ラ・フォンテーヌ寓話(絵:ブーテ・ド・モンヴェル)

2023-08-31 00:00:14 | 書評
シャガール版画展を世田谷美術館で拝見したのだが、彼の最初のまとまった仕事が、ラ・フォンテーヌ寓話の挿絵だったということなのだ。

ラ・フォンテーヌ寓話とはフランスに伝わる昔話を収集してきちんとした寓話にまとめた本で、ラ・フォンテーヌは1620年生まれなのでシャガールは250年も後の画家だ。フランス国内ではロシア人に大切な寓話の挿絵を描かせていいのかという議論があったようだ。正確には、現在ではベラルーシに生まれている。もうすぐウクライナをあきらめたロシアがベラルーシを併合するかもしれないが、当時は、一括してロシアだった。



展覧会の会場の記述では、全400話程度のうち100話位の挿絵を描いたとされていたので、とりあえず全部読んでみようかと思ったのだが、どうすればいいのかよくわからないので図書館で『ラ・フォンテーヌ寓話/絵:ブーテ・ド・モンヴェル』を予約。直ぐに近隣の図書館から転送されて手に入った。これも寓話の挿絵として画家が挿絵を描いている。



ところが、この本で取り上げられたのは26話だけ。全体像も400なのか200強なのかはっきりしない。あっという間に読み終わり、次の手を打つ。

ウォール・ストリート(2010年 映画)

2023-08-30 00:00:04 | 映画・演劇・Video
1987年に公開された『ウォール街』の続編。23年後に続編を撮るとはオリヴァー・ストーン監督も執念深い。

主人公のゴードン・ゲッコーは前作同様にマイケル・ダグラスが演じるが、彼は前作の時にインサイダー取引他の証券取引法違反で逮捕され、3年間の裁判の後に5年間の刑務所暮らしとなった。(ただしスイスの銀行に2億ドルの隠し預金がある)

今回の相棒は、ゴードンの娘(ウィニー)の婚約者(結婚する)のジェイコブ・ムーア。証券マンだが、証券会社の資金繰りが悪化し破綻する。ゴードンとジェイコブは自分たちを貶めた共通の敵である投資銀行のブレトンを痛い目に合わせるために画策する。

一方でジェイコブが仲を取り持つことでゴードンと仲たがいしていたウィニーとが関係修復するのだが、スイス銀行の預金のことで、またも家族トラブルが起きる。

映画の途中では、みんなでマネーゲームから足を洗って、正業につこうという話だったにもかかわらず、最後は再び、狸たちは元の穴に戻るということになる。

そもそも、この映画の英語のタイトルだが、前作は『Wall Street』にたいし、『Wall Street :  Money Never Sleeps』ということで、決してマネーゲームを否定しているわけではない。

余談だが、ゴードンの娘役を演じたキャリー・マリガンとその婚約者(夫)を演じたシャイア・ラブーフは撮影前には交際中だったが、映画が完成した後、破局した。キャリー・マリガンはその後も順調に大役をこなし、アカデミー賞主演女優候補にノミネートされるが、夫役のラブーフは何度も警察の厄介になり続けている。歌舞伎役者じゃないので業界で受け入れられなくなるかもしれない。

ウォール街(1987年 映画)

2023-08-29 00:00:09 | 映画・演劇・Video
オリバー・ストーン監督、主演がマイケル・ダグラスとチャーリー・シーンということで、投資銀行の顧客向けセールスマンだったバド・フォックス(演:チャーリー・シーン)が父親が労働組合の委員長をしている中小の航空会社の内部情報を元手に、有名な投資家であるゴードン・ゲッコー(演:マイケル・ダグラス)に取り入り、彼の手先として次々に企業の内部情報を追いかける。

つまり証券取引法違反だ。さらに偽情報をバラマキ、株価を意図的に上げ下げし、気の弱い投資家から資金を吸い取ったり、傾いた会社に目をつけ、再建するフリをし、株価が上がれば売り逃げする。山盛りの違法行為の末、まずバドが捕まり、その後、ゲッコーも捕まる。

みんな刑務所行になり、監督のオリバー・ストーンは、これをもって富を生まないマネーゲームで金を儲けることを否定的に表現したはずなのだが、監督の意に反し、不正行為の張本人であるゲッコーが人気者になり、映画の中での彼のラフなファッションなどが流行ったそうだ。つまり監督の思惑が逆になった。

