ヤスオ國吉 岡山展

2014-11-30 00:00:56 | 美術館・博物館・工芸品
岡山シティミュージアム内で開かれていた「ヤスオ國吉展」にいった。「アメリカ国立美術館回顧展壮行記念」とサブタイトルが付いていた。

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岡山市出身の画家、國吉康雄は、1889年に生まれ、17歳の時に単身渡米。アメリカで画家としての才能にめざめ、生活に苦闘しながら画家として活躍を始める。その後、一度だけ危篤の父親を見舞うため帰国したものの、以後、アメリカで画家生活を送る。多くの在米日本人と同様に、国家をとるか民主主義をとるか、という選択に際し、苦難を覚悟し、民主主義国家アメリカを選ぶ。

しかし、その後のアメリカは理想の民主主義国家になったわけでもなく、国家が右往左往している間に、米国を代表する画家になっていたにもかかわらず、結局1953年病没、米国国籍を取得することはかなわなかった。

晩年の彼は、民主主義国家と皮膚を貼り換えた日本で個展を開こうと思っていたようだが、生前ついにその機会はなかった。

日本で、本格的に評価を始めたのは、岡山を代表する企業である福武書店(ベネッセコーポレーション)。多くの作品の収集をはじめ、その多くは現在、岡山県立美術館に所蔵されている。小学生の通信教育(赤ペン先生)という効果不明のおカネが「絵画」という現実資産に換算されたわけだ。

同時に、岡山の企業の中でも何社かは、福武主義に同調し、薄利を積み上げ数枚ずつを所有しているそうだ。

特に、一度の日本帰還の時に全国各地で描いた作品のほとんどは日本国内にあり、それらが散逸していないのは、岡山企業の努力によるようだ。

そして、今回のスミソニアン・アメリカン・アート・ミュージアムでの國吉回顧展には岡山よりまとめて16作品が送られるそうであり、その作品だけの事前展示という形になっている。

20世紀の前半という、世界の混迷と行き詰まりと暴力的破綻というテーマが多く、20世紀の入口の美術界を席巻した印象派の面影は、まったく感じられない。

しかし、それが当時の世界観だったのだろうと思いながら、つかの間ではあるが、画家の心象に自分の内面を同期させてみた。


ところで、岡山では多くの中小企業の事務所に行って感じるのだが、何気なく美術品が存在する。シャガールのリトグラフなど、レストランや個人企業の社長室なんかに複数枚がかけられている。地元デパートの美術部員が走り回っているという噂だ。

私も一枚ほしいのだが、100万円ならともかく8桁9桁になるとお手上げだ。自分で描いて会社に売ればいいのだろうと推論しているのだが、まだ絵は描いていない。

ついに1勝!

2014-11-29 00:00:21 | しょうぎ
11月22日、倉敷の芸文館ホールで行われた倉敷藤花戦の第二局を観戦。甲斐藤花に挑戦するのが山田久美四段。実に25年ぶりのタイトル挑戦のようだ。1989年の女流王将戦で林葉王将に挑戦し、0勝2敗で敗退。そして、今回の倉敷藤花戦も三番勝負の1局目を落としている。つまり、まだタイトル戦で勝っていないわけだ。

あまり女性の気持ちはわからないのだが、おそらく、「タイトルを取るとか取らないとかいう前に、何とか1勝をあげないと、棋士として、ここまできて、何をやっているのだろう。もう、それほど多くチャンスはめぐってこないかもしれないのに。」というように思っているのではないだろうか。何しろ、1勝と0勝の差は大きい。

それと、数十年前のことだけど、山田さんと隣の席で将棋を指したことがある。はっきり覚えていないが、日本橋か渋谷かで開かれていた東急将棋まつりのことで、私は大会の方で指していたのだが、彼女は指導対局していたわけだ。といっても、盤上に没入していたので、対局中は気が付かなかったのだが、終局後、隣に美少女が座っていて驚く。今の剛力さんよりずっと上だ。


ということで、なんとなく、山田さんにとって、「どうしても、きょうは勝たなければ」という時の勝負を見に行くことにするのだが、ちょっと要領がわからない。持時間2時間ずつで、1時に開会式ということは、5時までなのだろうかとか思うし、対局者のそばで解説していたら本人に聞こえるのではないだろうか、とかどうなっているのかよくわからない。

