佐藤仁重写真展『New York』

2019-07-31 00:00:34 | 美術館・博物館・工芸品
六本木のミッドタウン・フジフィルムスクエアにあるGallery Xで佐藤仁重(よしえ)さんの写真展を鑑賞。テーマはNew York。ブルックリンやソーホー、タイムズスクエアなどを中心に都会そのものの風景を撮影されている。共通するベースカラーは濃いブルー。夜の色だ。あるいは夜明け前でもあるのだろうか。サブタイトルはShadow&Brightness。8月1日まで。



展示されている多くの写真は建物やストリート、ビルの遠景。中には空の上から写したと思われるものもある。人物はかなり少ない。そういう流儀なのだろう(もっともNYで勝手に人物を写しまくると問題がありそうな気もする)。国の作りの違いだろうけど、日本(東京でも大阪でも)の町は都会でも雑然とした感じがあり、それが好きな人が何度も訪日している。人それぞれか。



佐藤さんは、出身地が六本木ということで、都会が大好きだそうで、郊外にいっても数日で都会に戻りたいというタイプだろう。江戸っ娘ということかな。



ところで、会場のGallery Xというのは、フジフィルムのミラーレスカメラのシリーズに冠された「X」を意味している。つまり、今回の写真展は、ミラーレスカメラによるわけだ。

また、ニコンカレッジやLUMIXフォトスクールの講師もされていて全方位という感じだ。プライベートで旅行する時とか、どのカメラを使うのかなとか考えてみたが、たぶんプライベートの撮影なんかしないのだろうと勝手に無難な結論を出してみた。

夏の演劇三本立て(麻布演劇市)

2019-07-30 00:00:15 | 映画・演劇・Video
劇団の世界のことはよく知らないが、出演者の貸し出しみたいなことがよくあるのだろうか。7月26日から三日間六本木で開かれた麻布演劇市はある常連劇団のプロデュースでさまざまな劇団から集まっての公演になっている。


まず、一本目は『外郎売り口上』。いきなり浴衣姿の少年が登場。小学生に見える。

外郎(ういろう)といえば、小田原の名産か名古屋の名産か争っているが、小田原の外郎店で各種のお客様に売り口上を述べるというシーンをその少年が延々と述べるわけだ。若いということの最大の恩恵は何か?そう記憶力だ。大人になると決して覚えられなくなる長尺セリフを語り始める。少年ではあるものの麻布アクターズスクール生ということだそうだ。どうも外郎は東海道の旅人に「薬」として売っていたようだ。

二本目は『もうすぐ幕があがるから』。一人芝居である。演じるのはアラサーの女性。

一人芝居には、「一人の脳内の中だけの世界を独白する」パターンと、第二者と会話や電話をするシーンを会話のオーム返し風に使って「自己と他者」というように世界を広げる方法があるが、今回は後者だ。主人公の女性には年下の夫がいるが重い病気で入院中だ。二人は高校の時の演劇部で知り合って結婚したのだが、女性の方は町内会の発表会でシェークスピア劇を演じることになっていた。彼女は入院中の夫の前で『真夏の夜の夢』の中の劇中劇の部分を演じて見せるが、劇の中の劇中劇を見るということになる。300年経ってもシェークスピアは演劇の華なのだろう。

三本目は、剣舞『黒塚』。能の『安達ヶ原』を下敷きにしている。人里離れた森の奥に住む鬼女は一夜の宿を求めて訪れる者を絞め殺して、その人肉を食っている。そこに現れたのが修行僧である大和坊と九郎坊。実際は弁慶と義経ということ。東北の地で討ち死にしたことになっているが、実際は大陸に逃げようとしていた。以下省略(オリジナル性高し)。

しかし、劇中で剣舞すなわちチャンバラが行われるのは何のためなのか、よくわからないのだが自分の無能のためなのだろうか。演劇というのも演じる人と観る人に分かれるのだが、とかく演じる人は自己満足的になりがちなのだろうか。チャンバラ部隊はスペシャリストとして参加しているのだが、シナリオの本質からいえば派手に斬りあわなくてもいいと思う。

携行缶でのガソリン購入に身元確認?

