樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

サザンカの香り

2006年11月15日 | 木と歌
あちこちでサザンカの花が咲き始めました。写真は平等院の生垣のサザンカ。

      

「サザンカサザンカ咲いた道 焚き火だ焚き火だ落葉焚き あたろうかあたろうよ しもやけお手手がもうかゆい」という童謡があるせいか、もっと寒くならないと臨場感が湧きません。
この「焚き火」以外に、演歌にも「さざんかの宿」という歌があります。その中に「赤く咲いても 冬の花」という一節がありますが、原種のサザンカは純白の一重だそうです。
この樹の学名はカメリア・ササンクワ。カメリアはツバキ属のことですが、日本名をそのまま種名にしています。命名したのは、柿の学名でもご紹介したツンベルグというスウェーデンの医師。彼は『日本紀行』の中で、「サザンカの葉の香りが非常によいので婦人が洗髪の時煎じて用いる。また、茶と混ぜて甘い香りを添えることがある」と書いています。
うちの庭にもサザンカが1本あるので葉を揉んで匂ってみました。かすかに甘いような匂いはしますが、それほどいい香りというわけではありません。煎じないと香りが出てこないのかな? うちのサザンカがダメなのかな?
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二ノ瀬の火祭り

2006年11月14日 | 木と宗教
日曜日の夜、友人の紹介で「二ノ瀬の火祭り」に参加してきました。京都には有名な「鞍馬の火祭り」がありますが、二ノ瀬は鞍馬の隣の集落。聞けば、鞍馬から京都市街までの地域にはあちこちに「火祭り」が残っていて、もう一人の友人が育った岩倉地区でも催されるとか。
7時前に現地に着くと、すでに広場の中央に大きな木が何本も燃えています。京都市の北部なので寒いと思って厚着して出かけましたが、火の勢いで暑いくらい。しばらくすると松明(タイマツ)を渡され、地元の人々と一緒に神社まで歩きました。暗闇の中を太鼓の音と共に50~60本の松明が練り歩く光景は、まさに幻想的。

      

松明はアカマツを細く割ったものをツヅラフジのツルで縛ったもので、思ったよりも長く、1.3mくらいありました。
「松の明かり」と書くように、タイマツには昔からマツが使われてきました。地元の人の話では、昔はアカマツの根を掘り起こして材料にしたそうで、油がたっぷり含まれているので、燃え方もゆったりしていて長持ちしたということです。
そう言えば、戦争中はマツの根から採った松根油(しょうこんゆ)をガソリンの代用にしたという話を聞いたことがあります。

      
      (私が持った松明。ズッシリと重い。)

松明を縛るツヅラフジは、樹に巻きついたものは硬くて使えないので、地面を這っているものを使うとか。私はツル性の木本は敬遠しているので全く知識がありませんが、改めて図鑑を見ると、ツヅラフジ科の植物でツルを籠などに使うほか、根や木部を煎じて利尿剤や神経痛の薬にしたと書いてあります。
神社では厳かに神事が行われ、拝殿では巫女さんの神楽が舞われました。地元のみなさんに混じって、私もお祓いをしていただきました。

      

二ノ瀬の駅にはイロハモミジの大木があって、ところどころ赤く色づいていました。叡山電鉄にはモミジのトンネルがあり、この時期はライトアップされて電車が通る時は車内の照明も消されるのですが、紅葉が遅い今年はまだその効果が出ていませんでした。
火祭りにかけて、「燃えるような紅葉でした」と締めくくるつもりでしたが、残念(笑)。

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おそろしげなるもの

2006年11月13日 | 樹木
ドングリとクリの実を比べると、同じ仲間(ブナ科)とは思えません。でも、その間にクヌギの実を置くと、何となくつながりが見えてきます。

      

写真のように、クヌギの実は一見ドングリですが、クリのようなイガイガの殻に包まれています。しかも、葉っぱもクリによく似ていて、すぐには見分けられません。私は信じていませんが、クヌギの名は「栗似木(クリニギ)」が転訛したものという説もあるほど。

         