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そして、開会式だが、谷川会長が来ているのに、おしゃべりな倉敷の女性市長が、谷川会長が勲章もらうことや、来年の将棋の日のイベントが倉敷で開かれることや、対局用の盤を寄付してもらったことなど全部しゃべってしまった。第三局では振り駒にまで登場したらしい。2年後に衆議院議員になろうと思っていたのに、突然の解散で、鞍替えのタイミングを逸することになり「私の人生、どうしてくれる」とお怒りなのかもしれない。

で、そのうち事情がわかったのだが、公開対局の会場では、解説はなし。解説を聞きたい人は別会場に移動ということになる。


そして、対局は午前10時から開始されていて、公開になるのは、ちょうど残り2時間の部分である。2時間経って最終盤の時に「おやつの時間」になるのが気がかりだったが、昼食の時に、おやつも一緒に出るそうだ(たぶん、自費じゃないだろう)。

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そして、舞台に設置された壇上に関係者が並ぶと、谷川さんと山田さんの小顔を目立つ。その他の人の顔はみな大きく感じるが、その中で、清水女流が立会人ということらしい。
清水さんとも、席を並べて将棋を指したことがあるが、その時も将棋大会で、ゲストと対局できることができる予定だったのだが、あいにく長時間のトーナメントを全勝してしまい、表彰式の時にはすでにご帰宅ということだった。

そして、解説なしの会場で生対局を大盤でみるということにしたが、かなり疲れる。自分の頭で対局をするように考えなければならない。先手の山田さんに対して、甲斐さんが力攻めにしようとするのだが、ギリギリで受けながら、ときどき山田さんの方が1ミリずつ詰めよるというような戦いになる。どちらも不利感をもって指しているように思えてきた。金桂交換の駒損の間に山田さんが攻めのキッカケをつかむと、甲斐さんが大攻勢に出る。二人の動作をみると、そうなるだろうということが感じられた。

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そして、1ミリずつ詰めよっていた山田さんが、最後に長手数の詰手順に入り、ついに勝負は決まった。

今回のノルマ達成、という感じで、第三局は短手数で敗北。ただ、1勝すると、今度は2勝してタイトルが欲しくなるのが人情だろう。数年後に次のチャンスが到来する時は、対局用の和服三着を新調し、さらにあらかじめ優勝スピーチも用意した上、のぞんでほしいと思うところだ。


さて、11月8日出題作の解答。

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動く将棋盤は、こちら


今週の問題。

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初型では11枚あるが、1増6減になる。45%減。議員定数もそれ位減ってほしいとこころだ(政党数も)。

わかったと思われた方は、当選者と政党名、いや最終手と総手数と酷評をコメント欄に記していただければ、正誤判断。

宇宙詩人の逆襲か

2014-11-28 00:00:43 | 市民A
鹿児島の全寮制の中高一貫校といえば、ラサールが有名。というか、とある芸人がさらに有名にしたのだが、対抗して公立(県立)の中高一貫校が設立されるそうだ。交通の不便な場所なのだろうか。

閉鎖的空間で学業を究めるというならいいのだが、単なる進学校にはしてほしくないな。

余計な心配だが、こういうところで校内イジメが発生すると、修復不能になりやすく、大惨事発生をいうことになりやすいのだよね。(この部分、数年後に読み直すことがないように)


ところで、「新しい学校には、新しい校歌」ということで、予算を奮発したようだ。新校歌は、作曲を下野竜也氏。確か、去年のジルベスタ-の指揮者だったか。

そして、作詞は、ノーベル賞級の大詩人、谷川俊太郎氏が行うそうだ。

新設中高一貫、詩人・谷川俊太郎さんが校歌を作詞

来春開校する全寮制の鹿児島県立中高一貫男子校「中学・高校」(肝付町)で15日、完成した学生寮と、詩人の谷川俊太郎さんが作詞した校歌の歌詞、校章が地元関係者にお披露目された。

学生寮は約20億円をかけて造った1期工事分で、約150室の個室がある棟2棟、浴室棟、食堂棟、医務室や事務室などがある管理棟の計5棟。県産材をふんだんに使ったのが特徴だ。2015、16年度の工事で舎棟を6棟に増やす計画で、完成すれば個室約450室を備える公立中・高校では国内最大の学生寮となる。