2019-07-29 00:00:21 | 災害
京都アニメーションでのガソリン放火事件を受け、総務省は石油連盟(元売)と石油商業組合(ガソリンスタンド)に対し、ガソリンの携行缶への給油の場合、購入者の身元確認と用途聴き取りの徹底を要請した。

今回の事件では建物側の構造不備についても若干の問題点が言われているが、確かに煙突的な螺旋階段とか、防火扉での遮断が行えない大フロアでの作業といったことはあるのだが、そもそもガソリンを撒いての放火ということになれば、被害建物に限らずほとんどの建物で大災害の発生を防ぐことは難しいと思われる。あえていえば、作業の状態から見ると、防災上は事務所というよりも組み立て工場という発想が必要だったのかもしれない。といっても、自分の働いている会社はオフィスであって工場ではない、と思うのが普通だろう。いずれにしても被害者を責めるのは酷すぎる。


今回の総務省の要請先が石油連盟(石連)と石油商業組合(石商)ということだが、石連に入っていない商社系元売りもあるし、石商に加盟していないガソリンスタンドも多い。そもそも「要請」ではなく、何らかの法令で対処すべき問題と思う。

例えば、今回の事件では20リットル缶×2で40リットルである。多量過ぎる。クルマで走れば東京から大阪まで走れる。上限値は必要と思う。一度に使えない数量はユーザー在庫ということになるが、それも危険要因だ。ガソリンについては10リットル以下の公認の容器でしか売らないという方がいい。

また用途面では、ガソリンはなんらかのエンジン(発電機、モーターボート、農機具、芝刈り機、ゴルフカートなど)に対して使われる。ガソリンだけを使いたいという人間は放火魔しかいないだろう。つまり銃と銃弾の関係に似ているわけだ。エンジンを登録させて、それによる期限付きのガソリン使用許可証を呈示した人だけがガソリンを買えるようにすればいい。銃の場合、管轄は警察だが、エンジンの場合は消防署かもしれない。

あとはガス濃度検知器というのもあるが、基本的に事故防止用なので計画的犯罪の場合、かいくぐることもあるだろう。

さらに、今回は犠牲者が多かったから今頃政府が動き出したが、大規模災害は何回も起きている。
2001年の弘前武富士放火事件(爆発)、2003年名古屋での人質籠城爆発事件、2013年福知山で祭りの屋台でガソリン缶に引火。自動車解体作業中の燃料タンク爆発も時々起きる。今までの事件でも、その場に多くの人がいればもっと多数の犠牲者が出たと思われる。


一方、いかに法令により買いにくくしたとしてもリスクはゼロにはならない。最近は聞かないが「ガソリン泥棒」という犯罪があった。他人のクルマのガソリンを抜き取る犯罪だ。得るものよりリスクの方が大きいため、はやらないが、ある方法でホース1本でもできるとも言えるのだが、だからといって錠前破りがいるから戸締りしないというのは違っていると思うわけで、できるだけ犯罪者が買いにくくする努力は必要だろうと思う。


なお、同様の事故としてスプレー缶のガス抜き時の爆発でいくつかの事故が起きているが、中身はほとんどが可燃性のガス(例:ブタンガス=カセットボンベ)であるし、ガス抜きをしたといってもボンベの中にはゼロではなく構造上1気圧分のガスが残っているのである。つまりガスを抜いても危険であることは間違いないのだ。しかもブタンの生ガスを空中に放出すれば、オゾン層の破壊につながるわけだ。

“道灌以後”の戦国争乱

2019-07-28 00:00:45 | 歴史
横浜市歴史博物館で閉幕間近の『“道灌以後”の戦国争乱』を見に行く。一応、「おおた」を名乗っているので、不明なことが多い「太田氏」のことをチェックしてみたかった。



まず、太田氏の起源だが大きく二説あるようだ(本当は30近い太田氏があるともいわれる)。一説は清和源氏の子孫ということで、丹波の国の太田郷より苗字を決めたというもの。もう一説は横浜にある太田郷の豪族だったというもの。

