樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

同じ日に、同じ山で

2006年06月16日 | 樹木
6月3日に広島県の比婆山へ鳥見に行った際、山頂で赤紫色のツツジが私たちを迎えてくれました。
もともと自生種にしか興味がない私は、栽培品種を含めて種類の多いツツジを(覚えられないので)敬遠しています。このときも写真だけは撮りましたが、種の同定はあきらめていました。

        

帰宅後、図鑑でチェックしましたが、案の定、似たような花と葉のツツジが多くて同定できません。不確かながら「トサノミツバツツジ」と判断しましたが、同行した友人は「サイゴクミツバツツジではないか」と言います。結局、結論が出ないまま「ミツバツツジの仲間」とごまかしていました。

ところが先日、偶然この比婆山のミツバツツジを掲載されているブログに遭遇しました。しかも、私たちと同じ6月3日の撮影です。
さらに驚いたことに、そのブロガーは林将之さんでした。
ご存知の方もあると思いますが、「このきなんのき」という樹木鑑定サイトの所長であり、『葉で見わける樹木』という図鑑の著者でもあります。

私も樹に興味を持ち始めた頃、しょっちゅうホームページを閲覧していましたし、図鑑もすぐに買いました。いわば、私にとっては樹の先生です(年齢は私よりはるかにお若いのですが)。
その先生と同じ日に、同じ山に登り、同じ花を撮って、たまたまブログに出会うという偶然の二重奏みたいなことがあって興奮してしまいました。

         

私は葉っぱで検索する図鑑を4種類くらい持っていますが、学者が作った図鑑は厳密だけどフレンドリーじゃない。林さんのこの図鑑は、使う側(特に入門者)の立場になって作られているのでとても使いやすいです。

で、肝心のツツジの名前ですが、先生は「ダイセンミツバツツジ」と書いておられます。葉の裏の主脈に毛が生えているのが特徴だそうです。
私なんか写真を撮るだけで、触りもしませんでした。やっぱり、丁寧に観察しないとダメですね。
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小さな花寺

2006年06月15日 | 樹木
自宅から徒歩20分くらいの所に、知る人ぞ知る小さな花のお寺があります。
私が尊敬するバードウォッチングの先輩に教えていただいた、とっておきの場所です。その先輩はもう亡くなりましたが、このお寺を訪れるたびに思い出します。

         
        (ブラシの木が花を咲かせていました)
      
        (白い花はバイカウツギ)

ここが気に入っているのは、庭に媚びがないから。
拝観は無料です。観光客を呼ぶためにではなく、住職と奥様が好きで樹や花を育てておられるのです。寺の庭だけでなく、プライベートスペースにも珍しい植物をいっぱい植えておられます。

花寺として売り出して有料で公開することも可能でしょうが、そのお気持ちは全くないようで、庭の奥には野菜畑が丸見え。

      
      (いろんな品種のアジサイが咲いています)

実は、私の家の近所にはアジサイで有名な花寺があります。今がピークで、全国からたくさんの観光客が訪れています。
すぐ近くなので、500円の拝観料を払えば何千株ものアジサイが見られるのですが、私は小さな花寺の方が好きです。有料だから無料だからというのではなく、観光客を呼ぶための庭づくりと、趣味としての庭づくりの違いですかね・・・。花が大好きな親戚のおじさんの家に来たような感覚で庭が楽しめます。

私は観賞用の品種にはあまり関心がないのですが、大好きなお寺なので、時々季節の花便りを掲載します。
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サッカーの樹

2006年06月14日 | 木とスポーツ
ワールドカップに因んで、サッカーの話題を。
日本には蹴鞠(けまり)という伝統のフットボールがあります。某家電メーカーのプラズマテレビのCMに、中世の装束の選手がサッカーをするシーンがありましたが、多分この蹴鞠を意識したのでしょう。

この蹴鞠のピッチを「鞠庭(まりにわ)」といいます。広さは、15m四方。正式な鞠庭には、四隅に松、桜、柳、楓を植えるそうです。
この樹を四季木(あるいは式木)と呼ぶのですが、おそらく、桜=春、柳=夏、楓=秋、松=冬を意味しているのでしょう。
さらに、ミスキックした鞠が散逸しないように、鞠庭の四方には桧の角材で作った垣を張りめぐらします。今のネットのようなものですね。