校歌の歌詞は山崎巧校長(53)が、知人を通じて谷川さんに依頼。

(1番)

 楠が拡がる空へ
 隼が羽ばたく彼方
 志す宇宙は無限
 心ごころに答求めて
 問いかける楠隼の日々


など、宇宙学などを学ぶ同校の特色などが取り入れられている。作曲は、県出身のプロ指揮者・下野竜也さんが担当しており、年内に完成する予定。


空へ→彼方→無限の宇宙 というのが前半の部分(宇宙は無限とは宇宙学的には決まっていないが)

しかし、後半部分では、自分に対する投げかけ(自問方式)に変調している。科学技術に対する人間の責任を考えようということなのだろうか。

つまり、谷川俊太郎氏が宇宙詩人としてのスタートを切った、ある一篇の詩(詩集は不明)の反語になっているのだろう。

 空をこえて ラララ
 星のかなた
 ゆくぞ アトム
 ジェットのかぎり
 心やさしい ラララ
 科学の子
 十万馬力だ
 鉄腕アトム


アトムとかウランちゃんとか、この数年で、もっとも株を落としたのが、この詩なのかもしれない。

報道で紹介されたのは、1番だけなので、作曲の方もあるし、是非2番も知りたいところだ。

野球部員が甲子園で歌えばいいのだろう。(空のかなたに向かうのは、ロケットではなく白球になるが)

プライド(映画 2009年)

2014-11-27 00:00:44 | 映画・演劇・Video
pride原作は、一条ゆかり氏の漫画。オペラ歌手を目指す二人の女性の激突の火花が華々しく飛び散る。ステファニーと満島ひかり。富と貧乏。富者のプライドと貧者のプライド。

イタリア留学をかけたコンクールで、そして、わけあって二人とも働き出した銀座のクラブで、そしてレコード会社副社長の妻の座をかけ、さらにクラブのママの音楽息子との恋愛をかけ、・・

途中で満島ひかりが、日本刀を振り回すシーンがあったり、ジョン・カビラ演じるステファニーの父親が、会社の破産を告げるのに、瞬間土下座をするシーンとか、お里が漫画であることを表現したり、意外に映画作りの小技が面白い。

しかし、クラブママの音楽息子(渡辺大)以外のすべての男女出演者が、醜悪な心をさらけ出すわけで、「ああ、映画でよかった」と思わせるところが、スゴイ(エグイ)。

そして、こういう場合、最後には心のわだかまりが氷塊して和解するというのが一般的なフィナーレなのだが、本作ではそれはない。


あまり、実生活で自分の周りに醜悪な人はいないので(というか、団塊世代とは付き合わないので)、興奮して、今夜は、寝つきが悪いかもしれない。

そんなことないか。


*ところで、映画とは何の関係もない話だが、今井美樹の人生最大ヒット曲の「プライド」。人を愛することが私のプライドという意味なのだが、自分の略奪愛を正当化する言い訳、という説もある。

輪投げじゃないの

2014-11-26 00:00:38 | 市民A
少し前に、救命浮環投擲訓練というのがあって、参加。

救命浮環というのは、要するに「浮き輪」。空気が入っているのではなく、発泡材を固く固めたものでできていて、浮力15キロ程度のもので、3キロ位ある。持ちにくく重い。

人間の密度(比重)はおおむね1.0位だから水に落ちるとかろうじて浮かんでいられるのだが、服を着ていたり靴を履いていたり、ポケットに大金の入った財布や純金製の腕時計や携帯電話他を所持しているので、少なくても首から上の重さの浮力が必要としても浮力5キロ、さらに漂流することなど考えれば10キロ以上の浮力が必要で、そのためには浮環が大きくなり、全体重量も重くなる。

しかし、重くなると、遠くに飛ばすのが難しくなるという大問題が生じるし、そもそも投げたことのない人はうまくいかないだろう。AEDの操作と同じだ。

ということで、一応専門官庁の方を講師に頼んだのだが、どうも講師は、遠くに投げるという練習はしたことがなく、ボートから水に落ちたとか、岸壁から足を滑らしたというような、「近くの人」用の練習をしていたそうで、遠投したことはない、ということ。

