『そらのレストラン』(2019年 映画)

2021-06-30 00:00:12 | 映画・演劇・Video
大泉洋の北海道ヒューマンドラマの第三作。北海道と言っても『探偵はBARにいる』シリーズはカウント外だ。あれは暴力映画だ。

冒頭の吹雪のシーンで、酪農家の大泉洋の経営している牛舎の近くで、寒さで瀕死の女性(演:本上まなみ)が倒れ込んでいた。なにはともかく救出し。暖かい牛乳を飲ませると、海の見える北海道の牧場で働きたいと言い出し、そのまま意識を失ってしまう。

押しかけ型の映画としては夏目雅子主演の『時代屋の女房』があるが、あの映画は「夏目雅子のための映画」ということで、最初から最後まで、また彼女が失踪したあとも色濃く主演感が漂っている。最後は帰ってくるし。

また瀕死の人間を救出するカテゴリーではイタリア映画『ひまわり』がある。男女の差はあるが、瀕死の側の男性(マストロヤンニ)は最後まで重要人物だ。

ということで、本上まなみは、何処からきて、何処へ行くのだろうと、気になってしまっていた。そもそも彼女は「悪い女」を演じない。いつも良い子の側で出演する。本作では暗い過去を引きずるのだろうか。

そして、舞台は北海道のせたな町。函館の北の方で西側が海に面している。漁業と農業の町。ふるさと納税では、何度もお世話になっている。この映画の本質からはどんどんずれていくが、せたな町の海産物と千歳市の南にある安平町のチーズは絶品だ。是非、注文していただきたい。ちなみにせたな町は「さとふる」、安平町は「ふるさとチョイス」で発注できる。

さらにややこしいのは、ふるさと納税では「チーズは安平町」だが、本映画では「せたな町のチーズ」ということになる。

表のストーリーは地元の農漁業者による地産地消の素材と都会から移住した若者が意気投合して、新しいレストランを作ろうという企画が始まる。

一方、料理の要ともなるチーズは、ある老職人が病魔と闘いながら作っていた。大泉洋はチーズ老職人の勧めで、自営牧場の牛乳でチーズ作りを研究するが、10年経っても満足いくチーズができないと思っていた。

この後、ストーリーにはさざ波が立ち始め、予想通り大嵐にはならず、無事レストランが開店し、大泉洋のチーズが町内関係者たちに振舞われることになる。

ところが、本上まなみの「押しかけ」の事情があいまいなままになる。隣の国から偽装漂流船でたどり着いたスパイではないのだろうから、もう少し解決策を示してほしかったのだが、もしかするとヒューマンドラマ第四作は、彼女の失踪から始まるのかもしれない。

「赤い靴」関係者から

2021-06-29 00:00:47 | 赤い靴を追いかけて
2006年.今から15年前だが、当ブログで『赤い靴を追いかけて』というシリーズを書いた。トップページの右側のカテゴリーにまとめてある。かなり長い間、各地を調べてまとめたもので、最近はなかなかそういうパワーが足りなくなっている。

童謡の「赤い靴はいてた女の子(作詞:野口雨情)」には実際のモデルがいて、実際には外国に行かず日本で亡くなったという事実が、北海道のあるジャーナリストの調査でわかっていた。その調査の追加のような形で周辺状況を調べ、9歳で亡くなったとされる岩崎きみの足跡を推測していった内容で書いた。

前述の北海道のジャーナリストがこのテーマに取り掛かったきっかけは、一通の手紙であった。岩崎きみの異父妹である岡そのという人物が書いた「母親から聞いた岩崎きみのこと」である。母親は長女(岩崎きみ)を神父に養女として譲り、神父は米国に連れて行ったというものだった。しかし、後日、ジャーナリストの調査により事実は異なっていたことがわかった。

今回、唯一の証人だった岡そのさんの孫の方からメールをいただいた。

その方は母親(つまり岡そのさんの娘)から、赤い靴関係の話を色々聞かされたが、興味がなかったこともあり、今、後悔している。ブログを読んで感動をいただいたということ。

うれしい。

そろそろ、何か書こうかな。

ふしぎなことば ことばのふしぎ(池上嘉彦著:言語学)