京都の下鴨神社でも蹴鞠が行われますが、正式な鞠庭ではないのか、四隅には青竹を立てています。それでも、松で鞠を清めてから蹴るそうです。

       

将軍家などの最高級の鞠庭は、四隅すべてを松にしたようです。昔は、松に神様が降りてくると考えていたからでしょう。能舞台のバックにも必ず老松の絵が描かれています。

鞠庭の樹ではないですが、近くにあるクロマツの大木を撮ってきました。民宿の敷地から宇治川まで幹が張り出し、道路を横切っています。この立派な松も、昔は神聖な樹と考えられていたのかも知れません。
私はサッカーファンではありませんが、このクロマツに「クロアチアとブラジルに勝ちますように」とお願いしてきました。日本代表には蹴鞠スピリットで頑張ってほしいですね。
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フルーツの香り

2006年06月13日 | 木と香り
先日、京都府立植物園に行ったとき、半木(なからぎ)神社の近くを歩いていたら、バナナのような甘い香りが漂ってきました。すぐに、「近くにカラタネオガタマがあるな」と分かりました。

      

中国原産のモクレン科の木です。日本原産の「オガタマ」もありますが、私はカラタネオガタマしか見たことがありません。神社によく植えられている木で、「招魂(おきたま)が語源」という説もあります。
交野市にある大阪市立大学理学部附属植物園には、入ったところにカラタネオガタマの大木が10本くらいあって、この時期には甘いバナナの匂いをムンムンさせています。

      

モクレン科にはフルーツの香りを放つ木が多いように思います。タイサンボクの花に鼻を近づけると、ほんのりと柑橘系の匂いがします。この木は北アメリカ原産で、庭木によく使われます。
葉がバシバシに硬くて可愛げがないし、花も名前(大山木・泰山木)のとおりデカくて馴染めませんが、香りだけは優しくて気持ちが和らぎます。

      

このタイサンボクの仲間に日本原産のオオヤマレンゲがありますが、こちらにも柑橘系の匂いがあります。タイサンボクよりも匂いが強かったように記憶しています。
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梓(あずさ)の謎

2006年06月12日 | 木と言葉
本を出版することを「上梓(じょうし)」と言います。
「梓(あずさ)」という文字や言葉を聞いて、「梓みちよ」を思い浮かべた人は私と同年代、狩人が歌う「あずさ2号」を思い浮かべた人は少し若い人でしょう。この梓も木編ですから、木の名前です。

植物学では、梓ではなく「ミズメ」と呼びます。カバノキ科ですが、横一の皮目や葉っぱがサクラによく似ています。私も「栃の森」にあるミズメを、しばらくヤマザクラと思い込んでいました。

            
        (皮目が横一になるのはサクラかカバノキ)
                
    (葉の付け根がハート型に凹むのはカバノキ、サクラは凹まない)

材もヤマザクラによく似ているため、他のカバノキと一緒にして材木業界では「カバザクラ」と呼んでいます。ヤマザクラは良材で、家具のほか浮世絵の版木にも使われたそうです。

ここで、冒頭の出版の話に戻るのですが、私はヤマザクラによく似たミズメ(梓)を本の版木に使ったので「上梓」という言葉が生れた、と考えていました。
木に関するモンスターサイト「木の情報発信基地」にもそういう記事があります。
ところが、「上梓」という言葉が生れたのは中国。一方、ミズメ(梓)は日本固有種という矛盾に突き当たりました。

で、いろいろ調べた結果、「梓」という漢字は中国ではキササゲという木を意味し、そのキササゲは「百木の王」と呼ばれるほどの良材であることが判明しました。

      
      (トウキササゲの葉・京都府立植物園で撮影)

有用なキササゲは多分、版木にも使われたのでしょう。そして、キササゲ=版木という意味になったのだと思われます。漢和辞典の「梓」には、木の名前のほかに、はっきり「版木」と書いてあります。
キササゲは日本には自生しませんから、「梓」という漢字を(どういう訳か)ミズメに当てはめたのです。

「梓みちよ」からここまで引っ張るか? 込み入った話で申し訳ないです。
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中国の鳥見で出会う木