思えば、日本でもバブルは膨らみ続け、本当はファンドマネージャーではなく、ただの外国証券会社のセールスマンが米国の大学のMBAを標榜してみたり、同じくセールスウーマンが足を洗って女性投資評論家になったりしていたが、数年後には冬の蚊のように姿をみなくなった。

続編が23年後に登場した。

オセロといえばゲーム

2023-08-28 00:00:54 | 市民A
数日前に、シェークスピア劇の映画化である「オセロ」を観た。オーソン・ウェルズが監督兼主演なのだが、劇が書かれた1602年の30年ほど前に起きたキプロス島の領有をめぐってのベネチア王国とトルコ帝国の戦がテーマになっている。ベネチア側の司令官がムーア人のオセロで、このオセロと結婚したのが白人貴族の娘であるデズデモーナ。ムーア人は北アフリカ出身で、イスラム教徒で欧州に定住している人を指す。つまり黒人男と白人女ということになり、色々あって悲劇で終わる。

ところで、一般的にオセロというと劇ではなくボードゲームのことを思い浮かべるだろうか。以前は、同名の女性二人組の芸人がいたが、ある時、原因不明だが空中分解した。ジェット機ではないので空中分解しても犠牲者はいないが、再編はないだろう。

そしてオセロゲームというネーミングはもしかしたら、オセロ劇の悲劇性ではなく、黒人男×白人女という差別的組み合わせからではないだろうかと思いついたのだ。

ということでオセロゲームの命名についてWIKIPEDIAで調べてみた。

まず、ゲームの完成時期だが、1970年に日本国の東京都あるいは茨城県水戸市で始まったとされる。発案者は長谷川五郎氏という人。

ところが、海外にはほぼ同じゲームで「リバーシ」というのがあるそうだ。関係があるのかどうかははっきりしていない。


では、ゲームの名前はというのは、命名者は長谷川五郎氏の父親である。実は五郎氏の父は四郎というらしく、これも何かあるのだろうか。父親は英文学の教授だったそうで、やはりシェークスピア劇からの拝借のようだ。つまり人種差別だ。

ところで、何十年か前のことだが、有名な大商社の方に、都内の音楽劇場へ連れて行ってもらったことがある。そこの舞台でオセロショーを見せてもらったことがあり、シェークスピアとまったく同じ配役だったが、たぶん先方の社内では「お客さんにどうしても行きたいと言われた」といって入場料を交際費で処理したのだろうと推測していた。

マルク・シャガール 版にしるした光の詩

2023-08-27 00:00:32 | 美術館・博物館・工芸品
世田谷美術館で開催中のシャガール版画展へ行く。今回の展示はすべて神奈川県立近代美術館の収蔵品からである。神奈川県民なのでそちらで見ればいいではないかといわれそうだが、遠いのだ。逗子海岸にある。簡単には行けない。世田谷美術館は1時間以内で行ける。車で行けば無料駐車場もある。



そして、展示作品数が多い。138点だ。絵画ではなく版画ではあるが、雰囲気は変わらない。



まず、最初の部屋は「ラ・フォンテーヌ寓話集」。この寓話集はイソップ童話をはじめとするフランスのこどもたちが読む寓話集で、その挿絵を頼まれた。約400の寓話の百話程度に絞り挿絵を描いたそうだ。今回は、その中より32話の挿絵が展示されている。

気が付いたのは作品がモノクロではあるが、後年になって彼の作品の片隅に登場する想像上の生き物だが、若い時から書いていたのだろう。

特筆すべきは、この作品集だがシャガールが完成させたのは1927年にかけて1930年のこと。本の方は1952年に完成。25年かかっている。第二次大戦の影響だ。そのころまでには他の作品が発表されている。

そして、サーカスなどを題材としたカラー版の版画が登場していく。

何しろ作品数とその完成品のレベルの高さも驚異的だ。それにしても神奈川県民美術館だが、よく集めたものだ。

二番目に残念な敗戦か

2023-08-26 00:00:50 | しょうぎ
一昨日の王位戦予選で森本四段が菅井八段に、かなり残念な負け方をした。なんと菅井八段玉に詰みがあり、連続王手をしている途中で詰まないと勘違いし、投了してしまった。その真意はわからないが、こどもの頃に詰将棋をサボったのだろうか。たいして難しい手ではない。基本手筋で十分だ。残り時間は2分あるので見つけられないはずはないと思うのだが。手数は11手だが、事実上は5手目が見えればあとは追い詰めになる。