2021-06-28 00:51:45 | 市民A
ちくまプリマ―ブックの中の1冊。どうも中学生向きということになっているそうだ。「そこんとこよくわからない」ということかもしれない。




日本語の不思議、英語の不思議など表現と実体が異なる表現はよくある。「湯を沸かす」とか「辞書を引く」とか無数にある。そういう話を山盛りにしたり、語源がわかる言葉は、きわめて少ないということだそうだ。

実は、読み終わっても、「ことばの不思議」のことがすべてわかったわけではない。むしろ、すべてわからないという方に近いかもしれない。

私見として感じたことだが、「ことば」が発生したあと、少し変異して、生き残る言葉と死滅する言葉にわかれるのだろう。そして生き残った方は少しずつ変異を続けるのだろう。

いわば、ウイルスと似ていると思える。

『船と主機関』日本郵船歴史博物館にて

2021-06-27 00:00:35 | 美術館・博物館・工芸品
来週で終わりの予定だった『船と主機関』展、慌てていったものの、再開まもなくということで9月まで延長されることになった。

横浜の桜木町から山下公園の間には、いくつもの歴史的建造物があって、この日本郵船歴史博物館もその一つ。アメリカと日本を結ぶ旅客船は、日本郵船を中心に横浜の大桟橋を起点としていた。南方方面には、横浜から神戸、そして上海という航路がメインだった。



その意味では、隣にある横浜税関も見事な建物で、皇室の方々がご外遊の際は税関内のVIPルームで出港前の最後の時間を過ごされたそうだ。そしてマッカーサー将軍が日本に君臨した時に、厚木飛行場から真っ先に向かったのが、この税関の建物。ここが最初の指令室になった。そして宿舎はホテル・ニュー・グランド。たちまち準備が整ったところをみると、敗戦よりずっと前に占領プランができていたのだろう。

その他、横浜正金銀行本店とか神奈川県庁とかいろいろあるが、ニュー・グランドは建て替えになっている。そしてこの日本郵船ビルもついに再開発が決まった。見納めにもなる。

そして、雰囲気をぶち壊している新しいビルが二つある。神奈川県警、横浜市役所だ。



さて、船の主機関と言えば、古くは人力のガレー船。地中海をめぐってガレー船が最強の軍艦だった。船のこぎ手は敵の捕虜。トルコとローマの戦いが続いた。

そして蒸気機関が船に搭載されたのがちょうど19世紀の中頃。ペリーが4隻の軍艦で脅迫外交をしにきた。実際には2隻はただの帆船で2隻が気帆船。当時は、プロペラ(スクリュー)ではなく、船の両サイドに回転型の大きな水車がついていて、それを回して推進。全部を気帆船とみせかけるため、帆船2隻は海中で別の気帆船2隻とロープでつなぎ帆を隠していたそうだ。騙された方が間抜けだ。

そして、プロペラは船の船尾に付けられ、燃料は石炭から重油に変わった。

実は船会社の経済学は構成が簡単で、売り上げは船の運賃。経費は大きく4種類で、船員費(人件費)、船体費(建造費と借入金利)、燃料費、本社経費。全部引き算で+なら黒字、-なら赤字。燃料費以外は固定費で、燃料費は全体経費の20~30%で、航海した分だけかかる変動費。

一方で、燃料と燃費の関係は複雑だ(実際には、はっきりと解けない)。というのも船がスピードを上げると燃料はその3乗に比例するという公式がある。つまり2倍の速度を出すには8倍の燃料が必要だが、その代わり運べる荷物量は2倍(つまり売り上げが2倍)になるということになる。速度を1/2にすると船腹は2倍必要だが燃料は1/8で良い。

要するに簡単には解けない。

現実的に、燃費を圧迫する要素はいくつかあるが、代表的なのは船体の設計。クルマでいえば空力。船体の側面のカーブによって海水との抵抗を減らせる。さらに海水よりも抵抗があるのが、甲板上に船の居住区といった建造物。つまり空気抵抗が大きいわけだが、これも簡単には小さくできない。ほぼ無人船であれば居住区はいらない。

