樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

我輩は青桐である

2006年08月29日 | 木と作家
明治時代の文人たちは、なぜかアオギリを好んだようです。
木戸孝允(桂小五郎)もその一人。もともと樹木が好きだったようで、ある旗本の家の庭が荒廃しているのを見かねて、家ごと買い求めて自邸にしたといいます。その庭に新たに植えたのがサルスベリ、モクレン、そして多数のアオギリ。

         
      (幹が微妙に緑色がかっているのでアオギリ)

夏目漱石の家にもアオギリがあったようで、『我輩は猫である』では猫がアオギリを説明する一節があります。運動不足を解消するために庭で蝉取り運動をしようと計画しているシーン。
「蝉のもっとも集注するのは青桐(あおぎり)である。漢名を梧桐(ごとう)と号するそうだ。ところがこの青桐は葉が非常に多い、しかもその葉はみな団扇(うちわ)くらいな大きさであるから、彼等が生い重なると枝がまるで見えないくらい茂っている」。

         
        (確かに、大きな葉が茂っています)

漱石が『猫』を執筆した頃に住んでいた家は、かつて森鴎外も住んだことがあり、現在その家屋は愛知県犬山市の明治村に移築されて保存されています。
また、正岡子規と同じグループの明治の俳人に河東碧悟桐(かわひがしへきごとう)がいますが、猫が説明したように悟桐はアオギリの中国名です。
アオギリが中国から日本に移入されたのは室町時代以前ですから、珍しい樹ではなかったはずですが、現在のハナミズキのように当時の一種の流行だったのでしょう。
コメント (2)
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