もっとも先祖が天皇でも豪族でも関係ないのだが、太田氏は上杉家に仕えていた。太田道灌の本名は太田資長。当時の関東は、上杉、武田、今川の三家の力が拮抗してた。さらに千葉には里見、茨城には結城と血も涙もない残虐な新興勢力がいた。

道灌は主君である上杉家内の分裂をおさめるため奔走し、抵抗するものは厳しく処断していたとされている。その結果、伊勢原市で入浴中に暗殺される。

その後、ラフに言えば二つに血筋はわかれる。一つは岩付太田氏、もう一つは江戸太田氏。華々しいのは岩付太田氏で、あっちに付いたり、こっちに付いたり。特に北条氏に近づいたり離れたり。一方、江戸太田氏は意図していたわけではないだろうが、細く長く生き延びていた。結局、いくつかの小規模大名や旗本として明治を迎える。

いずれにしても、はっきりしないことが多い。末裔に入れてもらおうかな。

将棋連盟支部ニュース76号

2019-07-27 00:00:38 | しょうぎ
理由があってなのだが、将棋連盟のある支部に入っている。都道府県が現住所と違うからか、支部からは何の連絡もないが、いわゆる幽霊会員ではなく、実在会員。ということで、定期的に『支部ニュース』という会報が届く。



この会報も数年前までは、アマチュアのタイトル戦の棋譜が大量に掲載されていたりして、誌面を埋めるのが大変な感じだったが、最近はいくつか読ませる記事が増えてきたように思う。懸賞詰将棋の解答を送るにあたり、本誌に対する意見というのを書くのだが、以前は書くのが困難な感じがあったが、最近は書きやすくなっている(それでも詰将棋の感想を書いている人も多そうな感じだ)。詰将棋の解答数が300通以上なので同数の意見があるのだろうが、ここ二回続けて自分の書いた「感想」が掲載されていた。

今回は、社会的弱者に対する娯楽の提供という観点の意見。(内容は省略・著作権を放棄しているので)

意見をもっと集めるなら、詰将棋を簡単にした方がいいかもしれない、と思う。


さて、7月13日出題作の解答。






途中、角を遠くから打つと、飛角交点に中合いで失敗。玉側は6手目に桂を跳ねないと、7手目にむざむざと桂を取られてしまう。玉方の努力義務違反で損害賠償しなければいけない。

動く将棋盤は、こちら


今週の問題。



「玉は下段まで追え」なのだが、すぐにではない。

わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ、正誤判定します。

さくらんぼの里で・・

2019-07-26 00:00:37 | あじ
少し届いてから時間が経ってしまったが、山形県の東根市からさくらんぼ、佐藤錦が届いた。ふるさと納税である。今年から、総務省の監視の目が厳しくなったため、各地で様々な解決策を探しているようだ。今年は、1㎏ではなく、800g+200gと表示されている。昨年送ってもらった時はその前の年にくらべて見かけの品質(サイズ、色、形など)が落ちているような気がしたが、ことしも同程度の感じだ。つまりランクAでないものは、定価というのが不明になるため、そもそも寄付額の何割なのか計算も定かにはできない。



以前、カレイ(魚)が大量に届いたことがあったが、あれも小さなカレイだった。ノドグロも同様だった。

800g+200gといっても、しょっちゅうつまんでいると一週間で、行政指導セーフかアウトか判断すべき証拠品は隠滅されてしまう。味はいつもと同じだ。

しかし、佐藤錦の出生の地であるとともに日本一の生産高を誇るのが東根市で、行きつくところJR奥羽線の駅名まで、「さくらんぼ東根駅」になっている。まあ「鬼太郎空港」みたいなノリだ。ところが、東根市では今年すでに好ましくない二つのできごとがあった。


近い方からいうと、6月18日。山形県沖地震が深夜に発生。村上市では震度6。多くの地域で震度5であった。そして、何ヶ所かの温泉が使用困難になる。さくらんぼへの影響だが、果実そのものへの影響はなかったのだが、困ったことが起きる。地元ではある程度の量は、観光客のさくらんぼ狩りように確保していたのだが、余震の心配や温泉の建屋倒壊といった観光資源がなくなったため、キャンセルが相次いだそうだ。