そして、プロペラの問題。プロペラと船体との間には数メートルの間隔があるがそこにプロペラの回転と反対方向の小さな渦ができる。これが推進力のロスを招いている。たとえばプロペラと船体との狭い場所に逆回転する小型のプロペラをとりつける等の対策はある。


もっと合理的に、抵抗を減らす方法というのがあるそうだ。潜水艦。空気抵抗はゼロだ。ただ、潜水艦に乗りたい船員を集めるのが至難の業という感じがある。それにレーダーに映らないので、時々浮上する時に海面上の何かの物体に衝突しないように注意が必要。

将棋ペン倶楽部通信最新号

2021-06-25 18:15:07 | しょうぎ
将棋ペンクラブの会員誌が届く。将棋に関する評論、小説、俳句その他の文筆集だ。

ただ、昨今は、プロ作家が将棋について本格的な小説を書く時代になったので、対抗するのは大変だ。



そういうこともあったのだろうが、前回は内容についてのアンケートがあり、少し書いたのだが、今回アンケート結果発表ということで、「評判が良かった」ということだそうだ?個人的には、過去のアマ強豪の奮闘記とか生活感が滲むような記述は、あまり好みではなく、そういう話は、現代からの視線で書かれた方が、親近感があるように思う。当時のファクトを、その現場に行って語ったり、棋譜ではなく道場跡地の写真とか。

実は、過去に少し通っていた道場がいくつもあり、その大半は消滅。残るのは一カ所だけなのだが、その一カ所ももうすぐ・・多くはゴミゴミした場所にあった道場の跡地捜索の旅に出るのは、今のところリスクとのバランスが悪いかな。


さて、6月12日の出題の解答。






合駒選択と、不成による打歩詰回避。不成のところ、成ってしまっても、もう一度王手をすると飛車が手に入り詰むのだが、3回やってしまうと千日手が確定する。指将棋なら引き分けだが、詰将棋は負けになる。大道詰将棋なら大敗ということ。


今週の問題。



飛車の成、不成の非限定はあるが、直すと大分醜い図になるので、そのままにする。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ、正誤判定します。

オリンピックシート全滅を免れる

2021-06-25 00:00:19 | スポーツ
五輪の観客席のシート数について、発表になった。50%または10000席の少ない方ということ。削られるシートは全体の20%程度となったようだが、結局、大規模会場で行われる競技が削られることになる。国立の開閉会式、日産スタジアムのサッカー、味スタのラグビーとか。国立なんて、大騒ぎして、建て替えの必要なかったということになる。

ところが、現在までキープしているチケットは5種目あったのだが、うち4種目は抽選での削減対象になっている。裏を返せば、1種目は確定したことになる。ただし、同一都道府県ではないのが懸念なのだが。

残る4種目だが、いわゆる日産スタジアム、いわゆるハマスタ、いわゆる味スタが2回となる。定員は72000人、35000人、48000人。既販売分が何パーセントあるか不明だが、仮に席数の50%が発売しているとすると、それぞれの当選確率は、10/36 10/17.5 10/24が2回となる。これらを計算すると、1.68枚となる。無抽選の1枚と合わせると2.68枚だ。


ところで、チケット当選後の手続きだが、紙プリントを推薦している。QRコード読み取りで入場させるそうだ。プリンターがない人は、スマホにダウンロードして画面表示でもいいらしいのだが、落とし穴があるそうだ。

「このチケットあたりました」のようなSNSやブログ記事を書いて、チケットの画像を公開すると、その画像上のQRコードを他人に取り込まれてしまい、それをスマホ上に記憶しておいて悪用入場されてしまうと、正規の購入者が入場時にチケットを見せると、「既に入場されている」と犯罪者扱いされることになる。最後まで油断できない。

もはや、FORMULAR E の時代へ

2021-06-24 00:00:43 | スポーツ
自動車レースと言えば、F1のはずだった。あるいはパリダカール、あるいはルマン。

ところが、それらと同等のレースが「FORMULAR E」。



JAFの情報誌、『JAFmate』7月号に、最新情報が掲載されていた。記事を転載するのはまずいので、見出しだけ紹介してみるが、今シーズンは世界8都市で15レース、F1とそっくりなマシンによるレースが行われている。サウジ、イタリア、スペイン、モナコ、メキシコ、アメリカ、イギリス、ドイツ。モナコだけが1レースで、他は2レースずつ行われる。モナコはF1とほぼ同じ市街地コース。



