ひろかずのブログ

加古川市・高砂市・播磨町・稲美町地域の歴史探訪。
かつて、「加印地域」と呼ばれ、一つの文化圏・経済圏であった。

オマーン国王夫人物語(15) 清子さんの最後の日記

2017-11-11 21:15:01 | 江戸時代、高砂の商業活動

        ブサイナ姫にあう

 かたわらにいた、ターリック殿下は席をすすめてくださいました。

 ターリック殿下は、通訳をしてくださいました。

 「妹(ブサイナ姫)は、アラビア語以外話せないのです。

 今日は、私が通訳いたしましょう。本当ならば女性の通訳を方でもお願いして、女だけで和気あいあいでやっていただく方がよいのですが、何しろブサイナの出生に関する話には他人が介入してほしくないものですから・・・。おわかりでしょう? 

 これは、本当は内緒にして話にしておきたいのです。

 

 前国王のサイードは、ブサイナ姫を完全なオマーン人として育てることにありました。

 日本を離れた以上母親の国と全く断ち切ってしまおうという方針でした。

 私(ターリック殿下)は、日本の親戚の方と連絡をつけてやりたいと、手を尽くしたのですが、私自身、1962年、兄の政治に政治的に反対してオマーンをさり、以後はブサイナ姫とも会うことができなくなってしまいました。

    ブサイナ姫の形見

 三人での話の途中、ブサイナ姫は席を立って何かを抱えて帰ってこられました。

 「これは母が亡くなった時、一つの箱の中にまとめて入っていたものだそうです。

 日本語ですので、何が書かれているかわかりませんが、母の形見として大切に持っておりました。今まで誰にもお見せしたことがないのですが、何が書いて有る可読んでいただけないでしょうか」

 なんと、それは、母の清子さんがタイム―ル王との愛の生活を2年間欠かさず毎日したため日記でした。

 日記は、昭和13年1月1日から14年6月までほとんど欠貸さずつけられていました。

 14年春ごろ、病気が悪化してからは筆も乱れ、清子さんの心痛が胸にせまります。最後に日記から5ヵ月後に清子さんはなくなりました。

    最後の日記(昭和14年6月11日)

 ・・・私はどうしてこのような不幸な体になったのかと思い、自然に泣けてくる・・・神様ァ。

 神様、病気をするまでの私の朗らかな心はどこ。

 本当の自分の毎日の気持ちは、自殺をしたいと思う位だ。

 ・・・ブサイナのために生きたい・・・道行く人々はみな楽しそうだ。

 そうして、私だけがこう苦しい。病魔に負けてたまるか。勝たなければならない。

 かわいいブサイナのために。神様、何卒お見方下さい。我が子でありながら、そばへも寄っていけない。かわいいと思えばこそ、我が子の手にもさわれない。

 この病気さえなければ、と幾へん考えることか・・・(no3779)

 *写真:ブサイナ姫とターリック前首相(『アラビアの王様と王妃たち』より)

 ◇11/11の散歩(13.698歩)

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オマーン国王夫人物語(14) 下村満子記者ブサイナ姫と会う

2017-11-11 07:15:56 | 江戸時代、高砂の商業活動

 以下は、『アラビアの王様と王妃たち』を引用しています。

 朝日新聞記者・下村満子さんの記事の文体を少しだけ変えています。

    下村満子記者(朝日新聞)ブサイナ姫と会う

 朝日新聞は、かねてから秘かにターリック元オマーン首相と連絡を取っておられました。

 朝日新聞の下村記者はオマーンに着いてから連絡をとると、殿下から「・・・ブサイナ姫のことをいろいろ調べてくださってありがとうございます。

 姫は、あなたにお会いして詳しいお話を聞くのを楽しみにしています。明日ホテルに車をさしむけます。ぜひお越しください・・」という嬉しい内容でした。

 翌日ブサイナ姫の豪邸につきました。

 ・・・白い大理石の会談を上がると、左側が中庭になっており、右側の廊下づたいに部屋が並んでいます。

 その中の一つの扉を案内人があけました。

 白いカーテンを通して、明るい光の流れる部屋の中は、意外にも、白と黒を基調にした家具を並べたモダンな大広間でした。

 壁を背にして、一人の女性が座っておられました。その人がブサイナ姫でした。

 上下にアイライナーをくっきり入れた黒い大きな目。琥珀色の肌。

 背は165センチもあるでしょうか、大柄でその上肉付きの良い人でした。

 馬とオレンジの花模様の裾の長い衣装を着ておられ、オレンジ色のジョーゼットのベールの下から香油をつけた艶のいい黒い髪がのぞいています。

 どちらからともなく近寄り、手と手を軽く触れあうだけの柔らかな握手をしました。

 かすかに微笑んでおられるようでした。そして、じっと私(下村さん)を見つめられるのでした。

 アラビア人よりもずっと日本人に近い顔立ちをしておられます。(no3778)

 *写真:ブサイナ姫邸(『アラビアの王様と王妃たち(下村満子著)』より

 ◇きのう(11/10)の散歩(12.151歩)

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