つまり関係各社から30人ほど集まったものの、遠投の専門家はいない、ということが判明。しょうがない。

で、15メートル以上先のブイに向かって、各自がフリースタイル投ということになる。ボーリング投げとか、フリスビーみたいにバックハンド投げとか野球のように上から投げたり。

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で、わかったことは、

 体育会系でも20メートル以上遠くには飛ばない。

 ボーリング投げは正確だが距離は出ない。

 横投げは、予想より浮き輪が重いので右利きだと右の方にはずれることが多い。

 ロープがついているので、要救助者より遠くへ投げてロープで調整できる。

 しかし、ロープが邪魔でうまく投げられないことが多い。

そして、最大の問題は、

約1割程度の人は、まったく下手であり、何度練習してもまったく上達するとは思えないし、自分自身が海中に転落しそうなほど下手である、ということだ。

現場にそういう人しかいなかった場合は、「救助されることをあきらめ、自力でなんとかするしかない」ということだろうか。

ところで、自分が投げたところを撮影してくれた人がいた。場所を特定できないように加工したので見にくいと思われるが、「ムロフシ」のフォームを参考に投擲後に胸を張ってみた。「ウォー」と声を出すのは控える。結果は5投中4名救出。ロープをもって4回転して投げればよかったかもしれない。(ハンマー投げでは7キロ以上の鉄塊を80メートル投げる)

サ行とカ行 生保業界の隠語

2014-11-25 00:00:24 | 書評
プレジデント誌2012年12月1日号は「得する保険、いらない保険」。結構面白い。

ただし、誰か業界内部の人に手による記事が多い感じで、書いてある内容を信じてもいいのかは、ちょっと・・。本当に得する保険とか、ごくあっさり書かれているように思えた。まあ、信じるのは、「あなただ!」ということなのだろう。

で、裏話というか、保険獲得競争は厳しく、外交員の多くは数年でサヨナラになるのだが、業界内部で使われる隠語が面白い。ランダムに紹介。

サ行:「さすがですね・知りませんでした・素晴らしいです・正解です・そうですか」営業マンの会話テク。

刺す:客に契約を決断させるトーク。

DMK136:損保商品で支払打止する期間。打撲1か月、むちうち3か月、骨折6か月。

GNP営業:義理・人情・プレゼント。営業の鉄則。

3B:貧乏、病気、バカ。はずれ客総称。

3K:金持ち、健康、賢い。優良客。血眼でさがす。

孤児化契約:加入勧誘した営業マンが退職。

自爆契約:目標未達で自分で契約。

から揚げ:中身のない契約。申込数水増し。

わかば活動:新人職員のリクルート活動。

職安わかば:ハローワークの前で女性をスカウト。


私もこれからは「カ行」トークをやめて「サ行」トークにしないといけないかな。

カ行:「かんべんしてください・きもち悪いです・くだらないです・ケチなこといわないでください・困ります」

さい果て(津村節子)

2014-11-24 00:00:18 | 市民A
芥川賞作家の津村節子氏は、夫の故吉村昭氏について、故人なのに生きている私よりもたくさん本が売れ、文庫の重版がどんどん家に送られてくる、となかば呆れたようなことを書かれている。

つまり、生きている芥川賞作家の私が、亡くなってしまった芥川賞もとれなかった夫より優れた作品を書いているということを書かれているように感じ、そんな自信がある作品ならどんどん読んでみよう、と思い立ち、書店の文庫本コーナーではじからはじまで1メートル分を買いこんで見ようかと、かなりの書店を回ったのだが、あると言っても1冊とか2冊という感じだ。それも、吉村昭氏の没後、夫の思い出などを書いたエッセイ本である。

そのエッセイを買ってしまうと、夫離れしようという芥川賞作家の決意を無にしてしまうではないか。

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ということで、amazonに頼る前に、ついに「さい果て」という短編集を入手。津村氏の実質的なデビュー作品群だ。「春遠く」「風花」「さい果て」「玩具」「青いメス」の5章となっているが、それぞれが独立しているとみてもいいし、連続小説とみてもいい。

ただし、これらの作の主人公は、春子。そして夫の志郎。この夫の志郎が、小説家を志望しながらメリヤスの販売業を行っていて、事業がうまくいかず売掛金の手形の不渡りの代償として現金ではなくセーターなどの現品を回収し、これをリヤカーに積んで東北、北海道の地方都市で売りさばく話が第3章まで。そして4章、5章はビジネスがやっと落ち着いたところで子供を産む話になってくる。