もう一つ、「EXTREME E」。これは、電動車のアピールと各国なコンディションでの優秀性を訴えるためチャレンジャブルの場所で行われる。
サウジアラビア(砂漠)、セネガル(ダカール)(海洋)、グリーンランド(北極圏)、ブラジル(アマゾン)、アルゼンチン(氷河)。各地で2レースずつの全10レース。


日本では過酷な方のレースにふさわしい場所は思いつかないが、サーキットはいくつかあるのだから、「FORMULAR E」の方は何とかした方がいい。自動車先進国かと思っていたら、ガソリンエンジン先進国だったに過ぎなかったのだろうか。

ところで、日産リーフに乗っている人に聞いたところ、「チャンスがあれば、すぐに充電」しているそうだ。何しろ、急速充電器が少ない。普通充電だとフルチャージまで半日近くかかるので、基本は自宅車庫のある人でないと無理。工事をして設置しても、太陽光発電と直結するには昼間に車庫に車がないといけない。昼に家にいて夜に働きに行く人なら、設置の価値もある。

急速充電器の数は実は減少傾向にあるということらしく、ショッピングモールなどもそのモールに来るのに使う分だけ1~2時間で充電できるようにしているだけで、たまに急速充電器があるモールでは、その周りの駐車スペースに空き待ちのドライバーが待機しているそうだ。また、3台並んでいても、うち2台は故障中という紙が貼られているとか。

ガソリンスタンド的な施設が必要だが、一体、だれが何のために貴重な土地を提供するのだろうか。急速充電とはいえ、車の滞留時間は普通のガソリンスタンドの10倍といった時間だし、広い駐車場が必要だし、物販が期待できるわけでもないし、屋根だって必要だ。絶対に運営者は儲からない。

ある程度インフラができないと、前に進まないだろうし、電気自動車がテイクオフするまでは国営給電所が必要なのだろうと思う。

そして、T自動車。日本最大企業だろうが、すでに大きく遅れてしまった。国内では国交省と経産省を手玉に取りながら電動化を遅らせているつもりだろうが、世界の潮流に乗れなければいずれ行き詰まることになる。

哀愁(1940年 映画)

2021-06-23 00:00:01 | 映画・演劇・Video
ヴィヴィアン・リーとロバート・テーラー主演のアメリカ映画。しかし、舞台はロンドン、ウォーターヒル橋である。すべてがこの橋の上で始まり、橋の上で終わる。

時は、1939年英国がドイツに宣戦布告し欧州全体が戦いの場になった。ロンドンも空襲の被害を受けることになり、踊り子のマイラ(ヴィヴィアン・リー)と英国軍将校のロイ(ロバート・テーラー)は偶然にも地下鉄の駅に避難し、火事のように燃え盛る恋愛が始まり、数日のうちに婚約。しかし、結婚直前に、軍務により急にフランスの戦場に将校は向かう。

しばらくして、戦死の報が届くが、これが誤報だった。その誤報のためにマイラの人生は大きく崩れてゆき、ついに街娼というところに落ち着く。

そして、戦争は終わり、本当は生きていたロイは帰還兵士を物色中だったマイラと出くわす。

そして、再び火事の続きがはじまり、ロイの故郷のスコットランドの大邸宅に向かったのだが、貴族の生活になじめそうもなく、マイラは逃げ出してしまう。紀州のドンファン妻のようには考えなかったわけだ。

そして、多くのアメリカ映画のようにハッピーエンドで終わるのではなく、悲劇に傾いていく。

何しろ、映画の中ではすぐに連合国の勝利となったが、実際の戦争はまだ5年も続いたわけだ。

『風と共に去りぬ』では、歴史の中を強く生き抜く女性を演じたリーだが、本映画では弱い女性を演じる。この時、リーは26歳。9年後には『欲望という名の電車』という複雑な映画でアカデミー主演女優賞を受賞。

天は美貌と演技力という二物を彼女に与えたが、長寿は与えなかった。53歳にして結核で亡くなる。ロバート・テーラーは2歳年上であり、リーの2年後に亡くなる。二人ともタバコの吸い過ぎだろうか。

江戸がえりドレス?