クヌギの幹はコルク質が発達していて、写真のように深い割れ目があり、その中が赤くなっています。クヌギの弟分のアベマキも似たような樹皮で、戦争中はコルクの代用品に使われました。
クヌギは、子どもたちにはクワガタなどの虫が集まる樹として、また茶道をたしなむ人には優良な炭の原材として知られています。また、古代の日本では、この実を染料にして染めた濃い灰色は最下級の色とされ、庶民の日常着に使われたそうです。
当ブログでお馴染みの樹木評論家・清少納言さんにもひと言コメントをいただきましょう。「おそろしげなるもの つるばみ(クヌギの実)のかさ(殻)」。イガイガがお気に召さなかったようですね。
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天国の樹

2006年11月10日 | 木と言葉
         

この樹はニワウルシと言います。日本の自生種ではありません。
ウルシ科ではないのにこんな名前になったのは羽状複葉という共通点があるからでしょうが、ウルシ科の羽状複葉とはかなり印象が違います。私はシンジュ(神樹)という別名の方が好きです。
この樹が茂るインドネシアのモルッカ諸島では、天にも届く高い樹なので「天の樹」と呼んでいました。英語ではそのままtree of heaven、「天国の樹」と訳しました。ドイツ語ではゲッテルバウム、「神の樹」。
明治6年のウィーン万博に参加した日本の博物学者がこの種子を持ち帰って育て、このドイツ語から「神樹」と名づけたようです。その学者はシンジュを街路樹に採用するよう主張し、その根拠としてフランスで虫害が蔓延したときシンジュだけは害にあわなかったことを上げています。

      
       (ウルシ科の羽状複葉は小葉がもっと細いです。)

その主張が認められたのか、現在でも街路樹としてあちこちに植えられています。私が以前勤務していた大阪の会社の近くにもシンジュの街路樹がありました。
本来は奇数羽状複葉ですが、先端の小葉がちぎれていることが多く、偶数羽状複葉と勘違いします。私も当初は偶数羽状複葉だと思っていたので、なかなか同定できませんでした。
「天国の樹」という名前とは裏腹に、この葉には悪臭があるそうです。
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ヤマガラ体操

2006年11月09日 | 野鳥
朝の散歩に訪れる大吉山にはいろんな人が来ます。太極拳をやっている女性、なぜか後ろ向きに歩いている男性・・・。その中に、いつも小鳥に餌をやっている、スキンヘッドでいかつい体格のおじさんがいます。外見は怖そうですが、心根は優しいのでしょう。そのギャップが微笑ましくて、いつも心の中で「クスッ」と笑っています。

      

いつもは東屋のベンチに寝転がって足や腹筋の体操をするのですが、その日は先客があったので、スキンヘッドおじさんが座る別のベンチで体操を始めました。
すると、おじさんと勘違いしたのか、ヤマガラが寄ってきました。ベンチの上に伸びるイロハモミジの枝に止まって、仰向けになっている私を見下ろしながら「ニーニー」、ベンチの隅に降りてきて「ニーニー」、しまいにはスニーカーの先に止まって「ニーニー」と餌をねだります。
ヤマガラは人なつっこい鳥で、手のひらに餌を載せて待っていると、手に止まって食べます。スキンヘッドおじさんもいつもそうやって餌をやっています。人を恐れないので簡単に捕獲され、昔はおみくじを引く見せ物にされました。

      

私もヤマガラが好きで、以前はメールアドレスをyamagara@~にしようとしたこともあります。バードウォッチングを始めた頃、(当時は免許がなかったので)マウンテンバイクに乗って手当たり次第に近所の山に鳥を見に行きました。真夏はバードウォッチングには不向きなのですが、それでも野山を走りました。
当然、鳥はほとんど出現しません。「今日も骨折り損のくたびれ儲けだな」と思っていると、ヤマガラが現れてニーニーと慰めてくれました。そんなことが何度かあって、私のお気に入りの鳥の一つになったのです。
以前、大吉山でキビタキの声に合わせて体操したことを書きましたが、そんなヤマガラが近くをウロウロするので、気になったり写真を撮ったりで、この日はいつもの体操ができませんでした。

