「しょーと・しょーと・えっせい」では、この1ヶ月内に、「日本最初の鉄道」シリーズを書いていて、新橋と横浜の両サイドから攻めていた。次は品川付近と思っていて、日本最古の鉄道事故を紹介しようなど考えている内に、悲惨な巨大事故が起きた。したがって、品川の話は先に送るとし、少し事故の遠因を考えてみた。今後、約半年程度で国交省の事故原因調査委員会の報告書が公表されると思われるが、マイナーブログなりに、遠因を二点、書き示す。もちろん事故原因は、5個以上10個以下程度の複合要因だろうし、この遠因は、はるかに遠い要因なので、公式的には無視されると思うのだが、そう思えばさらに今、書いておきたくなる。
1.狭軌レールと標準軌レール
線路幅には、おおよそ、狭軌レールと標準軌レールの2種類がある。JR在来線は狭軌(1067ミリ)である。今回のJR宝塚線もそうだ。そして新幹線は標準軌(1435ミリ)だ。私鉄はバラバラで関東で言えば、京成、京浜急行が標準軌でその他はほぼ狭軌。地下鉄は線によって異なる。相対的に私鉄も狭軌が多い。一方、関西の私鉄は、ほとんどが標準軌だ。
無論、標準軌と狭軌では、速度に対する許容度が異なる。阪神地区のJRが私鉄と張り合って同じ速度を出せば、危険なのである。JR宝塚線快速電車は、標準軌の阪急よりも速いことを売り物にしていたようだが、速度競争は無謀だ。京阪、阪急、阪神、山陽電鉄などの標準軌路線は多くJRと競合している。狭軌鉄道で単なる速度競争に陥れば、危険度が増加するだけであり、エネルギーは速度の二乗に比例することを考え合わせれば問題は根深い。
秋田新幹線を代表とする既存路線への新幹線車両導入の場合には、「標準軌と狭軌を各単線方式で走らせる方式」と「狭軌の外に1本追加する3本レール方式」の混用で運用しているが、全国を標準軌化(あるいは併用化)するためには駅のホーム間の幅、トンネル問題などに障害は大きい。
では、なぜ、現代のJRは、この狭軌鉄道になっているのか?実は遡ると、例の明治5年の横浜駅に戻るのである。少し前のエントリで「高島嘉右衛門なる実業家が、伊藤博文、井上馨などに対して運動をして、最初の鉄道を敷こうとしたが、認可されずに国策鉄道方式となった」と書いたのだが、この時期、同時に鉄道の幅も問題になっていたのだ。問題は、鉄道の幅であると同時に機関車の幅なのである。明治年間は日本は機関車を商業生産しておらず、輸入頼りだったのだが、最初に売り込んだのは、ロシアだったのだ。ロシア使者のプチャーチンが機関車を売り込んだのが明治3年。しかし、実際には機関車は英国から輸入することになったのだ。そのため、線路幅規格は、その機関車の車輪の幅に合わされたわけだ。
では、英国は日本と同じ狭軌鉄道かというと、「とんでもない」のである。標準軌だ。狭軌組は、オーストラリア、タイ、マレーシア、シンガポールなどだ。要するに英国の植民地向けバージョンだったのだ。どうして植民地と同じ機関車を使うことになったか、理由はよくわからないのだが、「だまされた」のではないかと思う。標準軌だと、ロシアはじめ、多くの国が売り込みをするだろうが、狭軌なら英国が機関車市場を独占できるからだ。一方、トンネルを掘る場合は狭軌の方が、有利だ。
しかし、さすがに狭軌では具合が悪いというので標準軌に変更しようという動きが明治時代にあったそうだが、限られた予算を、線路の拡幅に使うのではなく、線路の延伸に使おうという政治の声(我田引鉄)に押されて、あえなく粉砕。以後ずっとそうなのである。
私も、以前、総武線方面に住んでいたのだが、津田沼駅-幕張駅間には、まだ幕張本郷駅が完成する前で、長い駅間距離を国鉄と標準軌の京成が張り合って競争していたが、ほとんど京成が勝っていた。また、京急の快速特急は、速度ではJRよりかなり早いように思える。このレール幅の問題は今後も日本の鉄道の宿痾のままなのだろうか。
2.時刻に正確になるのはやめよう
前の駅でのオーバーランのタイムロス1分30秒を取り戻すため、飛ばしたというのが中心的な事故要因ということになるのだろうけど、実際に乗っていた人の大部分は、その1分30秒に拘ってはいなかっただろうと推測する。もちろん、遅れは、さらに次のタイムロスを生み、最終到達場所ではもっと大きな時間差が生じるかもしれない。が、先日講演会を聞いた中国の女子学生の日本体験談の中には「日本人は、のんびりしていて、大国だと感じた」というのもあるぐらいだ。タイムカードなんか廃止して、なんとなく定時時間とおおむね同じなら、それでいいということにすべきなのだろう。数分の問題なんか実生活では大して問題にはならない。東急線なんか、2日に一度は遅れる。
鉄道と時刻表の問題をシリアスに考えたい人には驚くべき例がある。場所はスペイン。新幹線「AVE(アベ)」だ。首都マドリードからコルドバを経てセビリアに向う。最高時速は250Km/時だ。スペインは未だに国鉄方式なのだが、このAVEの料金方式は驚きだ。何と、ダイヤより1分でも遅れたら、全乗客の運賃を0円にするそうだ。これがあの毎日2時間の昼休みとシエスタの国でどうやって実行するのだろうか?と考えても日本人の常識では答えは見つからない。実際にAVEに乗って判ったのだが、定刻よりかなり早く走るのだ。マドリードからセビリアまでダイヤより15分短縮して運行していた。そして、発車時刻になると、何の前ぶれもなくいきなりドアが閉まるやいなや1秒後にはダッシュを始める。運悪く閉まるドアに挟まれてしまうと、どうなるのか判らないが、おそらく遅延払い戻し金額の大部分の請求書が届くのだろう。