困ったことに、この志郎のモデルが吉村昭氏なのだ。といっても、メリヤス販売をやっていたのは事実としても、北海道でリヤカー引っ張った話などはフィクション。ようするに、主人公のモデルを夫にして、単に利用したようなものだ。「うそつきの私小説」というパターンだろうか。

前半の3章では、頼りがいのある夫像が描かれるが、後半の2章は、ダメオ君に描いている。この4章「玩具」で津村氏は芥川賞を受賞したが、「さい果て」の方がいいような気もする。

吉村氏との書き方の差であるが、津村氏は登場人物の心の中にのめり込んでいるというように捉えられる。角田光代さんのような書き方かもしれない。そして吉村氏の場合、個人の行動なんて、芯が通っているようで、実は容易に屈折してしまうと割り切っていて、この集団としての歴史を書いているように感じた。

もっとも、作家が自身をもっているのは、まさかデビュー作のことではないだろう。確かにもっと評価の高い作品もある。今度はamazon からかな。(一冊のデビュー作で都知事になって尖閣列島に火を付けた人物もいたが)

「平家物語と太平記の世界」

2014-11-23 00:00:06 | 美術館・博物館・工芸品
羽田空港第二ターミナルのディスカバリーミュージアムで開催中の「平家物語と太平記の世界」へ。最初に不思議なのは、ここの展示はこのところずっと永青文庫の所蔵品展である。永青文庫といえば室町時代から貯めこまれた細川家の収集コレクションであるのだが、羽田空港は分館になったのだろうか。

で、今回の平家物語は奢れる平家が破滅に向かう歴史を悲劇的に描いたもの。そして太平記は鎌倉幕府の崩壊について書かれたもので、いずれも権力の横暴と、それに対する反感、そして政権が交代し多くの兵士が異なる価値観の戦いの中で殺されていく。

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本展は、それらを描いた、屏風と書物の展示である。多くは江戸時代に作成されたものである。時の徳川幕府のことを悪く書くわけにはいかないので、その前の時代の軍記は認められていたのだろう。

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落ち着いて考えると、平家と源氏の戦いは平家と源氏という単純構造だった。源氏というのに木曽義仲が割り込むという戯曲性が高いのだが、さらに勝ち残った源氏も北条家に消されてしまう。一方、鎌倉時代の間に地方武士が力をつけたため、全国のあちこちで同時的に戦争が始まっていた。勝ったり負けたり国内あげての大損害である。

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最近、源平合戦にこだわっているので、平家が破滅に向かう過程である「一ノ谷」、「屋島」、「壇ノ浦」の屏風絵をよく見ていると、一ノ谷は神戸市街地での陸上戦。屋島は大海戦だ。事実上、この先、壇ノ浦へはただ逃げ回っただけだ。一ノ谷では死体ゴロゴロの図である。

そういえば、徳川幕府崩壊に際しての軍記はあまり聞かない。実際には、太平記の世界の方が悲惨だったのかもしれない。あるいは、登場人物の思想がしょっちゅう変わるから、いさぎよくないからなのだろうか。

詰棋カクテル、要修正1

2014-11-22 00:00:39 | しょうぎ
知人からいただいた詰将棋本。3手と5手作で週刊将棋編ということなので、週刊将棋掲載作なのだろう。全体によくできている。平成2年の上梓になっている。

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となると、将棋ソフトが普及する前なのだが、数万部も発行されていたのだから、まさか余詰があるわけはないだろうと思いながらも、つい探してしまう。

というか、問題が大量にあって、一日数十題ずつ解こうと思っても、眠くなってしまう。眠くなると解けないし、さらに考えると余計眠くなる。デフレスパイラル。

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そして、ついに194問目に怪しい匂いを感じる。題意は、4四金のあと3四飛と連続で捨てて5一馬の5手詰なのだが、初手に4二銀でも詰む。