2021-06-22 00:00:15 | スポーツ
ついに五輪の開催が決まり、入場者数の上限も発表になった。少し前の情報では、販売されたチケットは席数の42%ということのようだ。大分前から、チケットの払い戻しは行われているので、結局、抽選で入手した人のほとんどは、チケットキープを続けていて、観に行くつもりということなのだろう。

海外から見ると、

当初は、感染率も低くうまくやっている国と思われていた。
しかし、日が経つにつれ、あれほどたくさんある病院のほとんどが役に立たないことが見えてきた。
しかも、流行のさなかに観光キャンペーンをしたり、ワクチンや薬の認可は遅れに遅れ、ワクチン開発に予算を付けようと国が言い出した頃には、多くの大手製薬会社は国の支援がないためとしてワクチンも治療薬の開発も撤退宣言していた。方針を決めるだけで1年以上かかるし、まずやらないだろう。
五輪があるというのに、本気で感染症対策をしているようにも見えない。

外国人からみた最大の謎は、何で、こういう政府が続いているのに、選挙での投票率が最低なのだろうか?という疑問で、やはり、いい加減な国民なのだろう、という確信を持たれただろうか。


とはいえ、五輪の準備は着実に進んでいて、以前から問題と思われていたボランティアのユニフォーム問題は、修正されることはなかった。



表彰式でのメダル授与の時にメダルを運ぶ方々のユニフォームだが、青っぽい上下である。

色落ちしたジーンズの色というか、ちょっと貧乏くさい。水吞百姓の仕事着に見える。あるいは柔道着にも見えるが、刑務所っぽいとか、形が半島っぽいとか散々な評である。

日本らしさを表現したと言われるが、その根拠は富士山を描いた青色のイメージだそうだ。つまり葛飾北斎の富士山の浮世絵なのだろう。ところが残念なことに、あの深みのある藍色は「べろ藍」と呼ばれていて、英語ではベルリン・ブルーということでドイツで発明され、はるぼるオランダ船で長崎に運ばれ、北斎がそれを購入して使ったもので、日本固有の色ではない。

実は、私の初見の感想は「忍者服」。忍者と言えば、黒とか赤(くの一)のイメージだが、目立つ色や形では忍者にならない。風景に溶け込むためには日本最大の職業である百姓の衣装でなければならないし、武器も農具に似せた鎖鎌などが常備品になる。



もう一つ、都内での外国人用のガイドを務めるボランティアのユニフォームは、どうみても追跡から逃れる旅を続ける素浪人。あるいは桜田門外の変の時の井伊家の侍。雪の降る日に陣笠と合羽を着ていて応戦に失敗した。忍者対浪人。

鯛が安いようだ。

2021-06-21 00:00:46 | あじ
コロナ禍で、高級魚の価格が下がっているようで、特に養殖が8割といわれる真鯛もそうらしい。養殖鯛の場合、天然鯛と異なり、安いからといって漁に出ないというわけにはいかない。売れなければ、1キロの鯛が2キロになり、それ以上だと身がスカスカになるので売れない。経営的には悲惨なことになる。

ちなみに養殖魚の中で、トン数ではブリについで2位だそうだが、尾数では一位だそうだ。庶民が口にするのは、かぶと煮とかあら煮だが、刺身や鍋料理で売れないと、お頭もあらも供給されない。


ということで、行きつけのゴルフ場のランチメニューがすっかり変わっていて、『鯛茶漬けセット』が現れた。かなり厚切りの刺身がふんだんに使われている。ふぐもそうだが、透けるほど薄く切るのを「良し」とするらしいが、厚切りの方がいいに決まっている。

午前中のプレーは、テニス肘の痛みと妥協しながらで、壊滅的であったのだが、鯛の薬用効果により、痛みが軽減し、午後は人間的なスコアに戻った。低周波治療器よりは効果があるように思える。