あれこれ、日本人は、もっと時間にルーズになってもいいのだろう。
1.狭軌レールと標準軌レール
線路幅には、おおよそ、狭軌レールと標準軌レールの2種類がある。JR在来線は狭軌(1067ミリ)である。今回のJR宝塚線もそうだ。そして新幹線は標準軌(1435ミリ)だ。私鉄はバラバラで関東で言えば、京成、京浜急行が標準軌でその他はほぼ狭軌。地下鉄は線によって異なる。相対的に私鉄も狭軌が多い。一方、関西の私鉄は、ほとんどが標準軌だ。
無論、標準軌と狭軌では、速度に対する許容度が異なる。阪神地区のJRが私鉄と張り合って同じ速度を出せば、危険なのである。JR宝塚線快速電車は、標準軌の阪急よりも速いことを売り物にしていたようだが、速度競争は無謀だ。京阪、阪急、阪神、山陽電鉄などの標準軌路線は多くJRと競合している。狭軌鉄道で単なる速度競争に陥れば、危険度が増加するだけであり、エネルギーは速度の二乗に比例することを考え合わせれば問題は根深い。
秋田新幹線を代表とする既存路線への新幹線車両導入の場合には、「標準軌と狭軌を各単線方式で走らせる方式」と「狭軌の外に1本追加する3本レール方式」の混用で運用しているが、全国を標準軌化(あるいは併用化)するためには駅のホーム間の幅、トンネル問題などに障害は大きい。
では、なぜ、現代のJRは、この狭軌鉄道になっているのか?実は遡ると、例の明治5年の横浜駅に戻るのである。少し前のエントリで「高島嘉右衛門なる実業家が、伊藤博文、井上馨などに対して運動をして、最初の鉄道を敷こうとしたが、認可されずに国策鉄道方式となった」と書いたのだが、この時期、同時に鉄道の幅も問題になっていたのだ。問題は、鉄道の幅であると同時に機関車の幅なのである。明治年間は日本は機関車を商業生産しておらず、輸入頼りだったのだが、最初に売り込んだのは、ロシアだったのだ。ロシア使者のプチャーチンが機関車を売り込んだのが明治3年。しかし、実際には機関車は英国から輸入することになったのだ。そのため、線路幅規格は、その機関車の車輪の幅に合わされたわけだ。
では、英国は日本と同じ狭軌鉄道かというと、「とんでもない」のである。標準軌だ。狭軌組は、オーストラリア、タイ、マレーシア、シンガポールなどだ。要するに英国の植民地向けバージョンだったのだ。どうして植民地と同じ機関車を使うことになったか、理由はよくわからないのだが、「だまされた」のではないかと思う。標準軌だと、ロシアはじめ、多くの国が売り込みをするだろうが、狭軌なら英国が機関車市場を独占できるからだ。一方、トンネルを掘る場合は狭軌の方が、有利だ。
しかし、さすがに狭軌では具合が悪いというので標準軌に変更しようという動きが明治時代にあったそうだが、限られた予算を、線路の拡幅に使うのではなく、線路の延伸に使おうという政治の声(我田引鉄)に押されて、あえなく粉砕。以後ずっとそうなのである。
私も、以前、総武線方面に住んでいたのだが、津田沼駅-幕張駅間には、まだ幕張本郷駅が完成する前で、長い駅間距離を国鉄と標準軌の京成が張り合って競争していたが、ほとんど京成が勝っていた。また、京急の快速特急は、速度ではJRよりかなり早いように思える。このレール幅の問題は今後も日本の鉄道の宿痾のままなのだろうか。
2.時刻に正確になるのはやめよう
前の駅でのオーバーランのタイムロス1分30秒を取り戻すため、飛ばしたというのが中心的な事故要因ということになるのだろうけど、実際に乗っていた人の大部分は、その1分30秒に拘ってはいなかっただろうと推測する。もちろん、遅れは、さらに次のタイムロスを生み、最終到達場所ではもっと大きな時間差が生じるかもしれない。が、先日講演会を聞いた中国の女子学生の日本体験談の中には「日本人は、のんびりしていて、大国だと感じた」というのもあるぐらいだ。タイムカードなんか廃止して、なんとなく定時時間とおおむね同じなら、それでいいということにすべきなのだろう。数分の問題なんか実生活では大して問題にはならない。東急線なんか、2日に一度は遅れる。
鉄道と時刻表の問題をシリアスに考えたい人には驚くべき例がある。場所はスペイン。新幹線「AVE(アベ)」だ。首都マドリードからコルドバを経てセビリアに向う。最高時速は250Km/時だ。スペインは未だに国鉄方式なのだが、このAVEの料金方式は驚きだ。何と、ダイヤより1分でも遅れたら、全乗客の運賃を0円にするそうだ。これがあの毎日2時間の昼休みとシエスタの国でどうやって実行するのだろうか?と考えても日本人の常識では答えは見つからない。実際にAVEに乗って判ったのだが、定刻よりかなり早く走るのだ。マドリードからセビリアまでダイヤより15分短縮して運行していた。そして、発車時刻になると、何の前ぶれもなくいきなりドアが閉まるやいなや1秒後にはダッシュを始める。運悪く閉まるドアに挟まれてしまうと、どうなるのか判らないが、おそらく遅延払い戻し金額の大部分の請求書が届くのだろう。
あれこれ、日本人は、もっと時間にルーズになってもいいのだろう。