となると、ふるさと納税返礼品に余ったさくらんぼを多めに詰めてもらえないかな、と思っていたのだが、そういうことにはなってないわけだ。


そして、もっと困った事件がその一ヶ月前に起きている。5月19日早朝、市内のマンションで女性が殺害された。いわゆる『東根女性医師殺人事件』。被害者は近くで眼科を開業していた女性医師で、玄関先でゴルフパターで執拗に頭を打たれ、血痕が天井まで及んでいたそうだ。ゴルフというのも今年は色々ある。警察官から拳銃を奪おうと刺した男はゴルフ練習場に勤めていた。

一ヶ月近く経ち、上記の地震の少し前に、山形大学の4年生が逮捕された。驚くことに空き巣をしていて、鍵がかかっていなかったために室内に入り、居住者と鉢合わせになる。顔を見られたら殺すしかない、と単純に思ったのだろう。この学生、父親は脳外科医で、こどもの頃は医師をめざしていたようだが、長野県の高校では理科系クラスで落ちこぼれ、文系クラスに代わったものの退学している。さらに、凶行に及ぶ前は長期休学している。空き巣の研究でもしていたのだろうか。

犯行当時は色々と書かれていたが、その後、もっと重大な事案が次々に起こっていて風化しそうだが、なぜ空き巣なんかしていたのだろう。理由についてどこを探してもみつからない。

ところで、知人で山形大学医学部を卒業して山形県内で開業しているゴルフのうまい医師がいる。連絡をとって聞いてみたのだが、「何も知らない」ということだそうだ。二年後に山形の温泉にいって翌日ゴルフをすることを約束してしまった。もちろん、二年後にゴルフができる体だったらという条件付きである。私が行ったところでは、妙に事件が起きることが多いのだが、それは秘密。

バベル(2006年 映画)

2019-07-25 00:00:43 | 映画・演劇・Video
バベルの塔というのは、旧約聖書に登場する超高層ビルのことで、人間が神のいる世界に登ろうと力を合わせてビル建設を進めてしまい、怒った神が、人種ごとに違う言語を与えたことにより共同事業としてのビル工事ができなくなり、一気に崩壊した。



現代で言うと、国際宇宙ステーションのような事業だろうか。困ったことに英語を共通語にしようということになっていて、神の怒りが心配だが今のところ人類共同事業は、たいした成果を出していないし、むしろ崩壊感覚だ。

本映画は主演がブラッド・ピッドということになっているが、ほぼ同時期に世界の3ヶ所(米国=メキシコ国境付近、モロッコ、東京)で事件が起きる。

米国=メキシコ国境では、ブラッド・ピッドの二人のこどもがメキシコからの不法移民と密入国に絡み砂漠に取り残される。

モロッコでは、遊牧民のこどもが父親が闇で入手したライフルの練習をしているうちに当たらないと思って撃った球がバスに命中し、バスに乗っていた観光客(実はブラピの妻役のケイト・ブランシェット)に命中し、瀕死の状態に至る。そして、政治的理由もあって救助の手はなかなか伸びない。米国は、これをゲリラのせいにして軍事介入しそうだし、といってモロッコには病院は少ない。

一方、東京では役所広司の演じる不思議な男とその聾唖の娘(菊地凛子)が登場する。なんで役所広司が登場するのか理解できないのだが、実は彼がハンティングの旅行でモロッコに行ったときに、ガイドにプレゼントしたライフルがバスの射撃に使われた。

これで3つの話が、一部だけ繋がっていることが見えてくるが、といってそれ以上のものでもない(と思った)。

普通の日本人が見ると、「やはり銃社会危険だ」というような方向になるのかもしれない。銃で撃たれて死にかけている人物が何人かいるのだが、生死の確認ができる前に映画は終わってしまう。ちょっと無責任。

講演会(エネルギーの過去と未来のはなし)へ

2019-07-24 00:00:18 | 市民A
三週間ほど前に、都心で行われたある講演会に出向いた。『エネルギーの過去と未来のはなし』というお題で、財閥系の総合研究所出身でエネルギー問題の提案会社の方が講演者である。

