ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

湯飲みの思い出

2009-08-18 05:21:13 | 回想する脳みそ


唐突ですが、これはワシが愛用している湯飲みのひとつ。確か、これ萩焼だと思います。使用するたびに湯飲みの表面の色が変化するんですよね。どのように変わるのかは予想できません。だから面白いんですけど。

これは学生時代にやっていたバイトの時に偶然もらったものです。そのバイトというのは、かつての日本道路公団の傘下にあった会社に出向して役員クラスの車両を運転するドライバーの仕事でした。この会社はあちこちにありまして、それぞれに正職員のドライバーが常駐しているんですが、その職員が急用で休む時にワシはヘルプとして駆り出されていたわけです。

で、今回のケースは東名の足柄サービスエリアがリニューアルするので、その打ち合わせに行くから運転しろという突然の命令でした。この仕事は当日の朝に行き先が告げられます。それが普通なので別に驚きません。まあ、タクシーみたいなもんだと思ってください。

最初はてっきりそのサービスエリアに行くものと思っていました。「こりゃ今回は東名一本だな。うっしっしっ。楽勝、楽勝」と思いながら東名を下っていると後部座席の部長が

「あ、運転手さん、大井松田で降りてね」
「は、はい、わかりました…」

あれれ、足柄はその先なのになぜ手前のインターで降りるんだろう。とりあえず指示されるままにR246を下って行きました。

すると途中から脇道へ行けとの指示。ますます理解できません。でも部長は自信たっぷりに指示するのでその通りに行きました。しばらく行くと、

「あ、この家だからクルマ止めて」
「は、はい…」(この家?)

つまり打ち合わせというのは、その家の人が同サービスエリアのリニューアルに関係していて、そのお宅で打ち合わせをするというものだったのです。

ワシは運転手ですから部長に同行するわけにはいきません。なので打ち合せが終わるまで車中で待機です。これがね、いつ終わるかわからないので困るんです。居眠りするわけにもいきませんから。

一時間ほどして部長とその家人が一緒に戻ってきました。「ああ、見送るつもりなんだな」と思っていると、その家の人は部長にお土産を渡した後、「あ、運転手さんにはこれを差し上げます」といって、この湯飲みを手渡されました。

でも、なぜ湯飲みなんだ?

もとの道を戻りながら考えていましたが、さっぱりわかりません。すると、部長はワシの疑問を察したかのように後部座席から

「あの人は萩焼の陶芸家なんだよ」
「ああ、そうなんですか」
「今回のリニューアルの展示にあの人の作品を使わせてもらおうと思ってね」
「はぁ…」
「でも、運転手の君にまでお土産をくれるなんて、あの人、どうしたんだろうな」
「といいますと?」
「今まで運転手に何かをあげたことなんてなかったからなあ」
「はぁ…」(そう言われてもな…)
「たまたま機嫌が良かったんだろ。まあ、よかったじゃないか!」
「はぁ…」

平凡なひとつの湯飲みですが、以上のようなストーリーがあったというお話でした。
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