中華街のこと

2021-06-20 00:00:10 | 美術館・博物館・工芸品
現在、中華街の近くにある小型の博物館で『中華街の160年』という特別展が開催されている。ぐずぐずしていると終わってしまうため、時期を見ていってみようと思っているが、事前に調べていると、結局、ペリーが日本にきて何年かして、日本が5つの港を開港してから外国人が横浜に居住し、その中には中国人がいたということが、ことの起こりのようだ。当時の中国は「清国」。



ということで、当初は日本人と欧米人と、少数の中国人の町だったそうで、その後関東大震災まではその流れだったそうだ。そして大震災で欧米人が神戸に避難したり、母国に帰ったりして、中国人ばかりになっていく。

そして終戦。今の中華街の一帯は巨大闇市になっていたようだ。物資は戦勝国の中華民国から大量に流入し、横浜は貧乏な日本人と金持ちの中国人が集まる街になったが、物資が潤沢になってくると、怪しすぎる町は怖くて日本人が近寄れなくなる。それこそ闇市となる。

そして朝鮮戦争で神奈川県が後方基地と化す中で、中華街は徐々に地に墜ちていき、戦争が停戦となり、米兵もいなくなる。

その後、復興計画が始まったわけだ。

よく、神戸南京町と横浜中華街の違いとして、横浜の場合は地区内に経営者や従業員が住んでいると言われていて、中区の中国人は6000人もいることになっている(ところが、中区には15000人もの外国人が住んでいるそうで、中国人以外が6割(9000人)もいるそうだ。)

実は、もっと詳しい話を知りたいので行ってみたいと思っているわけだ。とりあえずツイッター上では中華街各店舗のお土産用の紙袋を見ることができる。

スマホ詰パラでは玉方手が自動応手!

2021-06-19 00:00:22 | しょうぎ
スマホ詰パラは、その手軽さからか(無料だし)、相当数の解答者を得ている。その一人がわたしだが、常々思っているのは、なぜ解答者の選択肢が攻方ばかりなのだろうかということ。

作者の中には、合駒選択とか玉型飛車不成といったものが得意な方もいるだろう。7手詰なら4手を答えれば正解となる。実際には7手全部を答えなければならない。

上記、中合などの後手の狙いがある場合は、後手番も手を選ぶことができるようになったら良いと思う。

さて、6月12日出題作の解答。








今週の問題。



わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ正誤判定します。

ひとかげ(よしもとばなな著 小説)

2021-06-18 00:00:47 | 書評
『ひとかげ』は2006年に刊行されたが、1993年に自己の書いた『とかげ』をリライトしたもの。リライトは普通は細部の改定をするのが常道で、特に川端康成は『雪国』を数回直したりしている。



リライトの結果、文庫本40ページが70ページに増えていることからわかるように、原作でもやっとしている部分に合理性を増やすために細かくストーリーを書き込んだというところだろう。気功師の彼女と、児童精神病クリニックに勤める彼の心の中のピンポン大会である。

二人とも子供時代に深い心の傷を負っていて、どこか息苦しいところがあるのだが、突然に「成田山にタクシーで行こう」ということになり、急速に打ち解けていく。

私は千葉県出身なので、金満成田山に恩恵があるということが、非現実的に思えるのだが、行くなら鎌倉の材木座海岸とか

小説の中で、人を呪って殺す話が登場する。「呪い」というほどではないが、不愉快なことを行った時に「呪ってやる」と思うと、次々にあっち側に送ってしまうことに気づき、そもそも人を呪ってはいけないと決めたことを思い出す。

それでも夜は明ける(2013年 映画)

2021-06-17 00:00:07 | 映画・演劇・Video
奴隷映画だ。ある意味、1841年に、奴隷ではない黒人が誘拐され奴隷として首都ワシントンから南部の奴隷州に売り渡されたわけだ。被害者はノーサップ氏。彼はなんとか12年の忍耐の末、自分が自由黒人であったことが明らかになり救出されたが、ずっと奴隷の身分だった彼の奴隷仲間は置き去りになった。