修正案としては、玉型に5四歩を追加するか、駒を増やさないなら、1四の飛車以外を一路左に移動すればいい(7筋以遠を使わない方針らしいが)。

そして、やっと200題を解き終わって驚くが、あと2題あった。202問。

ところで、本書のタイトルは「詰棋カクテル」。なんとなく「カクテル」ということばだと、色々なものを混ぜたというような語感があって「類似作」のイメージがうっすらとある。「カクテル」ではなく「シングルモルト」の方がいいだろう。


さて、11月8日出題作の解答。

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まで15手詰。

動く将棋盤は、こちら


本日の出題。

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詰棋カクテル194番の余詰を利用した類似作。廃材利用のリユース作とでもいうのだろうか。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数と酷評を記していただければ、正誤判断。

玉型に2一桂を追加修正しました。

「またこいや」と言われて行くと

2014-11-21 00:00:11 | あじ

先日、羽田空港第二ターミナルの一番はじの方にあるゲートの近くにある寿司店である「又こい家」の感想を書いた。(2014年10月24日、「また、こいや」と言われても

その時に、6貫の中に「ヅケ」が二つもあって一つは別のマグロに変えた方がいい、というようなことを書いたのだが、実は、また行くことになる。要するに、夕食の時間が短く、本格的なレストランタイムがとれないものの、もしかしたら本日最後の食事になったりするという微妙なタイミングの時が多いわけだ。しかも目的地の空港の駐車場にクルマを置いてあったりして、アルコールも飲めないというなこともある。

で、結局は高額過ぎず、少量過ぎずという消去法的にメニューから選ぶと、マグロづくし寿司ということになる。1200円+TAX。(TAXは10円単位の切捨てのようだ)

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で、画像によって、前回と比較してみると・・
上段が前回で下段が今回。

ヅケがなくなっている。マグロの質は少し改善されている。中落ちの量も増えている。

全体としては、20%程度の満足度向上が感じられる。

寿司店の値付けというのも、定価方法と時価方法があるのだろうが、どうしても現代的には定価式になるのだろう。毎日、1円単位でマグロ寿司の値段を変えるわけにはいかないだろう。そうなると、品質で調整するということなのだろう。ネタの厚さとシャリの量でで調整という方法もあるだろうが、やめた方がいいだろう。

ジンギスカン(小林高四郎著)

2014-11-20 00:00:31 | 歴史
歴史上世界最大の国家(ソ連の方が大きいかもしれない)を築いたモンゴル人将軍であるジンギスカンの生涯をまとめた本である。

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ジンギスカンも豊臣秀吉も実は生年月日が不明だ。だから後の歴史家泣かせである。まあ、10年程度の幅がある。

結局、ジンギスカンも豊臣秀吉のようにモンゴル国内の戦国トーナメントの覇者だったわけだ。裏切りや正義、打算主義や理想主義、暴力か話し合いか。そういう一体としての戦いが繰り広げられ、チーム・ジンギスカンが勝ち残ったわけだ。そして、特徴としては、戦後処理の残忍さ。成年男子はみなごろし。女子やこどもは、奴隷にして、長い道のりを歩かせ、消耗すると砂漠に置き去りだ。器量のいい女子は姓奴隷になれる。

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ジンギスカンが戦いで通るところには一人もいなくなるわけだ。人間の殺し方も各種残虐趣味があふれる。踏みつぶしたり生き埋めにしたり、車裂きは当然として、袋につめて飢え死にさせたり、熱して融けた銀を耳や眼に流し込んだりするわけだ。

そしてジンギスカンの子孫たちは、漢民族をその調子で支配しようとするも、結局、政権は長続きはできなかった。

元王朝が漢民族化してしまったわけだ。

ホタル(映画 2001年)

2014-11-19 00:06:44 | 映画・演劇・Video
高倉健と田中裕子が、知覧の特攻隊の記憶を引きずって生きていく夫婦を演じている。生と死は偶然によって分けられ、亡くなった方は無念を晴らすこともできず、残った方も得体のしれない懺悔の念に襲われる。

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もう一つのテーマは、日本と朝鮮の葛藤。朝鮮人戦死者の母国へ帰ることのできない遺骨、そして遺品。

さらに老いや病気のことも重いテーマで描かれる。

高倉健は「不器用な役者」ということになっているが、本作では、一見不器用だが本当は柔軟なところもある男を演じている。本当の性格はどうだったのだろう。そして特攻に対して何を考えていたのだろう。映画に出るのだから肯定しているわけはないよね。

