ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

凄い御婦人(上)

2009-02-09 05:35:49 | 回想する脳みそ
あれよあれよという間に前回の記事から一週間あまりが過ぎてしまいました。う~ん、一体ワシは何をしていたのでしょうか。特に忙しかったわけじゃありません。毎月の初めには通常レギュラーで書いている原稿で悩まされるのですが、今回は珍しくお休みでしたし。時間というものが本当に早く過ぎているように思います。ああ、それに前にも書きましたが、爪の伸びる早さが加速しています。みなさん、そんなことはありませんか?

さてさて、本題に入りましょう。今回はちょっと凄い人のことを書きたいと思います。その人と出会ったのはもう10年ほど前のことです。とある病院で知り合ったのですが、その人、ご自身が病気で苦しんでおられるにもかかわらず、とにかく明るくおしゃべりが好きな方でした。

病気といっても決して軽いものではなく、なんと舌ガン。ご承知の通り、舌ガンの治療は通常放射線が用いられます。放射線治療は何回かにわけて行なわれるのですが、治療直後にはヘトヘトになるようです。当時その方はすでに還暦を過ぎていたと思います。年齢的にも体力を消耗する治療なので、いつも陽気なその御婦人もさすがにこの時ばかりは辛そうでした。

端から見ていて特に気の毒だったのは食事の時間です。その治療の影響で味覚がなくなってしまうのだそうです。これは本当に辛いと思いますよ。だって美味しそうに見える食べ物を口に入れても何の味もしないんですから。ただ食べ物が舌に触れる感覚はあるので「何かが口に入っている」ということは本人もわかります。でも、それに味はないんです。

「まるで砂を食べているみたいなのよ!」

切なそうに訴えるその姿に、ワシは何と言って励まして良いのかわかりませんでした。

食べ物に味を感じないのですから、当然食欲なんてわくわけがありません。それについてはわかるような気がします。でも当の本人にしかその苦しみはわからないでしょう。見ていて本当に気の毒でした。

その御婦人の病状はかなり進行していたはずなのですが、なぜか週末になると外泊許可を病院からもらって出かけていたようです。ワシはもちろんその人の身内ではありませんが、「そんな状態で外泊して大丈夫なんだろうか…」と気にかけていました。ただ、この人を見舞う人は一度も来なかったので、当初こちらは勝手に想像し、

「寂しくて、きっと知り合いのところに行くんだろうな…」

くらいに思っていました。ところが何度かお話をするうち、この御婦人が強靭な精神力をもっていることがわかってきたのです。

(つづく)
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