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神様の食べ物

2006年11月08日 | 木と飲食
散歩していても、赤い柿の実に目を奪われるようになりました。
カキの学名は、Diospyros Kaki (ディオスピロス・カキ)。1775年に来日したスウェーデン人の医師ツンベルグが柿の実の美味しさに感動して、「神様の食べ物」という意味の「ディオスピロス」を属名に、日本名の「カキ」を種名にして命名しました。

      
     (メジロがつついているのが見えますか?鳥も柿が大好きです。)

私は田舎育ちで、生家の裏庭には柿の木があり、秋になると赤い実を取って食べました。いくらでも食べ放題です。近所からもいただきました。
それが当たりまえだったので、大きくなって都会に出てきたとき、果物屋さんでお金を払って柿を買うという感覚が理解できませんでした。ようやくお金を払って食べるようになったのは、40歳位だったと記憶しています。

柿にもブランドがあるようで、美濃の蜂屋が有名です。昔は、この柿100個と米1石2斗が取引されたそうですから、よほど美味しいのでしょう。宇治市のひと山奥に宇治田原という町があって、コロ柿という干し柿の産地として知られています。
日本の図鑑には「中国や朝鮮半島には渋柿しかない」と書いてありますが、韓国の学者は「朝鮮半島の南部には甘柿がある」と書いています。干し柿の作り方も大陸から伝わったようです。
私も干し柿は大好きで、お正月にはいつも1日に3つも4つも食べてしまいます。まさに「神様の食べ物」です。
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鬼子母神とザクロ

2006年11月07日 | 木と宗教
10月22日、奈良のツリーウォッチングの会に参加した帰り、東大寺に寄って、以前bulbulさんに教えていただいた二月堂のザクロを見てきました。

      

お水取りで知られる二月堂の下に、鬼子母神を祀った小さなお堂があり、その前にザクロが15本くらい植えてあります。東京では台東区入谷(いりや)の鬼子母神が有名で、「おそれいりやの鬼子母神」というダジャレの決まり文句があるくらいです。

      

鬼子母神は子供と安産の守り神で、その像は懐に子供を抱き、手にザクロの実を持っています。その由来は、仏典に記された以下の話にあります。
鬼子母神は自らが500人もの子を持つ母親でありながら、他人の子を捕らえて食べてしまうため、お釈迦様が彼女の最愛の末っ子を隠して、子を失う母親の苦しみを悟らせました。そして、「子供が食べたくなったら、代わりにザクロの実を食べるように」と諭しました。それ以降、鬼子母神は仏教に帰依して子供と安産の守り神になったという話です。

      

9月13日の記事でも紹介しましたが、ザクロにはたくさんの赤い実が成ることから、中国では子宝のシンボルになっています。トルコにも、結婚式で新郎がザクロを地面に投げつけると、こぼれ出た実の粒だけ子どもが授かるという言い伝えがあるそうです。
二月堂のザクロは、私が訪れたときはまだ開いていませんでしたが、今頃はたくさんの赤い粒が顔を覗かせているでしょう。
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五つの目的

2006年11月06日 | 樹木
私がいつも利用している京阪電車の京都側の終点は「出町柳」といいます。
このあたりは、若狭から京都に鯖を運んだ鯖街道の終着点で、その目印として柳が植えられたためにこの地名があるようです。
現在、賀茂川に架かる出町橋の西詰めに柳の古木があり、「鯖街道口」という石碑が立っています。

         

先日、五つの目的があって、このあたりをウロついていました。一つは、妻を京都市内に送るため。二つ目は、この出町の柳を撮るため。三つ目は、進々堂というカフェに行くため。四つ目は、古本祭を冷やかすため。五つ目は、ある出版社のイベントに参加するため。最初の目的がなければ電車で行けたのですが、車で行って出町柳の市営駐車場に停めました。
進々堂には、黒田辰秋という人間国宝の木工作家が作ったミズナラのテーブルとイス(と言うかベンチ)があります。30年ほど前には何度か訪れたことがありますが、木に興味を持つようになってからは行ってないので、久しぶりに見たかったのです。店内が撮影禁止なので画像はないですが、どっしりとした重厚な作品です。人間国宝が作ったテーブルでコーヒーを飲む贅沢を味わってきました。