田中裕子。この頃から「神的怪演」の兆候が始まった。たった一言のセリフが映画全編を支配するような力を持つことがある。本作でも後半にそういう怖いセリフを一言つぶやく。

映画では、田中裕子の方が先立ってしまうのだが、現実は逆であった。

もっと書きたいところではあるが、1週間後にNHK-BSで本作が追悼放映されるそうなので自粛。それに、慌てて観たので、まだ客観的には語れない感じだ。

ポイントカードの有効期限延長

2014-11-18 00:00:18 | 市民A
急な話なのだけど、私の持っているポイントカードは有効期間が4年なのだけど、2年経ってしまったので、残りは2年しかなく、その間、ほとんど使ってなかったのだけど、今、更改すると、新たに4年間延長されるということがわかったので、ポイントカードの交換をお願いしたい。

という意味の解散総選挙が始まりそうだ。12月14日という忙しい時期によくやってくれるよ、と思うのだが、2年前も12月16日だった。

2年間の仕事だけど、消費税アップ第一弾。そして五輪誘致。特定秘密法。ただ、消費税アップは、野田・谷垣密談で決めた話だし、五輪誘致は個人プレーじゃないし、特定秘密法も法案は通ったものの・・

結果が出そうで出ないのがTPP、拉致問題、北方領土。失敗作は中韓との関係。原発再稼働も1個や2個を動かしても電力料金は変わらないだろうし、電力が高いのは別の理由じゃないのかな。

円安での利益といってもドルを円に計算すると利益になるだけで、数量増を伴わないし、だいたい大企業の海外事業分が黒になるだけで、国内産業には関係なし。

emptyなんとなく、嫌な話が大公開になる前にポイントカードの切り替えをしようというのだろうか。

金子みすゞの町 下関、仙崎

2014-11-17 00:00:09 | たび
東日本大震災のあと、突如テレビに流れ始めたACジャパンによる「こだまでしょうか」。



不運で26年という短い人生を終えた詩人の作品が80年経っていきなり目の前にあらわれ、何か予定されていたのではないかと戦慄が走った記憶が新しい。1903年に山口県仙崎に生まれた金子みすゞ(本名テル)さんが下関に移り住んだのは20歳の時。その後5年間をかけ、勤め先であり住居であった上山文英堂で数百の詩を書き綴ることになる。

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上山文英堂は萬年筆や毛筆といった筆記用具を中心に販売していて、おもしろいものだがみすゞさんは、それほど達筆ではない。ただ、詩の文体に合わせて小さく丸みのある文字を書いていたのかもしれない。西條八十が中心の雑誌に投稿していたので、詩に合わせた文字を書いていた可能性は十分にある。

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そして、不運なことに蛇のような馬鹿男と結婚させられてしまい、「詩なんか書くな!」ということになる。24歳の時の巨星西條八十との下関駅での一瞬のような出会いが、彼女の人生最高の時だったのだろう。

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そして26歳の時に、夫の不始末を理由に離婚することになるのだが、こども(女子)の養育権をめぐり争いが起こり、自殺する。

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現在、文英堂があった場所の近くには金子みすゞの碑があり、彼女の建物は生誕地である仙崎に「金子みすゞ記念館」として復元されている。彼女の墓地も近くにある。また、下関でも仙崎でも街中に彼女の詩があふれている。

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仙崎の海は美しくもあり、荒れれば危険でもある。みすゞさんの父親は仙崎の海で渡船を営んでいたそうだ。漁港でもありクジラ漁の基地も近く、仙崎の思い出は彼女の詩の中で一つの群をなしている。

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東日本大震災はよく千年前の貞観地震と対比されるのだが、日本文化的には、貞観時代をはさんで、「ますらおぶり」から「たおやめぶり」に変化していったと言われる。東北地方の地震が京都の人々の心理にまで影響を与えたとされている。

もし、日本が大震災のあとの次の時代の国民的共感を築いていくとするなら、みすゞさんの「こだまでしょうか」は、その最初の1ページだったのかもしれない、と思っている。

海峡ゆめタワーから見たいものがあって

2014-11-16 00:00:11 | たび
下関にも対岸の門司にも高いタワーがある。実は、あまりタワーというのは好きではない。景観上の問題もあるし、実際、高いところから見下ろしても、あまり町の楽しさを感じられない。

