言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

保田與重郎生誕百年

2010年08月24日 11時55分30秒 | 文學(文学)

保田與重郎文芸論集 (講談社文芸文庫) 保田與重郎文芸論集 (講談社文芸文庫)
価格:¥ 1,103(税込)
発売日:1999-01-08
  日頃、毎日新聞は讀まないが、日曜日だけその書評論の充實に惹かれて讀んでゐる。とは言へ、最近は便利なものでネットで讀んでゐるのだが(これで新聞社の採算は合ふのであらうか)、それでも保存の價値ありと思ふ記事があれば、コンビニの賣店に行つて購入する。

  先週から昨日まで出張に出てゐて新聞を讀む機會がなかつたので、今朝ネットで「今週の本棚」を見ると、「この人この3册」に保田與重郎が取り上げられてゐた。これにまづ興味を持つた。毎日新聞が保田を取り上げるとは!  朝日や毎日の思想傾向を言ふのは時代錯誤だと思はれるかもしれないが、いやいやまだまだ健在なのではないか。毎日は日曜日しか讀まないからよく分からないが、朝日は毎日讀んでゐるから、特に終戰記念日前の記事を讀んでもその「傾向」は顯著である。固定讀者がゐる限り新聞の論調は變へられないだらう。

  まあそんなことはこの際には關係がない。話題は保田與重郎である。

  取り上げられてゐたのは、次の三册。

 <1>農村記(保田與重郎著/「保田與重郎文庫15 日本に祈る」所収/新学社/1040円)

 <2>日本の橋(保田與重郎著/「保田與重郎文庫1 改版 日本の橋」所収/新学社/ 756円)

 <3>絶對平和論(保田與重郎著/「保田與重郎文庫28 絶對平和論 明治維新とアジアの革命」所収/新学社/1323円)

 1は未讀だから、内容については分からない。タイトルや紹介文を讀むと、出征先の中國から奈良の櫻井に戻り、農作業に從事してゐた頃のことを書いてゐるやうだ。3もまた、平和のためには武器を捨てて農業に徹すべきといふ主張である。2は代表作であるが、日本の自然と文化との關はりについて書かれたもので、これは今でも讀まれていいと思ふ。

   かつて、ある研究會で、『保田與重郎』を書かれた桶谷秀昭先生に、「絶對平和論」について質問したことがある。私は「あれは保田特有のアイロニーか」と伺つた。桶谷先生は、確か「あれは本氣ですよ」と言はれたやうに記憶してゐる。その評價については私は分からない。だが、その「本氣」といふ言葉には返す言葉がなかつた。それ以降、保田を讀む氣がしなくなつたが、もう讀まないと斷言することはできない。今も惹かれるところがあるからだ。絶對平和といふのは、生活とは別次元の理念において必要なものであると思ふが、今はまだ考へを煮詰めてはゐない。

  保田與重郎生誕百年といふのも氣がつかなかつた。福田恆存の生誕百年は再來年である。

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