人類は、どこから来たのか?

2009-08-07 00:00:13 | 歴史
現在、「ジェノグラフィック・プロジェクト」が進行している。人間のルーツ探しと言えばそれまでだが、大雑把にいえば、現在の人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)が東アフリカ(ケニアのあたりのサバンナ)に誕生したのが20万年前から6万年前の頃。そして、6万年ほど前に、人類が移動をはじめる。おそらく気候変動だと思われているそうだ。



その何らかの理由で、人類の数は減少し、約2000人程度にまでなったらしい。かつての二足歩行の今は亡き旧人類と同じ運命に近かったようだ。そして、ソマリアから紅海を渡りアラビア半島へ。その後、インド、インドシナを経て日本にまで到着したグループもあれば、中東から中央アジアに向い、その後、欧州に向かったグループもあればシベリアからベーリング海峡を渡って、北米、南米と広がっていったグループもいる。

そのロング・ジャーニーの軌跡を個人別に調べてみようというわけだ。家系図探しもどきといってもいい。



なぜ、そんなことができるかというと、遺伝子の中のY染色体は男から男へと引き継がれるものであり、またミトコンドリアの中に入っている環状のミトコンドリアDNAは女から女に引き継がれるものであり、結局、父の父の父の・・・父というように直系の男たちがどのように歩いたのか、あるいは、母の母の母の・・・母がそのように歩いたかを統計的に知ることができるそうだ。ただし、父の母の父の母がどこからきたか、などはわからない。



そして、このプロジェクトの中心にいるのが、米国ナショナル・ジオグラフィック協会の研究員であるスペンサー・ウエルズ博士。その講演会が日本科学未来館で行われる。ナショジオの定期有料購読者はタダで参加できる。



しかし、まず会場設営のトラブルでホールへの入場時間が遅れる。約30分間、会場の外の廊下に列を作らねばならなかった。イタリアみたいなアバウトである。さらに、本番でもパソコンとスクリーンの接続不良で時間がロスしてしまう。つけは講演時間の短縮となる。

ともあれ、講演会は始まる。スペンサー教授が、こういった科学的手法で人類の歴史を調べようと思ったのは、もともと彼が「歴史」に興味があったことが原因だそうだ。ギリシア・ローマなど。ところが、母親の関係で、向かった針路が科学だったそうだ。そのため、その二つを組み合わせて、「科学を使って人類の歴史をひも解こうとした」とのこと。

似たような組み合わせでも、凡人博士は、科学者の歴史(科学史)みたいな方向に行ったりする。

そして、当日のコメンテーターの一人が、文化人類学者の竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)。彼のルーツを調べると、アラビア半島から南インド、インドシナ方面から南周りで日本に来たそうだ。いわゆる縄文人で日本の40%ということだそうだ。確かに色が黒い。



もう一人のコメンテーターが元ミス日本の知花くららさん。沖縄出身の彼女のルーツがスクリーンに投影されると、会場から驚愕の声が上がる。まず、ケニアからすぐにアラビア半島に渡ったのではなく、いったんアフリカの中をさまよった後、中東方面に向かう。そして中央アジアで一旦待機した後、シベリア方面に向かう。そして、ついにはベーリング海峡を渡り北米大陸から南米大陸に到達。

つまり、矢印は日本に向かわないわけだ。

ところが、このパターンは、日本人の20%というそうだ。いわゆる弥生人なのだろうか。しかし、彼女は沖縄県人独特の風貌を色濃く残している。まあ、そんなことは会場の多くが考えたのだろうが、ようするに、母の母の母の母を探しただけなのだから、父親が沖縄系で母親が弥生系なのかもしれないし、まあ個人のルーツというよりも民族のルーツのようなものを調べているということなのだろう。

そして、あとでこのグループの研究をホームページなどで調べると、やはり中国から朝鮮、日本あたりは、今一つクリアになっていないようである。

さらに、最近わかってきたのは、この時間差によって人類があちこちの方向に移動している(正確に言うと、その他の方向に移動したグループは死滅した)という歴史が、背景にある地球の自然現象(つまりスマトラ火山の爆発による氷河期到来とか温暖化による砂漠化とか)を遺伝子の中に反映しているということだそうだ。

さて、そういうことで、このルーツ探しだが、実は大々的に一般に公開されることになり、すでに英語版では、ホームページから、99.95ドルで申し込める。参加キットが送られてくるので、歯ブラシみたいに頬の内側の粘膜をこすって、指定の場所に送ればいいらしい。

そうすると、男性ならば父の父の父の・・・父が、女性なら母の母の母の・・・母が、アフリカからどうやって、この温帯の楽園である日本まで逃げてきたかがわかるわけだ。

もちろん、詳しく読むと、「あなたの家系図を作るわけではありません」ということなので、誤って(あるいはわざと)親子で申し込んで、父親が(母親が)別人だったことを知っても、がっかりしてはいけないということなのだろう。

ところで、オバマ大統領の場合、父親はケニア人ということだそうだから、世界中で、もっとも生活の苦労を知らない家系にある、ということができるのだろうか。