講座で教えている立場からすると、自分より年上であっても受講者は子供のように思えます。それは見下しているのでなく、親が子を思う気持ちみたいなもの。年配の受講者の方々には失礼に思われるかもしれませんが、長年彼らを教えていると何か愛おしいような感覚になるのです。
Gさんは2009年から当講座へ来られた男性。モーツァルトの音楽をこよなく愛していると仰っていましたが、この講座に来られてからは他の作曲家についても熱心に学ばれていました。毎回講義の後には質問コーナーを設けるのですが、Gさんは必ず手を上げてワシに質問するほど。その質問は時には思いっきり的外れなものもありましたが、わからないながらも質問するその熱意には毎度感心させられたものです。
先週、講座の世話人からGさんの訃報が…。突然のことで驚きました。もっとも、以前に大病を患っていたと聞いていたし、異常なほど痩せていたのを思うと「いよいよその時が来たのか」と胸が詰まりました。
思い出すのは2010年。その年の講座では前半をショパン、後半をシューマンを取り上げました。2009年末、受講生に「来年はショパンを半年にわたって取り上げます」と告知。そのあと受講生の皆さんと食事会をしたのですが、その際Gさんが
「いや~、先生、今度はショパンを集中的に取り上げるのですか」
「はい、来年は生誕200年なので、これを機会に学んでみようと思いまして…」
「いいですねぇ。以前からショパンは勉強してみたいと思っていたんです」
「そうですか…」
「でもね、先生、こういう企画を立てていただいて僕は本当に嬉しい」
「といいますと?」
「僕は来月は講座に出席できないかもしれません」
「え?」
「でも、好きなことを学ぶことで、生きる力のようなものが出てくるからです」
ふと、Gさんの顔を見ると目には涙が…。今から思えば、ああ、この時すでに自らの死を意識しておられたのでしょう。先週Gさんのご自宅に伺った際、奥様から「主人は13年前から病と闘ってきたのです」というお話を聞き、その時の会話の意味がわかったのでした。
その会話から昨年11月までGさんはほぼ毎回出席されては「質問コール」を繰り返していました。きっと体調は思わしくなかったでしょうに…。
音楽が人に生きる力を与える…。それを仕事にしている自分には苦痛でしかないけれど、心から音楽を愛する人にとっては「癒し」であり「よりどころ」なのでしょう。趣味の講座ではありますが、「癒し」を求めて来られる受講生の方々のために講師はちゃんとしなけりゃいかんなと改めて責任の重さを感じた次第です。
Gさん、もう「質問いいですか?」の声は聞けませんが、苦痛のないあちらの世界で安らかにお休みください。合掌。
Gさんは2009年から当講座へ来られた男性。モーツァルトの音楽をこよなく愛していると仰っていましたが、この講座に来られてからは他の作曲家についても熱心に学ばれていました。毎回講義の後には質問コーナーを設けるのですが、Gさんは必ず手を上げてワシに質問するほど。その質問は時には思いっきり的外れなものもありましたが、わからないながらも質問するその熱意には毎度感心させられたものです。
先週、講座の世話人からGさんの訃報が…。突然のことで驚きました。もっとも、以前に大病を患っていたと聞いていたし、異常なほど痩せていたのを思うと「いよいよその時が来たのか」と胸が詰まりました。
思い出すのは2010年。その年の講座では前半をショパン、後半をシューマンを取り上げました。2009年末、受講生に「来年はショパンを半年にわたって取り上げます」と告知。そのあと受講生の皆さんと食事会をしたのですが、その際Gさんが
「いや~、先生、今度はショパンを集中的に取り上げるのですか」
「はい、来年は生誕200年なので、これを機会に学んでみようと思いまして…」
「いいですねぇ。以前からショパンは勉強してみたいと思っていたんです」
「そうですか…」
「でもね、先生、こういう企画を立てていただいて僕は本当に嬉しい」
「といいますと?」
「僕は来月は講座に出席できないかもしれません」
「え?」
「でも、好きなことを学ぶことで、生きる力のようなものが出てくるからです」
ふと、Gさんの顔を見ると目には涙が…。今から思えば、ああ、この時すでに自らの死を意識しておられたのでしょう。先週Gさんのご自宅に伺った際、奥様から「主人は13年前から病と闘ってきたのです」というお話を聞き、その時の会話の意味がわかったのでした。
その会話から昨年11月までGさんはほぼ毎回出席されては「質問コール」を繰り返していました。きっと体調は思わしくなかったでしょうに…。
音楽が人に生きる力を与える…。それを仕事にしている自分には苦痛でしかないけれど、心から音楽を愛する人にとっては「癒し」であり「よりどころ」なのでしょう。趣味の講座ではありますが、「癒し」を求めて来られる受講生の方々のために講師はちゃんとしなけりゃいかんなと改めて責任の重さを感じた次第です。
Gさん、もう「質問いいですか?」の声は聞けませんが、苦痛のないあちらの世界で安らかにお休みください。合掌。