実は、エネルギー会社にまとまった期間勤めていたので、結構、リアルなオペレーションを知っていて、外の世界からエネルギーの世界を観察や研究している人たちの間違いをよく知っているのでそれほど行きたくはなかったのだが、付き合いも大事だし、たまたま、会場から1ブロックのところに用があったということもある。

一般の庶民が対象の講演会ということで、衝撃の事実をいくつか並べてみると、日本に輸入されるLNG船について、「原油は備蓄があるがLNGは備蓄がない」というような話があったが、LNGはマイナス162度という超低温で運ぶため、輸送中も含め温度と圧力の管理が重要で、基本的にはタンク内の液を減らしていきながら圧力を下げながら温度調整をするという方式。超低温だから備蓄しないというのは、備蓄する気がないからというべき。しかも原油の備蓄と言っても備蓄基地から製油所へ運ぶための中型の原油タンカーは地球上にそうたくさんあるわけじゃないし、そもそも別の仕事をしているわけだ。福一の原発が予備電源の喪失ということで大惨事になったことと同じような問題。というか、備蓄原油というのは、使うことよりも「見せ金」効果のはずだ。

そして2003年のNYの大停電。原子力を含めた電源の多様化という講演の最終到着点に向かう印象操作なのだが、あれは電源が理由ではなかったはず。

ということで、本論に入り、エネルギーの過去ということで日本に限れば石炭の時代がはじまったのが富国強兵政策と一致している。ペリーが日本にやってきたのが石炭船の軍艦だったことがトラウマになり、石炭を燃料とする軍艦に頼ったわけだ(日露戦争の時代)。

石炭と水力に頼った結果、石油資源の開発が遅れてしまう。戦前、日本はすでにイランの油田開発も始めていたのだが失敗。後世思えば満州国の大慶油田とかサハリンには大きな油田があったのに、オランダ領のインドネシアの油田を手早く手に入れようと戦争を始め、破綻。

戦後は、自民党、社会党とも戦争の原因が石油不足にもあるという認識で。原子力発電を推進していくことになった。

ところが、原発の多くは老朽化して、大中小の事故が多くなってきていて、ついに初歩的な安全思想の欠如から福島第一で巨大事故を起こしたわけだ。

本講演の方向としては、このあと太陽光発電や輸入LNGは割高という話になり、結局、原子力を動かした方がいいというところに落ち着き、どうもそういう会だったことに多くの人が気付くことになる。


エネルギーを多様化するべきという主旨なら、太陽光をやめて原子力にするというのは変な話だし、原子力発電の問題は、発電の問題ではなく、まもなく大地震が起きるという時に、原子炉をおくべき安全な場所が見当たらないという問題と、原子力発電でもっとも重要な施設は「予備電源である」ということが認識されているようには思えないこととか、かなり人為的な問題も多いようにみえる。

ところで、日本の原油輸入量の過半量がホルムズ海峡経由ということで、湾岸戦争が始まればパニックになるというのも暴論で、なぜ、中東から買うかというと、近いから運賃が安いということ。どこの会社も好ましい原油を探すためにコンピューターで計算するのだが、1円でも有利な方を選ぶため、アフリカでも北海でもなく中東を選ぶのだが、その差は僅かな数字なのだ。ホルムズ海峡が通れないと原油は高騰するので、そもそも運賃の僅かな差など気にならなくなるはずだ。

今月号の『波』は

2019-07-23 00:00:42 | 書評
新潮社の書評誌『波』2019年7月号を手に取って、まず最初に驚いたのが表紙だ。ブレイディみかこさんという女性の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という新刊が出るというのだが、実はこの雑誌に連載中のはず。『波』で連載して、終了後単行本として出版されるというのが普通なので、連載が終わる前に単行本が出るのかと、とまどう。



みかこさんの男の子が英国のブライトン(ロンドンから1時間のところにある海浜リゾート地・鎌倉みたいな町)の公立中学に通っていて、そこで起きている崩れかけている英国の社会をこどもの行動から描写している。

実は、今月号にも第19回の連載があるのだが、どうも第16回までをまとめて刊行したとのこと。ということは、連載は第32回までつながるのだろうか。そして続編か。

そして、雑誌にはさまれていたペーパーに赤松利市氏の『ボダ子』について書かれていた。3.11以後東北地方で土木作業の労働者になった父と境界性人格障害者の娘を中心に「金」によってケダモノのように変貌する醜い人間が描かれている。読者からは「最悪の読後感」「悪夢にうなされ寝つきが悪い」と酷評を受けているそうだ。編集部から、作者渾身の一冊なので、1550円(税別)でも「絶対に損はさせません」と書かれている。損をしない本などという言い回しは、実に初めてである。

新潮社、大丈夫なのだろうか?

