樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

サンドペーパーの葉

2006年08月03日 | 木と歴史
近くの宇治神社の境内に数本のムクノキがあります。
ムクドリが実を食べに集まるからこの名前があるという説がありますが、眉唾っぽいです。仮にそうであったとしても順番が逆で、古代の人間はムクノキの実を食べる鳥を見てムクドリと名づけたはずです。

         
         (ムクノキの幹)

確かに実は甘くて、縄文時代は甘味料として使われていたらしく、遺跡から種が大量に出土しています。
ムクノキは、葉っぱを研磨材として使ったことで知られています。葉の表面にシリカ(二酸化珪素)を含んでいるため、触るとザラザラしています。昔は、この葉で象牙やベッコウを磨いたそうです。

      
      (ムクノキの葉。手で触るとザラザラしています。)

平安時代の歴史小説『栄華物語』には、お寺の造営シーンとしてこんな記述があります。「仏の御座造り輝かす。木賊(トクサ)、椋葉(ムクノハ)、桃の核などして、四五十人が手ごとに居並みて磨き拭く」。仏像の台座をトクサやムクの葉、桃の種で磨いたというのです。
トクサは幼友達の家にあったので、歯磨きして遊んだことがあります。桃の種もたしかに硬くて凹凸がありますから研磨材に使えそうです。
今のようにサンドペーパーやグラインダーはないですから、こんな自然素材を使って物を磨いていたんですね。
コメント (4)
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