たとえば、自分が有利なのに投了するとか、詰まないのに逃げそこなって頓死するとか、詰んでいるのに詰ませそこなったというのはプロでも無数にあるだろうが、追いかけているときにあきらめてしまうというのは、残念度が高いだろう。後手なのに先に指して反則負けというのが最も残念な負けとすれば、その次ぐらいではないだろうか。いや、もっと残念なのかもしれない。


さて、8月12日出題図の解答。








今週の出題だが、問題の投了図から不要駒を取り除いた図を問題にしようとしたが、余詰まであるので、9一香を9一金に変え、守備力強化している。



解ったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

オセロ(1951年 映画)

2023-08-25 00:00:37 | 映画・演劇・Video
シェークスピア四大悲劇の一つ。何度も映画化されている。1951年版はオーソン・ウェルズが監督兼主演で、カンヌ映画祭のグランプリを得ている。

その他、1955年にはソ連版、1964年にはL.オリヴィエ主演作、1995年にはアメリカでも制作されている。

四大悲劇の中では筋が簡単であり、解釈が多様なので、有名監督ならやってみたいと思われるのだろう。

時は1570年頃、キプロス島の領有権をめぐって、ヴェネチア王国とトルコが敵対する。海軍同士が敵対し、ヴェネチア側にはムーア人の将軍「オセロ」が就いた。

そのオセロに恋をして結婚した白人女性がデズデモーナ。貴族の娘で父親はムーア人との結婚には反対していた。ムーア人とは主にモロッコ出身で欧州にいるイスラム教のアフリカ系のこと。平たく言うと白人と黒人が結婚したことになる。

ところが成功者を恨む人々は多くいて、デズデモーナが浮気をしているとオセロに告げ口があった。フェイクニュースだ。ところが単純頭脳のオセロは真に受けてしまい、デズデモーナを殺してしまう。

そしてシェークスピアでは多いが、悲劇が起きた後に、真相がわかり、次なる悲劇が起きる。


この映画は、手が込んでいて、冒頭でオセロの葬儀が始まる。最初からシェークスピア劇から離れていく。オーソン・ウェルズが潔癖症だったのか撮影に5年もかかったそうだ。


戯曲が完成したのは1604年のこと。シェークスピア40歳のときだ。つまり、ヴェネチアとトルコの戦いは、同時代のことだった。史劇と言われる『ジュリアス・シーザー』や『ヘンリー5世』とは異なる。

そして、その戦いでヴェネチアは敗退し、キプロスはトルコのものとなる。

つまりかなり示唆的な演劇でもあるわけだ。

それではシェークスピア劇を愉しんでいた英国人は何を愉しんだろうか。

仮説:シェークスピア劇の大半は英国が舞台ではない。イタリアもよく舞台に使われている。英国人から見ると、ヴェネチア人は色が黒くても白くても関係ないのかもしれない。テニスの判定と同じだ。一等国が二等国を上から目線で眺める図だ。

あの大応援団が本質な大学

2023-08-24 00:00:41 | スポーツ
夏の甲子園の高校野球で慶応高校が優勝したが、最大の話題は選手ではなく、品のない応援を続けていた応援団のようだ。基本は大学野球の応援と同じスタイルのようだが、大学の場合は相手チームにも応援団があるため、度を過ごした応援はしないが、今回は寄ってたかって相手チームの選手を虐めているように見える。

急遽、甲子園に応援に集まったOBというのが、単なる大学卒業生なのか、幼稚舎(小学校)、普通部(中学)、慶応高校を経た純粋三田会なのかわからないが、三田会の中でも大学から慶応というのはアウトサイダーといわれるので、そういう人たちも来ているのかなと興味がある。

高校野球は107年ぶりの優勝というので羽目を外すのはわからないでもないが、107年前にあなたが優勝したわけじゃないでしょ、という感じだ。応援歌の中には「陸の王者」というフレーズがあるが、スポーツ関連で大学1位になっているのはほとんどないだろう。