運がいいと言われる人の脳科学(黒川伊保子著)

2019-07-22 00:00:16 | 市民A
本の題名からいうと、宝くじがよく当たる人とか五輪チケット10枚入手できた人とか、そういう幸運の確率を高める秘訣が書かれているのかと思ったけれど、実際にはもっと長期的な視点で、人間の成功と脳の使い方の関係が書かれている。つまり、「運が良くて成功しているように見える人の、実は合理的な思考法」といったところだろうか。



さらに、3歳までの脳の特徴で、思考方法のかなりが決まっていること、実は脳の3%しか使っていないという説が大間違いで、脳にはよく使われる回路とゆっくり使われる回路があること、直観と理詰めの思考の差、脳の活性化のコツなどの話である。

つまり、「いまさら聞いても・・・」ということなのだし、自分自身、運が良かったのか悪かったのかわからないし、成功を測る尺度もよくわからないし、・・

ただ、脳を総合的に使うためには右脳や左脳や前頭葉、脳幹、小脳などバランスをとって使い続けた方がいいということに気付いたことと、そもそもニューロンの前に血管と血液の循環をよくすることが重要なことはわかってきたところだった。

友人の医師に頸動脈が厚くなった時にどうするか聞いたところ、「最新医療では、内側から血管を削って薄くすればいい。また厚くなったら削ればいいだけ。」と言われたのだが、削りカスをどうするのかという重要なポイントを聞き忘れてしまった。

ISUZUプラザで車酔い

2019-07-21 00:00:11 | 美術館・博物館・工芸品
少し前に、藤沢市にある、いすゞの工場に隣接したISUZUプラザの見学に行った。湘南台駅に約20名集合して送迎バスに乗る。湘南台駅というのは神奈川の県央に近いが、3線が乗り入れるターミナル駅だ。

そして、工場見学と思っていた人もいたが、今や自動車工場の内部は秘密主義だ。業界のプロが見ると、小さなことからでも大きな秘密を見抜かれることがある。実際、工場ではなくISUZUプラザで展示されているエンジンの組み立て図をTOYOTAの社員にみせたことがあるらしく、「ここまで見せる会社はないのでは」と言われたそうだ。



そして、展示は一階から回るのだが、いすゞの歴史ということで、乗り合いバスやトラックから始まったそうだ。いくつかの会社の自動車部門が分かれて合併を続けていたそうだ。



次に、ここの中心展示のジオラマ。トラックやバスが走り回る架空の街並みを寸法を正確に縮小して動かしている。確かに鉄道のジオラマよりも複雑で多様だ。走っている車は、ディーゼルエンジンで動くものと、過去に乗用車を作っていたころの車種の模型などである。



経営学でいう「選択と集中」ということで、だいぶ前に乗用車の生産を止めて、トラック・バス・エンジンそのものに経営資源を統一したということで、解説をお願いした方は、乗用車の開発をしているときに、「乗用車から撤退」という会社発表を聞いて、茫然としたらしい。ところが、タイの工場でSUVを作っていて、東南アジアで販売しているそうだ。展示されていたが、日本ではあまり売れないだろう。



そして売り上げの柱の一つが、防衛省向け。兵員輸送車が展示されていた。頑丈な車で、輸送機で運んで、所定の場所にパラシュートで落とすそうだ。落としてもこわれないように丈夫な板バネのサスペンションだ。運転席に座っただけで背中が痛くなった。

普通のトラックはドライバーの高齢化で、腰にやさしいエアサスが必須になっているのに自衛隊向けとは大きな差がある。聞いたところ、「自衛隊員は頑強だから」ということだった。背骨や腰骨も頑強なのだろうか。



