ライターの脳みそ

最近のマイブームはダム巡りと橋のユニークな親柱探し。ダムは目的地に過ぎず、ドライヴしたいだけ…。

大切な日

2004-06-19 23:19:03 | 回想する脳みそ
今日は、ワシの人生において大切な人のうちの2人に会ってきた。

ひとりは、もう20年ほどの付き合いになる自動車の整備士のSさん。この人は現在、小規模の修理工場を経営している。ワシとはなぜかウマが合い、およそ三ヶ月に一度はクルマのエンジン・オイルの交換を名目にして会いに行っている。

彼は常にお客の立場になって考えてくれる素晴らしい人だ。実際には優れた腕の持ち主なのに、決して偉ぶったりはしない。そして、こちらの質問に懇切丁寧に答えてくれる。こんにちワシが年甲斐もなく「やんちゃ」な運転をしていられるのは、この人のきめ細かいメンテナンスのおかげであるといっても過言ではない。わざわざ40kmも離れた遠くの工場に行くのは、そのためである。

思えば、カネのない学生時代には本当にお世話になった。普通、修理などをすれば、部品代の他に工賃というものを請求される。しかし、Sさんは決まって「いいよ、工賃はサービスしてあげますから」と言ってくれた。当時彼は民間の整備工場の社員であったが、貧乏学生がいつも心を悩ませたのは「こんなことを会社に内緒で、独断で決めていいんだろうか」ということだった。

でも、Sさんはワシの心配など全くおかまいなしに、せっせと工賃抜きの伝票を切ってしまう。彼がその損失をどう補ったのかは、いまだ不明だ。「困っている時は、お互い様ですよ」と笑いながら言うSさんだが、そのフレーズを聞くたびにワシは彼に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。そして心の中でいつも最敬礼していた。いや、今もそうだ。

もうひとりの大切な人は、ワシに無償の愛を教えてくれた人である。けれども、彼女はもうこの世にはいない。そう、今日は彼女の三回目の命日なのであり、その墓参りに行ってきたのだ。

思えば、2001年はワシにとって大切な人を三人失った年である。ひとりは彼女、そして約二週間後にはオフクロ、さらに12月には大学で世話になったW先生と永遠に別れるという体験をした。それぞれの人と別れるのは辛かったが、精神的に最も「こたえた」のは、やはりフィアンセとの別れだった。

しかし我々は長くつきあったわけではない。普通の恋人たちのようにデートをしたのは4ヶ月ほどだったろう。残りの1年半のデートの場所といえば、病室だったな。でも、場所がどこであれ、相手の顔を見ることができるだけで嬉しかった。実際、一度も喧嘩したことはなかったし。

でも、彼女の病状は日に日に悪化していった。そんな体調にもかかわらず、彼女はいつもワシの身体を気遣ってくれていた。ある日病室に行こうとして、ふと脇にある階段を見ると、点滴をぶら下げながら階段を上る彼女がいた。
「な、なにしてんのさっ」
驚いて尋ねると、彼女は
「熱が出たってメールが来たから、早く熱が下がって仕事ができるように、この階段で『お百度参り』をしてたの」
すべてにおいて、この人は、こんな調子だった。自分のことよりも相手のことを気遣うという人だった。

それでも、彼女は何とか持ち直して一時的に退院できるまでに恢復した。医者は「信じられない」を連発した。当時TVでは「ビューティフル・ライフ」というドラマがあった。その内容は我々のケースと酷似していたため、冷静なワシでさえ動揺せずにいられない番組だったのを覚えている。なぜなら、それは結果的に悲劇に終わるというストーリーだからだ。

しかし、彼女の体調は精密検査をしても何ら問題は見られなかった。嬉しかったね。だって、ドラマとは違う展開になりつつあったのだから。「なっ、やっぱりドラマはドラマなんだよ」そう言って笑い合っていた。

ところが楽観したのも束の間、容態は急変。そして、彼女はあれよあれよという間に遠くの世界に行ってしまった…

泣いたね。生まれてこのかた、ほとんど泣いたことのないワシのどこにそんな涙があったのかというぐらい、泣いた。

当時、明治生命のCMに使われていたのが小田和正の「言葉にできない」という曲だった。今でも、それを聴くと反射的に目頭が熱くなってしまう。これは一種のPTSDかもしれないな。

しっかりしろっ、ワシ(キムタク風)
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2 コメント

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涙が・・・ (さえ)
2004-07-27 14:13:34
今頃になって、日記を読ませてもらいました。

涙が出ました。

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ありがとう (べすと)
2004-07-29 00:54:23
書きたいことはヤマほどあったんだけど、書けば書くほどツラくなりそうだったから、今回はここまでにしました。きっと来年の今日も思い出して書くんだろうな。
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