ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

凄い御婦人(下)

2009-02-10 06:19:07 | 回想する脳みそ
(前回からの続き)

そもそもこの方の人生そのものが波瀾に富んでいました。結婚して男児をもうけたものの、まもなく離婚。今でこそ離婚なんて珍しいものじゃなくなりましたが、当時にあって世間からの風当たりは強かったことでしょう。

それでも彼女は負けませんでした。子供を育てるために、なんとキャバレーの経営を始めます。最盛期には20人ほどの従業員を抱えていたそうです。そして驚くべきはその息子さん。なんと現役で東大に入学したのだとか。この御婦人が入院している時、息子は既に大学を卒業し、所帯を持ち、エリート・サラリーマンとして多忙な日々を送っていたようです。

唯一の身内である息子がなぜ見舞いにも来ないんだろうかと不思議に思っていましたが、よくよく聞いてみると、御婦人自らが息子に見舞いに来ることを禁じたのだとか。「見舞いに来る時間があったら仕事をしなさい!」と。御婦人は病で辛い状態にあったはずです。体調が悪ければ悪いほど、人は心が弱くなるもの。そんな時、身内から励ましの言葉があればどれほど心強いでしょうか。にもかかわらず彼女はそうしませんでした。

もちろんこれは母親の息子への思いやりだったに違いありません。息子に心配させまいとする母親の気持ちです。いや、それは痛いほどよくわかります。ですが、体力が弱まり、その上味覚までなくなっている状況で、この心の強さは何なんでしょうか。

そうそう、前回書いた「外泊」の実態を聞いてさらに驚かされました。この外泊というのは実は仕事に行っていたのです。その仕事とは身障者の食事を作ったり世話をするヘルパーなのだそうです。健康な人がヘルパーをするのならともかく、この御婦人は自分がヘルプしてもらってもおかしくない状態なのです。思わず「そんな無理してまで仕事をしなくても…」と言ったところ、彼女は鋭い眼差しをこちらに向けて、

「何言ってるの! 今世話をしている人はね、四肢が使えないのよ!」
「はぁ…」
「私が世話をしてあげなかったら食事すらできないのよ!」

入院の費用を稼ぐために働いていたのも事実だと思います。でも、この人が自身のことを顧みず、むしろ身体の不自由な相手のことを優先させる態度、それは他者への愛があるからこそできることなのではないでしょうか。文字で書いてしまえば簡単なことのように思えるかもしれません。しかし、いざ同じような状況になった時、果たしてどれほどの人がこの御婦人のように行動できるでしょうか。本当に凄い人です。頭が下がります。

(後日談)
放射線治療に辟易していた御婦人はその後ある民間療法と出会いました。そしてその療法によって舌じゅうに広がっていた腫瘍は完全に消失。彼女の主治医は「奇跡としか言いようがない」と首を傾げるばかり。その後退院し、現在も元気で過ごしています。

その療法についてですが、実はワシが紹介したものなんです。従ってその詳細についてはワシが最も熟知しているのですが、ちょっと不明な点や納得できないことがいくつかあるので、ここではご紹介しません。悪しからず。

(了)
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