ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

宿ちゃん

2006-06-13 04:37:11 | 回想する脳みそ
釈ちゃんではない。シュクちゃんである。ワシがまだ若い頃、トラックを転がしていた運送会社にいた名物オヤジの愛称だ。さすがに若い連中は気軽に「宿ちゃん」とは呼べなかったが、ある程度の年齢の人たちからはみな「宿ちゃん、宿ちゃん」と呼ばれていた。

音だけで捉えれば「宿ちゃん」とは何ともカワイイ名前であるが、実物はまったく違った。何か気に入らないことがあると、それこそ烈火の如く怒りだし、周囲の我々は何故彼が激怒しているのかがサッパリわからなかったこともしばしば。ワシが新人としてその会社に入った頃なんて顔を見るたびに怒られた記憶しかない。でも機嫌がいいとニコニコ笑っていて、その笑顔はまさに「宿ちゃん」と呼ばれるに相応しい愛くるしいものだった。

理由はともあれ、あれほど激怒する人は今までに見たことがない。思い返せば、ワシが宿ちゃんに怒られたのは仕事に不慣れなことが原因だった。マトモに教えてくれる人がおらず、どうやってよいのかわからないのだから怒られても当然だ。たぶんベテランの宿ちゃんからすれば見ていて本当にイライラしたのだろう。

「ったくよぉー、何やってんだよ!コノヤロー!」

もうね、口角泡を飛ばす勢いで激怒しまくり。「じゃあ、どうやったらいいんですか?」と素直に聞くが、激昂している宿ちゃんは当然教えてくれるわけがない。

「うるせーんだよ!さっさとやれよ、コノヤロー!!!」

ラチがあかないのだ。手順を教えてもらえればワシだってバカじゃない。すぐに覚えられる自信はあった。でも宿ちゃんは一向に教えるつもりもなく、ただただ顔を真っ赤にして激怒し続けていた。

たぶんこういう人は「習うより慣れろ」で世の中を渡ってきたのだろうと思う。先輩に理屈抜きに怒られながら身体で仕事を覚えてきたのに違いない。だから他人に教えることに慣れていない。というより、たぶん教えられないのかもしれない。でも本人はそうやって仕事を覚えてきたという自負があるから、「なんでオメーはできねーんだよ!コノヤロー!」となる。まあ、気持ちはわかるけどさ。

理由もなく怒られれば、フツーはケンカになる。でも当時のワシは新人。自分に少しでも非があれば絶対に腹を立てなかった。もし対等な立場なら、いくら茹でダコのように激怒した宿ちゃんであってもブチのめしていただろうけど。

それにしても今日あのようなオヤジは見かけなくなった。いや、土建業や運送業にはまだいるのかもしれないな。名物オヤジとして…。ふと懐かしくなった。今頃、宿ちゃん、元気なんだろうか。
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