ちなみに、大学創設者の福沢諭吉は大変な人物で、彼こそ日本の大学王にふさわしいのは間違いないのだが、大学のHPを見ると、建学の精神が書かれていて、

「気品の泉源」
「智徳の模索」
「独立自尊」

と並んでいる。応援団のやっていることとは正反対。甲子園に応援に行った人物から卒業証書を返納してもらった方がいい。

これを機に甲子園大会を廃止してしまえばもっといいかもしれない。社会が必要としているのはスポーツ選手ではなく優秀な頭脳なのだけど・・

日の名残り(カズオ・イシグロ/土屋政雄訳)

2023-08-23 00:00:36 | 書評
先日、ゴルフ場での同伴者との話題で、カズオ・イシグロの『日の名残り』の小説と映画のことになった。私以外の3人はこの小説を読みと映画(主演:アンソニー・ホプキンス)を観ているそうで、ちょっとしたイシグロハラスメント(イシハラ?)を受けた。

彼の著書は2冊読んでいて、「浮世の画家」と「わたしを離さないで」。この「日の名残り」は既読の2冊の間に書かれているが、英国貴族の大邸宅の執事の回想録となっている。



英国貴族が没落し、邸宅を買ったのが米国人で、引き継いだ執事に対し、「旅行に行くので、君も車を貸すから英国の国内旅行に行きたまえ」ということで高級車を貸してくれる。

そして数日間のミニ旅行に出て、すべてが没落していく英国を理解していく。

そして、執事は数十年前にお互いに好意を持っていたにもかかわらず、恋愛に至らなかった女中頭と再会し、昔話を語り合い、そして別れる。

すべて、過去からの時間は現在まで流れ、思い返すことばかりのわけだ。

1989年の出版ということは35歳の時の作品で、少し驚く。

給電スタンドは増えるのだろうか

2023-08-22 00:00:30 | マーケティング
自動車の定期点検でカーディーラーに行って、ガラガラの店内でセールスマンの方と雑談したのだが、ガソリンの高騰が本当に心配だそうだ。
要するに自動車メーカーは付加価値を上げるために車の大型化をはかる一方で、ユーザーは小型化を考えているということ。しばらく前まではエンジンの燃費改善に進んでいたが、もう限界感があるようだ。

それで話は、電気自動車のことになる。そのディーラーでも給電はできるが、電気を販売する行為は認められていないので、電気代は仕入れ原価ではなく店の経費になり、給電スペースを一定時間使った占有料として売り上げを立てているそうだ。

そもそも、ガソリンスタンドは世界中どこでも石油会社が精製したガソリンなどの石油製品をユーザーに販売しているわけだ。最終販売は特約店とか代理店という形態だが、すべて製品の売買になっていて、1リッター〇〇〇円というように買った数量に単価をかけるだけだ。ガソリン税も同様にリッター当たりの単価が決められている。

ガソリンスタンドの滞在時間とか給油用の計量器に使用料金を別に払うわけではない。

となると、電気を売っている会社(つまり東電パートナーズとかエネオス電気とか)が給電スタンドを作るのかと言えば、特に積極的のようには見えない。東電はそもそも無気力だし、石油会社系の発電は、原油精製で余ってしまう重油の処分に困っているからで、ガソリンの売り上げが減れば原油処理量も下がり、重油の生産量も減るはずなので本気にはならないだろう。

また、おそらく電気自動車が行き渡るようになれば、半分ぐらいの車は自宅でコンセントから給電すると思われるので、そもそもスタンドの数は少なくてもいい。ただし、セルフスタンドなら5分程度で給油が終わるが電気はもっと時間がかかる。つまり給油中に台数が増加する。一方、ガソリンスタンドの設備は大型の地下タンクが必要だが、電気スタンドはほぼ何もいらない。

一方、ガソリンや軽油からの税収は約3兆円/年だが、ガソリンから電気に変わると税収がなくなる。では、代わりに電気の購入者から徴収するにしても、電気はリッターで買うわけには行かないし、太陽光発電で自宅で発電している電器をチャージしている人から徴税するは難しいだろう。


そもそも方向性がわからない国内のEV市場だが、出遅れてしまったある巨大自動車会社の顔色見ながら行政を行っていたからだろうか。創業家一家が社長に座るという世界の大企業にはあり得ない構造から脱却したものの、見当違いの方向に進まないことを祈りたい。

