BSジャパンで連続放送中の007シリーズ第12作目は、「ユア・アイズ・オンリー」。
まず、本作では従来路線からの大転換がはかられる。通常は、まず、ジェームズ・ボンドが軽い情事にふけっているところに、本部から召集電話がかかってくるか、いきなり襲撃されて巻き添えで女性が死ぬ、ということになるが、本作では妻の墓参りから始まる。
そして、これまで何回も戦ってきた宿敵ブロフェルドとの対決になり、ヘリコプターファイトの末、宿敵を巨大煙突の中に落下させ、とどめを刺す。これなら、以前の映画の中で片付ければ良かったということだが、その時は、将来のネタ切れのために温存したのだろう。
そして、NATO対ソ連という直接的対決がテーマになってくる。NATO側のミサイル防御システムを搭載した艦船が撃沈され、その海底の沈没船からシステム機器を回収しようというテーマになる。場所はギリシア。今、話題の国、話題の首相。
今、話題の首相のように、ギリシア人の役回りはどうも白とも黒ともいえない人物ばかりだ。海外資産を溜め込んで、あやしい取引を行うためにギャングを手先に使う。裏切ったり裏切られたり。潜水艇が登場して海底バトルもある。いつものように血に飢えたサメが活躍。(もっとも、現在のギリシア人にしてみれば、EU諸国に搾取され、今さら出ていけはないだろうと思っているだろう)
本格的なアクションになると、喜劇役者ロジャー・ムーアでは厳しそうだ。スキーが得意といってもボブスレーコースでバイクで追われるというあり得ないファイトを強要される。
ボンド・ガールは60才になった今でも美しいキャロル・ブーケ。ギリシアの海洋学者の娘にはとても見えない碧眼の美女で、映画の最後でやっとベッドに入る気になる。美しいのはフランス人だからだろうか。
13作目は「オクトパシー」。本作も、ソ連内部の将軍同士の戦いが背景にある。もはや、ソ連を実名入りでからかっても実害なしということだったのだろう。だいたい、映画の中では、NATO壊滅を狙う将軍の方が反主流派に追いやられ、一発逆転の核攻撃を計画。
12作目で方向転換して、リアルなアクション映画を目指したものの、本作では先祖返りのコミカルアクションに戻る。場所はインドに飛び、ジャングルの中で虎や象や毒蛇と戦う。ソ連の宝ともいうべき、帝政ロシアからの没収品やナチスから逃れたユダヤ人から略奪したお宝をイミテーションとすりかえ資金が作られていく。そして、サーカス団の西ベルリンの米軍基地での親善公演の荷物の中にはタイマー始動が始まっている核兵器が含まれていた。ワニのいる沼地をワニ型潜水艇で逃れるアイディアはなかなかいい。
ロジャー・ムーアが最後のシーンではピエロに扮して暴れるのだが、かくして007シリーズが再び喜劇に戻ったことが象徴される。
オクトパシー(Octopussy)とは、ボンド・ガール(モード・アダムス)の役名だが、原語から8人の女性が登場するのかと思ったら、もっと多くの水着女優が登場。そういう意味ではなく、体の一部が蛸のような女性のことを意味しているのかもしれない。
ところで、第5作「007は二度死ぬ」を見逃したのは、何らかの局側の問題かと思っていたが、単に自分が見逃したうえに再放送も失念してしまったということがわかった。日本が舞台だし、ショーン・コネリー主演ということで、借りてきて見なければならないが、ロジャー・ムーアシリーズが終わってからにしようかと思っている。