2006年06月10日 | 樹木
鳥見ツアーで訪れた広島県の比婆山で、イチイの古木に出会いました。イザナミノミコトの御陵と言われる聖域を、一対のイチイが守っているのです。

         

以前の1万円札に描かれていた聖徳太子は、手に笏(しゃく)を持っていました。現在でも、神主さんは神事で笏を持ちます。この笏に使われるのがイチイ。
その昔、仁徳天皇がこの木で笏を作らせ、正一位(最高の階級)とともに授けたのでイチイと呼ばれるようになったと言われます。飛騨高山にはイチイがたくさん茂る山があり、その名も位山。お土産の一位一刀彫もこの位山のイチイで作るそうです。

朝鮮でも、昔は官吏が王に謁見する際、イチイで作った笏(ホル)を手に持ったそうです。また、韓国で最も古い木はイチイで、樹齢は1,400年と推定されています。

針葉樹の見分け方の一つに、葉を握ると痛いか痛くないか、というのがあります。イチイは痛くないです。

      

イチイの別名はいろいろあって、アララギもその一つ。この名前は、正岡子規などの歌人グループ「アララギ派」で覚えている人も多いでしょう。
また、キャラボクとも呼ばれ、鳥取県の大山にあるダイセンキャラボクはイチイの変種。15年ほど前、鳥を見に大山に登ったことがありますが、兄弟の木とは思えないほど背の低い木でした。
私は鳥見で中国地方を訪れるたびにこの木に出会っている訳です。
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黒文字、白文字、青文字

2006年06月09日 | 木と飲食
早口言葉みたいな題ですが、3つとも木の名前です。このうちのクロモジを、先日バードウォッチングで訪れた広島県の比婆山で見つけました。どこにでもある木ですが、たまたま開花していたので撮影しました。

      

この木は、高級な爪楊枝に使われるのでご存知の方も多いでしょう。下の写真のように、若い緑の枝に黒い模様があるので、これを文字に見立てて「黒文字」と名づけたのです。

      

下の写真はわが家にあった爪楊枝ですが、黒文字は爪楊枝になっても残っています。何年も前に買った爪楊枝なので匂いは消えていましたが、ナイフで少し削るとプ~ンといい香りがしました。
ちなみに、爪楊枝の箱には、「10分程水に浸しておくと腰が戻ります。水分を含んだ楊枝は和菓子の皮やアンコの付着を防ぎます」と書いてあります。今度から水に浸してから使おっと。

      

クロモジはクスノキ科ですが、この仲間には香りのいい木が多いです。肉料理に葉っぱを使うゲッケイジュ、お菓子に使う香料のシナモン(肉桂)もクスノキ科。そのほか、クスノキやダンコウバイも葉や枝をちぎるといい香りがします。ヤマコウバシ(山香ばし)という名前の木もあります。

クロモジの仲間にはシロモジという木もあります。何故「白文字」なのか分かりませんが、この木にもクスノキ科特有の芳香があります。
さらに、アオモジという木もあります。自生地は九州方面なので私はまだ見たことがありませんが、図鑑によると、実や材にはレモンのような香りと辛味があり、「生姜の木」とか「胡椒の木」と呼ばれているそうです。
クスノキ科の木は料理やお菓子と関係が深いんだな~。
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死霊の木

2006年06月07日 | 木と歴史
この薄紫の花、なかなか気品があるでしょう? センダンです。

      

「センダン」と聞くと、誰でも「センダンは双葉より芳し」を連想しますが、そのセンダンは香木のビャクダンのことで、全く別の木です。
けっこう普通に見られる木で、東京の高級住宅街・田園調布にはセンダンの並木があるそうです。高級住宅街ではありませんが、私の家から最寄りの駅までの道端にも5~6本あります。写真もその1本。
         

清少納言もセンダンの花が気に入っていたようで、『枕草子』に「木のさまにくげなれど、楝(あふち:センダンの古名)の花いとをかし。さまことに(変った様子で)咲きて・・・」と書いています。確かに、樹形は乱れて「にくげ」ですね。

葉っぱの様子もちょっと変っていて、小葉が魚の骨のように並んで羽状複葉を形成し、その複葉が集まってさらに大きい羽状複葉を形成しています。こういうのを2回羽状複葉と言います。

      