カフカ的「ぜんざい公社」など

2023-08-21 00:00:28 | 落語
図書館からオンラインでオーディアブックが借りられ、その中の落語を聴き続けている。あまり落語には詳しくないが、聴いていると、まったく初めてのものと、かつて聴いたことがある筋の演目があることに気が付く。いつ聴いたのかは覚えていない。

ただ、演目の長さとしては、20分尺、40分尺、60分尺とあるのがわかってきた。短いのは前座噺、中ぐらいはお中入り前で最後に真打が長いのをやるということのようだ。それで短い演目ばかり聴いていると、最後には長いのばかり残りそうなので、そろそろ長短まぜながら聴こうかなと思っている。

今回は短めの三演目。『ぜんざい公社』(柳家権太楼)、『締め込み』『真田小僧』(柳家さん喬)。

『ぜんざい公社』だが、まず、「ぜんざい」というのは、小豆を砂糖で煮込んだもので、餅が入っている。いわゆる「おしるこ」である。

ちょっとしたことで、久しぶりに『ぜんざい』を食べることになり、最近開業した、政府経営のぜんざい屋に行くのだが、簡単には食べられない。まず、最初の窓口で本人確認が必要だ。名前や生年月日の確認などだ。そして次の窓口に回させる。そこでいくつかの質問を浴び、回答すると、次の窓口へ回される。そして次の課題が与えられ、さらに別の窓口へ行くのだが、公社といえば江戸時代の作ではない。役所の窓口で盥回しにされ、いつぜんざいを口にできるか、遠い先のように思える。役所の仕事のやり方を風刺したものだが、調べると三代目桂文三の作ということで、1900年頃に原型があったようだ。

聴いてみて何か不安な気持ちになるので、よく考えるとカフカの『城』と似ている。まさかカフカからの転作ではないかと思い『城』を調べると、カフカの没後、焼き捨てるように遺言で書かれていた原稿の中にあって、1926年に出版されている。カフカの方が真似をしたのかもしれない。

『締め込み』コソ泥の噺だ。長屋住まいの夫婦の家にコソ泥が入ったのだが、短時間の外出らしい。大急ぎで風呂敷にタンスの中から衣類を詰め込んでずらかろうとした時に亭主が帰ってくる。あわてて風呂敷をそのままにし、床下に隠れるのだが、亭主は女房が男を作り、衣類を売り払って金をつくってどこかに逐電しようとしたと勘違いする。

そこに湯屋から帰ってきた女房が現れ、夫婦げんかが始まり、離婚話になり本物の喧嘩となって熱い湯の入った薬缶が投げられ、目標を外して熱湯が床下に流れ込む。ついにコソ泥が姿を現し、夫婦げんかの中を取り持ち、宴会が始まり、コソ泥はすっかり寝込んでしまう。

少し調べると、江戸時代の泥棒だが、長屋などの不用心の建物に出来心で入るコソ泥は奉行所で「叩き」に処せられることが多かったそうだ。一方、玄関に心張棒が入った家に入るのは計画性があるということで首が飛ぶこともあったそうだ。

『真田小僧』悪ガキの噺。小遣いに困っている悪ガキが、母親と父親の両方から「不倫話」をネタに小遣いを巻き上げる。真田という演目は知将真田幸村にあやかるようだ。

じゃんけん広場

2023-08-20 00:00:47 | 市民A
「じゃんけん広場」とか「かげふみ広場」とか「かくれんぼ広場」というこどもの遊びにちなんだ名称の広場がある場所。横浜市営地下鉄の北山田(きたやまた)駅の近くにある。

もっとメジャーな施設を紹介したいが、なにしろ暑いのでウロウロできない。通常の行動半径からわずかにずれた範囲までを探索。



ごく普通の公園で、こどもたちがじゃんけんしているわけではない(はず)。公園には暑いので誰もいない。見た感じは普通の公園なのだが、モニュメントがある。



チョキとグーはモニュメントがある。パーがないと思っていたら、地面の上に描かれていた。天井に描くのは天井画だが足元に描くのは何と呼ぶのかな。床絵かな。



なぜ、チョキが立体像なのにパーが床絵なのか、考えてみたが、よくわからない。パーが5本の立像の指だと経年劣化を起し、折れた時に、893の指詰みたいな感じだからだろうか。