さらに、高層階へ登るエレベーターだが、乗り物の一種だと考えれば、数百メートル移動するだけで数百円もかかるわけで、距離と金額の比率がきわめて割高だ。JRなら東京から横浜まで行けるわけだ。

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ただ、下関にある「海峡ゆめタワー」には、ちょっと登ってみたかったわけがあった。

地上ではよくわからないことがあったから。

まず、前座その1だが、大女優田中絹代の生まれた町。丸山町。タワーのすぐ近くだ。丸山町は平らなところから丘の上まで短冊状に区切られている。彼女が家庭の事情で下関を離れたのは1917年とほぼ100年前。現在も下関の多くの場所は旧表示にままなので今の丸山町と同じだろうと推測。商家であり、また後年、下関と同じように神奈川県で海の見える土地を選んで転居していったことを思うと、生家のエリアはかなり絞られる。あそこで育って、父を亡くした一家は大阪行きの汽車に乗ったのだろうと思う。

次に前座2。日本海の方を望むと、左の方に、六連(むつれ)島が見える。そして石油タンクが数多く並んでいる。こことか、福岡市の金印が発見された場所の近くに唐突に石油タンクがあるのは、なぜだろうかと思うのだが、その海の先で65年ほど前に起きたことに関係しているのではないだろうかと思っている。

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そして、タワーに登った真の目的なのだが、私がこどものころに、今はなき父親から聞いた話。おそらく1939年前後と思われる。父親の父親が転勤族だったため、当時、下関の中学に通っていたそうだ。下関中学と覚えていて、現在は下関西高校。残念ながら住居の場所は聞いていなかった。その中学に近いところの駅で事故があった。

幡生駅というのがある。タワーからは見えにくいが地図と比べるとだいたいわかる。確かに近くに下関西高校がある。最寄駅がそこだったのだろう。下関より一つ本州の内側にある。山陽線と山陰線がまだ分岐していない場所だ。

父の話では、同級生の友人が電車から駅のホームに飛び降りた時に大けがをして亡くなってしまったということだった。急行から普通電車に乗り換えるべきところ、失念してしまったらしい。一回の遅刻(あるいは欠席)と引き換えにリスクを冒す人もいるということだろうか。父の話はそれだけで、一度しか聞かなかったので、その列車がどこからどこに向かっていたのかわからない(聞いたのかもしれないが土地勘がないと理解できないだろう)。ただ、こうしてタワーから見ていると、その駅に間違いないだろうと確信した。

そして、実は翌日だが、ちょっとしたことが起きる。下関から山陰線で長門市の方に行ったのだが、一つ目の駅が幡生。確かに新しい駅ではないが75年前の建設とは思えない。車両の中からぼんやりとホームをながめていた。そして、長門市から支線で次の目的地である仙崎に行っている時に先ほどの列車の中で財布を落としたことに気付く。寒くなって着替えた時だ。ポケットには小銭しかなく、長門市駅でJRの捜査網で探してもらうと、だいぶ先の駅まで行ってしまったものの回収されたということ。で、しばらく待ってから、山陰線をさらに北上しようと乗車したのだが、なぜか違う線に乗り間違えてしまい、しばらく気付かなかったため、中国山地の中の方まで行ってしまう。

父の代わりにやってきた私をからかったのか、あるいは無念を一言いいたかったのか。

一応、念力から解放してもらい、見知らぬ駅で財布にたどり着いた時にはポケットの中の小銭は110円だったsr。

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ところで、夜の海峡ゆめタワー。28階が「恋人の聖地」ということでカップルで「縁結び神社」で絵馬に祈りや夢を書いたり、おみくじを買うことになっているらしい。他人の書いた絵馬というのは、つい読みたくなるものだが、「二人とも○○高校に行けますように」というようなのが多い。勉強するしかないだろう。日本は自由な国なので「結婚」とか書くのは確かにおかしい。したければ市役所にいけばすぐに終わるが、取り消すのは難しい。

しかし、結構目立つところに、ユニークな絵馬が二枚があった。

「お金の使い方がもっと上手になりますように」

「お金をためてログハウスを買えますように」

貯めるよりも使う方が楽しいと思う。そして、ログハウスを買う前に土地を買わないといけないだろう。