この木は用途もちょっと変っていて、昔はさらし首に使われました。『平家物語』にも、「平宗盛親子の首を三条河原の獄門にあるセンダンの木に架けた」というような記述があります。
棺桶や死者に持たせる杖にもセンダンを使ったという話です。お墓に植えてあるのもよく目にします。

独断ですが、死に関する用途が多いのは、「センダンには死霊を慰める力がある」と信じられていたからではないでしょうか。怖~い話ですが、私は樹木の文化の奥深さを感じます。
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オッサンたちの修学旅行(野鳥編)

2006年06月06日 | 野鳥
前回は樹木のことを書きましたが、この旅行の主目的はバードウォッチングです。
もう10年以上も前から、毎年一回3人のオッサン連れで全国各地に出かけています。四国にも行きました。船で海の鳥を見ながら北海道にも渡りました。今回は広島県と岡山県。

       

私の最大の目的はブッポウソウ。顔や声は可愛くないですが、光線の具合で青に見えたり、緑に見える美しい色の鳥です。(ビデオからの画像なので少し見にくいですね、すみません。)
他の2人はすでに何度も見ているのですが、私はまだお目にかかっていません。これまでの旅行でも何度かポイントを訪れましたが、結局出会えませんでした。

ところが、今回ついに念願叶って、ブッポウソウに巡り合えました。しかも、じっくり、何度も・・・。
最初は逆光で黒っぽく見えるだけでしたが、その後、順光の位置に移動してくれて緑の体が、頭上近くを飛んでくれて青い翼が目撃できました。
いやー、感動しました。満足しました。こういうことがあるので、鳥見はやめられまへん。

このほか、アカショウビンという赤い鳥も声と姿を披露してくれました。カッコウも鳴きながら飛んでいきました。
2日間で声を聴いたり姿を見た鳥は合計50種類。多分、このコースでは少ないでしょう。昔はもっと必死になって探していましたが、年を重ねるごとにユルーイ鳥見になってきました。
鳥がいなけりゃ、木や草の花を探そう、動物の足跡やフンを見つけよう・・・。そんな、アバウトなツアーです。「オッサンたちの修学旅行」というよりも、だんだん「ジイサンたちの修学旅行」になりつつあります。
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オッサンたちの修学旅行(樹木編)

2006年06月05日 | 樹木
6月2日(金)の夜から4日(日)まで、鳥仲間3人で広島県と岡山県に行ってきました。
いい年こいて、いつもワクワクしながら出かけるので、「オッサンたちの修学旅行」と呼んでいます。バードウォッチングが目的ですが、今日の記事は樹木に絞ります。

          

最初に訪れたのは比婆山(広島県民の森)。ここのブナの森はなかなか見事でした。純林というだけあって密度が濃く、巨木がニョキニョキ林立しています。
見上げれば、鮮やかな緑のドーム。青空を背景にした緑の葉を見ると、私はいつもウットリします。いちばん好きな配色もブルー&グリーンです。

私の名前のfagus(ファーガス)はブナの学名です。ブナが特に好きというわけではなく、トチノキやミズナラ、サワグルミなどで構成されるいわゆるブナ林が好きなので命名しました。
下の写真はブナの葉っぱ。縁がカマボコ型の波を描いているのが特徴です。

      

漢字で書くと「橅」、木で無いと書きます。伐採するとすぐに切り口から変色してしまうので、木材として役に立たないために、こう言われたそうです。でも、運搬方法や乾燥技術が進歩した現在は、変色する前に加工できるので有用材です。

紅葉で有名な帝釈峡で泊まって、朝は5時から周辺の森で鳥と木を観察しました。
その中で、初めてゲットしたのが写真のウグイスカグラ。図鑑で見て、鳥の名前をもらったその名前が以前から気になっていました。

      

葉の上に赤い実が一つ。最初は「ソヨゴ!」と思いましたが、ソヨゴの実は秋なので、「これが噂のウグイスカグラだ」と嬉しくなりました。
「春、この木の枝でウグイスが神楽のような踊りをするのでこの名前がある」とどこかに書いてありました。あまり姿を見せないウグイスですが、繁殖期ならそういうことがあるかも知れません。
このほか、エゴノキやヤマボウシも白い花をいっぱい咲かせていました。
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