そして歴代の名車として、117クーペ、ジェミニ、ベレットといった展示がある。社員のノスタルジアだろうか。

ところで、大型車の運転シミュレーターが置かれている。普通車とはまるで動きが異なる。1分運転しただけで車酔いして5分終了後にはまっすぐ歩けなくなっていた。

一題解けなかった「一手必至100題」

2019-07-20 00:00:04 | しょうぎ
必至問題集を一冊いただいた。一手必至というので、すいすい解いていったのだが、ある問題で立ち往生した。それは第90問。何を間違えたのかというと、出題図が間違えているように見えたのだ。つまり、必至をかけるのではなく、3手詰のように思えたわけだ。何かが間違っているように思い始め、あれこれ考えたが行き詰まってしまい、結局、解答をのぞき見する。



おそらく100題の中で最も難しい問題なのだろうけど、私が詰むと思ったのは、まったくそういうことではなかった。▲1二歩、△2一玉、▲3二角までの3手詰。確かに詰んではいるのだが・・



さて、7月6日出題作の解答。





テーマは飛車をどうするか。9手目を生かすために、前もって飛車を捨てるわけだ。

動く将棋盤は、こちら


今週の出題は、その第90問を元にして作ってみたが、それほどの問題にはなっていないような気がする。



わかったと思われた方はコメント欄に最終手と総手数とご意見をいただければ、正誤判定します。

石臼一本挽きとは

2019-07-19 00:00:31 | あじ
そばがまとめて届いた。時節柄お中元かというと、そうではなく、ある電話会社の株主優待で電話会社が経営している通販サイトから一品いただけるというものだった。

信州戸隠そばの太切りと細切り。そして、差別化のひとことが、「石臼一本挽き」。石臼は蕎麦の実を粉にするのに石の臼を使うということと見当がつくが、一本というのがわからない。二本というのもあるのだろうか。



知人に信州(長野県)の有名進学校の卒業生が何人かいるので、一人に聞いたところ、「馬鹿言っちゃだめだよ、いまどき臼なんかで挽いているわけないだろ」と怒られてしまった。ついでに、「こどもの頃は蕎麦畑があったけど、全滅だよ。全部輸入品。君は千葉県人だから知らないだろうけど」と追加で怒られた。千葉でも落花生農家はほぼ全滅しているが、一部、高級品を作っている。たぶん長野でもそうだろうと思うが、いずれにしても一本挽きの謎は解けなかった。二度も三度も挽き直さないということだろうか。粗挽きの粉かな?

実は、包装紙に俳句が書かれていた。


信濃では月と仏とおらがそば


この句は前から知っていて、小林一茶作と思っていたのだが、たいへんな曰くつきの句だった。

まず一茶は晩年は北信に家を構え、若い妻と愛欲生活を究めていて、そのエネルギーは、うまい蕎麦から得ていたとされていて、さらにこれも名句である「そば時や月の信濃の善光寺」を詠んでいる。さらに句集「おらが春」を編んでいるのだから信濃、月、仏、おらがそばと並べば一茶として間違いなさそうである。ところが生涯で数万の句とされる作品の中にないのである。どうも世に現れたのが明治の末期で、中村六郎という一茶愛好家の方の作らしい。

中村家は酒造家であったが、副業として蕎麦を作っていて、中村家の特産品として「氷そば」というものがあったようだ。「氷そば」というのも理解できないが凍豆腐のようなものかな?この蕎麦の宣伝のために作ったのではないかといわれている。

また中村六郎作の一茶好みとしては、この句のほか「親は死ね子は死ね孫は後で死ね」とか「何のその百万石も笹の露」とかある。といっても剽窃というのはあんまりな気もする。なにしろ小林一茶が芭蕉、蕪村と並ぶ存在とされたのは、中村六郎が世に紹介したからなのだ。

一茶作でないと言われて困るのは、全国にある一茶風の名前の蕎麦店かもしれない。一茶庵とか一茶、おらがそばというのが多いようだ。新メニューとして氷そばを登場させなければならないだろうか。