ところで、チョキだが、一般的には「ピースサイン」と呼ばれるが、以前は「Vサイン」とも言われていた。指の形がVだからが。VはヴィクトリーのVだ。

ヴィクトリーとピースというのは日本では反対の意味になるが、やはり平和を追求するなら勝利しかないのだろうか。難しい問題だ。

それとピースサインの画像から指紋を盗まれることがあるそうだ。公園のチョキには指紋はない。

廃語になった「押し売り」

2023-08-19 00:00:10 | しょうぎ
廃語になった「押し売り」
先日、某所で小学生向きに「詰将棋で強くなろう教室」を開いた。詳細は秘密だが、基本的な15種類の詰手順の単純な例題の後、複合問題に取り組んだ。

その第14手順に選んだ手筋が「押し売り」。取らない捨駒を無理やり押し付ける手順で、以下の例題を使った。



ところが、小学生10名のうち「本物の押し売り」を知っている子は一人もいなかった。イメージがわかないようだ。彼らの両親は基本的に欲しい物は「ポチ買い」のようだ。誰かが物を売るという行為がわからないようだ。もちろん、ネット通販で要らないものを買ったというのはあるそうだが、それは「押し売り」ではないだろう。

まあ消費者庁のおかげで「押し売り」が犯罪の一種ということになったことが大きいのだろうが、それでは詰手筋の「押し売り」は呼び方を変えなければならないだろう。

不同意販売ということでいいのかな。最近、「不同意」という言葉がよく登場するが。


さて8月5日出題作の解答。








今週の問題。



解ったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

イヴの総て(1950年 映画)

2023-08-18 00:00:30 | 映画・演劇・Video
映画は、新進舞台女優イヴ(演:アン・バクスター)の表彰式から始まる。演劇界の新人として華々しい門出のはずなのだが、彼女の関係者の表情は暗い。何か割り切れない雰囲気が漂い、時間は半年ほど前に遡る。

大スターであるマーゴ(演:ベティ・ディヴィス)のファンという女性(イヴ)が現れる。彼女の悲しい身の上を知ったマーゴは付き人として採用する。しかし、イヴはマーゴの舞台を見て演技力を勉強していく。

そして、秘かに計画を実行してゆく。複数の男性とつかず離れずの関係を築き、マーゴの代役として出演することになり、有望新人として名前を知られるようになった。

その後、映画はねじ曲がっていくのだが脚本が非常にうまくできていて、イヴとマーゴのどちらの味方なのか観客に迫ってくる。

なお、まったくの端役でマリリン・モンローが出演する。モンローの躍進が始まったのは1951年。まるで、この映画の主役のようだ。現実は恐ろしい。

ところで、1950年時点の三人の女優の年齢だが、ベティ・デイヴィス42歳、アン・バクスター27歳、マリリン・モンロー24歳だ。そして奇妙なことに没年は、この逆順になる。

原作が書かれたのは1946年。第二次大戦後1年だ。こういう華やかな映画を見ると、「第二次世界大戦の唯一の勝者は米国」ということを強く感じてしまう。

三題の演目(長短・短命・代書屋)

2023-08-17 00:00:21 | 落語
極熱の次は台風の大風・大雨と外出には不向きな日が続き、オーディオブックになった落語を三題聴く。

『長短(演:柳家権太楼)』:気が長い長さんと気短な短七はこどもの頃から親友なのだが、二人で話を交わすと、なかなか前に進まない。いつの頃の話で、結果としてどういうことになるのかといえば煙草の火が袖口から入った時も。話し終わるまで時間がかかる。

『代書屋』(演:柳家権太楼):無学の男が、就職のために履歴書の作成のため、代書屋をおとずれて珍問答を繰り広げる。パターンは色々あるが住所とか忘れたら困ることが、なかなか思い出せない。過去に何度も聞いている。

『短命』(演:柳家さん喬):近所に住む美人妻は婿が三人続けて早死にしている。なにが原因かと周りは勘ぐるのだが、どうも美人過ぎる妻を持つと早死にするそうだ。原因は床入り回数の激増にあるらしい。比べて、主人公と妻との関係は疎遠らしく、美女でもない。それで、自分は長命を授かりホットするという顛末だ。


夜眠る前に短い落語を聴くというのが人間らしいが、最近、変な夢を見ることがある。