。
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空振り

2020年03月19日 | 野鳥
もう1カ月ほど前の話ですが、琵琶湖にアカハシハジロが来ていると知人に教えていただき、天気の良い日に車を借りて行ってきました。この鳥が佐賀県に渡来した1995年、いつもの仲間で現地へ出向きました。九州ツアーはそれだけが目的ではなかったのですが、以来25年ぶりの再会を期待しました。
しかし、時間をかけて、教えていただいたポイントを何度も探しましたが、結局発見できませんでした。しょうがないので、カンムリカイツブリを撮影して時間をつぶしました。スズガモやキンクロハジロなどたくさんのカモの中で、数羽が優雅に泳いでいます。



その後、京田辺市へ回って農耕地で探鳥。タゲリを見ていいると、近くにホオアカが止まってくれました。



まだ車を返すまでに時間があるので、家の近くの干拓地へ向かいました。目的は、夕方になってから現れるコミミズク。2年前に出会ったあたりでじっと待ちましたが、出てきません。
川にはコガモがたむろしています。雄の顔や翼の内側のメタリックグリーンに夕日が当って、きれいに撮れそうなので、時間つぶしにカメラを向けました。



レンタカーまで借りて琵琶湖へ出かけたのに空振り。ホオアカは観察できたものの、地元の干拓地でも空振り。野球で言うと3打席2三振。それでも、久しぶりに琵琶湖で、背中に暖かい日差しを浴びながらダックウォッチングできたので、残念とか悔しいという感情は湧いてきませんでした。
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江戸時代の迷鳥

2020年03月12日 | 野鳥
国立国会図書館のウェブサイトでは、貴重な所蔵品を26のテーマに分けて解説した「電子展示会」を設けています。その中に「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌」というコンテンツがあり、「第三章 珍禽奇獣異魚」には、当時日本に迷行して捕獲され、絵として記録された鳥が掲載してあります。なかなか興味深いのでご紹介します。
まず、アホウドリ。



天保3年(1832) 5月、江戸の小石川馬場に落鳥した個体で、幕臣である毛利梅園が131の鳥を描いた『梅園禽譜』の中の1点。
現在は本土でアホウドリが観察できることはないですが、当時は本州や九州に飛来することがあったようです。
次に、ペリカン。



江戸時代、ペリカンは伽藍鳥(ガランチョウ)と呼ばれていたとのこと。この絵には、「文久2年 (1862) 8月に尾張の桜新田海岸で捕獲した」と書かれています。8月は現在の秋ですから、台風で迷行したのでしょう。
描いたのは、尾張の画家・清水淇川(きせん)。ちなみに、ペリカンの日本初記録は永享2年 (1430)で、捕獲されたのは京都伏見とのこと。
そして、すでに絶滅したカンムリツクシガモ。



現在は見られませんが、幕末には飼い鳥屋で売られていたそうです。
この絵は文政5年 (1822) 10月に函館付近で迷鳥として捕獲されたつがいを描いたもので、上が雄、下が雌。水鳥76種が描かれた『水禽譜』の1点ですが、編者や画家は不明です。
このほか、同サイトにはアネハヅル、エトピリカ、レンカク、トキ、シマフクロウなどの絵も掲載されています。
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ナスカの鳥の絵を同定

2020年03月05日 | 野鳥
3年前、ナスカの地上絵に描かれた鳥の話を投稿しました。その後、北海道大学総合博物館、山形大学、山階鳥類研究所の研究グループがそれらの種類を同定するという面白いプロジェクトに取り組み、昨年6月に結果を発表しました。
このグループは、ナスカの鳥の地上絵16点を鳥類学の観点から調査。それぞれの絵に描かれている嘴や脚の指、尾羽の特徴を抽出し、現在ペルーに生息する鳥と比較しながら分析して、3点の地上絵を同定しました。
その一つが従来からハチドリとして知られている下の地上絵で、カギハシハチドリ類と特定されました。日本にはハチドリはいないので実感がありませんが、アマツバメ目ハチドリ科カギハシハチドリ亜科として分類されるハチドリです。



山階鳥類研究所のウェブサイトによると、「従来、ハチドリとのみ同定されていたが、ペルーに生息するハチドリ科で尾羽の中央が突出するのはカギハシハチドリ亜科のみである。カギハシハチドリ亜科は、アンデス山脈の北側あるいは東側の熱帯地方にしか生息しておらず、ナスカ台地には分布していない」とのこと。下はカギハシハチドリ類の1種Long-billed Hermit。



また、下の絵と別の1点はともにペリカンと同定されました。嘴が細くて長く、先端がカギ型に曲がっていること、頭部に冠羽があることなどがその根拠です。



北海道大学総合博物館の江田真毅准教授は、海鳥が海から運んだ水を山に落とし、水が川を流れてナスカ台地に至ったという民話がナスカ周辺に残っていることから、「海鳥のペリカンを描いたのは雨乞いが目的だったのではないか」と推測しています。
また、従来コンドル(下の絵)とかフラミンゴとされてきた地上絵はそうではないことが明らかになったものの、残りの13点の地上絵とともに具体的に特定するには至っていません。



山階鳥類研究所は今後の展望について次のように語っています。「ナスカ台地に生息するアンデスコンドルなどの鳥ではなく、外来の鳥が描かれた背景には、地上絵の描かれた目的が密接に関わっていると研究グループは考えています。今後、同じ時代の土器に描かれた図像や、遺跡から出土する鳥類遺体などを調査して、その結果を比較・統合することで、制作の目的などの謎に迫ることができると期待しています」。いつの日か、その謎が解明され、16点すべての鳥が同定されることを期待しましょう。
(画像はいずれもPublic Domain)
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