樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

死霊の木

2006年06月07日 | 木と歴史
この薄紫の花、なかなか気品があるでしょう? センダンです。

      

「センダン」と聞くと、誰でも「センダンは双葉より芳し」を連想しますが、そのセンダンは香木のビャクダンのことで、全く別の木です。
けっこう普通に見られる木で、東京の高級住宅街・田園調布にはセンダンの並木があるそうです。高級住宅街ではありませんが、私の家から最寄りの駅までの道端にも5~6本あります。写真もその1本。
         

清少納言もセンダンの花が気に入っていたようで、『枕草子』に「木のさまにくげなれど、楝(あふち:センダンの古名)の花いとをかし。さまことに(変った様子で)咲きて・・・」と書いています。確かに、樹形は乱れて「にくげ」ですね。

葉っぱの様子もちょっと変っていて、小葉が魚の骨のように並んで羽状複葉を形成し、その複葉が集まってさらに大きい羽状複葉を形成しています。こういうのを2回羽状複葉と言います。

      

この木は用途もちょっと変っていて、昔はさらし首に使われました。『平家物語』にも、「平宗盛親子の首を三条河原の獄門にあるセンダンの木に架けた」というような記述があります。
棺桶や死者に持たせる杖にもセンダンを使ったという話です。お墓に植えてあるのもよく目にします。

独断ですが、死に関する用途が多いのは、「センダンには死霊を慰める力がある」と信じられていたからではないでしょうか。怖~い話ですが、私は樹木の文化の奥深さを感じます。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« オッサンたちの修学旅行(野... | トップ | 黒文字、白文字、青文字 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
京都御苑にも (scops)
2006-06-07 19:12:03
ありますが、実のなっている時に気が付くだけで、花はまだ見たことがありません。今咲いているんでしょうか?



それにしても、死に関する用途の理由が知りたいです。なにかいわれがあるはずですものね。
返信する
花も実も (fagus06)
2006-06-08 10:08:51
今なら、去年の実をつけたまま花を咲かせている個体もありますから、どちらも見られると思います。

京都御苑のは多分大きい木なので、花も実もついているはずです。

ちなみに、センダンの実は、お腹の薬に使われます。実はとても苦いそうで、まさに良薬は口に苦し、です。
返信する

コメントを投稿

木と歴史」カテゴリの最新記事