樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

北斎・広重が描いた樹

2006年08月08日 | 木と作家
京都の仕事先の近くにある京都文化博物館で『北斎と広重展』をやっていたので、打ち合わせの後に見てきました。

      

私も絵描きになりたくて、高校時代は油絵を描いていたので絵は好きなのですが、今回は江戸時代の版画に木がどのように描かれているかという不純な(?)動機で鑑賞しました。
北斎の「富嶽三六景」や広重の「東海道五三次」に風景として描いてある樹はマツが多かったです。樹そのものを描いた作品もありました。

        

写真はその一つ、広重の「亀戸梅屋舗」。不規則に伸びた梅の枝を大胆な構図で描いたもので、ゴッホも模写しています。「どこかで見たモチーフだな~」と思ったら、尾形光琳の「紅白梅図屏風」でした。梅の枝は鋭角にニョキニョキと曲がるので、モチーフとして絵心を刺激するのでしょう。

また、「東海道五三次」の「赤坂・旅舎招婦ノ図」では、旅館の庭に描いてあるソテツが目に止まりました。ソテツは日本では九州南部や沖縄にしか自生しませんが、当時すでに庭木として使われていたんですね。
ちなみに、広重の絵のモデルになった愛知県のこの旅籠は現在も営業していて、ソテツも近所のお寺に移植されて現存しているらしいです。

北斎の「富嶽三六景」の中の「甲州三島越」には、大きな杉の周りに手をつないで立っている3人の旅人が描かれています。幹の太さを測っているようです。絵には3人しかいませんが、6人くらいかかりそうですから、周囲10mくらいの巨木です。今もあるのかどうか知りませんが、当時、三島越えの大杉として有名だったのでしょう。

私が入場したのは木曜日の午後でしたが、観覧客は鈴なりでした。実は、6月に京都国立博物館で「大絵巻物展」が開催されたので、「鳥獣戯画」や「源氏物語絵巻」にどんな樹が描かれているかを見たくて前売券を買ったのですが、平日の午前11時に行ったのに「2時間待ち」。その日はあきらめて帰り、結局前売券はムダになりました。
今回もけっこうお客さんが多くて、「日本人はこんなにアートが好きなのかな?」と意外でした。
コメント (4)
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