      
      (京大の近くの知恩寺で催された古本祭)

四つ目の古本祭は、当初は時間つぶしのつもりで買う気もなかったのですが、もともと本が嫌いじゃないので、冷やかしているうちに「猫にマタタビ」状態になってしまって、7冊も買ってしまいました。ぜ~んぶ樹木関係の本。
本来の目的は、思文閣という京都の出版社が催す「大文化祭」に行って、書店で見つからなかった木の本を入手することでした。古本祭と連動しているのでしょう、こちらにも古本コーナーがあり、京都大学が近いせいか研究者らしき人、本の虫みたいな人が本を物色しています。私は駐車料金が気になるので、ここでは目当ての新刊書を買ってすぐに退散しました。

      
      (古本祭で7冊、思文閣で2冊の木の本をゲット。)

30分150円の駐車料で、当初は1時間で300円なら安いと思っていましたが、結局900円も払うことになりました。おかげで木の本がたっぷり入手できたので、少しずつご紹介しますね。
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ウィスキー樽のボールペン

2006年11月02日 | 木の材
以前、野球のバットの端材で作ったペンをご紹介しましたが、ウィスキーの樽材で作ったペンがあるというので買ってきました。
バットのペンはパイロット社製、ウィスキーのペンは三菱鉛筆社製です。バットの方はシャープペンにしたので、今度はボールペンにしました。

      
      (これは1本1,050円。5,000円もの高級品もあります。)

三菱鉛筆の説明によると、サントリーのウィスキー工場で50~70年働き、熟成力がなくなった樽は解体されて家具などに再利用されるそうで、それを文具に応用したのがこのペン。商品名は「ピュアモルト」。使われている樽材はホワイトオークです。
誰でもそうすると思いますが、私も買ってすぐウィスキーの匂いがするかどうか鼻で嗅いでみました。残念ながら(と言うか、当然)、ウィスキーの匂いはしません。
先日訪れた京大宇治キャンパスの「材鑑調査室」には、サントリーが提供したウィスキーの樽材のサンプルも展示してありました。その材もホワイトオークでした。

         
      (少しボケていますが、ウィスキーの樽材です。)

「オーク」と言うと、ほとんどの人は樫(カシ)の木だと思っています。しかし、正しくは楢(ナラ)。ブナ科の中にカシ類やナラ類があるのですが、最初にoakを訳した人が「樫」と誤訳したために、oak=樫になったようです。
日本で言えばコナラ、ミズナラなどがオークです。以前にも書きましたが、サントリーのウィスキー工場ではホワイトオーク(外国産)のほか日本産のミズナラも樽材に使っています。
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税金を払う樹

2006年11月01日 | 樹木
先週の土日と今週の3連休、宇治市では恒例の「宇治十帖スタンプラリー」が開催されています。源氏物語に因んだ史跡を巡るウォーキングラリーで、昨年は15,000人が参加したそうです。
うちの近所もコースになっていて、その中にエノキの巨木がある「手習」というポイントがあります。エノキは一里塚に使われたので、この樹も昔から旅人に木陰を提供していたのでしょう。

         
      (行楽日和の週末、たくさんの人が歩いていました。)

この樹ではありませんが、韓国には税金を払っているエノキがあります。それは樹齢500年、高さ15m、幹周り3mもの巨木で、村人たちが共同財産の土地をこのエノキの名前で登記移転したことが始まり。その名前は、黄色い花を咲かせる木の根元という意味で「黄木根(ファンモククン)」。
その黄木根が所有する土地は2,800坪。2003年には10,330ウォンの税金を納め、過去に一度も滞納したことがなく、模範的な納税者だそうです。

         

エノキが識別できるようになった頃、私は「象の足みたいな樹」と覚えました。幹の色がグレーで、少し皺があって、根元あたりが象の太い足のように見えるからです。
葉も識別ポイントで、葉脈が3本に分かれていること、下半分には鋸歯(ギザギザ)がないことで見分けられます。

      
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