樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

原爆と樹

2006年08月07日 | 樹木
昨日は広島の原爆記念日でした。NHKでは、被爆したサクラを復活させた話をしていました。それを見て、「人間と同じように、戦争で姿を消した樹木もたくさんあっただろうな」と思いました。
そして、先日たまたま読んだ本にも、被爆したクスノキの話がありました。木工作家の早川謙之輔さんの著書『木に学ぶ』です。

      
    (宇治市名木百選のクスノキの巨木。樹齢は150年、幹周りは3.1m)

広島市の国泰寺というお寺に、天然記念物の大きなクスノキがあったそうです。樹齢400年、4本1株で直径が3.4mといいますから、周囲は約10m。根が歩道を太鼓橋のように盛り上げていたので、路面電車のレールも迂回させたほど。
その巨木の500m北に原爆が落とされ、1本は根ごと吹き飛ばされて倒れました。残る3本も炎上し、敗戦後の10月までくすぶり続けたそうです。
4年後に根が掘り起こされ、あるお菓子屋さんがその材で看板を製作されました。被爆した木材ながら、ノミを入れた時はクスノキのいい香りがしたと言います。
その店主も原爆でご両親を亡くされ、ご自身も被爆しておられるそうです。

さて、この国旗の国をご存知ですか?
      

今、イスラエルと戦争状態にあるレバノンです。国旗に描かれているのはレバノン杉。日本で言えばヒノキみたいな優良材で、昔からピラミッドや宮殿建設のために伐採されたので、現在では小さな保護林に天然木がわずかに残るのみです。そのレバノン杉にも戦火が及ぶのではないだろうかと気になります。
また、このあたりはヨーロッパとアフリカを渡る鳥のルートになっています。以前、テレビでイスラエル空軍の戦闘機に渡り鳥が衝突することが報道されていました。これから渡りのシーズンを迎えるので、こちらも心配です。

戦争は人間に計り知れない災いをもたらしますが、自然にとっても大きな痛手になります。「国敗れて山河あり」と言うものの、その山河も深く傷ついているはずです。
樹は戦火で焼かれたり、軍事物資のために無計画に伐採されました。野鳥も繁殖を妨げられたり、渡りができなかったり、いろいろ影響を受けたでしょう。
今まではこんなことに気づきませんでしたが、テレビと本で原爆の話を知り、中東情勢のニュースを見て考えさせられました。

コメント (2)
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