ところで、この蕎麦の詰め合わせだが6本あったが、普通のパッケージでは縦長の箱になるのだが、贈答品シーズンだとデパート等では横長の箱でなければならない。特設コーナーで横幅を強調しなければならない。サッポロビールでも傘下のエビスビールの贈答品用に、特別に季節限定ビールの種類を増やして5種類以上にして横長の箱に入れて売っている。この蕎麦も麺を縦において、両サイドには麺つゆの袋とか小箱に入れて恰好をつけている。

麺を横向きにおいて、麺を包む紙の印刷も横向きにすればいいはず。

もう一つの放浪記『浮雲(林芙美子著)』

2019-07-18 00:00:19 | 書評
林芙美子と言えば事実上のデビュー作である『放浪記』が、その後の彼女に期待された作風を既定していたのかもしれない。『放浪記』は自己の半生をもとに第一次大戦後の世界に広がっていった社会不安の中で底辺を放浪する主人公(ほぼ自分の分身)が描かれていた。

そして大戦を経て、彼女は女流の第一人者として次々に舞い込む出版社やジャーナリズムからの原稿依頼をこなしていく。ただ、それらは小説の長さや筋立ての中に「期待される林芙美子らしさ」を求められ、自作の自由度を制限されていたようだ。その中で持病の心臓病は徐々に悪化をしていったわけだ。

ukigumo


そしてマイナー雑誌から引き受けた長編小説の中で、彼女の意図する構造の中で、「ゆき子」と「富岡」という生々しい二人の主人公を書き上げるわけだ。それが『浮雲』である。大戦中にゆき子は農林省のタイピストとしてベトナムの奥地に向かうのだが、赴任する道中で、農林省の官吏である富岡と運命的な出会いをするわけだ。その後、二人は現地で関係を持つことになる。

この小説の特徴として、ゆき子も富岡も多情人間として描かれ、三角関係や四角関係が次々に登場するのだが、それらの記述の中に二人のバックグラウンドが挟み込まれ、二人とも過去の男女関係を引きずっていることがわかってくる。なにしろ林芙美子は小説のストーリーが巧いのだ。

そして敗戦。二人は東京に戻るが、富岡は病気がちの妻のもとに帰ったのだが、何しろ仕事もお金もない。ゆき子も富岡にしがみつき妊娠したり一緒に死のうと温泉にいったりするが、ぐずぐずになる。ある意味、どちらもダメ人間なのだが、すべて戦争のせいなのだ。

さらに、別の男たちや女たちが登場し、脇役は次々に病死したり殺されたりして、ついに二人とも首が回らなくなり、富岡は屋久島の森で働くことになり、ゆき子はバイト感覚で勤めていた新興宗教の金庫から現金を着服して富岡に「自称妻」として付いていくことになる。(以下省略)


すさまじい力作である。そして、林芙美子の筆は冴えわたっているように思える。1948年から3年越しに書かれた本作が単行本となったのは1951年4月。その2か月後6月に彼女は他界した。人生のおまけとして、葬儀委員長の川端康成が文学史上有名になった弔辞を述べている。

二児の母

2019-07-17 00:00:52 | 市民A
選挙が近づいて、突然あらわれるのが、立候補者である。近くの駅前に、ある女性有力候補者が現れる。6年前の記憶を失った人のため、本人確認のため、「本人」というのぼりが傍に立っている。

のぼりを見ていると、「国際弁護士×二児の母」と書かれているものがあった。「国際弁護士」はプラス要素だろうが、『二児の母』が特別な売り物になるとは、大変な世になったものだ。

単純に「二人もこどもがいて、私は嬉しい」という意味なのか「二人も育てた子育て実績がある」ということなのだろうか。もしかしたら「こどもを二人も育てるためには、『国際弁護士』にならないとおカネが足りないのではないだろうか」と不安になる人がいるかもしれない。よくわからないフレーズだ。

余計な話だが、「国際弁護士」という用語も、不思議である。ワイドショーのコメンテイターのための用語のような気がする。日本の弁護士とかニューヨーク州の弁護士というのなら認定された資格なのだが、「国際弁護士」という資格は存在しないわけだ。もちろん仕事をしない限り「国際弁護士」と名刺の肩書に書いても逮捕されることはないはずだ。

この候補者を非難するつもりではないので、念のため。