ノーサップ氏はその後、奴隷体験記を書き、それが本映画のシナリオになった。監督は、スティーブ・マックィーン。

その頃の奴隷の歴史は、南部奴隷州と北部自由州と中立州にわかれていて、北部自由州には、ノーサップ氏のような自由黒人と南部からの逃亡奴隷がいた。北部州は奴隷制度はなかったが、ただし南部の地主たちの奴隷所有権は認めていて、逃亡奴隷を南部州の組織が北部州で見つけた場合、南部への連行は認めていた。まあ、ひどい国だ。

その後、1861年から4年間の南北戦争で50万人が死亡し、その結果、奴隷制度は廃止になった。といっても公民権を認めたわけではなく黒人が入れない場所は公立施設もふくめたくさんあった。法的にはケネディ大統領の時に、公民権は認められ、差別はなくなったはずだが、社会の中の差別は色濃く残っている。

そして、話題となり映画賞をいくつも獲得した本映画だが、よく考えると日本でいうと幕末の動乱期で、切り合いをしていた頃だ。様々な歴史ドラマに描かれている。アメリカでは黒人差別を歴史として認識していないのだろうか。

もっとも、南北戦争の後、奴隷制が廃止になったため、労働力不足となり、穴埋めに日本の農村から大量の働き手がアメリカ大陸にあふれていったわけだが、日本の歴史教育では教えていない。

肉食の思想(鯖田豊之著)

2021-06-16 00:00:24 | 書評
副題は「ヨーロッパ精神の再発見」。欧州の思想や文明を「肉食」という切り口で考察しようという野心作だ。とはいえ、裏側には日本文化との対比のように感じないでもない。実際は、日本は狭い一国で欧州全域と比較するのは、少し無理を感じる。



記憶にないほど過去に読んだ本で、当時は違和感を持たなかったのだろうが、再読するとあちこちに違和感を覚えた。まず「欧州には雑草がない」という論で、日本のように暑い夏では固い夏草の雑草が生え、家畜が食べられない。欧州の弱い太陽の元で生えた草は家畜にはちょうどいいという説だが、ヤギは固い草でもなんでも食べる。そもそも日本に牛や馬はいなかった。象は旧石器時代には共存していたようだが、こん棒で戦って、食べつくしてしまった。

つまり牛乳を飲む習慣もなかった。草食思想があって肉を食べなかったわけではないだろう。そもそも日本のほとんどの人間は石器時代からずっと海岸沿いに住んでいて、貝や魚やたまには鯨などを食べていた。

日本古来の輪廻思想(人は生まれ変わって別の生物になったりする)という考え方とはキリスト教は異なり、亡くなったら地獄か天国かにいって終わりという論。したがって、動物を殺して食べて(脳みそまでも)、なんとも思わない(人間中心主義)という部分も、日本人が動物をやたらに殺さないのは共存関係にあるから大切にしているのだと思う。

幕末の米国の日本公使であるハリスが「肉が食えないのはわかるが、牛乳を飲みたい」と幕府に掛け合ったが「牛乳は牛の子が飲むものなので、人間用ではない」と断られた話が書かれていて、さらに「牛がだめならヤギにしてほしい。乳を搾る習慣がないなら、私が搾るので中国からヤギをたくさん連れてくるので山に放っていいか」と交渉したというところで、著者はアメリカ公使が自分で乳をしぼるということに驚いているのだが、そもそもハリスは大統領の椅子を狙っていたペリーとはまったく格が違い、ようするに民間人だった。ヤギの乳しぼり程度のDo It Myselfなんか当たり前だったのだろう。(本論に関係ないが、尖閣列島は、今はヤギの島になっているそうだ。岩山にヤギの島。)

それと戦後の日本が米食からパン食に徐々に変わっていったのは、アメリカの小麦の輸出先を確保するための陰謀というのは、いかになんでも陰謀論のように思える。戦前だって麦類を日本は食べていたし輸入もしていたはず。貿易封鎖されたから、ドングリを食べなければならなくなった。米作が一時期廃れていったのは、政府買い上げ保証の時代に、コメの味の改良が遅れたからではないだろうか。

個人的にアンチ日本人論のようなことを書くと、日本の文化は、世界のはじのような島国に追い詰められた末、生き残るために仕方なく編み出した生活様式で、美とか精神とか語るようなものではないような気がする。