今、新野辺にあった三ヵ寺を紹介しています。その内、薬師堂は円福寺を建て替えたものです。
薬師堂の「お薬師さん」には、次のような話が伝えられています。
お薬師さんと兵衛
新野辺の薬師堂には、霊験あらたかな「薬師如来(やくしにょらい)」が祭ってあり、「お薬師さん」といって村人からたいそう信仰されていました。
何か困ったことができたとき、一つだけ、このお薬師さんに願をかけ、自分でも何か一つだけ誓い(ちかい)をたてて、それを守れば、その願いは必ずかなえてくださいました。
むかし、新野辺に兵衛(ひょうえ)と言う人が住んでいました。
兵衛は、ちょいちょい胸が痛むので、お薬師さんに願いをしました。
そして、兵衛は「三年の間、好きな雑煮(ぞうに)を食べませんから、胸が痛くなるのを直してください」とお願いしました。
兵衛は、それからは好きな雑煮を断って、その年の正月も、次の年の正月も雑煮を食べませんでした。
ところが、三年目の正月です。
遊びつかれて家に帰ると兵衛は、あまりの空腹にたえかねて、台所をさがすと、そこに雑煮のあるのをみつけました。
思わず食べてしまいました。
・・・・・
ハッと気がついたとたん、兵衛の胸は急に痛んできました。
兵衛が誓いをやぶったためでしょうか、兵衛は気の毒にも、夕日が落ちるころ、痛みがひどくなって、ついに息をひきとったといいます。